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企業法務2007年03月16日 小売等の役務商標制度の開始 執筆者:櫻林正己

 平成18年法律第55号により、意匠法、商標法その他の知的財産関係の法律改正がなされ、このうち、商標法の改正の一つとして小売等の役務についても商標登録が認められることになりました。

 従前、小売業者等が店舗において行っている商品の多種多様な品揃え、工夫を凝らした商品展示などのサービスは、それ自体としては商標登録は認められていませんでした。すなわち、小売等の業務自体は商標登録が認められる役務ではないとされ、商標登録が認められる商品・役務区分を定めた商標法施行令においても、「小売業、卸売業」は指定役務とされていませんでした。
 
 そのため、小売業者等が商標権による保護を受けようとしたときには、各個別の商品について商標登録を受けるしか方法がありませんでした。

 今回の法改正により、商標法2条2項において「前項〔第一項〕第二号の役務には、小売及び卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供が含まれるものとする。」と明記され、「小売及び卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」についても商標登録が認められることが明文化されました。また、これを受けて商標法施行令も改正され、別表「第35類」として「小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」が含まれることとされました。
 
 これにより、百貨店、スーパーなどの大手小売店や大手卸売業者はもちろん、一般の店舗、卸売業者においても、当該小売、卸売業務を指定役務として商標登録をすることにより、これら業務を商標法によって更に強く保護することが可能になりました。しかし同時に、このような商標登録が認められることによる事業者間の紛争の発生も、今後ありうるところと思われます。

 また、新制度の導入により、出願業務自体についても混乱をきたすおそれもあり、特許庁では新制度の周知徹底を図るべく各地で説明会を行っているところです。

 同制度は、平成19年4月1日から商標登録出願の受付が開始されますが、経過措置として平成19年6月末日まで3か月間の出願は同日出願として扱われ、これにより同日出願とみなされる出願同士については協議命令が出されます(協議が整わない場合、使用による特例(従前使用している人の登録出願を優先する)も認められています。)。

 なお、小売等役務についての商標を改正法施行日の前日である平成19年3月31日以前から不正競争の目的なく継続して使用している者については、先使用権類似の継続的使用権が認められています。

 小売業、卸売業にこのような商標制度が導入されるわけですが、従来からある商品それ自体についての商標権との関係が今度どうなるのか、小売業等の役務商標制度自体、今後どのように運用され、どのような問題が生じるのか予測しがたい一面があります。制度の今後の展開が注目されるところです。

(2007年3月執筆)

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