解説記事2025年04月07日 SCOPE 金融担当大臣が全上場企業に株主総会前の有報開示を要請(2025年4月7日号・№1069)
まずは総会の前日又は数日前の提出を
金融担当大臣が全上場企業に株主総会前の有報開示を要請
加藤勝信金融担当大臣は3月28日、すべての上場企業に対し、株主総会前に有価証券報告書を開示することを要請した。有価証券報告書の提出は、本来であれば総会の3週間以上前に行うことが最も望ましいとしたが、実務上の課題もあることから、まずは総会の前日又は数日前に提出することを求めた。現状、総会前に有価証券報告書を開示している上場企業は57社にすぎず、そのほとんどが総会当日又は翌日となっている。
金融庁では、2025年3月期以降の有価証券報告書の提出状況について実態把握を行うこととしており、有価証券報告書レビューの重点テーマ審査において総会前の提出を行わなかった場合の今後の予定等について調査を行うとしている。
有価証券報告書の開示は総会前3週間前が望ましい
令和6年6月21日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2024~賃上げと投資がけん引する成長型経済の実現~」(骨太方針2024)では、「有価証券報告書の株主総会前の開示に向けた環境整備等のコーポレートガバナンス改革の実質化等を推進する」旨が明記された。これを受け、金融庁は、令和6年12月に「有価証券報告書の定時株主総会前の開示に向けた環境整備に関する連絡協議会」を設置し、総会前開示に係る必要な環境整備について検討を行っており、今回の上場企業に対する加藤金融担当大臣の要請につながった。
日本は、有価証券報告書が総会後に開示される唯一の市場であり、企業と投資家の間の情報に基づいた対話の妨げになっているなどの指摘を踏まえ、連絡協議会では、有価証券報告書の開示時期は総会の3週間以上前(招集通知と同時期)が望ましいとした上で、その取組みの第一歩として、数日前であっても総会前開示を行うことを要請していくことが考えられるとの方策を提案した。現状でも総会の当日又は翌日には有価証券報告書を開示していることから(図表1参照)、数日前から1週間前であれば現状でも不可能ではないとの判断だ。

総会前開示の実現方法を提案
ただし、現行の実務では総会の3週間前の有価証券報告書の開示は困難だ。連絡会議では、現行の法令上可能な総会前開示の実現方法として4法を提案している(図表2参照)。例えば、③の方法は、コロナ禍においても行われた基準日をずらすことで総会を後ろ倒しにするものである。会社法上、株式会社の定時株主総会は、「毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない」と規定されているが(会社法296条1項)、事業年度の終了後3か月以内に定時株主総会を開催することが求められているわけではない。このため、基準日を期末日よりも後ろ倒しすることで総会の開催時期を遅らせ、3週間前に有価証券報告書を開示するというものである。ただ、この場合には、企業は新たに議決権行使のための基準日を定める必要があり、会社側に大きな事務負担が生じることになる。

いずれの方法を選択してもメリット・デメリットがあるため、金融庁では、総会前開示の取組みを進めるため、金融庁のウェブサイトに総会の2週間前以上に有価証券報告書の開示を予定する企業を掲載することで、企業のインセンティブ向上につなげるとしたほか、事後的に総会前開示を行った企業の公表も検討するとしている。
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