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解説記事2025年09月08日 未公開判決事例紹介 比準要素数1の会社に係る株式の評価方法を巡る事件(2025年9月8日号・№1089)

未公開判決事例紹介
比準要素数1の会社に係る株式の評価方法を巡る事件
東京地裁、当初申告は合理的であり更正の請求認めず

 本誌1073号40頁で紹介した更正すべき理由がない旨の通知処分取消請求事件の判決について、一部仮名処理した上で紹介する。

〇「比準要素数1の会社の株式」の評価方法が争点となった事件(令和5年(行ウ)第474号)。東京地方裁判所(篠田賢治裁判長)は令和7年4月23日、更正すべき理由がない旨の通知処分を適法とする判決を下した。原告は当初申告において、本件株式を「特定の評価会社の株式」に該当するとして、財産評価基本通達189−2ただし書きに定める評価方法により申告したものの、原則的な方法により算定すべきであったと主張したが、東京地裁は、当初申告は合理的な方法であったとして、更正の請求を認めなかった。

主  文

1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1 請求
 都城税務署長が令和4年8月30日付けでした原告の令和3年分相続税に係る更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分を取り消す。

第2 事案の概要等
 本件は、原告が、相続により取得した取引相場のない株式の価額について、財産評価基本通達(以下「評価通達」という。)の定める評価方法により評価して相続税の申告をした後、当該株式の評価額が過大であったとして更正の請求をしたところ、処分行政庁から、更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という。)を受けたことから、本件通知処分の取消しを求める事案である。
1 関係法令等の定め
 関係法令等の定めは、別紙のとおりである。なお、同別紙で定める略称等は、以下の本文においても用いる。
2 前提事実(当事者間に争いがないか後掲各証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実並びに当裁判所に顕著な事実)
(1)相続の開始

ア 原告の父である◆◆◆◆(以下「本件被相続人」という。)は、令和3年7月19日に死亡し、その相続(以下「本件相続」という。)が開始した。本件相続に係る共同相続人は、本件被相続人の妻及び本件被相続人の子である原告ほか2名の合計4名である。
イ 原告及び前記アの共同相続人らは、令和4年4月27日付けで、本件相続に係る遺産分割協議を成立させ、これにより、原告は、本件被相続人の相続財産のうち、株式会社△△△△(以下「本件評価会社」という。)の株式4976株(以下「本件株式」という。)の全てを取得した。
(2)本件評価会社について
ア 本件評価会社は、宮崎県都城市(以下省略)に本店を置き、昭和38年2月5日に設立された、建築用金物及びその他建設用資材器具工具類の販売等を目的とする株式会社である。
  本件相続に係る本件評価会社の直前期末は、令和2年5月1日から令和3年4月30日までの事業年度の末日である。
イ 本件株式は、評価通達168の(3)に定める「取引相場のない株式」に該当する。
ウ 本件評価会社は、評価通達178に定める規模区分が「中会社」に該当するが、同通達183に定める3つの比準要素のうち、「1株当たりの配当金額」(同項(1))及び「1株当たりの利益金額」(同項(2))がいずれも0であり、かつ、直前々期末を基準にして同項の定めに準じそれぞれの金額を計算した場合にも、「1株当たりの配当金額」及び「1株当たりの利益金額」がいずれも0である。
  このため、本件株式は、評価通達189の(1)に定める「比準要素数1の会社の株式」に該当し、同通達178ただし書の「特定の評価会社の株式」に該当する。
  なお、本件株式は、本件相続の開始日において、評価通達188に定める「同族株主以外の株主等が取得した株式」に該当せず、同通達189に定める「特定の評価会社の株式」のうち同項の(2)から(6)のいずれにも該当しない。
エ 本件相続の開始時点における本件株式の類似業種比準価額は834円、1株当たりの純資産価額(相続税評価額)は5368円である。
(3)本件訴えに至る経緯
ア 相続税の申告
 原告は、令和4年5月10日、前記(1)アの共同相続人らと共に、処分行政庁に対し、別表1の①欄のとおり、本件相続に係る相続税の申告書(以下「本件申告書」という。)を法定申告期限までに提出した(以下、本件申告書による申告を「本件申告」という。)。
 本件申告書に添付された「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」において、本件株式の1株当たりの価額は、評価通達189−2ただし書に従い、以下の算定方法(Lを0.25とする併用方式)により、4234円と評価されていた。(甲1)
算式:(834円×0.25)+(5,368円×0.75)=4,234円
イ 本件通知処分
 原告は、令和4年5月20日、本件評価会社は評価通達178に定める「中会社」に該当するから、本件株式の価額についてはLを0.60とする併用方式により算定し、1株2647円と評価すべきであったとして、処分行政庁に対し、別表1の②欄のとおり、更正の請求(以下「本件更正請求」という。)をした。(甲2)
 処分行政庁は、令和4年8月30日付けで、原告に対し、別表1の③欄のとおり、本件更正請求について、更正をすべき理由がない旨の本件通知処分をした。(甲3)
ウ 審査請求
 原告は、令和4年9月7日、国税不服審判所長に対し、別表1の④欄のとおり、本件通知処分の取消しを求めで審査請求をした。(甲4)
 国税不服審判所長は、令和5年6月13日付けで、別表1の⑤欄のとおり、上記審査請求を棄却する旨の裁決をした。(甲5)
エ 本件訴えの提起
 原告は、令和5年12月1日、本件訴えを提起した。(顕著な事実)
3 争点
 本件の争点は、本件通知処分の適法性であり、具体的には、本件申告における本件株式の評価額が、相続税法22条に規定する「時価」を上回るか否かである。
 なお、本件申告のうち、本件株式の評価額以外の部分の金額や計算については、当事者間に争いがない。
4 争点についての当事者の主張
(原告の主張)
(1)総論

