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解説記事2025年02月10日 SCOPE 会社役員が個人で飲食業務も、営利性を認めず雑所得に(2025年2月10日号・№1062)

物的設備等はあるが収支改善に向けた計画なし
会社役員が個人で飲食業務も、営利性を認めず雑所得に


 不動産会社の取締役を務める請求人の個人で行う飲食業務等から生じた所得が事業所得に該当するか争われた裁決で、国税不服審判所は、飲食業務等は物的設備を有し、営業資金を自己資金で賄うなど自己の計算と危険による企画遂行性が認められるとしたが、収支改善に向けた具体的かつ現実的な計画などがなかったことからすれば、事業としての営利性や相当程度の期間安定した収益が得られる可能性があったとは認められないとし、飲食業務等から生じる所得は、事業所得には該当しないとの判断を示した(広裁(所)令5第12号)。

営利性や安定収入が得られる可能性はなし

 本件は、請求人が自身の営む飲食店等から生じた所得(損失)を事業所得として確定申告をしたところ、原処分庁が当該所得は雑所得に該当し、他の所得と損益通算できないとして更正処分等を行ったため、請求人が原処分の一部の取消しを求めたものである。
 請求人は、不動産会社の取締役を務め、不動産収入、配当収入及び給与収入を得るほか、個人として、飲食店(飲食業務)、茶道教室(教室業務)及び太陽光発電(発電業務)に係る業務を営んでいた。請求人は、飲食業務等の赤字は、開業時の多額の初期投資や、その後の新型コロナウイルス感染症の影響で実質休業状態であったことから生じたものであり、このような正常な社会経済活動ができない状況で、飲食業務等の継続性、反復性、相当程度の期間継続して安定した収益を得られる可能性及び営利性を判断するのは不合理であると主張した。
 審判所は、一定の経済的行為が「事業」(所法27条①)に該当するか否かは、経済的行為の営利性、有償性の有無、継続性、反復性の有無のほか、自己の計算と危険による企画遂行性の有無、経済的行為に費やした精神的、肉体的労力の程度、人的、物的設備の有無、経済的行為をなす資金の調達方法、その者の職業、経歴及び社会的地位、生活状況及び経済的活動をすることにより相当程度の期間安定した収益を得られる可能性が存するかどうかなどの諸般の事情を総合的に検討し、社会通念に照らして判断すべきものと解されるとした。
安定収入により請求人の生活に影響なし
 その上で審判所は、本件飲食業務等は、店舗建物又は茶室という物的設備を有するとともに、営業資金を自己資金で賄うなど飲食店や茶道教室を行う上で請求人による自己の計算と危険による企画遂行性が認められ、また、一応の有償性、継続性及び反復性も認められるとともに、請求人は一応の精神的・肉体的労力を費やしていたことがうかがわれるとしたが、収支改善に向けた具体的かつ現実的な計画やその実行もなかったことからすれば、事業としての営利性や相当程度の期間安定した収益が得られる可能性があったとは認められないと指摘(参照)。加えて、請求人は、自身が取締役を務める不動産会社からの不動産、配当及び給与収入を得ており、これらの安定した収入により飲食業務等に多額の損失が生じても、請求人の生活には影響がなかったという事情から判断すると、本件飲食業務等は、「事業」に該当しないとの判断を示した。
 したがって、飲食業務等から生じる所得は事業所得には該当せず、審判所は、雑所得に該当するとして請求人の請求を棄却した。

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