税務ニュース2026年10月23日 退職金名目のアーンアウト対価が増加(2026年10月26日号・№1143) 買収後の職務への報酬と認定され給与所得となる可能性
アーンアウト条項とは、M&A後の対象会社の業績目標の達成等に応じた追加対価の支払について定めるもの。令和7年4月21日裁決は、同条項に基づく株式譲渡後3年間の業績に連動した価額調整金を雑所得としたが(本誌1117号参照)、最近、外資系ファンド等によるオーナー企業の買収で、株式売却後も役員として経営に従事したオーナーが、同条項の対象期間満了による退任に伴い、同期間中の業績目標の達成に応じた価額調整金を退職金として受け取る事例が増えている。本誌が把握した事例では、買収後の円滑な業務運営を託されたオーナーに、破格の価額調整金の支給が予定されていた。現時点で税務当局からの指摘はないが、契約上は退職金として支払う旨が明記されていても、退職所得への該当性が否定されるリスクはある。
まず整理する必要があるのが、価額調整金が「株式の取得対価の事後調整」に該当するか否かだ。譲渡時の対価と適正価額との比較や、価額調整金が何を補うものなのかは、「買収対価の後払い」という性格を判断する材料となる。株式譲渡対価としての性質を有し、譲渡後の業績に応じて受給権が確定するなら、上記裁決同様、譲渡所得ではなく雑所得に該当する可能性がある。
また、退職金として支給する場合は、退職に伴う給付としての性質が問われる。退職所得は、退職により一時に受ける給与等に係る所得だが(所法30①)、退職時に支払われても、金額の計算基準等から在職者への賞与等と同じ性質なら給与所得とされる(所基通30−1)。退任時に支払う旨の契約だけでなく、給付の趣旨や金額の算定根拠が重要になる。価額調整金を退職金名目で支給する事例では、基本的な退職金は買収前から確約されていることが多いようだ。それとは別に支給する買収後の業績に連動する金員を、退任時に支払うというだけで、退職所得として扱うハードルは高い。法人税の申告上、価額調整金を損金不算入として所得加算するケースもあるようだが、法人側の損金算入の可否と受取人側の所得区分は別問題であり、所得加算をもって退職所得として扱えるわけではない。
オーナーを買収後も役員に留め経営を担わせ、その間の業績目標に応じて金員を支給するという実態からは、役員の職務に対する委任契約上の報酬と捉えるのが自然であり、給与所得と判断される恐れがあろう。
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