資料2025年05月12日 重要資料 消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A(抄)(2025年5月12日号・№1073)
(編注:国税庁が令和7年4月21日に更新したQ&Aのうち、追加したQ&Aを掲載)
重要資料
消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A(抄)
(地方公営企業法適用の特別会計に移行する際の適格請求書発行事業者の登録)
問14−2 上下水道の特別会計を有する地方公共団体ですが、この度、地方公営企業法適用の特別会計に移行することとなりました。移行前の特別会計で適格請求書発行事業者の登録申請を行い登録番号の付番を受けていましたが、移行に当たっては当該登録番号も移行されるのでしょうか。【令和7年4月追加】
【答】
適格請求書発行事業者の登録は、登録を受けようとする事業者ごとに行うものです。
地方公共団体の特別会計が、地方公営企業法の規定を適用する特別会計に移行する場合、通常、現在の特別会計(以下「旧特別会計」といいます。)は廃止され、新たな特別会計が設置されることとなります。
そのため、旧特別会計においては「事業廃止届出書」の提出が必要となり、それに伴い旧特別会計の登録番号は失効することとなりますので、移行後の新たな特別会計において改めて適格請求書発行事業者の登録申請を行い、登録番号の付番を受ける必要があります(消法57①三、消法57の2②、⑩)。
なお、新たに特別会計を設置した場合には、設置日以後に登録申請を行うこととなりますが、特別会計の設置日の属する課税期間の初日から登録を受けようとする旨を記載した登録申請書を、その課税期間の末日までに提出した場合、その課税期間の初日に登録を受けたものとみなされる特例が設けられています(消令70の4、消規26の4、基通1−4−7、1−4−8)。
ただし、登録申請書を提出してから、登録通知を受けるまでは一定の期間を要することから、早期に適格請求書等を交付するためには、設置日以後速やかに登録申請を行い、登録番号の通知を受ける必要があることにご留意ください。
(参考)課税期間の初日に登録を受けたものとみなされる特例に関する詳細は、問11《新たに設立された法人等の登録時期の特例》をご参照ください。
(注)登録日(課税期間の初日)から適格請求書等を交付する義務は生じますが、通知を受けるまでの間、適格請求書等を交付することはできませんので、例えば次のように対応することが考えられます。
・ 事前に適格請求書等の交付が遅れる旨を取引先に伝え、通知後に適格請求書等を交付する。
・ 取引先に対して、通知を受けるまでは、登録番号のない請求書等を交付し、通知後に改めて適格請求書等を交付し直す。
・ 取引先に対して、通知を受けるまでは、登録番号のない請求書等を交付し、その請求書等との関連性を明らかにした上で、適格請求書等に不足する登録番号を書類やメール等でお知らせする。
(適格請求書発行事業者における課税事業者届出書の提出)
問17−2 当社は、適格請求書発行事業者です。この度、基準期間における課税売上高が1,000万円を超えることとなりましたが、「消費税課税事業者届出書」の提出は必要でしょうか。【令和7年4月追加】
【答】
「消費税課税事業者届出書」(以下「課税事業者届出書」といいます。)は、課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円を超えることとなった場合等に提出することとされていますが、適格請求書発行事業者は、基準期間における課税売上高が1,000万円を超えるかどうか等にかかわらず、課税事業者となることから、ご質問のように、適格請求書発行事業者の登録を受けている課税期間(登録日の属する課税期間の翌課税期間以後の課税期間に限ります。)については、「課税選択届出書」の提出を行った場合と同様(注)に、「課税事業者届出書」を提出しなくて差し支えありません。
(注)「課税選択届出書」を提出している事業者においても、当該届出書を提出した日の属する課税期間の翌課税期間以後の課税期間については、その基準期間における課税売上高が1,000万円を超えるかどうかにかかわらず、課税事業者となることから、「課税事業者届出書」は提出しなくて差し支えないこととされています(基通17−1−1)。
(予約サイトで事前決済した宿泊予約者に対する適格簡易請求書の交付)
問49−3 当社は、ホテルを運営しています。予約サイトを通じて受けた予約について、予約サイト経由で決済が行われた場合、フロントでは現金の授受等が行われないことから、領収書の交付を行っていませんが、どのように適格簡易請求書を交付すればいいでしょうか。【令和7年4月追加】
