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建設・運輸2014年03月17日 この不具合、瑕疵ですか? 建築訴訟に求められる弁護士の役割 執筆者:森田桂一

1 工事の不具合と4つの法的効果

 住宅建築は、多くの場合、個人にとって一生に一度の大事業であるため、その強い思い入れから、不具合を巡って大紛争になってしまうことがあります。
 もとより、明白な不具合については、補修や場合によっては解約・返金等の対応が求められることは当然のことです。しかし、必ずしも重大ではない不具合については、その対応が極めて悩ましいところです。
 民法上、建築工事の不具合については、その効果に着目し、誤解を恐れずに簡単に整理すると①不具合だが瑕疵に該当せず法的責任が発生しない、②瑕疵に該当し法的責任が発生するが修補義務を負わず金銭解決で足りる、③瑕疵に該当し修補義務及び損害賠償責任が生じる、④重大な不具合であり不法行為と評価され第三者にも責任が発生するの4つのカテゴリーに分かれます。
 この法的評価の分類にあたっては、明確な基準がありません。また、損害賠償により解決する場合、どのような損害が法的に認められるかについても、明確ではありません。
 そこで、施工の不具合に対する対応について、施工業者側と施主側の見解が一致しない場合にどのように解決すべきか、しばしば、現場の相談を受けるところです。

2 不具合に対する対応への「相場観」

 この問題の解決にあたっては、「相場観」が重要な意味を持っています。しかし、この「相場観」の判断は、なかなか厄介な側面が有ります。なぜなら、この判断は、法的判断であり、建築士や職人が現場で身につけてきた職業倫理や経験とも、顧客が心に描く希望とも異なったものであるからです。
 この判断の難しさは、裁判でも顕れてきます。建築訴訟においては、一級建築士などの技術の専門家が審理に参加するのが通常の形態です。一級建築士などの技術の専門家は、「技術」の専門家であり、「不具合」の有無の判断には長けているといえますが、必ずしも、「相場観」の判断にまで優れているとは言いがたいと考えます。
 しばしば、この「相場観」についてまで、建築の専門家が実質的に判断することがあり、建築訴訟において、疑問ある判決につながる例も有ります。
 この「相場観」の判断にあたっては、弁護士がさらなる活躍をする余地があると考えています。もとより、弁護士は建築の専門家ではありませんが、数多くの法的判断の先例に照らしてその妥当性を判断することはできます。近年では、建築訴訟の先例の積み重なりにより、参照すべき先例が増え、今後、より精密な判断が可能になっていくものと思われます。

3 リフォーム工事の問題

 新築住宅の建築は、近年、減少傾向にあります。一方、国を挙げての長期優良住宅の優遇措置等による住宅の高寿命化に伴い、今後はリフォーム工事の需要が増加していくことになると思います。それゆえ、住宅紛争も将来的には、リフォーム工事の瑕疵紛争が一定の割合を占めるようになると思われます。
 このリフォーム工事の不具合の判定もまた特殊な問題を孕んでいます。経年した住宅は、当然、一定程度ダメージを受けているのが通常です。また、古い住宅では、建築当時の施工技術の低さから、現在では認められないような施工がなされていることもあります。それゆえ、リフォーム工事を行っても、現行の技術水準や法令に照らして違反状態となることがあるからです。
 このようなリフォーム工事の「不具合」を巡っては、どの範囲で工事を行い、どの程度の改良が求められていたかという契約の法的評価が重要な意味を持ってきます。契約の法的評価は、まさに弁護士の役割です。この意味において、リフォーム工事における建築紛争においては、より弁護士の役割が重要であるように思われます。

4 これからの建築訴訟

 建築訴訟は、建築の専門家たちのみの世界と思われがちです。しかし、建築訴訟において法律の専門家である弁護士が果たすべき役割は、思われているよりずっと大きいと思います。弁護士が建築訴訟に関する法令・判例の更なる研究を行い、建築訴訟がより精密かつ均衡のとれた妥当な形に進化していくことを願っています。

(2014年3月執筆)

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