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解説記事2020年08月24日 ニュース特集 「修・更正の影響」「含み損の二重計上阻止」「所得税額控除」(2020年8月24日号・№846)

ニュース特集
グループ通算制度・政令改正 第二弾
「修・更正の影響」「含み損の二重計上阻止」「所得税額控除」


 「投資簿価修正&支払利子控除計算」(842号4頁〜参照)に続くグループ通算制度・政令改正解説の第二弾では、修・更正があった場合の負債利子控除計算への影響、通算子法人の含み損の二重計上阻止、所得税額控除の3つの論点をとり上げる。
 修・更正があった場合の負債利子控除計算への影響については、修・更正の結果、「各通算法人の関連法人株式等配当額の合計額の4%」と「各通算法人の支払利子合計額の合計額の10%」の金額に“逆転”が生じる場合には修・更正の影響を遮断せず、それ以外の場合は遮断することになる。本特集では、修・更正がグループ通算制度における関連法人株式等に係る負債利子控除の計算に具体的にどのように影響するのか、数字を入れて検証する。
 また、通算グループ内で、含み損のある資産を抱える通算子法人の株式を複数回譲渡することで、含み損の二重計上が可能となる。グループ通算制度ではこうした行為への対応を図ることが令和2年度税制改正大綱に明記されていたところだが、法律及び政令によりその詳細が明確となった。具体的には、通算親法人が通算子法人株式を譲渡した際に計上した譲渡損益調整勘定を、当該通算子法人株式が再譲渡された際に取り崩すことを認めないことにより、譲渡損の二重計上を阻止することになるが、こちらも実際に仕訳例を示しながら処理を明らかにする。
 グループ通算制度では個別申告方式が採用されたことに伴い、所得税額控除額も「各法人」において計算することが令和2年度税制改正大綱に明記されてはいたものの、銘柄別簡便法への影響や通算グループ内で元本の譲渡があった場合の取扱いには法律段階でも言及がなかった。これらの点については、改正政令により、前者は大綱通り、後者は現行の取扱いが維持されることが明らかにされている。

修・更正があった場合の負債利子控除計算への影響

「配当×4%」と「支払利子×10%」の大小が逆転しなければ遮断

 グループ通算制度における関連法人株式等に係る負債利子控除額は、基本的に関連法人株式等配当額の4%と支払利子配賦額の10%の低い方となるが、グループ通算制度・政令改正 第一弾では、その計算手順を示したところだ。
 では、修・更正が生じた場合、これがグループ通算制度における関連法人株式等に係る負債利子控除の計算にどのように影響を及ぼすのか、数字を入れて見ていこう。

 まず、当初申告では上記表のような計算例だったとする。
 上記例でいうと、関連法人株式等配当額の4%が適用できるようになる場合、又は適用できなくなる場合には、修・更正の影響は遮断しない(法令18条⑦)。
 言い換えれば、修・更正の結果、「各通算法人の関連法人株式等配当額の合計額の4%」と「各通算法人の支払利子合計額の合計額の10%」の金額に“逆転”が生じる場合には遮断はせず、それ以外の場合は遮断するということになる(法令18条⑤)。これは、逆転が生じる場合にまで遮断すると、本来あるべき負債利子控除額と乖離が生じてしまうためだ。
 例えば修・更正の結果、下表のとおりPの支払利子合計額が700ではなく1,200になったとする。この場合、グループ全体の支払利子合計額は1,500、その10%は150となる。関連法人株式等配当額の合計額3,000の4%は120であるから、「150(利子)>120(配当)」となり、当初申告の段階、すなわち「120(配当)>100(利子)」と比較すると、利子と配当が逆転している。したがって遮断はせず、再計算が必要となる。
 1,500を関連法人株式等配当額の比で按分すると、支払利子配賦額はP:750、S1:500、S2:250となる。この10%相当額はいずれも関連法人株式等配当額の4%よりも高くなるため、再計算後の負債利子控除額はP:60、S1:40、S2:20となり、高くなる。

「逆転」がなければ、利子増加分は修・更正のあった法人においてのみチャージ

 これに対し、修・更正の結果、Pの支払利子合計額が700から750になったとする。この結果、グループ全体の支払利子合計額は1,050、その10%は105となる。関連法人株式等配当額の合計額3,000の4%は120であるため、「120(配当)>105(利子)」となる。ただし、当初申告の段階、すなわち「120(配当)>100(利子)」と比較すると、配当と利子は逆転していない。したがって、修・更正の影響は遮断され、利子の増加分50は、修・更正のあったPにおいてのみチャージされる一方、S1とS2の支払利子配賦額は固定され、負債利子控除額は影響を受けない。

配当額が変動した場合、支払利子配賦額は「期限内申告額」に固定

 関連法人株式等配当額が変動した場合、支払利子配賦額は「期限内申告額」に固定される。
 例えば修・更正の結果、Pの関連法人株式等配当額が2,500になったとする。この場合も配当と利子の大小関係は「配当(4,000×4%=160)>利子(100)」と当初申告から変わらない。したがって、当初申告における支払利子配賦額は固定され、負債利子控除額も当初申告と変わらないことになる。その理由として、支払利子額が変動しておらず、配当のみの変動であり、グループ全体の支払利子の各通算法人への配賦額が変更されるに過ぎないため、再計算する実益が乏しいということが挙げられる。
 ただし、「利子>配当」と両者の大小関係が逆転した場合(修・更正の結果、関連法人株式等配当額が大幅に減少する場合)はこの限りではなく、遮断しない(再計算する)こととなる。

