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税務・会計2012年05月08日 税務上の形式基準の判断 執筆者:宮森俊樹

 租税の納税義務は、国民は法律の定めるところにより納税義務を負うと定められている(憲法30条)。これは、租税が国民の財産権(憲法29条)に対する侵害行為に該当するため、租税法律主義(憲法84条)により法律で定めることを必要とするためである。また、租税行政を行う場合には、生存権(憲法25条)を尊重し、かつ、国民の担税力に応じた公平な課税を実行すべきである。
 この公平な課税を実行するためには、租税が個々の納税義務者の担税力の実質に基づいた実質基準(一人ひとりの個別の実状の調査を基準として課税すること)により行うべきである。
 しかし、すべての納税義務者に実状に適用する実質基準による立法が困難であることから、現行の税法令では「給与所得控除(所得税法28条3項」、「退職所得控除(所得税法30条2項)」、「配偶者控除(所得税法83条)」、「扶養控除(所得税法84条)」及び「基礎控除(所得税法86条)」など、「税法令における形式基準」が定められている。
 また、税法は、①経営実態に遅れて立法されること、②経営の変化に対応する必要があること、③税務執行上の解釈を統一的に行う必要があること、などの理由により法律以外の「通達(国家行政組織法14条2項)における形式基準」も定められている。
 さらに、租税行政庁が、通達ではなく法令の解釈等に関し、国税庁のみの名義で質疑応答(以下「Q&A」という)が公表されることが多くなり、いわゆる「Q&Aにおける形式基準」が横行している実情となっている。
 これら形式基準を適用するメリットは、①税務執行上公平な取扱いができること、②税務調査において判断の余地が少ないため紛争の基とならないこと、③納税義務者の申告に便利であること等であろう。また、形式基準を適用するデメリットは、①実質基準と遊離し、納税義務者の担税力を考慮しない租税負担となる恐れがあること、②納税義務者の個別の実態を度外視して税務執行上の便利に追従すれば、真の課税標準は何かという納税義務者が有するべき法令解釈権を奪う恐れがあること、③法の下の平等(憲法14条)を基とした租税公平主義の考え方は、実質基準を対象とし、形式基準は極力最小に留めるが必要であること等であろう。
 しかし、租税行政の執行現状を考えると、実質基準を放棄して形式基準が横行し、しかも形式基準に合理的な説明もなく横行しており、租税法律主義(憲法30条・84条)に抵触していると言わざるを得ない。例えば、「役員給与の損金不算入(法人税法34条)」の規定における「通達」及び「Q&A」は、数多く公表されており、特に法定改定事項以外の期中役員給与増額改定及び減額改定における「Q&A」の説明文章においては、法令の根拠に基づかない課税要件の変更に言及する内容となっている。元来、法令の内容が不合理であれば、「Q&A」を公表するのではなく法令を是正すべきではないか。
 そこで、税務の専門家である税理士においては、実質基準と形式基準とを並列し、かつ、判例及び裁決等を検討しながら租税法律主義に抵触する恐れがある不合理な形式基準を抽出し、税理士の権利としての税理士会の建議(税理士法49条の11)又は税理士補佐人として争訴の提起をフォローすることによって、租税行政の歪みを是視すべきであると考える。

(2012年5月執筆)

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