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解説記事2024年07月08日 税制改正解説 令和6年度における消費税・個別間接税関係の改正について(2024年7月8日号・№1034)

税制改正解説
令和6年度における消費税・個別間接税関係の改正について
 村田淳浩

消費税関係

一 プラットフォーム課税制度の創設

1 改正前の制度の概要
 平成27年度税制改正において行われた国境を越えた役務の提供に係る課税の見直しでは、電子書籍・音楽・広告の配信などインターネットを通じて海外から提供されるデジタルサービスについて国内外の事業者間での競争条件の歪みを是正する等の観点から、仕向地主義を採用するとともに、これらの取引に係る内外判定については、その役務の提供を受けた者の住所等により行うこととされた(平成27年10月1日施行)。具体的には、電気通信利用役務の提供(消法2①八の三)について、当該電気通信利用役務の提供を受ける者の所在地(住所若しくは居所又は本店若しくは主たる事務所の所在地)により内外判定を行うこととされたため(消法4③三)、国外事業者が国内向けに行う電気通信利用役務の提供については、消費税の課税の対象とされている。
 また、日本国内に何らの拠点も持たない国外事業者が国内向けに行う電気通信利用役務の提供を新たに課税の対象とするに当たり、国外事業者に対する税務執行には一定の限界があることから、この電気通信利用役務の提供について「事業者向け電気通信利用役務の提供」と「消費者向け電気通信利用役務の提供」とに分けた上で、①「事業者向け電気通信利用役務の提供」については、納税義務を売手から買手に転換し、当該役務の提供を受ける事業者に納税義務を課す、いわゆるリバースチャージ方式が導入され、②「消費者向け電気通信利用役務の提供」については、その役務提供を受けた国内事業者において、国税庁長官の登録を受けた国外事業者から提供されるもののみを仕入税額控除の対象とする、登録国外事業者制度(注)が併せて導入された。
(注)この登録国外事業者制度については、令和5年10月に開始した適格請求書等保存方式における適格請求書発行事業者登録制度に吸収されている。
 近年、我が国のデジタルサービス市場は拡大を続けており、多くの国外事業者が国内市場へ参入している。また、これらのプラットフォームにおいては、プラットフォームを提供する事業者が自ら取引条件を設定し、多数のサービス提供者(サプライヤー)や利用者を集めて事業を行い、プラットフォーム事業者が用意した決済サービスを利用させることで、金銭の流れも管理下に置いており、こうしたプラットフォームに取引が集中している実態にある。
 このようなプラットフォームを介して行われるデジタルサービスには様々な取引類型があるが、例えばモバイルアプリ等の提供については、通常、プラットフォーム事業者は取引の仲介を行うのみであり、実際の取引は個々のサプライヤーが消費者に対してコンテンツを提供する方式(セールスエージェント方式)であるため、消費税の納税義務者はプラットフォームの背後にいるサプライヤーにある。しかし、こうしたサプライヤーには日本国内に拠点を持たない国外事業者も数多く含まれており、税務当局におけるサプライヤーに係る情報の入手手段が限られているため、その特定は容易ではない。また、サプライヤーを特定できたとしても、サプライヤーが国外事業者である場合には、その調査も難しいなど、納税義務者の捕捉や調査・徴収には自ずと限界があり、適正な課税の確保が難しい状況にあった。
 前述のとおり、プラットフォーム事業者が取引の仲介を行う方式(セールスエージェント方式)においては、プラットフォーム事業者は、契約関係からすれば取引主体とはならないものの、実質的に金銭の流れも含めて取引を管理しうる立場にあることも踏まえれば、とりわけ国外事業者がサプライヤーとなる取引については、適正な課税の確保の観点からプラットフォーム事業者に申告納税を担ってもらうことが適当と考えられる。
 また、このような取引について、プラットフォーム事業者にその申告納税を行わせる仕組みは、諸外国においても、欧州のみならず、アジア、北米など多くの国で既に導入されている。
 こうしたことを背景として、国内外の事業者間の競争条件の公平性と中立性の観点から国外事業者の適切な課税を確保するための方策として、令和6年度税制改正においてプラットフォーム課税制度を創設することとされた。

