税務ニュース2025年07月18日 相続財産管理人の報酬、国税に優先せず(2025年7月21日号・№1083) 審判所、相続財産管理人の清算手続は強制換価手続に相当せず
本事案は、被相続人から納税義務を継承した相続財産法人(請求人)が有する債権(相続財産管理人の報酬額を上回る預金口座残高の一部)の差押処分が、無益な差押え(徴収法48条2項)に該当するかが争われたもの。請求人は、相続財産管理人(現在の「相続財産清算人」)の報酬は「優先権を有する債権者」(民法957条ただし書)に該当し、相続財産の清算手続は、破産手続に類似する強制換価手続(徴収法2条12項)に相当するから、相続財産管理人の報酬は滞納国税に優先するなどとして、本件差押処分は無益な差押え(徴収法48条2項)に該当するなどと主張した。
審判所は、相続財産法人に対する債権者は、相続財産法人について相続財産管理人による清算が行われている場合であっても、相続財産法人に帰属する財産に対して強制執行や滞納処分を行うことが妨げられないところ、滞納処分においては、徴収法第二章に別段の定めがある場合を除き国税は他の債権に優先する(徴収法8条)と規定されているのであるから、民法の規定は滞納処分において相続財産管理人の報酬が国税に優先することの根拠となるものではないとの見解を示した。また、相続財産管理人による清算手続は、破産手続と性質を異にするものであって、強制換価手続に相当するとはいえず、徴収法9条(強制換価手続の費用の優先)が準用又は類推適用されるとは解さないとした。したがって、相続財産管理人の報酬は国税に優先せず、本件差押処分が無益な差押えに該当するとはいえないとの判断を示した。
その上で審判所は、請求人が、原処分庁から複数回の催告を受けたにもかかわらず、滞納国税を自主納付しなかったことからすると、自主納付による完納の見込みがあったとはいえず、差押処分の必要性が高かったことが認められると指摘。あわせて、原処分庁が差押処分時に把握していた相続財産は、公売手続に時間を要する不動産であったため、徴収担当職員が預金債権を差押えの対象とした判断は、不合理とは認められないとした。よって、本件差押処分は適法であるとして、審判所は請求人の請求を棄却した。
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