【答】
適格請求書や適格簡易請求書は、その名称を問わず、記載事項を満たしたものであれば、必ずしも領収書や請求書である必要はありません。そのため、予約サイトや旅行代理店等(以下「予約サイト等」といいます。)を通じて受けた予約で、かつ、予約サイト等を経由して決済が行われた場合には、領収書ではなく、宿泊明細書など適宜の様式により、以下の記載事項を満たした書類(適格簡易請求書)を交付することが考えられます(消法57の4②)。
① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
② 課税資産の譲渡等を行った年月日
③ 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象課税資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等である旨)
④ 課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額
⑤ 税率ごとに区分した消費税額等又は適用税率(※)
※「税率ごとに区分した消費税額等」と「適用税率」を両方記載することも可能です。
なお、予約サイト等が宿泊者の委託を受けてホテルの宿泊予約を行う場合(いわゆる手配旅行)と異なり、パックツアーなど、宿泊サービスを含めた一連の旅行サービスとして予約サイト等が提供する場合(いわゆる企画旅行)、通常、予約サイト等が宿泊客に対して課税資産の譲渡等を行ったものとなりますので、当該予約サイト等が宿泊客に対して適格簡易請求書を交付する必要があります(この場合、貴社は、予約サイト等に対して適格請求書の交付義務が生じることとなります。)。
(注)上記記載事項のうち④の「課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額」は、貴社が課税売上げとして認識している金額となります。そのため、予約サイト等との間で手数料等が差し引かれて精算される場合であっても、当該手数料等差引前の金額となると考えられます。
また、予約サイト等が宿泊代金に併せて予約手数料を宿泊客から徴収している場合や、値引き販売を行っている場合には、適格簡易請求書に記載される金額(宿泊代金)が、宿泊客が実際に予約サイト等を経由して支払った代金の総額と異なることも考えられますが、消費税法上問題はありません。
(参考)社員の出張等に伴う宿泊費で、社員に支給するもののうち、その旅行に通常必要であると認められる部分の金額については、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます(出張旅費等特例)ので、その場合には、ホテルを利用する側の事業者側において必ずしもホテルから適格簡易請求書を受領する必要はありません。出張旅費等特例の詳細については、問107《出張旅費、宿泊費、日当等》をご参照ください。

(任意組合の組合員のうち事業の損益の配賦を受けない者の取扱い)
問50−2 私は、任意組合の業務執行組合員であり、当任意組合には世界中に組合員が存在しています。これらの組合員の中には日本で活動を行っておらず、かつ、日本における事業の損益の配賦を直接又は間接にも受けていない組合員が含まれています。そうした者についても適格請求書発行事業者としての登録を受け、「任意組合等の組合員の全てが適格請求書発行事業者である旨の届出書」を提出しなければ、当任意組合は任意組合の事業としての適格請求書の交付を行うことはできないのでしょうか。【令和7年4月追加】
【答】
任意組合等が事業として行う課税資産の譲渡等については、その組合員の全てが適格請求書発行事業者であり、業務執行組合員が、その旨を記載した「任意組合等の組合員の全てが適格請求書発行事業者である旨の届出書」(以下「任意組合等の届出書」といいます。)を納税地を所轄する税務署長に提出した場合に限り、適格請求書を交付することができます(消法57の6①、消令70の14①②)。
したがって、任意組合等の届出書を提出する際は、その組合員の全てが適格請求書発行事業者としての登録を受けていることが求められますが、日本で課税資産の譲渡等を行っておらず、日本における事業の損益の配賦を直接又は間接にも受けない組合員については、任意組合等の届出書の対象としなくても差し支えありません。
なお、当該組合員が日本における事業の損益の配賦を受けることとなる場合には、以下に掲げる区分に応じ、それぞれに掲げる届出書を速やかに提出する必要があります(消法57の6②、消令70の14③、消規26の9②)。