2 改正の内容
(1)プラットフォーム課税の仕組み

 国外事業者が国内において行う消費者向け電気通信利用役務の提供がデジタルプラットフォームを介して行われるものであって、その対価について国税庁長官の指定を受けたプラットフォーム事業者(以下「特定プラットフォーム事業者」という。)を介して収受するものである場合には、当該特定プラットフォーム事業者が当該消費者向け電気通信利用役務の提供を行ったものとみなすこととされた(消法15の2①)。これにより、国外事業者が行った消費者向け電気通信利用役務の提供については、契約上の取引主体である国外事業者ではなく、プラットフォーム事業者自身が行ったものとして、消費税法の規定が適用されることとなる。なお、プラットフォーム課税は納税主体を国外事業者から特定プラットフォーム事業者へ転換する仕組みであるため、特定プラットフォーム事業者は、国外事業者が課税事業者か否かを把握する必要はない。
 本制度は、実質的に取引を決済まで含めて管理しているプラットフォーム事業者の果たす役割に着目した仕組みであるため、国外事業者がプラットフォーム事業者を通じてその対価を収受していることが要件とされている。このため、プラットフォームを介してデジタルサービスを提供しているものの、そのプラットフォーム事業者が決済自体に何ら関与していないような場合には、プラットフォーム課税の対象とはならない。なお、デジタルプラットフォームを介して行われる消費者向け電気通信利用役務の提供が前払式支払手段(オンラインゲームにおけるコイン等)と引換えに行われるものであったとしても、その前払式支払手段の発行時に支払われる金額について特定プラットフォーム事業者を介して国外事業者が収受する場合には、その取引はプラットフォーム課税の対象となる。
(2)特定プラットフォーム事業者の指定制度
 プラットフォーム課税の対象となる取引については、納税主体が転換されることにより、プラットフォーム事業者が消費者等から受領した対価について、プラットフォーム事業者への手数料に加えて消費税相当額も差し引いて国外事業者へ支払うこととなるため、国外事業者とプラットフォーム事業者との間でやりとりされる対価の額にも影響が生じることとなる。このため、安定的な制度運用のためには、新たに納税義務が生じることとなるプラットフォーム事業者のみならず、自らの納税義務がなくなる国外事業者においても対象取引であるとの認識が共有されることが必要となる。
 また、プラットフォーム事業者が国外事業者に代わって納税義務を負うこととなる制度であることに鑑みれば、プラットフォーム事業者は、納税義務の適切な履行が期待できる税務コンプライアンスや事務処理能力を持つ一定の者に限定する必要がある一方で、プラットフォーム課税の対象を限定することは、プラットフォーム事業者間の公平性の観点から問題が生じ得るため、現状行われている取引の大宗がプラットフォーム課税の対象となる必要性が出てくる。これらを踏まえ、一定規模以上のプラットフォーム事業者を対象に、国税庁長官が予め指定を行った上で、それを公表する指定制度を設けることとされた。
 具体的には、国税庁長官は、プラットフォーム事業者のその課税期間において、国外事業者がその提供するデジタルプラットフォームを介して国内において行う消費者向け電気通信利用役務の提供に係る対価の額のうち、当該プラットフォーム事業者を介して収受するものの合計額が50億円(税込み)を超える場合には、当該プラットフォーム事業者を特定プラットフォーム事業者として指定することとされた(消法15の2②前段)。
(注)特定プラットフォーム事業者は消費者向け電気通信利用役務の提供を行う事業者が国外事業者か否かを判断する必要があるが、実務においては、利用契約等においてその事業者が申し出た本店等の所在地に基づいて客観的・合理的に判定することとなる。
 この指定にあたり、国税庁長官は上記の要件を満たすプラットフォーム事業者を適時に把握する必要があることから、要件に該当して指定を受けるべき者は、その課税期間に係る確定申告書の提出期限までに、一定の事項を記載した届出書をその納税地を所轄する税務署長を経由して国税庁長官に提出しなければならないこととされている(消法15の2③)。なお、この届出がない場合であっても、国税庁長官が要件に該当していると認める場合には、特定プラットフォーム事業者として指定する。
 また、国税庁長官は、特定プラットフォーム事業者を指定したときは、当該特定プラットフォーム事業者に対してその旨を通知するとともに、インターネットを利用して次の事項を速やかに公表しなければならないこととされている(消法15の2④、消令29④⑤)。
・特定プラットフォーム事業者に係るデジタルプラットフォームの名称
・特定プラットフォーム事業者の氏名又は名称
・指定の効力が生ずる年月日
 指定が行われた場合には、上記届出書の提出期限(提出期限までに届出書の提出がなく指定が行われた場合には、指定の通知を発した日)から6月を経過する日の属する月の翌月の初日に、その指定の効力が生ずることとされている(消法15の2②後段)。
(注)特定プラットフォーム事業者の指定制度に係る経過措置
  プラットフォーム課税は令和7年4月1日より開始することとされているが、事前に指定等を行った上で同日より制度を開始するために、指定制度に係る経過措置が設けられており、施行日(令和6年4月1日)の属する課税期間(令和6年8月1日以後終了する課税期間である場合には、その課税期間の前課税期間)について、まずは金額基準の判定を行うこととされている。具体的には、その課税期間において国外事業者が国内において行う消費者向け電気通信利用役務の提供に係る対価の額のうちプラットフォーム事業者を介して収受するものの合計額が50億円(税込み)を超える場合には、令和6年9月30日までに上記届出書をその納税地を所轄する税務署長を経由して国税庁長官に提出しなければならないこととされている(改正法附則13⑦による読替後の消法15の2③)。また、上記に係る国税庁長官の指定が令和6年12月31日までに行われる場合には、その指定の効力は令和7年4月1日にその効力が生ずることとされている(改正法附則13⑧)。
(3)特定プラットフォーム事業者の指定の解除
 国税庁長官の指定を受けた特定プラットフォーム事業者は、3課税期間連続でプラットフォーム課税の対象とされる対価の額が50億円(税込み)以下である場合に、その最終課税期間の申告書の提出期限までに指定解除の申請書をその納税地を所轄する税務署長を経由して国税庁長官に提出できることとされている(消法15の2⑦、消規11の5③)。この申請に基づいて国税庁長官が指定を解除した場合には、国税庁長官が解除の通知を発した日の翌日から同日以後6月を経過する日の属する月の末日までの間は、引き続き当該事業者を特定プラットフォーム事業者とみなしてプラットフォーム課税を適用することとされている(消法15の2⑨)。
 その他、国税庁長官は特定プラットフォーム事業者が、次の事実に該当すると認めるときは、特定プラットフォーム事業者の指定を解除できることとされている(消法15の2⑪)。
・消費税につき期限内申告書の提出がなかった場合において、当該提出がなかったことについて正当な理由がないと認められること
・現に国税の滞納があり、かつ、その滞納額の徴収が著しく困難であること
・上記のほか、消費税の徴収の確保に支障があると認められること
(4)合併等があった場合
 特定プラットフォーム事業者のデジタルプラットフォームに係る事業を合併若しくは分割により承継した合併法人若しくは分割承継法人又は当該事業を譲り受けた事業者(特定プラットフォーム事業者を除く。以下「合併法人等」という。)は、その合併若しくは分割又は譲受けがあった日に特定プラットフォーム事業者としての指定を受けたものとみなされる。また、上記の合併等の事実を税務当局が把握し、公表等を行うため、合併法人等はその合併若しくは分割又は譲受けの日後遅滞なく、その納税地を所轄する税務署長を経由して国税庁長官に届け出なければならないこととされている(消令29②、消規11の5①)。
 なお、分割や事業譲渡があった場合について、元の特定プラットフォーム事業者がプラットフォーム事業の一部を引き続き行うことも想定されるため、元の特定プラットフォーム事業者の指定については自動的に取り消されることとはされず、事業の全部廃止や金額要件(3課税期間連続で50億円以下)に該当する場合に、申請等に基づいて指定の解除を受けることとなる。
(5)特定プラットフォーム事業者の義務
 特定プラットフォーム事業者の指定を受けた者は、消費者向け電気通信利用役務の提供に係る国外事業者に対して、プラットフォーム課税が適用されることとなる旨及び適用されることとなる年月日を速やかに通知する義務が課されており(消法15の2⑤)、特定プラットフォーム事業者の指定が解除される場合についても同様に通知義務が課されている(消法15の2⑬)。
 また、特定プラットフォーム事業者については、事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用を受けられないこととされているため(消法15の2⑭)、プラットフォーム課税が適用される課税期間については、本則課税で申告を行うこととなる。その際、確定申告書において、プラットフォーム課税の適用を受ける対価の額及びその明細を記載した明細書を添付することとされている(消法15の2⑮、消規11の5⑤)。
(6)国外事業者における仕入税額控除
 プラットフォーム課税により国外事業者はその消費者向け電気通信利用役務の提供について納税主体ではなくなるが、当該役務の提供に要した国内における課税仕入れがあった場合、その課税仕入れはその国外事業者が負担した課税仕入れであることには変わりがないため、それに対応する仕入税額控除を行うことができることとされている。具体的には、国外事業者が仕入税額控除の適用にあたり、個別対応方式(消法30②一)を採用する場合には、当該消費者向け電気通信利用役務の提供のためにのみ要した課税仕入れについては、課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れとして仕入税額控除を適用する等の措置が設けられている(消令29③)。

3 適用関係
 上記2の改正は、令和6年4月1日に施行されており、令和7年4月1日以後に国内において行われる消費者向け電気通信利用役務の提供について適用することとされている(改正法附則1、13⑥)。

