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解説記事2020年04月13日 未公開裁決事例紹介 代理人利用者識別番号でのデータ送信の提出は認めず(2020年4月13日号・№830)

未公開裁決事例紹介
代理人利用者識別番号でのデータ送信の提出は認めず
エラー表示の有無は「特別の事情」に該当せず


○青色申告の承認の取消処分が違法であるか否かが争われた裁決。国税不服審判所は、①代理人である税理士が送信した法人税申告のデータは利用者識別番号が代理人利用者識別番号であることから、当該データの送信をもって請求人の法人税の確定申告書が法定申告期限内に提出されたものと認めることはできず、②代理人が代理人利用者識別番号を付して本件申告をしたことは、直接的には代理人以外の者の責めに帰すべき事情でない以上、請求人は代理人に申告を委任しているため、その責めに帰することのできない客観的事情はなく、「特別な事情」があるとは認められないと判断した(令和元年5月9日、棄却)。

基礎事実等
1 事実
(1)事案の概要

 本件は、審査請求人が、法人税の確定申告書をその提出期限までに提出しなかったことから、原処分庁が、請求人の青色申告の承認の取消処分を行ったことに対し、請求人が、当該取消処分は違法又は不当であるとして、同処分の取消しを求めた事案である。
(2)関係法令等(略)
(3)基礎事実及び審査請求に至る経緯
 当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
イ 請求人は、平成11年6月29日、××××××に対して青色申告の承認申請書を提出し、平成12年5月1日から平成13年4月30日までの事業年度以後の各事業年度の法人税について、青色申告の承認があったものとみなされた。
  請求人の事業年度は、5月1日から翌年4月30日までである。
ロ 請求人は、国税電子申告・納税システム(以下「e-Tax」という。)の利用を開始するため、原処分庁に対して、e-Taxにより電子申告・納税等開始届出書(以下「開始届出書」という。)を平成25年1月28日に提出した(以下、同日に請求人が原処分庁に提出した開始届出書を「本件開始届出書」という。)。また、本件開始届出書の「税理士等」欄には、××××と記載されている。
ハ 原処分庁は、情報技術利用省令第4条第2項に基づく識別符号(以下「利用者識別番号」という。)を請求人に対して通知した(以下、本件開始届出書の提出を受けて原処分庁が請求人に対し通知した利用者識別番号を「旧請求人利用者識別番号」という。)。
ニ 請求人は、平成28年8月頃、平成28年4月期以後の法人税に係る申告等に関する関与税理士を××××××××から×××××××に変更した。また、請求人は、平成28年8月の時点において、平成28年4月期の法人税の確定申告書を提出していなかった。
ホ 本件代理人は、e-Taxを利用して請求人に係る法人税の確定申告を行うため、平成29年6月30日、本件各確定申告書として作成したデータ(以下「本件各データ」という。)に、本件代理人の利用者識別番号(以下「代理人利用者識別番号」という。)を付して、本件事業年度の法人税の確定申告の法定申告期限である平成29年6月30日に、e-Taxにより原処分庁へそれぞれ送信した。
へ e-Taxの受付システムは、平成29年6月30日、本件各送信により本件各データを受信したことに対し、本件代理人に対して、必要な項目にデータが入力されているか等の審理の結果として「メール詳細」と題する各電子メールを送信し、本件代理人は本件各受信通知を受信した。
ト 本件代理人は、平成29年7月20日、原処分庁に対し、請求人の開始届出書をe-Taxにより提出し、同日、原処分庁から請求人の利用者識別番号(以下「新請求人利用者識別番号」という。)の通知を受けた後、本件各データに新請求人利用者識別番号を付して、同日、e-Taxにより原処分庁へそれぞれ送信した。
チ 原処分庁は、請求人に対して、平成30年2月1日付で、本件事業年度以後の青色申告の承認の取消処分(以下「本件青色取消処分」という。)をした。
  本件青色取消処分に係る通知書には、取消処分の基因となった事実として、本件確定申告書がその提出期限までに提出されていないこととともに、当該事実が法人税法第127条第1項第4号に該当するので、本件事業年度以後青色申告の承認を取り消した旨記載されている。
リ 請求人は、平成30年5月2日、本件青色取消処分を不服として再調査の請求をしたところ、再調査審理庁は、同年7月4日付で棄却の再調査決定をし、その再調査決定書謄本は請求人に対し同月6日に送達された。
ヌ 請求人は、平成30年8月6日、再調査決定を経た後の本件青色取消処分に不服があるとして審査請求をした。

