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解説記事2020年04月27日 ニュース特集 新型コロナ影響下での定時株主総会の開催(2020年4月27日号・№832)

ニュース特集
弾力的な継続会の開催も
新型コロナ影響下での定時株主総会の開催


 新型コロナウイルス感染症による影響で決算や監査業務のスケジュールの遅れが懸念されている。決算発表の延期が相次ぎ、定時株主総会を延期する会社も現れている。ディップ(2月決算会社)は新型コロナウイルス感染症予防のため5月下旬に予定していた株主総会を延期すると公表。今回の新型コロナウイルス感染症の影響による定時株主総会の延期は初めてだ。また、東芝(3月決算会社)は6月下旬に予定していた定時株主総会を7月以降に延期する旨を明らかにしている。金融庁は3月決算会社の有価証券報告書の提出期限を一律で9月末まで延長することを正式決定したが、やはり問題となるのは定時株主総会の開催時期だ。法務省は新型コロナの影響による定時株主総会の延期について合法であるとの見解を示しているが、剰余金の配当の基準日が後ろ倒しになることで当初の株主と異なることに懸念を示す会社も多い。
 このような中、金融庁に設置された「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応に係る連絡協議会」は4月15日、定時株主総会の運営に関し、当初予定した時期に定時株主総会を開催し、取締役の選任等を決議するとともに、継続会において計算書類、監査報告等の説明を行うとする方法を選択肢の1つとして示している(本誌831号12頁参照)。本特集では、3月決算会社における定時株主総会における対応を考察する。

取締役会に剰余金の配当を授権していれば株主総会の延期も実現可能

 日本の会社の場合、3月決算会社の多くは、定時株主総会の議決権及び期末の剰余金の配当に係る基準日を3月末日とする旨を定款に定めている。これにより、毎年定時株主総会の議決権及び期末の剰余金の配当に係る基準日を定め、公告することを省略することができる(会社法124条3項)。
 しかし、今回の新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)の拡大により、会社の決算及び監査業務のスケジュールが遅れており、6月に定時株主総会を開催することが困難な会社も出てくることが懸念されている。
会社法上、株主総会の延期は可能
 このため法務省は2月28日付で、新型コロナに関連し、定款で定めた時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合であっても、その状況が解消され、その後、合理的な期間内に株主総会を開催すれば足りるとの見解を公表している(本誌826号11頁参照)。東日本大震災の時と同様、今回の新型コロナの影響で定時株主総会を延期したとしても、会社法上は違法とはならないわけだ。
株主の権利は基準日から3か月以内
 とはいっても基準日の株主が行使できる権利は基準日から3か月以内に行使するものに限られているため(会社法124条2項)、定時株主総会を延期する場合には改めて基準日を定めて公告する必要がある。特に基準日を後ろ倒しにすれば、3月末の株主が剰余金の配当を受けることができなくなるため二の足を踏む企業が多いのが現実だ。

定時株主総会を延期する際の改選役員等の任期は?
 法務省が4月13日に公表した「商業・法人登記事務に関するQ&A」では、新型コロナウイルス感染症の影響で定時株主総会を延期した場合の改選期にある役員及び会計監査人の任期の取扱いを明らかにしている(本誌831号13頁参照)。それによると、改選期にある役員及び会計監査人の任期は、定時株主総会を開催することができない状況が解消された後、合理的な期間内に開催された延期後の定時株主総会の終結の時までになるとの見解を示している。