二 国外事業者に係る事業者免税点制度の特例の適用の見直し等

1 特定期間における課税売上高による納税義務の免除の特例の見直し
(1)改正前の制度の概要

 その課税期間の基準期間(個人事業者についてはその年の前々年、法人についてはその事業年度の前々事業年度をいう。以下同じ。)における課税売上高が1,000万円以下の事業者については、そうした小規模事業者の事務負担に配慮して、その課税期間中に国内において行った課税資産の譲渡等につき、納税義務が免除される(消法9①)。
 ただし、事業者の基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、特定期間(個人事業者についてはその年の前年上半期、法人についてはその事業年度の前事業年度上半期をいう。以下同じ。)における課税売上高が1,000万円を超えるときは、納税義務は免除しないこととされている(消法9の2①)。
 また、この特定期間における課税売上高の判定は、その課税売上高に代替して、売上高と一定の相関がある指標として、給与等の金額(居住者に対する国内給与分:所得税法第231条第1項及び所得税法施行規則第100条第1項により給与等について給与支払明細書の交付義務対象となる金額)の合計額によることができることとされている(消法9の2③)。
(2)改正の内容
 国外事業者(所得税法第2条第1項第5号に規定する非居住者である個人事業者及び法人税法第2条第4号に規定する外国法人をいう。以下同じ。)については、その本拠は国外にあるため、国内における居住者への給与等の金額で事業規模を測ることはできず、本特例の適用に用いる指標として給与等を用いることは適当でないため、国外事業者については、特定期間における1,000万円の判定を給与等の金額の合計額により行うことはできないこととされた(消法9の2③)。これにより、その課税期間の初日において国外事業者に該当する事業者については、特定期間における課税売上高が1,000万円を超える場合には、給与等の金額の合計額にかかわらず、納税義務は免除されないこととなる。
(3)適用関係
 上記改正は、令和6年10月1日以後に開始する個人事業者のその年又は法人のその事業年度から適用され、同日前に開始した個人事業者のその年又は法人のその事業年度については、なお従前の例によることとされている(改正法附則1三ロ、13①)。

2 外国法人が国内で事業を開始した場合の事業者免税点制度の特例等の見直し
(1)改正前の制度の概要

 法人が新たに設立された場合、その法人の設立当初の2年間は基準期間がないため、基準期間における課税売上高の判定では免税事業者となるが、その基準期間がない事業年度開始の日において資本金の額又は出資の金額(以下「資本金等」という。)が1,000万円以上である法人(以下「新設法人」という。)又は基準期間がない事業年度開始の日において資本金等が1,000万円未満の法人であっても、一定の大規模事業者等が設立した法人(以下「特定新規設立法人」という。)については、十分な事務処理能力を有すると考えられるため、当該基準期間がない事業年度につき事業者免税点制度を適用しないこととされている(消法12の2①、12の3①)。
(2)改正の内容
 新設法人及び特定新規設立法人(以下「新設法人等」という。)は基準期間がない課税期間(設立当初の2年間)であっても事業者免税点制度を適用しないこととされているが、外国法人については、設立された後、一定期間を経過してから日本に進出することが一般的と考えられる。
 したがって、外国法人については、日本に進出する時点の資本金等により事業者免税点制度の適用可否を判定することが適当であると考えられることから、基準期間がある外国法人が、当該基準期間の末日の翌日以後に、国内において課税資産の譲渡等に係る事業を開始した場合には、その事業年度については基準期間がないものとみなして、新設法人に該当するかどうかの判定を行うこととされ、その開始の日における資本金等が1,000万円以上である場合には、その事業年度に含まれる各課税期間については、事業者免税点制度を適用しないこととされた(消法12の2③)。
 また、特定新規設立法人の判定を行う課税期間についても同様に、基準期間がある外国法人が、当該基準期間の末日の翌日以後に、国内において課税資産の譲渡等に係る事業を開始した場合には、その事業年度については基準期間がないものとみなして、特定新規設立法人に該当するかどうかの判定を行うこととされた(消法12の3⑤)。
(3)適用関係
 上記の改正は、令和6年10月1日以後に開始する事業年度から適用される(改正法附則1三ロ、13②)。

3 特定新規設立法人の納税義務の免除の特例の見直し
(1)改正前の制度の概要

 その事業年度の基準期間がない法人で、その事業年度開始の日における資本金等が1,000万円未満の法人(以下「新規設立法人」という。)のうち、次の①及び②のいずれにも該当する法人(特定新規設立法人)については、当該特定新規設立法人の基準期間のない事業年度に含まれる各課税期間における課税資産の譲渡等について、納税義務は免除しないこととされている(消法12の3①)。
① その基準期間がない事業年度開始の日において、他の者により当該新規設立法人の株式等の50%超を直接又は間接に保有される場合など、他の者により当該新規設立法人が支配される一定の場合(以下「特定要件」という。)に該当すること
② 特定要件に該当するかどうかの判定の基礎となった他の者及び当該他の者と一定の特殊な関係にある法人のうちいずれかの者(以下「判定対象者」という。)について、当該新規設立法人の当該事業年度の基準期間に相当する期間(以下「基準期間相当期間」という。)において、国内における課税売上高が5億円を超えていること
 つまり、資本金1,000万円未満である新たに設立された法人であっても、課税売上高5億円超の事業者が単独又はグループで支配する特定新規設立法人については、設立当初の2年間について、事業者免税点制度を適用しないこととされている。
(2)改正の内容
 上記②の要件に加えて、判定対象者の基準期間相当期間の全世界における総収入金額(売上金額、収入金額その他の収益の額)の合計額が50億円を超えていることが要件とされ(消法12の3①、消令25の4②)、この改正によって、新規設立法人を支配する法人の国外分を含めた総収入金額(注)が50億円超の法人等が設立した場合も、本特例の対象とされた。
(注)総収入金額には、損益計算書上の売上高以外にも、営業外収益、特別利益といった全ての収益の額が含まれる。なお、国若しくは地方公共団体が一般会計に係る業務として行う事業又は外国若しくは外国の地方公共団体が行う事業におけるものは、この総収入金額による判定の対象外とされている。
(3)適用関係
 上記の改正は、令和6年10月1日以後に開始する事業年度から適用され、同日前に開始した事業年度については、なお従前の例によることとされている(改正法附則1三ロ、13③)。

4 簡易課税制度等の見直し
(1)改正前の制度の概要

 中小事業者の事務負担に配慮する観点から、その基準期間における課税売上高が5,000万円以下である事業者に対しては、選択により、売上げに係る消費税額を基礎として、その事業の種類の区分に応じた一定のみなし仕入率を乗じることで、仕入れに係る消費税額を算出することができる「簡易課税制度」が設けられている(消法37)。
 また、令和5年10月1日の適格請求書等保存方式(インボイス制度)の施行に伴い、これまで免税事業者であった小規模事業者がその施行を契機に課税事業者となる場合の価格転嫁の困難さや事務負担を一定期間にわたって緩和する等の観点から、免税事業者が適格請求書発行事業者の登録を受けて課税事業者となった場合に、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間について、その納税額を売上税額の2割とすることができる経過措置(以下「2割特例」という。)が設けられている(所得税法等の一部を改正する法律(平成28年法律第15号。以下「28年改正法」という。)附則51の2)。
(2)改正の内容
 国外事業者については、日本で事業を開始する時点では基準期間における課税売上高が存在しないため、事業者の規模によらず簡易課税制度を適用することが可能だが、国内に拠点がない国外事業者については、そもそも国内における課税仕入れ等が一般的に想定されないため、事業区分毎に仕入率を一定とみなして仕入税額控除を行うことは適切ではないと考えられる。
 そのため、今般の改正では、その課税期間の初日において恒久的施設(所得税法第2条第1項第8号の4又は法人税法第2条第12号の19に規定する恒久的施設をいう。以下同じ。)を有しない国外事業者は、簡易課税制度の適用を受けられないこととされた(消法37①)。
 また、2割特例は簡易課税制度と同様の方法により仕入控除税額のみなし計算をする措置であるため、簡易課税制度の適用が制限される者(課税期間の初日において恒久的施設を有しない国外事業者)については、2割特例の適用も受けられないこととされた(28年改正法附則51の2①)。
(3)適用関係
 上記の改正は、令和6年10月1日以後に開始する課税期間から適用され、同日前に開始した課税期間については、なお従前の例によることとされている(改正法附則1三ロリ、13⑩、63)。

