税務ニュース2020年08月21日 裁判上の和解に基づく解決金は益金計上(2020年8月24日号・№846) 東京地裁、株式の取得対価の返金ではなく「損害賠償金」と判断
医療及びヘルスケア関連事業を展開するM社は、A社の株式を公開買付けにより取得したが、A社の不適切な会計処理が判明したため、A社の筆頭株主で代表取締役であったB氏らに対し、A社株式取得のために過大な支払いをしたことによる損害が生じたとして訴訟を提起した。その後、裁判上の和解が成立し、同社はB氏らから合計1億4,000万円を解決金として受領した。
M社は、受領した解決金の額を法人税の申告において益金の額に算入するとともに、同額を子会社株式評価損として損金の額に算入したが、課税庁が損金計上を認めず、同社は訴訟を提起するに至った。
東京地裁は、本件和解調書の記載について、本件解決金の法的性質が損害賠償金であることと整合するとした。一方で、和解条項第2項の「本件解決金の支払は、請求人によるA社の株式の取得対価が過大であったことを理由とするものであることを確認する」旨の記載については、本件解決金が本件B氏所有株式の売買代金の減額分であることとも整合する事情であるとしつつも、対象となる株式を本件B氏所有株式に限定していない点や、支払義務が売主であるB氏のみではなく、元取締役C氏及びD氏も含めた一つの連帯債務として構成されている点を指摘、本件解決金の法的性質を損害賠償金とみるべきとした。
また、東京地裁は、本件和解の経緯等についても、本件解決金の法的性質を損害賠償金と解することに整合するとしたが、表明保証条項違反に基づく補償については損害賠償と取得価額の減額の双方の可能性があり、B氏らの代理人が、原告らが提案した和解条項案が、課税を避けるために本件解決金の法的性質を本件B氏所有株式の売買代金の減額分とすることを意図したものであると理解することができた可能性も否定し難いとした。しかしながら、本件別訴における訴訟物には譲渡価格の減額調整としての表明保証条項違反の補償金請求が含まれていない上、原告らが和解期日の席上で行った和解条項案の説明は、本件解決金に対し課税されることを避けるものである旨にとどまり、譲渡価格の調整としての表明保証条項違反による補償金であるといった法的構成の下に本件解決金の支払を求める旨の明確な表示があったとはいえないなどとして、本件解決金の法的性質は損害賠償金であるとした。
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