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企業法務2013年12月03日 弁護士業界の「新しい波」 執筆者:稲田博志

インハウスローヤーの急増

 2000年代以降、弁護士業界に「新しい波」が見られるようになった。企業内弁護士(いわゆるインハウスローヤー)が急増しているのである。
 2001年9月末に66名だったインハウスローヤーは2013年6月末には965名を数え、この12年間で実に15倍弱にまで増加している。司法制度改革によって、弁護士自体の総数も2001年3月末の18246名から2013年6月末の33999名へと増加しているが、増加率で見れば2倍弱にとどまり、インハウスローヤーの急増ぶりが際立つ(データはいずれも日本組織内弁護士協会調べ)。

キャリアパスの変容

 私自身も6年間の法律事務所経験を経て、その後金融機関へと転身した現役のインハウスローヤーである。
 これまでの十数年間を振り返ると、決して計画的にキャリア設計してきたわけではないが、法律事務所でも企業でも尊敬できる先輩や同僚に恵まれた。現在、金融機関における金融案件に加えて、人事労務案件、株主総会支援、M&A、コーポレートガバナンス等といった幅広い案件に関与できているのは、常に優秀なロールモデルが周囲にいたおかげだと感謝している。
 他方、司法修習修了後、直接インハウスローヤーになるパターンが近時急増している。特にロースクールを卒業した新60期以降にその傾向が強い。私のように法律事務所を経由するキャリアパスはむしろ少数派となりつつあるのかもしれない。公私とも法律事務所での経験に相当程度依存している身の上からすると、かかる後輩たちがどのようなキャリアを築いていくのか心配な部分もある。しかし、私の知る限り彼らは優秀であり、むしろ私自身が後進の範として足りうるよう精進せねばならない。

「新しい波」の展望

 以上のようなインハウスローヤーの急増やキャリアパスの変容といった「新しい波」に対する社会一般の認知度は残念ながら十分なものとは言えず、せいぜい「さざ波」程度にしか認識されていない。また、インハウスローヤーに対する理論的検討や態勢整備は質的にも量的にも不足している。
 かかる課題への対応は喫緊の課題である。私も日本組織内弁護士協会や日本弁護士連合会等を通じ、インハウスローヤーの調査、研究、啓蒙活動等を行っているが、現実には十分な成果をあげるには至っておらず、忸怩たる思いである。
 しかし、あきらめてはいけない。この新しい波がやがて「さざ波」から「大きなうねり」となり、法の支配が遍く行き渡るまで粘り強く活動を継続していかなくてはならない。
 私を含めたインハウスローヤーは、かかる一翼を担う立場としての義務があり、改めてそのことを肝に銘じたい。一灯照隅の気持ちで自分の役割を果たせるよう歩み続けたい。

(2013年11月執筆)

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