争点および主張
 本件青色取消処分は違法又は不当な処分であるか否か。

【表】争点についての主張

原処分庁 請 求 人
(1)税理士等が関与先の申告等の手続をe-Taxにより行う場合は、関与先である納税者の利用者識別番号を入力して行う必要があるところ、平成29年6月30日に本件代理人が提出した法人税の各確定申告書に付された利用者識別番号は、本件代理人のもので請求人のものではない。
  したがって、請求人が平成29年6月30日に提出した法人税の各確定申告書は、情報技術利用省令の規定による手続に従っていないため、いずれも請求人の確定申告書とは認められない。
(2)本件各確定申告書は、2事業年度連続して法定申告期限内に提出されておらず、本件事務運営指針の4に定めるとおり本件青色取消処分が行われている。
  また、本件事務運営指針の5の①にいう「特別な事情」については、納税者の責めに帰することができない真にやむを得ない事情をいうものと解され、本件代理人が請求人の利用者識別番号を付していない法人税の各確定申告書をe-Taxにより提出したことについて、請求人に当該事情があったとは証拠上認めることはできない。
(1)請求人は、本件確定申告書を本件法定申告期限にe-Taxにより提出し、同日に適正に電子申告の受付があった旨の記載がある本件各受信通知を受領している。本件各受信通知は、書面により確定申告書を提出した場合の収受印と同様の効果があるから、本件確定申告書は、法定申告期限内に適正に提出されている。
  したがって、本件青色取消処分は違法である。


(2)本件各送信において入力した利用者識別番号は、本件代理人のものとなっていたが、本件各送信時に送信エラーが表示されなかったため、本件確定申告書を本件法定申告期限に再送信することができなかったのであり、この時に送信エラーが確認できていれば、すぐに訂正して本件確定申告書を本件法定申告期限に提出することができた。したがって、仮に、原処分庁によって、請求人の本件確定申告書が提出期限までに提出されなかったと判断されたとしても、上記の事情は、本件事務運営指針の5の①にいう「特別な事情」に該当する。