① 当該組合員が適格請求書発行事業者の登録を受けていない場合「任意組合等の組合員が適格請求書発行事業者でなくなった旨等の届出書」(※1)
② 当該組合員が適格請求書発行事業者の登録を受けている場合「任意組合等の組合員の全てが適格請求書発行事業者である旨の届出事項の変更届出書」(※2)
※1 「届出理由」欄の「適格請求書発行事業者以外の事業者を新たに組合員として加入させたため」にチェックを付してください。また、この場合、当該組合員が日本における損益の配賦を受けることになった日以後に行う課税資産の譲渡等については、適格請求書を交付することはできません。
※2 「変更事項」欄の「その他」にチェックを付した後、「変更後」欄に当該組合員の氏名又は名称及び登録番号を記載してください。
(適格請求書の記載事項のインターネットでの公表)
問72−2 当社では、交付する領収書において、当社のホームページのURLを案内しておき、当該URLに適格請求書の記載事項の一部である適格請求書発行事業者の名称及び登録番号、適用税率を表示した上で、当該領収書を受領した事業者においていつでも確認可能な状態にしてあります。このような方法により、適格請求書の記載事項を満たすことは可能ですか。【令和7年4月追加】

【答】
適格請求書は、一の書類のみで全ての記載事項を満たす必要はなく、書類相互(書類と電磁的記録)の関連が明確であり、適格請求書の交付対象となる取引を正確に認識できる方法で交付されていれば、複数の書類や、書類と電磁的記録の全体により、適格請求書の記載事項を満たすことになります(詳細は問72《書面と電磁的記録による適格請求書の交付》をご参照ください。)。
なお、適格請求書の記載事項に係る電磁的記録の提供は、インターネット上のサイトを通じた方法も可能とされていますが、基本的に、取引に応じて交付した領収書等とは関係なく、適格請求書の記載事項の一部を自社のホームページに掲載しておくだけでは、当該領収書等と電磁的記録の相互の関連が明確とはいえません。
ただし、ご質問のように、領収書等にインターネット上のページに係るURLを表示しておき、当該URLにアクセスすることで適格請求書の記載事項として不足する事項が補完されるのであれば、相互の関連が明確であるものとして、双方の記載を合わせて適格請求書の記載事項を満たすこととして差し支えありません。
また、当該領収書等を受け取った事業者においては、仕入税額控除の適用を受けるため、貴社のホームページの該当箇所を電磁的記録により(又は書面に整然とした形式及び明瞭な状態で出力し)保存する必要があります。この点、売手である貴社がホームページの該当箇所を、各税法に定められた保存期間が満了するまで随時確認可能な状態で提供しているなど一定の要件を満たす場合、買手においては必ずしも当該電磁的記録をダウンロードせずとも、その保存があるものとして差し支えありません(詳細は問102−2《適格請求書の記載事項に係る電磁的記録の保存方法》をご参照ください。)。
(複数年をまたぐ取引に係る適格請求書の交付)
問77−3 当社は、1年を超える期間にわたって毎月保守を行う役務を提供しています。このように課税期間をまたぐような長期間にわたる課税資産の譲渡等について、対価の前受け時にまとめて適格請求書を交付しても良いのでしょうか。【令和7年4月追加】
【答】
適格請求書発行事業者である売手は、国内において課税資産の譲渡等を行った場合、取引の相手方(課税事業者に限ります。)の求めに応じ、適格請求書を交付する義務が課されています(消法57の4①)。
この適格請求書の記載事項である「課税資産の譲渡等を行った年月日」については、課税期間の範囲内で一定の期間内に行った課税資産の譲渡等につきまとめて適格請求書を作成する場合には、当該一定の期間を記載することになります。
ただし、「課税期間の範囲内で」とあるとおり、一定の期間をまとめて適格請求書を交付するとしても、取引の期間が売手の課税期間をまたぐ場合には、適格請求書は課税期間ごとに区分し交付することが原則となります。
他方、課税期間をまたぐ期間に係る取引をまとめて一の適格請求書に記載することも妨げられるものではなく、また、課税資産の譲渡等を行う前に適格請求書を交付することも可能です。
そうした点と請求書交付実務の簡便性という観点から、例えば、毎月の保守契約のように一定期間継続して同一の課税資産の譲渡等を行うものについては、売手である事業者が適格請求書の交付対象となる期間、継続して適格請求書発行事業者である限りにおいて、課税期間の範囲を超える期間をまとめて適格請求書を交付することとして差し支えありません。
