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解説記事2025年02月03日 SCOPE 総則6項適用事案、地裁で国の敗訴続く(2025年2月3日号・№1061)

新株発行で相続税負担が直ちに減少とは言えず
総則6項適用事案、地裁で国の敗訴続く


 総則6項の適用を巡っては、令和4年4月19日最高裁判決により総則6項の適用と租税法における平等原則の関係についての考え方が示されたのは周知の通り。具体的には、総則6項の適用の可否については、「評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反すると言うべき事情」(特段の事情)があるかどうかが判断のポイントとされた。
 その後、本誌1041号では、同じく総則6項適用事案で国の敗訴が確定した東京高裁判決を報じたが、当該事案に続き、非上場株式の相続税評価を巡り争われた事案で、東京地裁民事38部(鎌野真敬裁判長)は令和7年1月17日、総則6項を適用して純資産価額方式を採用した課税処分を取り消す判決を下した。

相続税減少は純資産価額方式と併用方式が選択できることにも起因

 本件は、原告らが相続により取得したX社(小会社)株式の評価方法が争われた事案である。
 X社は、本件相続開始前に、臨時株主総会の決議により、本件被相続人への第三者割当てによる募集株式発行(本件新株発行)及び株主(被相続人の実子ら)への配当を行った(図表1参照)。それまで、X社の資産の約89.2%を投資有価証券が占めていたが、本件出資後、その割合は約26.1%となった。

 国は、X社が併用方式よりも評価額が高くなる「株式保有特定会社」(評基通189(2))に該当しないようにするために、原告らが本件新株発行等を行ったと主張。原告A氏及び本件被相続人が、本件新株発行等が原告らの相続税の負担を減じさせるものであることを知り、かつ、これを期待していたから、総則6項を適用すべき上記「特段の事情」があると主張していた。
相続税の負担を著しく軽減する行為と言えず
 東京地裁は、本件新株発行等をしなかった場合、課税価格の合計額は38億3,398万8,000円、相続税の総額は17億3,599万3,500円となり、これにいわゆる“2割加算”(相法18)した額が納付すべき相続税額の合計額となるとした。そうすると、本件新株発行等をしたことにより、課税価格の合計額は約45%、相続税の総額は約49%減少することとなるが、純資産価額方式を選択した場合はそれらの額は本件更正処分と同額となり、減少の程度は、約2~3%にとどまるとした。つまり、相続税の総額等の減少は、本件新株発行等をしたことにより直ちに生ずるものではなく、評価通達179(3)が、小会社の株式の価額の評価方法について、納税義務者による純資産価額方式と併用方式の選択を認めていることにも起因するものとの考えを示した。
 東京地裁は令和4年最判を踏まえ、本件株式の価額を評価通達の定める方法(併用方式)により評価した額と、本件各更正処分価額(純資産価額方式により評価した額)などとの間に大きなかい離があることをもって、評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情があるということはできないことはもとより、評価通達が、純資産価額方式と併用方式のそれぞれを合理的な評価方法とし、いずれによるかは専ら納税義務者の選択に委ねることとしている以上、仮に原告A氏及び本件被相続人が本件新株発行等をした時点で併用方式を選択することを予定していたとしても、そのことを上記の事情の有無の判断に当たり重視することは相当でないとの判断を下した。
 また、新株発行等を行っても、減少の割合は5割未満にとどまり、相続税の総額はなお相当高額であること、原告A氏及び本件被相続人の遺言や遺産分割協議の内容からも、2割加算がされる行為もしていることなども含めて、全体としてみれば、原告A氏及び被相続人の行為が、それにより、原告らの相続税の負担が著しく軽減されるものであると評価することまではできないとの考えも示した。
 結論として、本件株式の価額を評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることは、租税法上の一般原則としての平等原則に違反するといわざるを得ないとして、総則6項を適用した課税処分を取り消している。

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