5 適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れに係る税額控除に関する経過措置の見直し
(1)改正前の制度の概要

 令和5年10月1日に仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式(インボイス制度)が施行された。適格請求書等保存方式の下では、適格請求書発行事業者以外の者から行う課税仕入れについては、原則として仕入税額控除制度の適用が認められないこととされている。そのため、適格請求書等を交付することができない免税事業者等との取引への影響を緩和し、適格請求書等保存方式を円滑に実施する観点から、免税事業者等から行う課税仕入れであっても、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの間は仕入れに係る消費税額相当額の80%、令和8年10月1日から令和11年9月30日までの間は50%の控除を認める経過措置が設けられている(28年改正法附則52、53)。
(2)改正の内容
 本経過措置は、上記のとおり適格請求書等保存方式の施行に伴い免税事業者等との取引への影響を緩和するための措置であり、一般的に免税事業者等との間で想定される取引規模をはるかに超える規模の取引が関係会社(免税事業者)等との間で行われ、本経過措置による仕入税額控除が行われるとすれば、それは制度の予定するところではない。そのため、こうした免税事業者との間では想定され難い規模の取引については、本経過措置の適用を制限することとされた。具体的には、免税事業者等である一人又は一社からの課税仕入れの合計額(税込価額)が個人事業者のその年又は法人のその事業年度で10億円を超える場合、その超えた部分の課税仕入れについては、本経過措置の適用を受けることができないこととされた(28年改正法附則52、53)。
(3)適用関係
 上記の改正は、令和6年10月1日以後に開始する課税期間から適用され、同日前に開始した課税期間については、なお従前の例によることとされている(改正法附則1三リ、63)。

三 金地金等の仕入れ等を行った場合の納税義務の免除の特例

1 改正前の制度の概要
 消費税においては、事業者免税点制度及び簡易課税制度の恣意的な制度選択を通じた租税回避的な行為を防ぐため、事業者が事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用を受けない課税期間中に、高額特定資産(注)の課税仕入れ又は高額特定資産に該当する課税貨物の保税地域からの引取りを行った場合には、当該高額特定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の翌課税期間から当該高額特定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間においては、事業者免税点制度を適用できないこととされている(消法12の4)。
 また同様に、高額特定資産の仕入れ等を行った場合には、当該高額特定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の初日から、同日以後3年を経過する日の属する課税期間の初日の前日までの期間について、簡易課税制度選択届出書の提出が制限され、事業者が当該高額特定資産の仕入れ等を行った課税期間中に既に簡易課税制度選択届出書を税務署長に提出しているときは、その届出書の提出はなかったものとみなすこととされている(消法37③④)。
(注)「高額特定資産」とは、棚卸資産又は調整対象固定資産であって、当該資産の課税仕入れに係る支払対価の額の110分の100(軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合には、108分の100)に相当する金額、当該資産に係る特定課税仕入れに係る支払対価の額又は保税地域から引き取られる当該資産の課税標準である金額、すなわち税抜価額が、一の取引の単位(通常一組又は一式をもって取引の単位とされるものにあっては、一組又は一式)につき、1,000万円以上のものをいう。

2 改正の内容
 高額特定資産は、一の取引の単位の税抜金額で判定することとされているが、金地金等の取引による本特例の恣意的な潜脱を防止するため、その課税期間中の金地金等の仕入れ等の税抜きの合計額が200万円以上である場合について、高額特定資産を取得した場合と同じく、事業者免税点制度の適用及び簡易課税制度選択届出書の提出を制限する改正が次の(1)(2)のとおり行われた。本特例における「金地金等」とは次のとおりであり、金地金等の国内における課税仕入れ及び金地金等に該当する課税貨物の保税地域からの引取り(以下「金地金等の仕入れ等」という。)が、金額判定の対象となる。
・金又は白金の地金
・金貨又は白金貨
・金製品又は白金製品
 ただし、「金製品又は白金製品」については、この改正が高額特定資産に係る特例の恣意的な潜脱を防止するための措置であることに鑑み、金又は白金の重量当たりの単価に重量を乗じて得た価額により取引されるものに限るものとされているが、金製品又は白金製品の仕入れ等を行った事業者において、その製造する製品の原材料として使用されることが当該事業者の事業の実態などから明らかなものは除くこととされている。
(1)金地金等の仕入れ等を行った場合の事業者免税点制度の適用の見直し
 事業者が、事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用を受けない課税期間中に金地金等の仕入れ等を行った場合において、その税抜きの合計額が200万円以上であるときは、当該金地金等の仕入れ等を行った課税期間の翌課税期間から当該金地金等の仕入れ等を行った課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間においては、事業者免税点制度を適用できないこととされた(消法12の4③)。
(注)200万円の判定について、判定対象となる課税期間が1年に満たない場合には、当該課税期間の月数で除し、これに12を乗じて計算する。また、月数は、暦に従って計算し、1月に満たない端数があるときは、切り捨てる。
(2)金地金等の仕入れ等を行った場合の簡易課税制度の適用の見直し
 事業者が、事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用を受けない課税期間中に金地金等の仕入れ等を行った場合において、その税抜きの合計額が200万円以上であるときは、当該金地金等の仕入れ等を行った課税期間の初日から当該金地金等の仕入れ等を行った課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間の初日の前日までの期間について、簡易課税制度選択届出書の提出が制限されることとされた(消法37③五)。また、事業者が当該金地金等の仕入れ等を行った課税期間中に既に簡易課税制度選択届出書を税務署長に提出しているときは、その届出書の提出はなかったものとみなすこととされた(消法37④)。

3 適用関係
 上記の改正は、施行日(令和6年4月1日)以後に事業者が行う金地金等の課税仕入れ及び金地金等に該当する課税貨物の保税地域からの引取りについて適用される(改正法附則13④)。

四 新たな公益信託制度の創設に伴う見直し

1 改正前の制度の概要
 信託とは、委託者が信託行為により受託者に対して財産を移転し、受託者は委託者が設定した信託目的に従って受益者のためにその財産を管理又は処分その他の目的の達成のために必要な行為をする仕組みであるため、現実に信託財産を所有し、その運用等を行っている取引行為者である受託者にその行為が帰属することとなる。しかし、信託財産の運用等における納税義務者については、信託の態様に応じて法人税等の取扱いに合わせる等の観点から、消費税法においては、信託財産に係る資産の譲渡等及び課税仕入れ等の帰属について特別の定めが置かれている。
 そのうち、現在の公益信託(特定公益信託を除く。)に係る税制度は、消費税法の附則において平成19年度税制改正前の公益信託と同様の取扱いとなるよう規定を設け、当面の間の措置として、従前と同様の委託者課税とする取扱いを継続することとされた。具体的には、公益信託の委託者又はその相続人その他の一般承継人(以下「委託者等」という。)は、当該公益信託の信託財産に属する資産及び負債を有するものとみなし、かつ、当該信託財産に帰せられる収益及び費用は当該委託者等の収益及び費用とみなして、消費税法の規定を適用することとされている(消法附則19の2①)。また、公益信託は法人課税信託には該当しないものとされている(消法附則19の2②)。