通算子法人の含み損の二重計上阻止

損失の二重計上への対応が必要になるケース

 グループ通算制度では、通算グループ内における「損失の二重計上」を防止するため、以下のような対応を図ることが令和2年度税制改正大綱に明記されていたところだ。

 通算グループ内の子法人の株式の評価損益及び通算グループ内の他の法人に対する譲渡損益を計上しない。

 ここでいう「譲渡損益を計上しない」とは具体的にどのような処理となるのか、企業や実務家の関心を集めていたが、法律及び6月26日に公布された改正政令により、その詳細が明確となった。
 「損失の二重計上」への対応が必要になるケースとしては、例えば図表1のよう事例が想定される。

【ステップ1】
 PがS1株をS2に譲渡。Pに、S1の含み損資産分の譲渡損が発生。当該譲渡損は譲渡損益調整勘定の設定により繰延べ。

【ステップ2】
 S2がS1株をS3に再譲渡。Pにおける譲渡損益調整勘定は取り崩され、この結果、Pにおいて譲渡損が実現。

【ステップ3】
 その後、S1が含み損資産を譲渡し、譲渡損が実現。

 このように、【ステップ2】と【ステップ3】により、PとS1において損失が二重計上されることになる。

通算親法人の譲渡損益調整勘定取崩し認めず、譲渡損分の利益積立金を控除

 そこでグループ通算制度では、以下の対応を図ることになる。

【ステップ1】
 PがS1株をS2に譲渡。Pに、S1の含み損資産分の譲渡損が発生。譲渡損益調整勘定の設定により繰延べ(法法61の11①)。

 ここまでの処理は現行連結納税制度と同様だが、グループ通算制度ではこの次からが異なる。まず、譲渡損30に対応する分、Pの利益積立金額を減少させる(法令9条一チ)。

【ステップ2】
 S2がS1株をS3に再譲渡するが、Pにおける譲渡損益調整勘定は取り崩さない(法法61条の11⑧)。これによって、譲渡損30は実現されない。
(Pの処理)
 なし

【ステップ3】
 その後、S1が含み損資産を譲渡。譲渡損が実現。

 すなわち、【ステップ2】におけるPの損失計上を認めないことにより、【ステップ3】において、S1の譲渡損失のみが計上されることになるわけだ。

所得税額控除

銘柄別簡便法は通算法人ごとに

 現行連結納税制度上、連結法人が各連結事業年度において配当等の支払いを受ける場合には、当該配当等について課される所得税の額は、配当等の元本の所有期間等に応じた一定の算式に基づき、その連結事業年度の連結所得に対する法人税の額から控除することとされている。
 単体申告との相違点は2つある。まず、配当等の元本が連結グループ内で移転した場合には、連結グループを一体として所有期間を計算するということだ。つまり、元本を譲り受けた連結法人は、元本を譲渡した他の連結法人の所有期間を引き継ぐことになる。
 次に、銘柄別簡便法を選択した場合には、連結グループを一体として計算するという点である。具体的には、所得税額控除の計算には「原則法」と「銘柄別簡便法」があるところ、配当等の元本を株式及び出資、集団投資信託の受益権の2グループに区分し、かつ、配当等の計算の基礎となった期間が1年超のものと1年以下のものとに区分した4区分について、それぞれの区分ごとに原則法か銘柄別簡便法のいずれかの方法を連結グループ全体で選択し、計算することになる。銘柄別簡便法の算式は図表2の通り。

 グループ通算制度では個別申告方式が採用されたことに伴い、銘柄別簡便法や通算グループ内で元本の譲渡があった場合の取扱いへの影響が注目されていたが、令和2年度税制改正大綱では所得税額控除に関する記述は下記にとどまっており、法律段階でも何ら言及がなかった。

 所得税額控除額は、各法人において計算する。

 このうち銘柄別簡便法について政府税調の連結納税専門家会合報告書では、「個別申告方式を前提とすると、所有期間の計算単位(銘柄別簡便法)も法人ごととすることが事務負担の観点から合理的である」とされていたことを踏まえ、企業・実務家の間では、銘柄別簡便法の上記算式を改め、通算グループ全体の数値を合計するのではなく、各通算法人で所得税控除額を計算することになるものと予想されていた。そして、このたび公布された改正政令では、その通りの内容が明らかにされている(法令140の2③)。

通算グループ内の元本譲渡では、譲受法人が譲渡法人の所有期間引継ぎ

 また、通算グループ内で元本の譲渡があった場合の取扱いについては、専門家会合の議論の過程で出された資料において「現行制度では、連結グループ内で元本の譲渡があった場合、譲渡を受けた法人がその元本をもとから持っていたことにする取り扱いとされており、当該制度は現行制度のままとしてはどうか」という記述があったことから(専門家会合第4回会合資料)、現状の取扱いが維持される可能性があると見込まれていた。
 結論として、本件に関する改正政令は専門家会合の意見の通りの内容となっている。すなわち、通算法人間で配当の元本の譲渡があった場合には、譲渡を受けた法人が譲渡を行った法人の所有期間を引き継ぐこととなる(法令140の2④六)。

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