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解説記事2026年01月19日 SCOPE HOYA、移転価格税制事案で一部取消し判決(2026年1月19日号・№1107)

日本ガイシ事案とは事実関係が異なると判断
HOYA、移転価格税制事案で一部取消し判決


 各種ガラス及びエレクトロニクス関連素材等の製造・販売等を行うHOYA(株)に対する移転価格税制の適用の是非が争われていた事案では、令和7年6月10日、東京地裁民事51部(岡田幸人裁判長)が処分の一部を取り消す判決を下していたところだが、本誌取材により判決の内容が明らかとなった。
 原告は、「重要な無形資産」を有していないから、「残余利益分割法と同等の方法」を適用すべきでないなどと主張するも認められず、日本ガイシ事案のように設備投資に係る超過減価償却費を分割要因とすべきとの主張も認められなかった。しかし、処分行政庁が選定した国外関連者の比較対象法人が不適切であると東京地裁が判断した結果、13億円の追徴税額が取り消された。

国外関連者の比較対象法人、処分行政庁の選定は不適切

 事案の概要はのとおり。HOYA(株)(原告)は、ハードディスクドライブ(HDD)用のガラス製サブストレートの製造及び販売等を行う国外関連者との取引について、①技術開発等の役務提供及び②知的財産権等の管理の役務提供を行ったことにより支払いを受けた対価の額をそれぞれ益金の額に算入するとともに、③ガラス製サブストレートを購入したことにより支払った対価の額を損金の額に算入して、本件各事業年度に係る法人税の確定申告を行った。

 これに対し処分行政庁は、上記の各取引を一の取引とみた場合に原告の支払う対価の額が独立企業間価格を超えるとして更正処分等を行い、約33億円を追徴課税した。
 原告は、処分行政庁が独立企業間価格を算定するに当たり「残余利益分割法と同等の方法」を採用したことについて、自らは「重要な無形資産」を有していないから、残余利益分割法と同等の方法を用いて独立企業間価格を算定することは合理性を欠くなどと主張し、処分の取消しを求めて訴訟を提起した。なお、平成30年3月20日付け裁決により、本件各更正処分等の一部が取り消されている(約5億円)。
原告・国外関連者双方に重要な無形資産あり
 東京地裁はまず、残余利益分割法と同等の方法の適否について検討。原告の有するガラス製サブストレートの製造に要する超精密研磨、超精密洗浄及び化学強化等に関する技術・ノウハウ(本件技術等)を内容とする特許権等により、競合他社が本件技術等を無償では利用し得ず、原告に比べて高いコストでの生産を強いられるなどして撤退を余儀なくされたと指摘した。また、原告はその結果としてガラス製サブストレート事業の市場における極めて高いシェアを獲得・維持することができたといえる上、要素技術を本件各国外関連者に移管することで技術優位性の高い本件各製品が製造され、原告及び本件各国外関連者に高い売上高が生じたとして、本件技術等は原告独自のものであり、これが所得の源泉であると評価し得るから、重要な無形資産ということができるとした。
 また、本件各国外関連者は、原告から出向者や技術者の短期派遣等を受け、ガラス製サブストレートの量産に関する技術・ノウハウ(本件量産技術等)を形成等していたから、本件各国外関連者の有する本件量産技術等という重要な無形資産の存在によっても、高い営業利益率が生じ、超過利益が発生したものと認定した。
 以上のことから東京地裁は、原告及び本件各国外関連者は、それぞれ重要な無形資産を保有しており、それぞれが保有している重要な無形資産の貢献によって超過利益が発生していたと認められるから、処分行政庁が残余利益分割法と同等の方法を用いたことは適法と判断した。
設備投資費用は分割要因と認められず
 続いて東京地裁は、基本的利益の算定方法の適否について検討。処分行政庁が、ベトナム子会社の比較対象法人としたV社は、主に製造していた製品が消費者向けの家電製品であり、本件各国外関連者のような少数の大規模事業者向けの生産財とはその市場が著しく異なるから、V社を比較対象法人として選定し、かつ利益率について何らの調整も行わなかったことは不適切と判断した。
 さらに東京地裁は、残余利益の配分の適否について検討したが、原告の重要な無形資産の開発のために支出した費用として、研究開発費の額を原告の分割要因としたことは相当であると判断した。また、処分行政庁が、本件各国外関連者の分割要因とした費用についても相当であると判断した。
 これについて原告は、本件各国外関連者が大規模設備投資をしたことにより、生産高が伸びるほど製品1個当たりの生産に必要な費用が減少する規模の利益を享受しているから、これを分割要因として考慮すべきと主張した。
 しかし、その主張に対して東京地裁は、事業規模の類似性については、基本的利益の算定において一定程度考慮されていると指摘した上で、規模の利益を専ら本件国外関連者の側の分割要因とすべきものということはできないなどとした。また、設備投資に係る超過減価償却費を分割要因とすべきとして課税処分の大部分が取り消された日本ガイシ事件判決(42頁参照)と本件では、事実関係が異なるとして原告の主張を斥けた。

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