 以下のとおり、比準要素数1の会社が継続企業であるにもかかわらず、特定の評価会社として別段の定め(評価通達189の(1))を置いているのは誤りである(後記(2))。また、評価通達189−2については、Lの割合を0.25とするのは違法である(後記(3))。したがって、比準要素数1の会社についても、評価通達179の定める原則的評価方式によって計算した金額が相続税法22条に規定する時価である。
 本件評価会社は中会社であり、評価通達179の(2)によりLを0.6として株式の価額を評価すべきであるから、本件株式の価額は、1株当たり2647円となり、本件申告における本件株式の評価額は、これを上回っている。
(2)比準要素数1の会社を特定の評価会社として評価すること自体が誤りであること
ア 継続企業が赤字会社に転落した場合、会社が配当を出すことは不可能に近い。無配当の黒字会社であったが、赤字会社に転落した場合、あるいは、赤字会社で配当はしていたが、無配当になった場合には、継続企業を前提とすれば、株価は低くなるのが一般的な常識や感覚である。すなわち、継続企業の2つの要素(利益と配当)が0となった場合、常識的な取扱いとして、株価は従来と同額か、又は、より低く評価されるべきである。
  ところが、評価通達189−2は、会社の規模を基準としているはずのLの割合を0.25としている。これは、原則的評価方式である評価通達178及び179の(2)により中会社である本件評価会社に適用されるLの割合0.6よりも著しく低く、本件評価会社が赤字に転落したことが本件株式の価値の増加要因として評価されていることになり、不合理である。
  このように、継続企業において、当期に経営内容が悪化しているにもかかわらず、前期よりも株式評価を高くする仕組みを取っている評価通達189−2の定めは、著しく不合理であり、相続税法22条に規定する時価を適正に評価しているとはいえない。
イ また、比準要素数1の会社は上場廃止になるわけではないにもかかわらず、評価通達では、上場会社のうち比準要素数1の会社は、標本会社から除かれている。収益性を考慮するのであれば、類似業種比準価額を採用するに当たり、上場会社から退場させられていない会社を除外することなく、むしろ比較させることが理にかなっていることは明らかである。比準することが可能であるにもかかわらず、あえて標本会社からこれらの会社を除外することに合理性はない。
  加えて、比準要素数1の会社は上場企業に比準する前提を欠くとしながら、類似業種比準価額の計算において比準要素のうち2つは0として乗数の一部に組み込まれ計算がされており、不合理である。
  このように、比準要素数1の会社を上場会社である標本会社から排除する一方で、類似業種比準価額の計算において比準要素のうち2つは0として比準させることは、矛盾した計算方法である。
ウ 比準要素数1の会社であっても、営利を目的とする継続企業として会社規模を維持して活動している。純資産価額は、比準要素のうち純資産のみを評価の対象とするもので、開業前又は休業中の会社や、開業後3年未満の会社については妥当性があるものの、比準要素数1の会社は、特定の決算期において比準要素が0となるものであり、臨時的な現象にすぎない。
  比準要素数1の会社について、継続企業としての実態を無視・否定して、収益性を全く考慮しない評価方法である純資産価額方式を原則とする形で採用すること自体が不合理であり、継続性を前提とする企業の場合には、類似業種比準価額方式を原則とすべきである。
エ したがって、比準要素数1の会社を除外して別途の評価方法を定める必要はなく、評価通達189の(1)自体が不合理なものであるから、比準要素数1の会社の株式についても、同通達179の定める原則的評価方式によるべきである。
(3)Lの割合を0.25と定めることも著しく不合理であること
ア 併用方式に係る算式(ア)は、(イ)のように変形することができる。
 (ア)類似業種比準価額×L+1株当たりの純資産価額(相続税評価額)×(1−L)
 (イ)株価=1株当たりの純資産価額(相続税評価額)−L×(1株当たりの純資産価額(相続税評価額)−類似業種比準価額)
  この算式から、①株価は、1株当たりの純資産価額(相続税評価額)を超えることはないこと、②Lの割合が大きくなると株価は下がること、③株価と「会社規模」とは負の相関関係にあること、④「会社規模」は、1株当たりの純資産価額(相続税評価額)と類似業種比準価額の配分割合を示していることがいえる。
  類似業種比準価額が1株当たりの純資産価額(相続税評価額)を上回る場合は、1株当たりの純資産価額(相続税評価額)を限度としているため、問題はない。他方、1株当たりの純資産価額(相続税評価額)のほうが高い場合には、類似業種比準価額の比重が高いほど、すなわちLの割合が大きいほど株価は下がることになる。Lの割合は「会社規模」にほかならず、株式評価における各決算期において、全く変化していない。
  一方、評価通達189−2は、収益性を加味してLの割合を0.25としている。小会社におけるLの割合である0.5の半分としたものであるが、0.25の数値には全く根拠がなく、著しく不合理である。
イ 本件評価会社は、比準要素数1の会社として、類似業種比準価額の適用割合であるLが本来の0.6から0.25とされたことが原因となり、株価が上昇している。収益が下がっているにもかかわらず株価が上昇するのは、そもそも0.25が誤っているからである。
  すなわち、比準要素数1の会社の評価は、その計算過程において、その実態が上場企業に比準する前提に欠けるとしながら、計算の一部は比準させ、さらに、比準すべき適用割合の算定につき、「収益」と「会社規模」に比例関係はないにもかかわらず、Lの割合(「適用割合」又は「会社規模」)を算定しており、かかる評価方法は、明らかに不合理である。
  本件評価会社の「会社規模」(Lの割合)は、0.25ではなく0.6のままであることが明らかである。継続企業にとっては、0.6が適用されるべき数値であり、「収益」として0.25に置き換えられるべき数値ではないから、比準要素数1の会社の評価についてLの割合を0.25とすることは、一般的な合理性に著しく欠ける。
(被告の主張)
(1)評価通達の定める比準要素数1の会社の株式の評価方法は、適正な時価を算定する方法として合理性を有するものであること