2 改正の内容
 企業や国民が公益活動を展開していく手段として公益信託を広く活用できるようにするとの観点から、公益信託の引受けの許可及びこれに対する監督を主務官庁の裁量により行うこととしていた公益信託に関する制度を改め、公益信託の認可及びこれに対する監督を公益認定等委員会等の関与の下で内閣総理大臣又は都道府県知事が行う制度を創設する等の措置を講ずるための「公益信託に関する法律」が令和6年5月14日に衆議院において可決・成立し、同月22日に法律第30号として公布されている。
 これにより、新たな公益信託制度においては、公益信託の認可・監督の仕組みを公益法人制度と整合的にすることに加え、信託事務及び信託財産の範囲が実質的に拡充され、美術館の運営等の事業型の信託事務も行うことができるようになるとともに、受託者の範囲も拡大することとされた。
 これらに対する税制上の対応として、各税目において見直しが行われることとされており、消費税については、公益信託制度の見直しにより美術館の運営等の事業型の信託において、新たに課税の対象となる取引を行うことが想定されるようになったことを踏まえ、次の見直しが行われた。
(1)受託者課税への見直し
 公益信託に関する信託財産に係る資産の譲渡等及び課税仕入れ等の帰属について、委託者課税から受託者課税に見直すこと(特定公益信託については、引き続き受託者課税)とされた(消法14①ただし書)。
(2)申告単位の見直し
 公益信託の受託者は、各公益信託の信託資産等及び固有資産等ごとに、それぞれ別の者とみなして、消費税法の規定を適用するなど、現行の法人課税信託と同様の扱いとすることとされ、法人課税信託及び公益信託を合わせて「法人課税信託等」と定義した上で、消費税法第15条の各規定を適用することとされた(消法15①)。なお、これにより、受託者の固有資産等とは区別して公益信託単位で納税義務が生じることとなるが、課税事業者でない場合や、消費税の課税事業者であっても課税資産の譲渡等がなく、消費税の納税額が生じない場合には確定申告義務はない(消法9①、消法45①ただし書)。
(3)特定収入がある場合の仕入控除税額の調整措置の適用
 公益信託については、前述のとおり新たに消費税の課税の対象となる事業を行うことが想定され、また、消費税法別表第3に掲げる公益社団法人や公益財団法人と同様、恒常的に特定収入を受け入れることも想定されるため、特定収入がある場合の仕入控除税額の調整措置の対象に位置付けることとされた(消法60④)。

3 適用関係
 上記の改正は、公益信託に関する法律(令和6年法律30号)の施行の日以後に効力が生ずる公益信託(移行認可を受けた信託を含む。)について適用し、同日前に効力が生じた公益信託に関する法律による改正前の公益信託ニ関スル法律第1条に規定する公益信託(移行認可を受けたものを除く。)については、なお従前の例によることとされている(改正法附則1九ニ、13⑤)。
(注)公益信託に関する法律の施行の日は、法律の公布日(令和6年5月22日)から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日とされている(公益信託に関する法律附則1)。

五 その他の改正

1 免税購入物品に係る課税仕入れについての仕入税額控除の制限
(1)改正の背景

 輸出物品販売場を経営する事業者が、外国人旅行者等の免税購入対象者に対して、当該免税購入対象者がその出国の際に国外に持ち出す一定の物品を所定の手続により譲渡した場合には、その実質は輸出取引と変わることがないと考えられるため、輸出取引と同様に消費税が免除されている(以下「輸出物品販売場制度」という。)(消法8①)。
 輸出物品販売場制度は購入した物品を国外へ持ち出すことを前提とした仕組みであるため、免税購入物品について国内で横流しが行われる場合など、免税購入物品が持ち出されない場合には、免除された消費税額に相当する消費税を直ちに徴収(以下「即時徴収」という。)することとされている(消法8③⑤⑥)。また、事業者が国内において行う課税仕入れについては、課税仕入れの定義上、免税取引による仕入れは対象外とされている(消法2①十二)が、免税購入物品が横流しされた先において国内の他の事業者が仕入れる場面においては、(消費税法8条に基づく免税取引そのものではないため)その物品が免税品であるにもかかわらず、国内における課税仕入れとして、仕入税額控除制度の対象とされていた。
(2)改正の内容
 こうしたことから、令和6年度税制改正では、課税仕入れに係る資産が輸出物品販売場制度により消費税が免除されたものであることを、その課税仕入れを行う事業者が課税仕入れの時点で知っていた場合には、その仕入税額控除の適用を認めないこととされた(消法30⑫)。
 免税購入物品であることを課税仕入れの時点で知っていたという事実は、例えば、横流しを行った者と買取業者とのやり取りの履歴等の明白な事実により認定することが想定されるが、そのような明白な事実がない場合であっても、買取時の本人確認、買い受けた資産の数量及び頻度などの購入した物品の仕入れに係る事実関係を総合的に勘案し、認定することになると考えられる。
(3)適用関係
 上記の改正は、令和6年4月1日以後に国内において事業者が行う課税仕入れについて適用し、同日前に国内において事業者が行った課税仕入れについては、なお従前の例によることとされている(改正法附則1、13⑨)。

2 特例輸入者による特例申告の納期限延長担保に係る見直し
(1)改正前の制度の概要

 関税法においては、国際物流におけるセキュリティ確保と円滑化の両立を図り、我が国の国際競争力を確保することを目的とした、貨物のセキュリティ管理と法令順守(コンプライアンス)の体制が整備された事業者に対する税関手続の緩和・簡素化策を提供する制度(AEO制度)が設けられている。この貨物のセキュリティ管理とコンプライアンスの体制が整備された者として、あらかじめいずれかの税関長の承認を受けた輸入者等は、輸入の許可を受けた貨物について、納税申告を後日まとめて行う特例申告が可能とされている(関税法7の2)。また、特例申告は、特例輸入者(あらかじめ税関長から承認を受けた者)又は特例委託輸入者(あらかじめ税関長の認定を受けた者(認定通関業者)に貨物の輸入に係る通関手続を委託した者)が行うことができることとされているが、これらの者が提出期限内に特例申告書を提出した場合において、当該期限までに当該特例申告に係る関税の納期限の延長を受けたい旨の申請書(以下「納期限延長申請書」という。)を税関長に提出し、当該申告書に記載された関税額の全部又は一部に相当する額の担保を提供したときは、当該税関長は、当該関税額が当該担保の額を超えない範囲内で、2月以内に限り納期限を延長することができることとされている(旧関税法9の2③)。
 課税貨物に関する消費税の申告・納付については、関税と併せて行うこととされているため、消費税の申告についても後日まとめて行うことができることとされている(消法47③)ほか、これにあわせて、特例申告書をその提出期限内に税関長に提出した場合において、その納期限内に納期限延長申請書を当該税関長に提出し、当該申告書に記載された消費税額の全部又は一部に相当する担保を提供したときは、関税の扱いと同様に、当該税関長は2月以内に限り、当該担保の額に相当する消費税の納期限を延長することができることとされている(旧消法51③)。
(2)改正の内容
 令和6年度の関税法の改正において、輸入コストの低減を図りAEO制度の利用を拡大させることを目的として、特例輸入者が特例申告に係る関税の納期限延長の申請を行う際に必要とされていた担保の提供について、税関長が関税の保全のために必要があると認める場合にのみ命ずることができることとされたことに伴い(関税法9の2③)、消費税においても同様に、税関長が消費税の保全のために必要があると認める場合にのみ担保の提供を命ずることができることとされ(消法51③)、その納期限の延長を申請する場合の担保の提供については、原則不要とされた。
(参考1)特例委託輸入者については、特例輸入者とは異なり、業務遂行能力等について税関の審査を経ておらず、あくまで認定通関業者に通関手続を委託した一般の輸入者であることから、今般の関税法の改正において納期限延長に係る担保要件の見直しの対象とされなかったことを踏まえ、消費税においても見直しの対象とはされていない。
(参考2)酒税、たばこ税、揮発油税又は石油石炭税についても、上記と同様の措置が取られている(酒法30の6③、た法22③、揮法13③、石石法18③)。
(3)適用関係
 上記の改正は、令和6年10月1日以後に特例輸入者が特例申告書に記載した消費税額の納期限に関し延長を受けたい旨の申請書を提出する場合について適用することとされている(改正法附則1三ロ、13)。

