会計ニュース2025年05月09日 ASBJにのれんの償却見直しを要請へ(2025年5月12日号・№1073) 内閣府、のれんの償却費がスタートアップ企業のM&Aを阻害
現行の日本の会計基準では、のれんは20年以内に規則的償却を行うこととされており、減損の兆候がある場合のみ減損テストを行うこととされている。理由としては、のれんの経年での減価を財務諸表に適切に反映することができ、自己創設のれんの計上を回避することができるといったことなどが挙げられている。一方、IFRSでは、のれんの償却は行わず、毎期減損テストを行うのみとなっており、日本基準との残された大きな差異の1つとなっている。
こののれんの会計処理だが、のれん償却費は営業費用に区分されるため、特にスタートアップ企業においては、買収企業の収益を継続的に圧迫し、M&Aの阻害要因になっているとの指摘がある。また、他国の企業と買収先が競合した場合、のれんの償却負担を踏まえた価格設定をせざるを得ず、入札競争で競り負けるリスクが高いといった弊害などが指摘されている。現状の対応策としては、のれんの償却を回避するため、IFRSへ移行することが考えられるが、数億円の導入コストがかかるといった課題が指摘されている。また、東証が令和6年3月に決算短信作成要領等を改訂し、のれん償却前利益などの経営管理上重要視する指標を決算短信に記載することができるようになったが、まだ大きな成果を挙げていないのが現状だ。
このため、内閣府では、スタートアップ5か年計画の終期である2027年度に結論・措置が実施されることを念頭に、企業会計基準委員会(ASBJ)がのれんの非償却化を検討するよう、財務会計基準機構の企業会計基準諮問会議(会計基準の検討テーマなどを審議する機関)に新規テーマの有無を照会する。短期的な措置としては、のれんの償却費の計上科目を現状の営業費用ではなく、営業外費用に表示区分の変更を求める。経常利益や純利益には影響は残るものの、営業利益の見栄えが改善され、M&A実行時のハードルは下がることになる。また、中期的な措置としては、のれんの定期償却を見直し、非償却化することを求める。仮に難しい場合には、償却・非償却の選択適用を可能にするよう求める。選択適用については、利益操作の懸念があるものの、一定の要件を設けることで対応できるのではといった意見もある。
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