税務ニュース2020年06月19日 審判所、移転価格課税で原処分支持(2020年6月22日号・№839) 一部取消し裁決も、“残余利益分割法に準ずる方法”は最適方法
本事案で課税処分の対象となったのは、請求人が、自動車の排ガス浄化用部品の製造を行うポーランド子会社(本件国外関連者)から、特許及びノウハウ等の使用許諾の対価として受け取るロイヤルティに係る取引。原処分庁は、当該ロイヤルティの金額が独立企業間価格に満たないとして、「残余利益分割法と同等の方法」及び「残余利益分割法に準ずる方法と同等の方法」(本件方法)により独立企業間価格を算定して課税処分を行った。これを不服とした請求人は、原処分庁は本件方法の具体的な内容を明らかにしていないから、本件方法を最適方法として適用することの実体的な適法性要件を欠いていると主張したほか、原処分庁が選定した比較対象法人に誤りがあるなどと主張して、原処分の取消しを求めた。
審判所は、本件方法が最適かについて、「請求人及び本件国外関連者は、本件国外関連取引に係る所得の源泉である重要な無形資産を有しており、両当事者が独自の機能を果たすことにより、独自の価値ある寄与をしていることが認められる。」と指摘し、本件方法を最適方法と判断した。
また、原処分庁の比較対象法人の選定については、選定された7社のうちの1社には重要な無形資産を有する可能性があるから除外すべきとし、除外された1社は関連者間取引の存在は認められず除外すべきでないとしたが、これら以外は原処分庁の選定を適正と認めた。
そのほか、請求人による、基本的利益の算定に用いる指標は平均売上高利益率ではなく事業用資産営業利益率にすべきとの主張や、残余利益の分割に用いる本件国外関連者の重要な無形資産の寄与の程度を測る指標に原材料の維持管理部門に係る費用も加えるべきとの主張はすべて一蹴された。
請求人は、処分の全額の取消しを求め、令和元年12月25日付で東京地裁に訴訟を提起している。なお、請求人は本事案の前の事業年度(4期分)の同様の取引についても、平成28年6月21日付一部取消し裁決を不服として訴訟を提起しており、いまだ東京地裁で係争中である。残余利益分割法に基づく課税処分が適法とされた上村工業(株)の事案(東京地裁令和2年2月28日判決)に続き、またも納税者敗訴となるのか、東京地裁の判断が注目される。
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