(参考)課税期間をまたぐ期間に係る適格請求書の交付については問125《課税期間をまたぐ適格請求書による売上税額の計算》を、対価を前受けした場合の適格請求書の交付時期については問39《対価を前受けした場合の適格請求書の交付時期》をご参照ください。
(注)1 課税期間とは、原則として、個人事業者であればその年の1月1日から12月31日までの期間、法人であれば事業年度とされ、その期間は最長1年となります。課税期間の範囲を超える期間をまとめて適格請求書を交付した場合において、当期の課税期間に係る消費税額等の記載が明確に区分されていない場合には、売上税額の積上げ計算を行うことはできない点にご留意ください。
2 課税期間の範囲を超える期間をまとめて適格請求書を交付した後に、交付した適格請求書の記載事項に変更が生じることとなった場合には、修正した適格請求書を交付する必要があり、また、当該期間の中途で適格請求書発行事業者でなくなった場合には、既に交付した適格請求書について、適格請求書発行事業者でなくなった期間部分を区分して区分記載請求書等として再交付するなどの対応が必要となる点にご留意ください。

(任意組合の構成員が帳簿へ記載すべき課税仕入れの相手方の氏名又は名称)
問93−2 当社は、複数の取引先と任意組合を組成し事業を行っています。任意組合の課税仕入れについては、幹事会社が課税仕入れの相手先から受領した適格請求書の原本を保存し、当社を含めた構成員は幹事会社から精算書のみを受領しています。当社が仕入税額控除の適用を受けるに当たり、帳簿に「課税仕入れの相手方の氏名又は名称」をどのように記載すればよいでしょうか。【令和7年4月追加】
【答】
仕入税額控除の適用を受けるためには、一定の記載をした帳簿及び請求書等の保存が要件となりますが、任意組合の共同事業として課税仕入れを行った場合、幹事会社が仕入先(課税仕入れの相手方)から交付を受けた適格請求書を保存することで、構成員である事業者は当該幹事会社から受領した精算書の保存により仕入税額控除の適用を受けることができます(基通11−6−2)。
この場合、幹事会社は、精算書に記載されている仕入れ(経費)について、仕入税額控除が可能なものか(適格請求書発行事業者からの仕入れか、適格請求書発行事業者以外の者からの仕入れか)を明らかにする必要があるほか、構成員が帳簿に「課税仕入れの相手方の氏名又は名称」を記載できるよう、幹事会社と構成員の間で、当該課税仕入れの相手方の氏名又は名称及び登録番号を確認できるようにしておく必要があります(詳細は問93《任意組合の構成員が保存しなければならない請求書等》をご参照ください。)。
この点、幹事会社において任意組合として行った課税仕入れ毎に相手方の氏名又は名称及び登録番号(適格請求書発行事業者以外の事業者であれば登録番号がないこと)が管理されており、構成員において必要に応じ確認できることを前提に、構成員は、帳簿へ記載すべき「課税仕入れの相手方の氏名又は名称」について、幹事会社の名称及び幹事会社を経由して行った課税仕入れである旨の記載に代えることとして差し支えありません。その際、適格請求書発行事業者からの仕入れと適格請求書発行事業者以外の事業者からの仕入れがある場合、それぞれ区別して記載する必要があります。

(現金主義を適用する事業者における仕入税額控除のタイミング)
問98−2 私は、現金主義を適用しており、課税仕入れを行った時期をその仕入れに係る費用の額を支出した日としています。ある取引につき、費用の支出を行ったものの適格請求書の受領が翌年になってしまいましたが、現金主義により、費用の支出を行った課税期間において仕入税額控除の適用を受けることはできますか。【令和7年4月追加】
【答】
小規模事業者等に係る資産の譲渡等の時期等の特例(以下「現金主義の特例」といいます。)の適用を受ける個人事業者においては、資産の譲渡等及び課税仕入れを行った時期は、その資産の譲渡等に係る対価の額を収入した日及びその課税仕入れに係る費用の額を支出した日とすることができることとされています(消法18①)。
他方、仕入税額控除の適用を受けるためには、一定の事項を記載した帳簿及び請求書等の保存が必要となります。したがって、現金主義の特例を適用する個人事業者であっても、原則として、当該課税仕入れに係る適格請求書等の保存がない場合には、当該課税仕入れにつき、仕入税額控除の適用を受けることはできません。
しかしながら、当該課税仕入れが適格請求書発行事業者から行われるものである場合には、当該支出した日の属する課税期間において適格請求書の交付を受けられなかったとしても、事後に交付される適格請求書を保存することを条件として、当該支出した日の属する課税期間において仕入税額控除の適用を受けることとして差し支えありません。
