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解説記事2026年05月18日 特別解説 東京プロマーケット(TPM)市場に上場する会社と会計監査(2026年5月18日号・№1122)

特別解説
東京プロマーケット(TPM)市場に上場する会社と会計監査

はじめに

 東京証券取引所の市場といえば、プライム、スタンダード及びグロース市場が知られているが、もう一つ、東京プロマーケット市場(以下「TPM」という。)が存在する。TPMは開設から約20年弱と歴史が浅く、一般投資家ではなく、国内外のプロ投資家向けの市場でもあることから、プライム、スタンダード等の「一般市場」と比べると、我が国における知名度は決して高いとは言えない。
 しかしながら、詳しくは後述するが、近年ではTPMに上場申請を行う会社が大幅に増加し、TPMは、将来的にTPMを経由してプライム等の一般市場への上場を目指す会社の予備軍が上場する市場としても注目を集めている。本稿では、最初にTPMの概要や主な特徴を簡単に説明した後、TPM市場に上場する会社の概要や傾向、特徴等について調査分析することとしたい。

東京プロマーケットの主な特徴等

 東京プロマーケット(TPM)の母体となるTOKYO AIMは、2008年の改正金融商品取引法により導入された「プロ向け市場制度」に基づき、(株)東京証券取引所グループとロンドン証券取引所の共同出資により創設された(株)TOKYO AIM取引所による運営マーケットとして、2009年6月に開設された。この市場は日本やアジアにおける成長力のある企業に新たな資金調達の場と他市場にはないメリットを提供すること、国内外のプロ投資家に新たな投資機会を提供すること、日本の金融市場の活性化並びに国際化を図ることを目的とし、ロンドン証券取引所の運営するロンドンAIMにおけるNomad制度を参考として「J-Adviser」制度を採用するなど、機動性・柔軟性に富む市場運営の実現を目指している。TPMの主な特徴を表にして示すと、表1のとおりである。東証の他の市場と比較すると様々な面で会社の負担の軽減が図られており、「入口の敷居が低い」市場といえよう。

 なお、上記(注3)に記載した、J-Adviserが調査・確認する「上場適格性要件」と、J-Adviserによる調査・確認の主なポイントは表2のとおりである。

TOKYO PRO Market(TPM)に上場する会社の状況

 ① TPMに上場する会社数
 最初に、TPMに上場する会社数の推移を時系列にして示すと表3のとおりであった。

 市場の開設当初は上場会社数も少なく、ひっそりとしていたが、2021年を過ぎたころから上場会社数が急増し、直近の3年間だけで上場会社数が倍増していることがわかる。なお、2026年2月末日の時点では、上場会社数は168社に増えている。本稿での今後の調査分析はこの168社を対象としており、調査の時点は2026年2月末日現在である。
 ② J-Adviserの顔ぶれ
 次に、担当の上場会社を有するJ-Adviserを、担当の会社数とともに一覧で示すと、表4のとおりであった。

 J-Adviserについては、フィリップ証券と日本M&Aセンターの上位2社のシェアが合計で67%、第3位の宝印刷まで含めるとシェアは80%を超える。最近では新規参入のJ-Adviserが散見されるものの、まだ寡占状態の市場であるといえよう。J-Adviserのパイオニアといえるフィリップ証券をはじめ、中小規模の証券会社、コンサルティング会社、証券印刷会社等が名を連ねており、野村證券や大和証券といった、いわゆる大手証券会社等は1社もJ-Adviserになっていない。
 ③ 担当の会計監査人(監査法人)
 証券取引所の一般市場への上場を目指す場合には、会社は会計監査人を設置して会計監査を受けなければならないが、TPMの場合には、会計監査人の設置は任意である。ただし、年2回発行する必要がある発行者情報(一般市場における有価証券報告書に相当する書類)については、監査法人の監査を受けなければならない。
 調査対象の168社について、担当する監査法人と会社数とを示すと表5のとおりであった。

 TPMに上場する担当会社を有する監査法人のシェアでは、監査法人コスモスが突出しているものの、それ以外については広く分散している印象を受ける。全168社を担当する監査法人は、表5の法人を含め、合計で58法人であった。一般市場に上場する会社の会計監査について過半のシェアを有する4大監査法人が担当したTPM上場会社は、合計で15社(PwCジャパン6社、新日本4社、あずさ3社、トーマツ2社)にとどまった。
 表5に登場する6法人は、いずれも中小規模監査事務所のカテゴリーに属する監査法人ばかりであり、東証のその他の市場(プライム、スタンダード、グロース)に上場する会社の会計監査人とはかなり顔ぶれが異なっていた。
 ④ TPM上場時点での会社の事業年度
 調査対象の168社について、TPM上場時点での事業年度の分布を示すと、表6のとおりであった。

 事業年度と創業時からの年数(社歴)が必ずしもイコールとは限らないが、TPMに上場する168社の上場時点での事業年度は、それぞれのカテゴリーにまんべんなく分布しているような印象を受けた。上場時の事業年度が10期以下の会社は全体の4分の1であり、TPMは創業したての若い会社ばかりが集まっている市場ということでは必ずしもないと考えられる。
 ⑤ 連結財務諸表作成の有無
 TPM上場時に提出された発行者情報において、連結財務諸表の作成状況は表7のとおりであった。

 連結財務諸表を作成している会社よりも作成していない(個別財務諸表のみを作成している)会社のほうが若干上回る結果となった。
 ⑥ TPM上場時の各社の売上高の規模と損益の状況
 TPM上場時の各社の売上高の規模の分布を一覧にすると、表8−1のとおりであった。

