会社法ニュース2024年06月07日 従業員への株式報酬の無償交付実現へ(2024年6月10日号・№1030) 年明けの法制審議会で検討、早ければ再来年の通常国会で会社法改正
令和元年の会社法改正により、上場会社が取締役等に対し株式報酬を無償で付与するスキームが認められたところだが、現状、株式の無償交付制度の対象は取締役等であり、従業員に対し無償で株式報酬を付与することはできない。
こうした中、5月23日に公表された自民党の「新しい資本主義実行本部 経済構造改革委員会」の提言には「上場会社が取締役に対する報酬等として株式を交付する場合には払込みを不要とすること(無償交付)ができる一方、従業員に対しては無償交付ができないことを踏まえ、これを可能とすべく、会社法制の見直しを含む適切な措置を検討するべきである。」との一文が盛り込まれた(16頁)。さらに、政府の規制改革推進会議は5月31日に「規制改革推進に関する答申(案)〜利用者起点の社会変革〜」を公表し、この中で、「従業員等に対する株式報酬の無償交付を可能とする会社法の見直し」をテーマに掲げている(99頁)。今後政府がとりまとめる骨太方針や、新しい資本主義実行計画の改訂版にも同様の記述が盛り込まれる可能性が高い。
こうした動きを受け法務省は、従業員等に対しても株式を無償で付与できるよう、会社法の改正を進める方向だ。来年2月頃の法制審議会総会で当該改正について諮問を開始し、結論に至り次第、会社法改正案を国会に提出する流れとなる。法案の提出は再来年の国会となることが予想される。
法制審議会で大きな論点になりそうなのが、株主総会決議の要否だ。株主総会決議でいわゆる“枠取り”をしなければならないという規制を受ける取締役等の報酬と異なり、従業員等の給料については現行会社法上何ら規制がないことから、株式の無償交付により株式の価値の下落(希釈化)が生じ、既存株主の利益が害されるおそれがある。規制改革推進会議に法務省が提出した資料では、無償交付できる株式数(年間の上限)等を定める株主総会決議を要件とした上で、有利発行規制に影響を及ぼさないことなどの意見が紹介されている。従業員等に対する株式報酬の無償交付が実現するかどうかは、既存株主の利益の保護が鍵を握ることになろう。
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