3 更正の請求に基づく消費税受還付犯の罰則の見直し
(1)改正前の制度の概要

 消費税は、「売上税額」から「仕入税額」を差し引いて税額を計算する税であり、「売上税額」が「仕入税額」を上回る場合には、その差額について納付する義務が生じることとなる。この納付すべき税額がある場合に、偽りその他不正の行為により消費税を免れた者については、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金に処し、又は、これを併科することとされている(ほ脱犯:消法64①一)。
 また、「仕入税額」が「売上税額」を上回る場合には、その差額について申告により還付を受けることができるが、偽りその他不正の行為により消費税の還付を受けた者についても同様に、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金に処し、又は、これを併科することとされている(受還付犯:消法64①二)。なお、受還付犯については、虚偽の還付申告に基づく不正還付の未然防止の観点から、特に、その未遂犯についても罰することとされている(消法64②)。
 この受還付犯の対象は、確定申告書を提出することにより控除対象仕入税額の控除不足額の還付(消法52①)又は中間納付額の控除不足額の還付(消法53①)を受けた者に限定されている。
(2)改正の内容
 消費税法上、確定申告書ではなく虚偽の更正の請求書を提出することにより消費税の還付を受けた者は、消費税法上の受還付犯には該当しなかったところ、虚偽の更正の請求に基づく更正による不正受還付は、確定申告書の提出による不正行為(受還付)との間に実質的な違いはないことから、虚偽の更正の請求に基づく受還付犯について、消費税の罰則の対象に追加することとされた。
 具体的には、受還付犯の対象に、偽りその他不正の行為により、更正の請求に基づく更正により還付を受けた場合を追加することとされた(消法64①二)。また、受還付未遂犯の対象についても、更正の請求書の提出に基づく場合を追加することとされた。
(3)適用関係
 上記改正は、改正法の公布の日(令和6年3月30日)から起算して10日を経過した日(令和6年4月9日)から適用されている(改正法附則1一)。

4 外国公館等に対する課税資産の譲渡等に係る免税制度の電子化
(1)改正前の制度の概要

 国税庁長官の指定を受けた事業者が、本邦にある外国の大使館、公使館、領事館その他これらに類する機関(大使館等)又は本邦に派遣された外国の大使、公使、領事その他これらに準ずる者(大使等)に対し、課税資産の譲渡等を行った場合において、当該大使館等又は大使等(以下「外国公館等」という。)が、外交、領事その他の任務を遂行するために必要なものとして、外務省の発行する証明書を提示し、かつ、資産又は役務の内容等を記載した書類(以下「免税購入表」という。)を提出して課税資産の譲渡等を受ける場合には、当該課税資産の譲渡等については、消費税が免除される(措法86①、措令45の4①、措規36の2①②)。
 なお、この免税措置の適用を受ける事業者(以下「免税指定店舗」という。)は、外国公館等が提出した免税購入表を整理し、これを確定申告期限後7年間、納税地又は当該課税資産の譲渡等に係る事務所等に保存することとされている(措法86②、措令45の4②)。
(2)改正の内容
 外国公館等による所定の証明書の提示については、外務省が整備及び管理をする情報システムによる当該証明書に係る情報の提供をもって代えることができることとされ、外国公館等による免税購入表の提出については、当該免税購入表に記載すべき事項に係る電磁的記録の提供をもって代えることができることとされた(措令45の4②)。これにより、外国公館等は、外務省の提供するスマートフォン用アプリを用いて、必要な情報が記録された二次元コードを提示することで、その情報が提供できることとなる。
 また、免税指定店舗が免税措置の適用を受ける適用要件として保存する書類に当該書類に記載すべき事項に係る電磁的記録を含むものとされた(措法86②、措令45の4③)。なお、免税指定店舗が保存する電磁的記録の保存方法については、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則(平成10年大蔵省令第43号)第4条第1項各号に掲げる措置のいずれかを行い、同項に規定する要件に準ずる要件に従って保存することとされ(措規36の2③)、その電磁的記録を出力することにより作成した書面による保存も認められている(措規36の2④)。
(3)適用関係
 上記の改正は、令和6年4月1日から施行されている(改正法附則1)。
(注)令和6年7月1日現在、外務省においてシステムを開発中であり、今後詳細が公表される予定。

個別間接税関係

一 酒税関係の改正

1 次世代システムの導入に伴う酒類業組合等に係る申請書等の様式の整備
(1)改正前の制度の概要

 酒類製造業者や酒類販売業者は、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律に基づき、酒税の保全に協力し、共同の利益を増進するため、酒類業組合を組織することができることとされている。
 酒類業組合は、例えば設立する場合の財務大臣への設立認可の申請など、各種手続を行うことが法令で求められており、これらの手続に伴い提出する書類については、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律施行規則(以下「酒類業組合法施行規則」という。)において、その様式が定められている(酒類業組合規18、別紙様式第1~第16)。
(2)改正の背景及び改正の内容
 国税庁においては、令和8年度から新たな基幹システム(次世代システム)の導入を予定しており、書面で収受した届出書等については、原則としてスキャナを使用してデータ化・イメージ化等を行い、システム内で事務処理を行うことを予定している。これに伴い、各種様式について、スキャナの読取精度の向上等を図るための対応が必要となる。
 このため、酒類業組合法施行規則において様式が定められた国税庁長官等への提出書類については、二次元コードや識別用の数字記号を加える等の改定を行うことができるようにすることとされ、具体的には、酒類業組合法施行規則別紙様式第1から別紙様式第11の4まで及び別紙様式第11の7から別紙様式第16までの各様式について、国税庁長官は必要があるときに、所要の事項を付記すること又は一部の事項を削ることができることとされた(酒類業組合規17)。
(3)適用関係
 上記の改正は令和8年9月1日から施行される(改正酒類業組合規附則)。