なお、当該現金主義の特例により仕入税額控除の適用を受けた金額が変動した場合の対応については、問96《見積額が記載された適格請求書の保存等》をご参照ください。
(注)この取扱いは、短期前払費用(詳細は問98《短期前払費用》をご参照ください。)など、課税仕入れが適格請求書の受領及び保存に先行する取引に係る仕入税額控除の適用についても基本的に同様となります。
(物品切手等を割引・割増価格により購入した場合の仕入控除税額の算出)
問101−2 当社は、福利厚生としてイベントのチケット(物品切手等)を購入し、従業員に配付しています。仕入税額控除の適用を受けるため、実際に従業員がイベントを観覧した時(引換給付の際)に交付を受けた適格請求書等を受領し、当社においてそれを保存しているところ、その適格請求書等に記載された金額と、物品切手等を購入した金額に差額が生じることがありますが、この場合、どのように仕入控除税額を算出することになるのでしょうか。【令和7年4月追加】
【答】
適格請求書等保存方式においては、仕入税額控除の適用を受けるためには、原則として、適格請求書等の保存が必要となります(消法30⑦⑨)。
また、物品切手等による引換給付として課税仕入れを行った場合、当該物品切手等に適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)が記載されているものが、引換給付を受ける際に適格請求書発行事業者により回収されるもののうち、自ら引換給付を受けるものについては、物品切手等の購入(対価の支払)時に課税仕入れとして計上した上で、一定の事項を記載した帳簿のみの保存により、仕入税額控除の適用を受けることができますが(消令49①一ロ)、それ以外の物品切手等に係る課税仕入れは、購入(対価の支払)時ではなく、適格請求書等の交付を受けることとなるその引換給付を受ける時に計上し、仕入税額控除の適用を受けることとなります(一定の事項を記載した帳簿及び当該適格請求書等の保存が必要です。)(基通11−3−7)。
さらに、その際の課税仕入れについては、物品切手等の取得(購入)に要した金額の如何にかかわらず、引換給付時に受領した適格請求書等に記載された金額を基礎として仕入税額控除の適用を受けることとなります(物品切手等により課税仕入れを行った場合における課税仕入れの時期については、問100《郵便切手類又は物品切手等により課税仕入れを行った場合における課税仕入れの時期》を、支払対価の額については、問101《物品切手等により課税仕入れを行った場合における課税仕入れに係る支払対価の額》をご参照ください。)。
ご質問の場合において、例えば、以下のイメージのとおり、イベントのチケットを割引価格にて購入した場合は、受領した適格請求書等に記載された金額により仕入控除税額を算出し、実際に支払った金額との差額を雑収入等(消費税課税対象外の売上げ)として計上することとなりますが、実際に支払った金額により、仕入控除税額を算出することとしても差し支えありません。
他方、割増価格にて購入した場合には、受領した適格請求書等に記載された金額を上限として仕入控除税額を算出することとなります。

(フリマアプリ等により商品を仕入れた場合の仕入税額控除)
問106−2 私は古物営業法上の許可を受けて古物営業を営んでいる個人事業者です。フリーマーケットアプリやインターネットオークションを通じて商品を仕入れることもありますが、その際、取引の相手方が匿名の場合があります。この場合、仕入税額控除の適用を受けるためには、どうしたらよいでしょうか。
また、固定資産など自ら使用する物品として仕入れるような場合や、古物商以外の者が仕入れるような場合に、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについて仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除することができる経過措置の適用はできるのでしょうか。【令和7年4月追加】
【答】
1 フリマアプリ等による仕入れに係る古物商等特例の適用について
適格請求書等保存方式において、古物営業法上の許可を受けて古物営業を営む古物商が、適格請求書発行事業者以外の者から棚卸資産として古物(古物営業と同等の取引方法により買い受ける古物に準ずるもの(以下「準古物」といいます。)を含みます。)を買い受けた場合には、一定の事項が記載された帳簿のみの保存により仕入税額控除の適用を受けることができます(消法30⑦、消令49①一ハ(1))(以下「古物商等特例」といいます。)。
