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解説記事2024年10月07日 SCOPE 東京地裁、PGM事案に132条の2の適用認めず(2024年10月7日号・№1046)

TPR判決を根拠とした裁決と異なる見解示す
東京地裁、PGM事案に132条の2の適用認めず


 ゴルフ場運営会社大手PGMのグループ会社であるPGMプロパティーズが法人税法132条の2の適用を受け、被合併法人からの繰越欠損金の引継ぎが認められなかった事案については、国税不服審判所が納税者の請求を棄却していたが(本誌883号)、東京地裁は令和6年9月27日、更正処分を取り消す判決を下した。
 審判所は、TPR事件判決を根拠に、完全支配関係法人間の適格合併にも事業継続要件が必要との考えを示したが、東京地裁民事3部(篠田賢治裁判長)は、完全支配関係適格合併の場合において、「合併による事業の移転及び合併後の事業の継続」が法人税法57条2項等の適用の「前提」となっているなどとは解することはできないとし、本件合併に係る一連の行為は法人税法132条の2にいう不当性要件に該当しないとの判断を示した。

完全支配関係適格合併に事業継続要件は必要とされておらず

 事案の概要はのとおり。原告の親会社であるPGPは、①平成21年に大手商社から、ゴルフ場運営会社PGPAH6の全株式を取得。②PGPはPGPAH6からゴルフ場事業(Good事業)だけを分社型分割で切り出し、新設子会社に承継させ、その対価として当該新設子会社の株式(本件株式)を取得した。PGPAH6(ゴルフ場事業以外のBad事業)は、簿外債務の管理や債権者対応等のために存続することとなった。その後、③PGPAH6は、グループ会社に本件株式を譲渡したが、多額の株式譲渡損が発生し、約57億円の欠損金を抱えることとなった。

 ④平成29年、PGPAH6は、PGMP4に吸収合併され(本件合併1)、次いで⑤同日、PGMP4ほか3社のグループ会社が、原告に吸収合併された(本件合併2)。
 原告は、法人税法57条2項及び同法81条の9第2項2号の各規定(以下法人税法57条2項等)により、PGPAH6の本件合併1の直前における欠損金額約57億円を原告の連結欠損金額とみなして法人税等の確定申告をしたが、処分行政庁は法人税法132条の2を適用して、その引継ぎを認めず、更正処分等を行った。
税調小委員会の見解を引用
 本事案の争点は、本件合併に係る一連の行為が法人税法132条の2にいう不当性要件に該当するか否かである。より具体的には、完全支配関係適格合併の場合にも、規定の文言にはない事業継続要件が必要とされるのかという点だ。
 東京地裁はまず、「租税法規はみだりに規定の文言を離れて解釈したり拡張適用したりすべきではない」と指摘。
 さらに、「組織再編税制の立法に当たっては、税制調査会法人課税小委員会の見解も踏まえた上で、完全支配関係があり対価要件を満たす法人間の合併の場合には、基本的に、合併の前後で経済実態に実質的な変更がなく、個別の資産の売買取引との区別も問題とならないことから、支配関係適格合併及び共同事業適格合併とは異なる、より緩和された適格合併の要件があえて定められ、従業員引継要件及び事業継続要件が必要とされなかったと解するのが相当」との考えを示した。
 その上で、完全支配関係適格合併の場合において、「合併による事業の移転及び合併後の事業の継続」が法人税法57条2項等の適用の「前提」となっているとか、「合併による事業の移転及び合併後の事業の継続」がない完全支配関係適格合併に上記規定を適用することはその本来の趣旨及び目的に反するなどと解することはできないと結論づけた。
二段階の合併は一般的・合理的な手順
 また国は、原告がPGPAH6を直接吸収合併せず、二段階の合併にしたのは、あえてう遠な手順ないし方法を採ったものであると主張した。
 東京地裁は、PGPAH6及びPGMP4らの吸収合併がグループのビジネスモデルに基づくもので、合理的な理由となる事業目的が十分に存在するものであるとし、また、本件各合併に当たり、本件合併1と本件合併2との二段階で行ったことが通常は想定されない、又はう遠な手順や方法をあえて採るものではなく、一般に採られている合理的な手順・方法の一つであるとした。
 ただし、PGMグループが本件各合併のスキームを採用するに当たり、本件未処理欠損金額の原告への引継ぎを重視したことは否定し難いとしたが、そもそも、株式会社が一定規模以上の取引をするに当たり、税務上の影響を全く考慮しないことは考え難く、そのような考慮をすることはむしろ当然との考えも示した。

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