 TPM上場各社の上場時の売上高は、各カテゴリーにまんべんなく分布していたが、10億円~20億円が一番のボリュームゾーンであった。なお、調査対象とした会社の中で、TPM上場時の売上高が最大であった会社は(株)アイダ設計で50,044百万円、最小の会社は(株)NPTで、ゼロであった。
 さらに、TPM上場時の当期純利益の状況の分布を一覧にすると、表8−2のとおりであった。

 売上高の分布と比較すると、上場時点での各社の当期純利益の分布ははっきりとした特徴が表れたといえる。すなわち、調査対象である168社の過半数を超える86社の当期純利益の水準が0円超1億円以下のカテゴリーに集中していた。1億円未満の赤字の会社も15社あり、全体のおよそ6割の会社が、「ほぼ収支トントン」の状態で上場していることがわかる。赤字の状態で上場した会社は、全168社のうち19社であった。なお、上場時点での当期純利益が最大であった会社はヒメジ理化(株)で1,560百万円。当期純損失が最大であった会社はC Channel株式会社で1,809百万円であった。
 ⑦ 上場廃止会社数及び他の市場への上場会社数
 東証の他の一般市場と比較してTPMの目立った特徴の一つが、新規上場会社数とともに、上場廃止会社の数も多いということである。入れ替わりや新陳代謝が激しい市場ということがいえよう。東京証券取引所のウェブサイトによると、2025年12月末日までに申請等により上場を廃止したTPMの銘柄は、実に53を数える。また、TPMから一般市場に上場した会社は15社あり、上場先は新興企業向けの市場が中心であるが、必ずしも東証の他の市場(グロース等)とは限らない点に特徴がある。上場先の具体的な内訳は、東証スタンダード3社(旧ジャスダックスタンダード1社を含む(注))、東証グロース3社(旧マザーズ1社を含む)のほか、名証ネクスト3社、名証ネクスト・グロース1社、名証セントレックス・グロース1社、札証アンビシャス1社、福証Q-Board3社となっている。
(注)TPMから旧ジャスダックスタンダード市場(現在は東証スタンダード市場)に上場した(株)歯愛メディカルは、エア・ウォーター株式会社によるTOB(株式公開買付)が成立したことにより、2025年12月に上場廃止となった。

Fukuoka PRO Marketの開設

 2024年12月に、福岡証券取引所は、一般市場、Q-Board市場に続く第三の市場として、特定取引所金融商品市場(以下、「プロ投資家向け市場」)である“Fukuoka PRO Market”(以下、「FPM」という。)を開設した。東京プロマーケットでJ-Advisorと呼ばれている関係者がFPMではF-Advisorとなるなど、細かな名称の違い等はあるが、市場開設の目的や基本的な仕組み等はTPMに倣うものとなっている。
 市場開設と同時に、FPMには7社が上場した(うち、FPMに単独で上場する会社1社、TPMと同時に上場した会社1社、TPMと重複上場の会社が5社)。これら7社のF-Advisorはすべてフィリップ証券であった。
 2026年2月末日の時点では、FPMには15社が株式を上場している(うち、単独上場3社、重複上場12社)。

終わりに

 TPMが2009年に開設されてからしばらくの間は、知名度や注目度がなかなか上がらず、開設から5年が経った2014年の時点では上場会社はわずかに9社。それからさらに5年が経過した2019年の時点においても、上場会社数は合計で33社に過ぎなかった。すなわち、開設から10年強、今からつい数年前までは、TPMは限られたプロ投資家(機関投資家等)の間でしか知られていない「知る人ぞ知る」、ひっそりとした市場であったといえる。
 しかしながら、東京証券取引所の市場区分が、従来の「1部・2部・ナスダック・マザーズ」という区分から、現在の「プライム・スタンダード・グロース」という区分に再編成された2022年ころから、TPMを取り巻く状況は大きく変化した。
 前述したように、2022年からTPMに新規上場する会社数は急増し、2026年2月末日現在、168社もの会社が株式を上場するまでになった。近年は、TPMに上場する企業の数がプライム、スタンダード・グロースといった、いわゆる「一般市場」へ上場する会社数を上回る状態となっている。
 このような活況を受けて、先述したように、TPMに加えて福岡証券取引所も福岡版TPMであるFPMを開設した。FPMも、TPMとの重複上場がほとんどを占めるとはいえ、スタートから1年少々で、上場会社数を7社から15社に倍増させている。
 ここ数年は、他の市場に比べて上場要件が相対的に緩く、企業側の負担が軽いTPMにまず上場してから、TPMで地固めを行って大きく成長できる体制を整えたうえで一般市場への上場を目指そうとする会社が増えてきているとされている。また、これまで新興企業向けの中心的な市場とされてきたグロース市場の上場維持基準が2030年以降「上場5年経過後に時価総額100億円以上」と厳格化されたことから、これまでグロース市場等の一般市場への上場を目指して準備を進めてきた上場予備軍企業の一部が、一般市場への上場からTPMへの上場に方針を切り替える流れが加速すると予想する株式市場関係者も少なくない。
 これまで一部のプロ投資家の間でしかなじみがなかったTPMは、我が国の株式市場において一定の地位を占めるまでになったといえよう。目下の急成長ぶりに鑑みると、その存在感は今後ますます大きくなるものと思われる。

参考資料
日本取引所グループ(東京証券取引所)ウェブサイト
福岡証券取引所ウェブサイト
プロマーケットの今後の方向性について 東京証券取引所 上場推進部 2025年11月13日
週刊経営財務No.3740(2026年2月16日号)

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