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税務ニュース2024年08月09日 コロナ禍を経た税務調査の現在地(2024年8月12日号・№1039) 税務調査経験が減少、狙われる売上請求書、不動産等の使用料の支払調書

  • コロナ禍による調査件数の減少により、税務署の職員の調査経験も減少。
  • 最近の実地調査では、期間損益に重点が置かれている模様。調査経験が少ない職員には、売上請求書や不動産等の使用料の支払調書を確認するよう指導も。

 約3年間に及んだコロナ禍は、税務署の職員から「調査経験」を大幅に奪うことになった。税務署の調査部門の半数ほどは「調査経験3年未満」の職員が占める。調査3年目の職員でさえ、コロナ禍の影響で年間計画件数の1/3も実地調査に着手していない状況となっている。
 調査官は実地調査の経験を積んで一人前に成長していくが、コロナ禍の影響で調査対象法人に臨場しても、総勘定元帳をはじめとする主要な帳簿等を留置して税務署に持ち帰り帳票類の突合に終始し、調査法人での質問、ましてや更問もおぼつかない状況も見受けられるようだ。
 最近の実地調査の傾向を税理士に取材すると、期間損益に重点を置いた調査が行われているとの声が多く聞かれる。売上の繰延べや棚卸資産の計上漏れの確認に調査の大部分の時間が費やされ、時間があれば他科目や交際費について検討するというのが典型的なパターンとなっているようだ。そこには、調査法人の不正計算や、不正計算とまでは言わないまでも根本的な問題となる科目を探そうという意図は見えないが、調査官に同行し、調査官を指導する立場にある統括官や上席(以下、統括官等)も事案を是認で終わらせるわけにはいかないため、指導に十分な時間を割けない状況も想定される。調査経験豊富な統括官等であればある程度の指導はできるものと思われるが、調査経験年数が少ない又は調査部門に数年間配属されていない統括官等となると、調査官への指導は容易ではないだろう。
 税務調査に立ち会った税理士への取材によると、調査官は売上の繰延べに固執して半日間を費やしたものの、利益がほとんどない取引であり、また、法人が棚卸資産に計上していたため、わずか数万円の問題でしかなかったケースもあったという。さらに、期末に計上した仕入原価から棚卸資産に計上すべきと考え、調査法人の実地棚卸表を調べたところ計上がない点を法人に指摘したものの、売上に計上されていることが判明したとのことだ。
 もっとも、期間損益を検討すること自体は間違いではなく、実際、1枚の売上請求書から多額の問題点が把握される事案もある。例えばX年3月期に対する実地調査では、売上請求書がX年3月に発行されたものの、実地調査日であるX年8月末になっても売上に対する入金がないことから、調査担当者が調査法人に対して支払日を得意先に確認するように依頼した。調査法人からは、得意先の不都合で支払いが遅れているとの説明があったが、翌日に調査官が得意先への反面調査を実施する旨を伝えたところ、時間的猶予を求められた。その翌日に顧問税理士が税務署に来署し、代表者実名の個人預金に当該売上の入金が記載された通帳を持参。顧問税理士からは、一部の取引先の売上を除外するため、代表者の実名個人預金に代表者の妻が手形等を決済して入金している旨の説明があった。調査官がそれ以外の預金についても顧問税理士に確認したところ、他の金融機関の代表者の実名個人預金通帳の提示があり、売上除外の全貌が把握された。このような事例では、資金使途の解明も重要になる。この点を解明することで新たな不正の手口や不正の根幹が把握されるケースが多いからだ。
 また、数多くの法定調書の提出が義務付けられている中、多額の売上除外や架空原価に直接結び付くような法定調書は多くはないが、「不動産等の使用料の支払調書」から、個人事業として得ている賃貸料収入が一棟丸ごと分除外されていることが把握された事案もある。「不動産の使用料等の支払調書」を提出しなければならない者は、法人や不動産業者である個人であり、同一人に対する駐車場や事務所、住宅の賃貸料の支払いが年間15万円を超えると、同支払調書の提出が必要になる。住居用賃貸物件の家主である個人は、大部分の物件を個人の居住用として契約していたが、一件だけ、法人契約の物件があった。当該法人はこの家主から住居用賃貸物件を借り上げ、役員等に社宅として貸し出しており、社宅として契約していた半年間で支払った42万円(毎月の家賃の支払い額7万円×6か月)に係る支払調書を提出した。この支払調書の存在が家主への税務調査(法人契約終了から2年後)の際に発覚し、他にも住居用賃貸物件に係る契約がないか調査したところ、家主は2棟の住居用賃貸物件を所有し、個人の居住用として貸し出し得た家賃を収入から除外していたかったことが判明した。2棟のうち1棟については丸ごと賃貸料収入が除外されており、結果として多額の追徴税額が課されることとなった。
 上記は、売上に関する一枚の請求書と一件の法人との家賃契約という、いずれも日常的に行われる取引に係るものであるが、特に調査経験年数が少ない職員に対しては、上司から必ず確認するよう指導がなされる。コロナ禍を経て調査経験年数の少ない職員が増えている今、調査で狙われやすいポイントとなっているので注意したい。

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