審判所の判断
(1)認定事実

 請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
イ 請求人が平成28年8月頃に請求人の関与税理士を×××××××から本件代理人に変更した後、本件代理人は、請求人又は×××××××から旧請求人利用者識別番号の引継ぎを受けていなかった。
ロ 本件代理人は、平成28年8月頃に請求人から法人税の申告業務等の依頼を受けた後、請求人の開始届出書を原処分庁に対して提出して改めて新請求人利用者識別番号の通知を受けたのは本件法定申告期限後であった。
ハ 本件各受信通知の「利用者識別番号」欄にはいずれも代理人利用者識別番号の表示がある。
(2)法令解釈等
イ 青色申告制度は、誠実かつ信頼性のある記帳をすることを約した納税者が、これに基づき所得金額を正しく計算して期限内に申告納税することを期待し、かかる納税者に対してその特典を付与するものであるところ、法人税法第127条第1項に規定する青色申告の承認の取消しの趣旨及び目的は、青色申告の承認を受けた納税者について、青色申告の特典の付与を継続することが青色申告制度の趣旨及び目的に反することとなる一定の事実がある場合には、その承認を取り消すことができるものとすることによって、青色申告制度の適正な運用を図ろうとするものであると解される。
  そして、法人税法第127条第1項第4号は、上記のとおり規定しており、これは、法人税の青色の確定申告書をその提出期限までに提出しないということは、青色申告制度の利用者に期待されている行動から逸脱するものといわざるを得ず、青色申告の前提条件を失わせるものであることから、青色申告制度の趣旨及び目的に反することとなる一定の事実として定められたものと解される。
ロ 一方、青色申告の承認の取消しは、法人税法第127条第1項各号に該当する事実があれば必ず行われるものではなく、現実に取り消すかどうかは、個々の事情に応じ、所轄税務署長の合理的な裁量によって決すべきものと解される。
  そして、処分を行うにつき、法の規定から処分行政庁に裁量権が付与されていると認められている場合において、税務署長がその裁量権に基づき行った青色申告の承認の取消処分については、それが社会通念上妥当性を欠いて裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したと認められる場合や法の趣旨及び目的からみて裁量権の不合理な行使であると認められる場合でない限り、その裁量権の範囲内にあるものとして、違法又は不当とはならないものと解するのが相当である。
ハ 本件事務運営指針は、上記のとおり、その趣旨において、法人の青色申告の承認の取消しに関する基本的な考えを示した上、その承認の取消しの趣旨及び目的に沿って、その取消処分に係る処理の統一を図るために、その税務署長の裁量権の範囲を示したものであり、当審判所においても、本件事務運営指針の取扱いは相当であると認められる。
(3)当てはめ
イ 上記のとおり、情報技術利用法第3条第1項及び第4項は、行政機関等は、申請等のうち書面等により行うものについて電子情報処理組織を使用して行わせることができる旨及び申請等に関して署名等をするものについては、氏名又は名称を明らかにする措置であって主務省令で定めるものをもって当該署名等に代えさせることができる旨規定している。そして、情報技術利用法の規定に従い、上記のとおり、情報技術利用省令第4条ないし第6条は、電子情報処理組織を使用して法人税法等の規定に基づき申請等を行おうとする者は、氏名等をあらかじめ税務署長に届け出て、その届出により税務署長から通知された利用者識別番号を入力して送信することにより当該申請等を行わなければならず、また、当該申請等において氏名等を明らかにする措置とは、当該通知された利用者識別番号を入力して当該申請等を行うこととされている。
  上記のとおり、本件代理人は、本件各データに代理人利用者識別番号を付して送信を行っており、本件代理人は本件各受信通知を受信しているものの、本件各受信通知の「利用者識別番号」側には代理人利用者識別番号が表示されている。そうすると、平成29年6月30日に本件代理人が送信した本件各データは、氏名等を明らかにするための利用者識別番号が、代理人利用者識別番号であることから、本件各データの本件各送信をもって、請求人の本件各確定申告書が提出されたものと認めることはできない。
  したがって、本件確定申告書は本件法定申告期限までに提出されておらず、法人税法第127条第1項第4号の規定に基づき行われた本件青色取消処分が違法な処分であるとは認められない。
ロ 請求人は、上記イのとおり、本件各確定申告書をいずれもその提出期限までに提出しておらず、この事実は、法人税法第127条第1項第4号に規定する青色申告の承認を取り消すことができる事実に該当する上、本件事務運営指針の4の「2事業年度継続して期限内に申告書の提出がない場合」にも該当する。
  また、本件事務運営指針の5に定める「特別な事情」とは、本件事務運営指針が「役員その他相当の権限を有する地位に就いている者が知り得なかったこともやむを得ないと認められるなど」と定めていることからすれば、例えば、納税者の責めに帰することのできない客観的事情などがこれに該当し、税法の不知や不注意といった事情は含まれないと解するのが相当である。そして、上記のとおり、本件代理人は旧請求人利用者識別番号の引継ぎ又は新請求人利用者識別番号の通知を受けていないところ、本件各受信通知には、本件代理人が本件各データに付した代理人利用者識別番号が表示されており、請求人の利用者識別番号ではないことが明らかであることからすれば、請求人が本件各確定申告書をいずれもその提出期限までに提出しなかったことについて請求人の責めに帰することのできない客観的事情があるとは認められない。
  したがって、本件青色取消処分は不当な処分には当たらない。

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