二 たばこ税関係の改正

1 入国者が輸入する紙巻たばこのたばこ税の税率の特例措置の延長
(1)改正前の制度の概要

 保税地域から引き取られる製造たばこのうち、令和6年3月31日までに、本邦に入国する者がその入国の際に携帯して輸入し、又は別送して輸入する紙巻たばこ(免税となる数量を超えて商業量に達するまでの数量のものに限られる。)に係るたばこ税の税率は、1,000本につき14,500円とされている(旧措法88の2)。また、たばこ特別税についての入国者が携帯又は別送して輸入する紙巻たばこに係る特例税率は、1,000本につき500円とされている(財源確保法8②)。したがって、入国者が携帯又は別送して輸入する紙巻たばこのうち、免税となる数量を超えて商業量に達するまでの数量のものに係る税率については、たばこ税及びたばこ特別税を合わせて、1,000本につき15,000円となっている。
 なお、入国者が携帯又は別送して輸入する紙巻たばこについては、地方のたばこ税は課されず、また、入国者が携帯又は別送して輸入する紙巻たばこのうち、本特例の適用を受ける紙巻たばこについては、租税特別措置法の規定により消費税が課されないこととされている(措法86の3)。
(2)改正の内容
 令和6年3月31日に期限が到来する本特例の適用期限については、令和6年度税制改正においても、紙巻たばこに係る関税を無税とする関税暫定措置法の暫定税率の適用期限が1年延長されることに併せて、令和7年3月31日まで1年延長することとされた(措法88の2①)。
(3)適用関係
 上記の改正は令和6年4月1日から施行されている(改正法附則1)。

2 試験検査用の製造たばこに係る未納税引取制度の整備
(1)改正前の制度の概要

 たばこ税は、原則として、製造たばこがその製造場から移出され、又は保税地域から引き取られる時に課税されるが、保税地域から引き取られる製造たばこについては、例えば、製造たばこ製造者が製造たばこの原料とするための製造たばこを、その原料とする製造たばこの製造場又は蔵置場に引き取ろうとする場合などの一定の場合には、保税地域からの引取り後もすぐには消費のための流通過程に入らないものと認められることや、その後の製造たばこの製造場からの移出の際にたばこ税を課する機会があることを踏まえ、事前に税関長の承認を受けた場合には、保税地域から引き取る時点のたばこ税を免除する未納税引取制度が設けられている(た法13)。
(2)改正の内容
 試験検査を行うことを目的として製造たばこを輸入する場合については、これまで未納税引取制度の対象とされていないが、当該製造たばこは喫煙用等として消費される訳ではなく、国内で直ちに課税される性格のものではないこと、また国内の製造場で試験検査を行うことを目的として輸入する製造たばこの数量が増加している実態を踏まえ、試験検査の用に供される製造たばこであって、製造たばこ製造者が自己の製造たばこの製造場に引き取るものについては、未納税引取制度の対象とすることとされた(た法13、た規5)。
(3)適用関係
 上記の改正は令和6年4月1日から施行されている(改正た規附則①)。

三 揮発油税及び地方揮発油税関係の改正

1 沖縄の揮発油に係る揮発油税及び地方揮発油税の軽減措置の延長
(1)改正前の制度の概要

 昭和55年5月15日から令和6年5月14日までの間における揮発油税及び地方揮発油税の税率は、本土における両税の合計額(1kl当たり53,800円)に538分の468を乗じて計算した金額(1kl当たり46,800円)とすることとされていた(旧沖特令74)。
(2)改正の内容
 本措置については、原油価格の動向や燃料油価格高騰に対する激変緩和対策事業が実施されている状況にあることなどを踏まえ、その適用期限を延長することとされた。延長期間は、令和8年度末までに沖縄振興特別措置法に基づく沖縄振興計画の見直しの検討が行われることを踏まえ、3年とし、令和9年5月14日までの措置とすることとされた(沖特法80①三、沖特令74)。

四 石油石炭税関係の改正

1 輸入沖縄発電用特定石炭等に係る石油石炭税の免税措置の延長
(1)改正前の制度の概要

 沖縄発電用特定石炭等(電気事業法による発電事業者が沖縄県の区域内にある事業場において発電の用に供する液化天然ガス又は石炭をいう。)を保税地域から引き取ろうとする者が、その保税地域の所在地の所轄税関長の承認を受けて、その沖縄発電用特定石炭等を引き取るときは、その引取りに係る石油石炭税を免除することとされていた(旧措法90の4の3)。
(2)改正の内容
 本措置については、電気料金の引下げ効果、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた国際的な情勢等を踏まえ、その適用期限を延長することとされた。延長期間は、令和8年度末までに沖縄振興特別措置法に基づく沖縄振興計画の見直しの検討が行われることを踏まえ、3年とし、令和9年3月31日までの措置とすることとされた(措法90の4の3、沖振法64)。

五 自動車重量税関係の改正

1 公共交通移動等円滑化基準に適合した乗合自動車等に係る自動車重量税の免税措置の延長・拡充
(1)改正前の制度の概要

 令和3年4月1日から令和6年3月31日までの間に新車に係る新規検査を受ける次の自動車について、その納付すべき自動車重量税を免除することとされていた(旧措法90の13、旧措規40の6)。
① 一般乗合旅客自動車運送事業を経営する者が路線定期運行の用に供する自動車又は一般貸切旅客自動車運送事業を経営する者がその事業の用に供する自動車のうち、次に掲げるもの
 イ ノンステップバス(自動車検査証においてその自動車がノンステップバスであることが明らかにされている自動車に限る。)
 ロ リフト付きバス(自動車検査証においてその自動車がリフト付きバスであることが明らかにされている自動車に限る。)
② 一般乗用旅客自動車運送事業を経営する者がその事業の用に供するユニバーサルデザインタクシー(自動車検査証においてその自動車がユニバーサルデザインタクシーであることが明らかにされている自動車に限る。)
(2)改正の内容
 本措置については、基本方針において定められている目標の期限が令和7年度末までであること、引き続き公的な支援を通じたバリアフリー車両の適切な導入インセンティブを確保する必要があること等を踏まえ、その適用期限を2年延長し、令和8年3月31日までの措置とすることとされた(措法90の13)。
 また、ユニバーサルデザインタクシーについては、国土交通省において、ユニバーサルデザインタクシーとして満たすべき車両の標準仕様を定めた「標準仕様ユニバーサルデザインタクシー認定要領」(平成24年3月28日国自旅第192号。以下「認定要領」という。)の改正が行われた。これにより、認定要領に定められている標準仕様に係る認定のレベル(レベル1及びレベル2)に、従来のものより緩やかな認定基準を定めた「レベル準1」が新たに加えられることとなった(令和6年4月1日適用)。これに伴い、レベル準1の基準を満たすものとして認定を受けたユニバーサルデザインタクシーについても、本措置の適用対象とされた(措法90の13二、措規40の6③)。