 評価通達は、一般の評価会社の株式について、会社の規模等の実態に即した評価方法を定めるとともに、特定の評価会社の株式についても、別途評価方法を定め、特定の評価会社の株式の一つとして、比準要素数1の会社の株式の評価方法を定めている。
 そして、評価通達の定める比準要素数1の会社の株式の評価方法は、比準要素の半分以上を欠くため上場会社に比準する前提を欠くとの考え方から純資産価額方式を原則としつつも、休業中の会社や清算中の会社の株式について純資産価額方式により評価することや、小会社の株式について2分の1のウエイトで類似業種比準方式を併用していることとのバランスをも考慮し、Lの割合を0.25とする類似業種比準方式の併用の選択も認めるというものであり、かかる評価方法は、比準要素数1の会社の実態を反映した合理性を有する方法というべきである。
(2)本件申告における本件株式の評価額は、評価通達の定める評価方法に従って決定されたものであること
 本件申告における本件株式の1株当たりの価額は、4234円と評価されているところ、この価額は、納税者が選択可能な併用方式による評価額である。したがって、本件申告における本件株式の評価額は、評価通達の定める評価方法に従って決定されたものである。
 当該評価額は、本件相続の開始日における本件株式の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るものではないと推認される。
(3)結論
 以上によれば、本件申告における本件株式の評価額は、相続税法22条に規定する「時価」を上回るとはいえない。

