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民事2007年03月12日 飲酒運転による事故に歯止め、厳罰と重い民事責任 執筆者:塩崎勤

1 飲酒運転は社会的犯罪であり、無免許運転、ひき逃げとともに「交通三悪」として、厳しく非難されてきましたが、飲酒運転による事故は減少する傾向がみられませんでした。
 平成11年11月、東名高速道路において発生した飲酒運転による死亡事故を契機として、飲酒運転を厳罰に処すべきであるとする声が高まり、道路交通法改正や刑法に危険運転致死傷が新設され、飲酒運転で負傷事故を起こした場合は、15年以下の懲役、死亡事故の場合は1年以上20年以下の懲役と法定刑が引き上げられ、罰則が強化されました。
 しかし、その後も飲酒運転が後を絶たず、飲酒運転による悲惨な死亡事故が多発したため、改めて大きな社会問題になり、目下、刑法に自動車運転による業務上過失致死罪の新設や危険運転致死傷罪の適用範囲の拡大が検討されています。

2 飲酒運転により人身事故を起こした場合、運転手は民事責任を負うことはいうまでもありませんが、自動車を運転することを知りながら飲酒を勧めたり、飲酒運転を知りながら同乗した者にも責任を追及しようとする動きが高まりました。
 最高裁は、昭和43年4月26日、他人の自動車を運転して飲酒運転により自損事故を起こした場合、当該運転者とともに飲酒をともにした同乗者2名についても、「飲酒運転を制止すべき社会通念上の責任を果たさなかった」とし、共同不法行為の責任を認めました(判時520号47頁)。そこで、下級審裁判例では、自動車運転者に飲酒を勧め、または自動車運転者とともに飲酒し、飲酒運転を制止せずに、飲酒運転の自動車に同乗した者に共同不法行為責任を認めるものが多くなりましたが(大阪地判平12・11・21判タ1059号165頁、東京地裁八王子支判平15・5・8判時1825号92頁など)、運転者と共同で飲酒し、飲酒運転で事故を起こした自動車に同乗していた者であっても、運転者に積極的に飲酒を勧めたことはないし、運転者が同乗を誘ったものであるとして、共同飲酒同乗者の共同責任を否定した裁判例もあります(京都地判昭61・1・30交通民集19巻1号146頁)。

3 飲酒すると、気分は爽快になり、心身ともリフレッシュしますが、判断力や注意力が低下し、歩行者、信号などの見落としや見誤りが増えるのみならず、危険に対する感覚が麻痺して高速運転などの無謀な運転に走るおそれが高まり、それが多人数の死亡事故などの重大事故を引き起こすことになります。
 したがって、ドライバー一人ひとりは、「飲酒したら自動車に乗らない」、「運転するなら飲酒しない」という固い決意を新たにすべきであろうと思われます。ドライバーの中には、自分は「酒に強いから大丈夫」と考えて自動車を運転する人も少なくないようですが、少量の酒でも運転に危険な影響を及ぼすということを肝に銘じて、決して自動車を運転しないようにすべきであります。
 また、飲酒運転は、もちろんドライバーの意志で避けることができますが、ドライバーとともに酒を飲んで飲酒を勧めたり、飲酒運転の自動車に同乗することも、社会的に非難される行為でありますから、ドライバーに酒を飲まさないようにするなど、お互いに飲酒運転をしない、させないように配慮する必要があります。

4 私は、現在、いろいろな機関で交通事故による損害賠償をめぐる紛争の解決に当たっていますが、飲酒運転による人身事故には悲惨な事故が多く、被害者や遺族に深い悲しみを与えるものですから、このような事故は決して起こしてはならないと思います。

 官民一体、国民一人ひとりの自覚や努力によって、飲酒運転事故を根絶する必要があると強く感じています。

(2007年3月執筆)

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