古物営業法上、原則として、商品を仕入れた際の対価の総額が1万円以上の場合には、相手方の確認を行った上でいわゆる「古物台帳」に取引の相手方の住所、氏名、職業及び年齢を記載することとされており、古物商等特例の適用に当たっては、消費税法上の帳簿にもそれらの情報のうち住所及び氏名が記載されている必要があります(帳簿の記載事項に関する詳細は、問110《帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合の帳簿への一定の記載事項》をご参照ください。)。
古物商が、いわゆるフリーマーケットアプリやインターネットオークション(以下「フリマアプリ等」といいます。)により商品の仕入れを行った場合、その仕入先が適格請求書発行事業者であれば、当該仕入先から適格簡易請求書(注1)を受領し保存する必要がありますが、適格請求書発行事業者以外の者(注2)であれば、上記のとおり、帳簿に一定の事項を記載することで古物商等特例の適用を受けることが可能です。
その際、対価の総額が1万円未満であれば、古物台帳に相手方の住所、氏名、職業及び年齢の記載は不要(注3)であるため、匿名で取引が行われていたとしても古物商等特例の適用は可能ですが、1万円以上の場合、それらの記載が必要となるため、これらの点について、古物営業法に規定された方法により相手方の確認を行う必要があります。
(注)1 フリマアプリ等による物品の譲渡を行う事業は、不特定かつ多数の者に対して課税資産の譲渡等を行うものとして適格簡易請求書の交付対象となるものと考えられます。また、出品者とフリマアプリ等を運営する事業者(以下「運営事業者」といいます。)が共に適格請求書発行事業者であるなど一定の要件を満たす場合には、運営事業者が、出品者に代わって媒介者交付特例により適格簡易請求書の交付を行うことも認められます。
2 適格請求書発行事業者以外の事業者や消費者が該当しますが、例えば、適格請求書発行事業者である個人事業者であったとしても、消費者として譲渡する場合には、適格請求書発行事業者以外の者と取り扱って差し支えありません。また、この点、メッセージ機能等により「適格請求書発行事業者としての譲渡である場合は登録番号を教えてください。連絡がない場合には、消費者としての譲渡と考えさせていただきます。」と確認を行った上で、何らの連絡がない場合には、仕入先を適格請求書発行事業者以外の者と取り扱って差し支えありません。
3 自動二輪車、家庭用コンピュータゲーム、CD・DVD、書籍の買受けなど、1万円未満であっても、古物営業法上、相手方の本人確認や帳簿への記帳義務が生じる場合がありますのでご留意ください。
2 フリマアプリ等による仕入れに係る80%・50%経過措置の適用について
古物については対価の総額が1万円以上である場合や1万円未満でも一定の場合には、古物営業法上、本人確認や古物台帳への記帳義務が生じることから、結果として、そうした物については仕入先の住所、氏名、職業及び年齢の確認ができないような場面は生じ得ません。そのため、こうした古物については、一定の事項を記載した帳簿及び区分記載請求書等と同様の記載事項を満たした請求書等(区分記載請求書等に記載すべき事項に係る電磁的記録を含みます。)の保存があれば、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについて仕入税額相当額の一定割合(80%、50%)を仕入税額とみなして控除することができる経過措置(以下「80%・50%経過措置」といいます。)の適用を受けることは、通常、想定されませんが、対価の総額が1万円以上の準古物の仕入れで、メッセージ機能等を用いて確認を行ったとしても仕入先の住所、氏名、職業及び年齢の確認ができないような場合(注4)や古物商以外の者がフリマアプリ等で仕入れた場合(古物営業に該当しないものに限ります。)には、80%・50%経過措置の適用を受けることは可能です。
この点、80%・50%経過措置の適用を受けるに当たり保存する必要がある区分記載請求書等に記載すべき「書類の作成者の氏名又は名称」及び帳簿に記載すべき「課税仕入れの相手方の氏名又は名称」については、「フリマアプリ等の名称及び当該フリマアプリ等におけるアカウント名」として差し支えありません。
なお、フリマアプリ等の取引画面を区分記載請求書等に記載すべき事項に係る電磁的記録として保存する場合には、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(平成10年法律第25号)に準じた方法による必要があることにご留意ください。
(注)4 準古物については、古物営業法の対象外であることから、対価の総額が1万円以上である場合でも同法上は本人確認や古物台帳への記帳は求められません。

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