第3 当裁判所の判断
1 相続税法22条と評価通達との関係について

 相続税法22条は、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価によると規定しているところ、相続により取得した財産の「時価」とは、相続開始時における当該財産の客観的交換価値をいうものと解される(最高裁平成20年(行ヒ)第241号同22年7月16日第二小法廷判決・裁判集民事234号263頁)。
 そして、財産の客観的交換価値は、必ずしも一義的に確定されるものではなく、個別に評価する方法を採ると、その評価方式、基礎資料の選択の仕方等により異なった評価額が生じることが避け難く、また、課税庁の事務負担が重くなり、課税事務の迅速な処理が困難となるおそれがあることなどから、課税実務においては、各種財産の評価方法に共通する原則や各種財産の評価単位ごとの評価方法を具体的に定めた評価通達によって、画一的な評価方法により財産を評価することとしている。評価通達がいわゆる評価の安全性を考慮して財産の評価方法を定めていることも考慮すれば、上記のような取扱いは、適用される評価通達が合理的なものである限りにおいて、納税者間の公平、納税者及び課税庁双方の便宜、徴税費用の節減等の観点からみて相当であるから、相続税法の趣旨に沿うものということができる。
 そうすると、評価対象の財産に適用される評価通達の定める評価方法が適正な時価を算定する方法として一般的な合理性を有しており、かつ、当該財産の相続税の課税価格がその評価方法に従って決定された場合には、当該課税価格は、当該評価方法によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情の存しない限り、相続開始時における当該財産の客観的交換価値としての適正な時価を上回るものではないと推認するのが相当である。
2 評価通達の定める評価方法の合理性について
(1)取引相場のない株式の原則的評価方式について