ディップと東芝は株主総会を延期も配当の基準日は変更せず

 この点、取締役会に剰余金の配当を授権することを定款で定めている会社については、決算が終了しているということが前提にはなるものの、3月末の株主に剰余金の配当を行い、改めて株主総会での議決権のための基準日を定めることにより、7月以降に定時株主総会を開催することが可能だ。
 2月決算会社のディップは、新型コロナ感染予防のため5月下旬に予定していた株主総会を7月29日に延期すると公表している(4月7日付)。定時株主総会に係る議決権の基準日については4月30日と公告し、剰余金の配当の基準日は当初と同じく2020年2月29日とすることを取締役会で決議している。
 また、3月決算会社の東芝は4月18日、新型コロナ拡大に伴い世界各地域で行われているロックダウンにより海外子会社の決算手続きに遅延が生じる可能性があることや、従業員や会計監査人の安全確保に十分配慮を行いながら決算業務を行う観点などから決算発表を延期するとともに、定時株主総会を7月以降に延期する旨を公表した。定時株主総会の議決権の基準日は5月15日と公告するとしたものの、ディップと同じく剰余金の配当の基準日(3月31日)は変更していない。
 ただこの方法ができるのは、ディップや東芝のようにすでに定款で取締役会に剰余金の配当を授権しているケースのみ。全国株懇連合会が昨年11月18日に公表した2019年度全株懇調査報告書によると、剰余金の配当等の取締役会授権に関する定款を規定している上場会社は748社(全株懇加盟会社のうち回答会社数1,759社)となっている。それ以外の会社(剰余金の配当の決議を定時株主総会にしている会社)が定時株主総会を延期する場合は、剰余金の配当の基準日も当初の基準日とは異なることになってしまう。市場においては定款の基準日に基づいて配当落ち等を前提に株価が形成されていることを踏まえると、難しい選択肢といえよう。
 また、取締役会に剰余金の配当を授権しているケースであっても6月中に決算を確定していなければ当初の基準日の株主に配当することは難しい。従来のスケジュールよりは余裕ができるものの、決算及び監査業務を早めに進めることに変わりはない。
多くは6月中の開催を予定
 なお、東京証券取引所が4月7日に公表した2020年3月期上場会社の定時株主総会の動向によると、新型コロナの影響で7月以降に株主総会を開催するか検討している企業は5.6%(約40社)となっている(調査対象は726社)。多くの会社は6月中の定時株主総会の開催を前提に動いているようだ。

東日本大震災の時は4社(3月期決算)が株主総会を延期
 今回のような状況は東日本大震災の時と重なる部分がある。東日本大震災の際も被害が甚大であったため、平成23年3月決算会社の6月の定時株主総会の開催が危ぶまれていた。同じく法務省は定時株主総会を延期することを容認する見解を示していたが、当編集部の調べでは、定時株主総会を7月以降に延期したのは「やまや」(東証1部)、「東洋刃物」(東証2部)、「ジー・テイスト」(JASDAQスタンダード)、「山大」(JASDAQスタンダード)の4社にすぎなかった。このうち「やまや」は取締役会に剰余金の配当を授権していたケースで、他の3社は無配当だった。
 ただ、「やまや」「東洋刃物」「山大」の3社は被害が大きかった宮城県を本社に置く会社であり、物理的に定時株主総会を開催できなかったことが伺われる。一方、今回は、世界的に新型コロナ感染症が拡大し6月下旬に収束しているかも不明であり、定時株主総会を開催することが出席者の感染リスクを増やしてしまうとの懸念がある点で、東日本大震災の時とは違った難しい面がある。総会を開催する際には、株主総会出席を控える旨の呼びかけや総会の時間短縮など、経済産業省及び法務省が4月2日に公表した「株主総会運営に係るQ&A」(本誌830号13頁参照)などを参考に、安全及び予防に十分に配慮することが必要になろう。

継続会、改めて基準日を定めなくても当初の株主が出席可能

 決算や監査業務のスケジュールの遅れる中、金融庁に設置された「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応に係る連絡協議会」(以下、「連絡協議会」という)は4月15日、「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査及び株主総会の対応について」を取りまとめた(8頁参照)。定時株主総会の運営に関し、当初予定した時期に定時株主総会を開催し、取締役の選任等を決議するとともに、継続会において計算書類、監査報告等の説明を行うとする方法を示している。連絡協議会は金融庁を事務局とし、日本公認会計士協会、企業会計基準委員会、東京証券取引所、日本経済団体連合会がメンバーとなっており、オブザーバーとして法務省、経済産業省、全国銀行協会が参加している。
 株主総会の対応については、法令上、6月末に定時株主総会を開催することが求められているわけではなく、日程を後ろ倒しにすることは可能であるとした上で、当初予定した時期に定時株主総会を開催する場合には継続会という手続をとることも考えられるとしている。有価証券報告書等の提出期限が、企業側が個別の申請を行わなくても一律に令和2年9月末までに延長されることもあり、現実的に採用し得る選択肢の1つといえそうだ。
 具体的には、6月中に定時株主総会を開催し、続行(会社法317条)の決議を求める。当初の株主総会においては、取締役等の選任等を決議するとともに、計算書類、監査報告等は継続会において提供する旨の説明を行うことになる。企業及び監査法人においては、安全確保に対する十分な配慮を行ったうえで決算業務、監査業務を遂行し、これらの業務が完了した後、直ちに計算書類、監査報告等を株主に提供して株主による検討の機会を確保するとともに、当初の株主総会の後、合理的な期間内に継続会を開催するとしている。
継続会開催までの合理的な期間とは?
 継続会については、その開催にあたっては招集手続に関する会社法298条及び299条の規定が適用されないため、当初の株主総会と同一性があるものとされる。したがって、議決権を行使する基準日を改めて定めなくても当初の株主が継続会に出席することができる。ただし、当初の株主総会と同一性を保持するには、当初の開催日から相当の期間内に開催される必要があると解されており、招集通知を発しないということからすると、学説上は「2週間以内」と解されている。
 しかし、法務省では、「2週間以内」というのはあくまでも平時での考え方であり、今回の新型コロナの影響下ではそこまで厳格に考える必要はないとの見解を明らかにしている。連絡協議会では一律の期間を示しているわけではないが、今回は決算が出来た段階で開催すればよいことになる。有価証券報告書の提出が一律で9月末まで延期されていることを踏まえれば、最長で9月末が1つのタイミングとみることができよう。
計算書類等は継続会の2週間前が目安
 また実務上の問題点となっていたのは、当初の定時株主総会の招集通知に計算書類等を添付しなければならないのかという点だ。法務省は、決算が間に合わず、継続会を開催する場合については、継続会の開催までのしかるべきタイミングで計算書類等を送付すればよいとの立場をとっている。継続会の何日前に送付するのが望ましいかは一概には言えないとするが、一般的には継続会の2週間前が1つの目安になるとしている。
継続会で配当を行うには基準日変更が必要
 今回の連絡協議会の株主総会の対応では、継続会における剰余金の配当決議に関しては何ら触れられていない。
 しかし、法務省によると、剰余金の配当決議を継続会で行う場合には改めて基準日を定める必要があるとしている(本誌831号12頁参照)。3月末の株主に剰余金の配当を行うという前提に立てば、会計監査が未了の段階で開催される当初の定時株主総会で配当決議を行うことも考えられるが、配当額が分配可能価額を超えてしまった場合には、取締役がその差額を補てんする義務を負うことになり(会社法462条1項)、リスクは大きいものとなる。