六 印紙税関係の改正

1 新しい公益信託制度における公益信託に係る信託行為に関する契約書の非課税措置
(1)改正前の制度の概要

 印紙税の課税物件を定めた印紙税法別表第1では、第12号文書として信託行為に関する契約書を掲げ、1通につき200円の印紙税が課されており、公益信託ニ関スル法律(大正11年法律第62号。以下「旧公益信託法」という。)の規定に基づき、信託法(平成18年法律第108号)第3条第1号に掲げる方法により締結された公益信託に係る信託行為に関する契約書は、印紙税法別表第1第12号文書に該当する課税文書として取り扱われている。
(2)改正の内容
 公益信託に関する法律(令和6年法律第30号。以下「新公益信託法」という。)による改正後の公益信託(以下「新公益信託」という。)については、従来の主務官庁による許可・監督ではなく、公益法人と共通の枠組みで一元的に行政庁による認可・監督が行われることとされたため、新公益信託の認可について、公益法人の認定と同様の申請の手続が必要となった。
 印紙税法上、一般社団法人等の定款は印紙税の課税対象外とされているが、その定款と新公益信託に係る信託行為に関する契約書は、それぞれ、一般社団法人等と新公益信託の目的や事業内容等が記載され、ほぼ同等の機能を果たしていると言えることから、新公益信託に係る信託行為に関する契約書についても、一般社団法人等の定款と同様に印紙税を課さないことが妥当だと考えられる。
 ただし、新公益信託は行政庁の認可を受けて初めて公益信託としての効力が生じることとされており(新公益信託法6)、認可前に作成した信託行為に関する契約書は公益信託に係るものではないことから非課税の範囲から除外することとされた。
 新公益信託法における行政庁の認可は、①新公益信託法第6条(原則的な認可)と②新公益信託法第22条(公益信託の併合等の認可)の2種類が存在するが、②のうち分割に係る認可は既存の認可がそのまま継続することとなることから、①の認可及び②のうち併合に係る認可を受けた後に作成される公益信託の信託行為に関する契約書について、印紙税法別表第1第12号文書の非課税物件の欄に掲げることとし、当該契約書について非課税文書とすることとされた。

2 国立研究開発法人情報通信研究機構に対する税制上の措置の見直し
(1)改正前の制度の概要

 印紙税法別表第3の文書名の欄に掲げる文書で、同表の作成者の欄に掲げる者が作成したものについては、同法第5条第3号の規定に基づき非課税とされている。この印紙税法別表第3には様々な文書が掲名されているが、事業団その他の特殊法人でその作成する文書の一部を非課税とするものの一つとして、国立研究開発法人情報通信研究機構が作成した国立研究開発法人情報通信研究機構法(平成11年法律第162号。以下「情報通信研究機構法」という。)及び特定通信・放送開発事業実施円滑化法(平成2年法律第35号。以下「実施円滑化法」という。)に基づく一定の業務に関する文書が掲名されている。
(2)改正の内容
 情報通信研究機構については、今般の改正等により、その出資の金額の全部が国の所有に属している独立行政法人となったことを踏まえ、印紙税法上の位置付けを改めることとし、これまで掲名されていた印紙税法別表第3から削除し、新たに印紙税法別表第2の「独立行政法人」に含めることとされた。
(3)適用関係
 上記の改正は、令和6年4月1日以後に情報通信研究機構が作成する文書について適用し、同日前に情報通信研究機構が作成した情報通信研究機構法第14条第1項第1号から第8号までの業務及び実施円滑化法第6条第1項第1号の業務に関する文書に係る印紙税については、従前どおりとされている(改正法附則18)。

3 脱炭素成長型経済構造移行推進機構に対する税制上の措置
 関係省庁の要望や脱炭素成長型経済構造移行推進機構(以下「脱炭素推進機構」という。)が行う業務の性質を踏まえ、脱炭素推進機構が作成する脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律第54条第1項各号に掲げる業務に関する文書について、印紙税法別表第3に掲名することとし、非課税文書とすることとされた(印法別表第3)。

4 都市緑化支援機構に対する税制上の措置
 国土交通大臣の指定を受けた都市緑化支援機構(以下「支援機構」という。)が行う対象土地の買入れ及び譲渡は、本来、都道府県等が行うべきことが法律上明確にされており、都道府県等が対象土地の買入れ及び譲渡を行う際に作成する「不動産の譲渡に関する契約書」に係る印紙税については、印紙税法第5条第2号の規定に基づき、非課税とされている。そうした業務の性質に鑑み、支援機構が作成する古都保存法及び都市緑地法に基づく対象土地の買入れ及び譲渡に係る「不動産の譲渡に関する契約書」について、印紙税法別表第3に掲名することとし、非課税文書とすることとされた(印法別表第3)。

5 社会保険診療報酬支払基金が作成する非課税文書の見直し
(1)改正前の制度の概要
 
 印紙税法別表第3には、社会保険、年金、退職金共済等に関する文書を非課税とするものの一つとして、社会保険診療報酬支払基金(以下「支払基金」という。)が作成する高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)等に基づく一定の業務に関する文書が掲名されている。
(2)改正の内容 
 関係省庁の要望や、現行、非課税とされている支払基金の他の業務との関係を踏まえ、支払基金が作成する、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第96号)による改正後の感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第36条の25第1項各号に掲げる業務に関する文書を非課税文書とすることとされた(印法別表第3)。

6 不動産の譲渡に関する契約書等に係る印紙税の税率の特例措置の延長
(1)改正前の制度の概要等

 平成9年度税制改正において、他の税制上の諸措置(住宅取得促進税制の見直し、登録免許税の特例措置の拡充等)と相まって、住宅・土地取引等の活性化を図るとともに、景気対策にも資するとの観点から、2年間の措置として、住宅・土地取引等に伴って作成される「不動産の譲渡に関する契約書」及び「建設工事の請負に関する契約書」に係る印紙税の税率を軽減する措置が講じられた。平成11年度以降の税制改正においては、それぞれ2年間の延長措置が講じられた。
 平成25年度税制改正において、住宅・土地取引の現状や消費税率の段階的な引上げが予定されていること等に鑑み、本措置の適用期限を5年延長し平成30年3月31日までの措置とした上で、建設業における重層的な下請構造の下での印紙税の課税状況等を踏まえ、平成26年4月1日以後に作成する契約書については、軽減割合及び対象範囲を拡充することとされた。
 平成30年度税制改正、令和2年度税制改正及び令和4年度税制改正において、その適用期限がそれぞれ2年延長され、令和6年3月31日までの措置とされた(旧措法91)。
(2)改正の内容
 本措置については、住宅・土地取引の現状等を踏まえ、その適用期限を3年延長し、令和9年3月31日までの措置とすることとされた(措法91)。

7 新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置によりその経営に影響を受けた事業者に対して行う特別貸付けに係る消費貸借契約書の印紙税の非課税措置の延長
(1)改正前の制度の概要

 公的貸付機関等又は金融機関が特定事業者(新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置によりその経営に影響を受けた事業者をいう。以下同じ。)に対して新型コロナウイルス感染症等によりその経営に影響を受けたことを条件として他の金銭の貸付けの条件に比し特別に有利な条件で行う特別貸付けに係る消費貸借契約書のうち、特定日として規定された令和3年1月31日までに作成されるものについては、印紙税を課さないこととされた。
 令和3年1月31日の適用期限の到来に際しては、新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置によりその経営に影響を受ける事業者が多くあり、これを受け、多くの公的貸付機関等及び金融機関が引き続き特定事業者に対する特別貸付制度を存置していることを踏まえ、令和3年度改正において、その適用期限が延長され、令和4年3月31日までの措置とされた。
 令和4年度改正及び令和5年度改正において、その適用期限がそれぞれ1年延長され、令和6年3月31日までの措置とされた(新型コロナ税特法11、旧新型コロナ税特令8、新型コロナ税特規6)。
(2)改正の内容
 本措置については、新型コロナウイルス感染症の影響の長期化を踏まえ、公的貸付機関等による新型コロナ特別貸付等が令和6年4月以降も継続されることに鑑み、その適用期限を1年延長し、令和7年3月31日までの措置とすることとされた(新型コロナ税特令8③)。

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