 評価通達は、取引相場のない株式について、評価会社をその事業規模に応じて大会社、中会社及び小会社に区分した上(同通達178)、それぞれの区分に応じて、大会社の株式の価額につき類似業種比準方式又は納税義務者の選択により純資産価額方式によって評価し、中会社の株式の価額につき類似業種比準方式と純資産価額方式との併用方式又は納税義務者の選択により純資産価額によって評価し、小会社の株式の価額につき純資産価額方式又は納税義務者の選択によりLを0.5として併用方式によって評価するものと定めている(同通達179)。
 上記のような評価通達における原則的評価方式の定めについては、取引相場のない株式の発行会社である評価会社にはその規模が上場会社に匹敵するものから個人企業とさほど変わらないものまで千差万別のものがあることを踏まえ、それぞれの会社の規模等の実態に即した株式の評価を行うための評価方式として、合理的なものであると認められる。
(2)比準要素数1の会社の株式の評価方法について
ア 評価通達は、特定の評価会社の株式の価額について、同通達179の原則的評価方式によらず、同通達189の定めにより評価することを定めた上(同通達178ただし書)、特定の評価会社のうち比準要素数1の会社の株式の価額について、純資産価額方式により評価することとしつつ、納税義務者の選択により、Lを0.25とする併用方式により計算した金額により評価することができる旨定めている(同通達189、189−2)。
イ 類似業種比準方式は、標本会社として採用されている上場会社に匹敵する評価会社について、配当金額、利益金額及び純資産価額(帳簿価額)という3つの比準要素により、業種別の上場会社の平均株価に比準して評価会社の株価を算定する評価方法であるから、このような評価方法により適正に株価を算定するためには、評価会社が、標本会社である上場会社と同様に正常な営業活動を行っていることが前提条件となる。しかるに、比準要素数1の会社は、3つの比準要素のうちいずれか2つが0であるため、標本会社である上場会社と同様に正常な営業活動を行っているとはいえないから、標本会社である上場会社の平均株価に比準する前提を基本的に欠くものであって、原則的評価方式と同じような方法・割合で類似業種比準方式を適用することは相当でない。
  そうすると、比準要素数1の会社の株式について、特定の評価会社として原則的評価方式とは異なる評価方法により評価することは、十分に合理的なものであると認められる。
ウ 次に、比準要素数1の会社は、業績が低調であっても事業を継続しているという点で、開業前又は休業中の会社(評価通達189−5により純資産価額方式が適用される。別表2−2参照)とは差異があるといえることに鑑み、また、前記イの点を勘案すると、その株式の評価に当たり、純資産価額方式により算定するほかに、納税者の選択により、収益要素(利益及び配当)を算式上も加味した評価方法である類似業種比準方式を原則的評価方式よりも低いウエイトで併用することにも、十分な合理性があるといえる。
  そして、併用方式における類似業種比準方式の適用割合であるLの値については、正常な営業活動を行っていると考えられる(すなわち、比準要素のうち2つ以上が0の会社に該当しない)小会社の株式の価額について、原則的評価方式として併用方式を適用する場合の類似業種比準方式の適用割合(L)が0.5とされていること(前記(1)参照)との均衡上、比準要素数1の会社の株式の価額の評価に当たっては、これより低い割合で類似業種比準方式を適用することが適当であるから、評価通達189−2においては、併用方式におけるLの値を0.25としたものと認められ(乙11)、このことについて不合理な点は見当たらない。
エ 以上によると、比準要素数1の会社の株式の価額について、原則的評価方式とは異なる評価方法によることとした上、納税者の選択により、Lを0.25とした併用方式によって評価することを認める評価通達の定めは、合理的なものということができる。
(3)原告の主張について
ア 原告は、継続企業において、当期に経営内容が悪化しているにもかかわらず、前期よりも株式評価を高くする仕組みを取っている評価通達189−2の定めは著しく不合理であり、比準要素数1の会社を特定の評価会社として評価すること自体が誤りであって、評価通達179の定める原則的評価方式により評価すべきである旨主張するが、前記(2)イで説示したとおり、比準要素数1の会社の株式について、原則的評価方式と同じような方法・割合で類似業種比準方式を適用することは相当でなく、特定の評価会社として原則的評価方式とは異なる評価方法により評価することは、十分な合理性がある。
  この点に関し、原告は、継続企業の比準要素のうち利益と配当が0となった場合の常識的な取扱いとして、株価は従来と同額か、又は、より低く評価されるべきである旨主張するが、その根拠としては、類似業種比準価額の算定に当たり、3つの比準要素のうち1つ以下が0の場合と比較して、2つが0の場合には価額が下がるとするのみであり、類似業種比準方式の算式を前提としている点で、上記主張の的確な根拠とはなっていない。その他、本件記録を精査しても、比準要素のうち2つが0の場合に必ず株式価値が下がることを認めるに足りる証拠はないし、評価通達189−2の定める評価方法が適正な時価を算定する方法として一般的な合理性を有していることを否定する事情も見当たらない。
イ 原告は、①比準要素数1の会社は上場廃止になるわけではないにもかかわらず、上場会社のうち比準要素数1の会社が標本会社から除外されていることは不合理である、②比準要素数1の会社を標本会社から排除する一方で、類似業種比準価額の計算において比準要素のうち2つは0として比準させることは矛盾した計算方法である旨主張する。