重要資料

新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査及び株主総会の対応について


 令和2年4月15日
 新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた
 企業決算・監査等への対応に係る連絡協議会

 我が国企業の決算が最も集中する3月期決算業務と監査業務が進行中である現下において、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、これらの業務に大きな遅延が生じる可能性が高まっている。
 関係者がこれらの業務を遂行する場合において、当初予定したスケジュールの形式的な遵守に必要以上に拘泥するときは、関係法令が確保しようとした実質的な趣旨をかえって没却することにもなりかねない。また、政府等からの外出自粛の要請への対応が徹底されない場合には、関係者の健康と安全が害されるリスクが高まることとなる。
 こうした認識の下、当協議会は、関係者におかれて、以下の点を踏まえつつ、柔軟かつ適切に対応していくことを求める。
○ 企業及び監査法人においては、今般、有価証券報告書、四半期報告書等の提出期限について、9月末まで一律に延長する内閣府令改正が行われること等を踏まえ、従業員や監査業務に従事する者の安全確保に十分な配慮を行いながら、例年とは異なるスケジュールも想定して、決算及び監査の業務を遂行していくことが求められること。
 その際、企業においては、3月期決算の場合は、通常6月末に開催される株主総会の運営に関し、以下の点を踏まえつつ、対応していくことが求められること。
 −株主総会運営に係るQ&A(経済産業省、法務省:令和2年4月2日)を踏まえ、新型コロナウイルス感染拡大防止のためにあらかじめ適切な措置を検討すること。
 −法令上、6月末に定時株主総会を開催することが求められているわけではなく、日程を後ろ倒しにすることは可能であること。
 −資金調達や経営判断を適時に行うために当初予定した時期に定時株主総会を開催する場合には、例えば、以下のような手続をとることも考えられること。
  ①当初予定した時期に定時株主総会を開催し、続行(会社法317条)の決議を求める。当初の株主総会においては、取締役の選任等を決議するとともに、計算書類、監査報告等については、継続会において提供する旨の説明を行う。
  ②企業及び監査法人においては、上記のとおり、安全確保に対する十分な配慮を行ったうえで決算業務、監査業務を遂行し、これらの業務が完了した後直ちに計算書類、監査報告等を株主に提供して株主による検討の機会を確保するとともに、当初の株主総会の後合理的な期間内に継続会を開催する。
  ③継続会において、計算書類、監査報告等について十分な説明を尽くす。継続会の開催に際しても、必要に応じて開催通知を発送するなどして、株主に十分な周知を図る。
○ 投資家においては、投資先企業の持続的成長に資するよう、平時にもまして、長期的な視点からの財務の健全性確保の必要性などに留意することが求められるとともに、各企業の決算や監査の実施に係る現下の窮状を踏まえ、上記の定時株主総会・継続会の取扱い等についての理解が求められること。

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