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解説記事2020年04月13日 SCOPE 東京地裁、LPSの「主要な事業用財産」の管理場所で内外判定(2020年4月13日号・№830)

塩野義製薬、国外への現物出資の適格性で勝訴
東京地裁、LPSの「主要な事業用財産」の管理場所で内外判定


 製薬会社大手の塩野義製薬が行った、ケイマンLPS持分の英国完全子会社への現物出資の適格性を巡り争われていた事案で、東京地裁(古田孝夫裁判長)は令和2年3月11日、適格現物出資であるとする同社の主張を認め、計約80億円の課税処分を取り消した。
 外国法人に国内資産を移転した場合は税制非適格となるため、本件では、対象資産が国内、国外のどちらにあるのかが最大の争点となっていた。東京地裁は、本件LPS持分は「LPSの主要な事業用財産の経常的な管理場所」で内外判定すべきとした上で、主要な事業用財産が米国等の国外で管理されていたと認定、本件LPS持分は国内資産ではないと判断した。
 国は3月24日に東京高裁に控訴しており、今後どのような主張を展開するのか注目される。

主要な事業用財産を国外で経常的に管理なら、LPS持分は国内資産に該当せず

 塩野義製薬は平成13年、米国の製薬会社(GSK社)と共同で抗HIV治療薬を開発するためJV契約を締結し、ケイマン法に基づく特例有限責任パートナーシップであるケイマンLPS(CILP)を設立した。その後、塩野義製薬は、平成24年に英国の完全子会社にLPS持分を現物出資し、次いで英国完全子会社はLPS持分を米ヴィーブ社の英国親会社に譲渡、その対価としてヴィーブ親会社株式の10%を取得した(参照)。

 塩野義製薬は、英国完全子会社への現物出資が「適格現物出資」にあたることを前提に、約130億円の簿価譲渡として申告を行ったが、課税庁は「非適格」であるとし、LPS持分の譲渡価額は時価約530億円であり、約400億円の申告漏れがあったと認定した。
法基通の基準「経常的管理場所」は合理的
 本事案の最大の争点は、本件現物出資の対象資産が法人税法施行令4条の3第9項にいう「国内にある事業所に属する資産」に該当するか否かにある。
 法人税基本通達1-4-12は、「国内にある事業所に属する資産」の判断基準について、「原則として、国内、国外いずれの事業所の帳簿に記帳されているかで判定するが、国外事業所の帳簿に記載されていても、実質的に国内事業所において経常的な管理が行われていた資産は、国内事業所に属する資産に該当する」旨定めている。東京地裁は、この判断基準を「法令の趣旨に鑑みて合理性を有するもの」であり、「この基準に沿って検討するのが相当」とした。
持分は事業用財産と契約上の地位の結合
 ここで問題になるのが、経常的な管理場所の判定においてLPS持分をどう捉えるのか、すなわち、(株式のような)LPS持分自体、あるいはLPSの個々の事業用財産のいずれを判定対象とするべきかということだ。
 この点について東京地裁は、ケイマンLPSであるCILPは我が国の組合に類似した事業体(法人税法上の法人には該当しない)であるとの考えを示した上で、本件CILP持分の内実を「CILPの事業用財産の共有持分とパートナーとしての契約上の地位とが不可分に結合されたもの」と捉え、「本件CILP持分を、事業用財産の持分や契約上の権利等が全て結合された1個の資産とみてその管理場所を特定するのが相当である。」と判示した。
主要な事業用財産の経常的管理場所は国外
 そして、東京地裁は、「CILPのパートナーシップ持分の価値の源泉はCILPの事業用財産の共有持分にある」ことなどを理由として、「本件CILP持分を1個の資産とみた場合のその経常的な管理場所は、CILPの主要な事業用財産の経常的な管理が行われていた事業所とみるのが相当である。」とした。その上で、CILPの主要な事業用財産として、①現金はCILP又はデラウェアLLC名義の米国の預金口座に入金され、経理業務はGSK社/ヴィーブ社側の米国の事業所で行われていた、②知的財産のライセンスは、CILP及びデラウェアLLCの連結財務諸表に記録されていた、③治験データはGSK社/ヴィーブ社側のデータベースに保管され、原告にはアクセス権が付与されていなかったことなどから、「CILPの主要な事業用財産の経常的な管理は、GSK社/ヴィーブ社側の米国等の国外事業所で行われていた。」と認定した。
 なお、塩野義製薬側の、事前照会と異なる処分を受けたとの信義則違反の主張については、事前照会の意義を問うものとの関心が集まっていたが、上記のとおり、東京地裁が適格現物出資に該当すると判断し課税処分を取り消したため、判決では触れられていない。

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