  しかしながら、①類似業種比準方式は、上場会社の平均株価に比準させて評価会社の株式の価値を算定する評価方法であるから、その基礎となる類似業種の株価は、正常な経営状態にある上場会社の平均株価とすることが相当である。しかるに、3つの比準要素のいずれか2つ以上が0である上場会社は、正常な経営状態にあるとはいい難いから、類似業種の株価の算定に当たり、かかる上場会社を標本会社から除外すること(乙12)には合理性がある。したがって、上場会社のうち、3つの比準要素のいずれか2つ以上が0である会社を標本会社から除外して類似業種の株価を算定することが不合理であるとは認められない。
  また、②類似業種比準価額の算定に当たっては、評価通達180の算式によることになるのであるから、評価会社において、ある比準要素が0の場合にはこれを0として算式に当てはめるのは当然であり、このことが矛盾した計算方法であるとか、不合理であるなどということはできない。
ウ 原告は、評価通達189−2が、比準要素数1の会社の株式について、継続企業としての実態を無視・否定し、収益性を全く考慮しない評価方法である純資産価額方式を原則としていることは不合理である旨主張する。
  しかし、原告は、評価通達189−2ただし書に基づき、本件株式の価額を併用方式により算定して本件申告を行ったのであるから(前提事実(3)ア)、評価通達189−2が比準要素数1の会社の株式について純資産価額方式を原則としていることは、本件申告の適否とは何ら関係がなく、原告の上記主張は、失当である。
エ 原告は、Lの割合は「会社規模」にほかならないとした上、評価通達189−2がLの割合を0.25としたのは全く根拠がなく、著しく不合理であるとか、「収益」と「会社規模」に比例関係はないにもかかわらず、Lの割合を0.25と定めたことは誤りであるなどと主張する。
  しかし、併用方式に係る算式(評価通達179の(2))が、類似業種比準価額にLを乗じた数値と1株当たりの純資産価額(相続税評価額)に(1−L)を乗じた数値とを足し合わせるというものであることからすると、Lの値が示すものは、本来、株価算定における類似業種比準方式の適用割合にすぎない。確かに、評価通達179の定める原則的評価方式の下では、Lの値は評価会社の規模と連動しているということができるが(なお、大会社の株式を類似業種比準方式により算定することは、Lを1.0とする併用方式により算定するのと実質的に同義である。)、これは、取引相場のない株式の発行会社には、上場会社に匹敵するような規模の会社から、個人企業とさほど変わらないものまで千差万別のものがあることを踏まえ、評価通達においては、課税の明確性、公平性の観点も勘案して、類似業種比準方式の適用割合を評価会社の規模と連動させたものと解される。
  これに対し、比準要素数1の会社は、評価会社の規模にかかわらず、標本会社である上場会社の平均株価に比準する前提を基本的に欠いており、上記のような原則的評価方式と同じような方法・割合で類似業種比準方式を適用することは相当でない(前記(2)イ)。そして、前記(2)ウで述べたとおり、比準要素数1の会社の株式の評価において、併用方式におけるLの値が0.25とされたのは、評価通達179の(3)が小会社の株式の評価に当たり併用方式におけるLの値を0.5としていることとの均衡を踏まえたものである。すなわち、評価通達179の(3)が適用される小会社は、特定の評価会社に当たらない小会社であり(同通達178参照)、比準要素数1の会社等は除かれているため、標本会社たる上場会社の平均株価に比準する前提を欠くものではないのに対し、比準要素数1の会社は、上述のとおり、標本会社たる上場会社の平均株価に比準する前提を基本的に欠くのであるから、併用方式により評価するに当たり、類似業種比準方式の適用割合を小会社のそれよりも低く定めることには十分な合理性がある。
  そうすると、Lの値を0.25としたことに全く根拠がないとか、誤りであるなどということはできないし、評価通達189−2が適用される場面においては、評価会社の規模は、何ら関係がないといわざるを得ない。
オ 以上のとおり、原告の主張はいずれも採用することができず、原告の提出する□□税理士の各意見書(甲6、7、10)を踏まえても、評価通達189−2が不合理であるということはできない。
(4)小括
 以上によれば、比準要素数1の会社の株式の価額について、評価通達の定める評価方法には合理性があると認められる。
3 本件株式の評価額及び本件通知処分の適法性について
(1)以上のとおり、比準要素数1の会社の株式の価額について、評価通達の定める評価方法には合理性があると認められるところ、本件申告における本件株式の評価額は、比準要素数1の会社の株式として、評価通達の定める評価方法に従って算出されたものであり(前提事実(2)ウ、(3)ア)、その評価方法によるべきではない特別の事情も見当たらないから、かかる評価方法に従って算出された金額は、本件株式の適正な時価を上回るものではないと推認される。
  そして、本件相続の開始時点における類似業種比準価額は834円、1株当たりの純資産価額(相続税評価額)は5368円であるから(前提事実(2)エ)、これを基に評価通達189−2に定める併用方式により算出した本件株式の評価額は、1株当たり4234円となる。
  本件申告における本件株式の評価額(前提事実(3)ア)は、これと同額であるから、本件相続の開始時点における本件株式の適正な時価を上回るものではないと認められる。
(2)よって、本件更正請求は、国税通則法23条1項1号の要件を満たさないから、本件更正請求に理由がない旨の本件通知処分は、適法である。

第4 結論
 以上の次第で、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第3部
裁判長裁判官 篠田賢治
裁判官 高部祐未
裁判官金澤康は退官のため、署名押印することができない。
裁判長裁判官 篠田賢治

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