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民事2008年07月31日 賃貸借契約書と特約条項 執筆者:澤野順彦

 弁護士業務において、契約書の作成、点検を依頼されるケースは少なくない。法科大学院においてもこのことを意識してか、法文書作成という法曹実務教育において、契約書の作成が課題の一つとして取り上げられている。契約書の種類は枚挙にいとまがないが、最も一般的なのが不動産の売買、賃貸借の契約書である。就中、土地・建物の賃貸借契約は、売買のように1回限りの、かつ原則として契約自由の原則が支配する契約と異なり、長期間の継続的な契約関係を規律するとともに、強行法規としての性格を有する借地借家法が適用されることから、その契約書の作成、点検にあたっては、慎重な検討が必要となる。
 例えば、アパートの賃貸借契約において、動物の飼育を禁止する条項がない場合に、借家人は他の入居者に迷惑をかけない限り犬を飼育することができるのか、猫を飼うことはどうなのか。反対に、動物の飼育を禁止する旨の特約がある場合において、たまたま借家人が失明し盲導犬を飼う必要が生じた場合に、家主はこれを拒否することができるのか。仮に、家主の反対を押し切って盲導犬を飼った場合、家主は当該建物賃貸借契約を解除することができるのか。盲導犬の飼育については、心情的には賃貸借契約の解除は認められないと考えたい。しかし、この場合の解除を認めない理論的根拠は何か。一般的には、当該動物の飼育は特約に違反しているが未だ家主の信頼関係を破壊するほどの重大な背信行為とはいえないとするか、あるいは、家主の契約解除の主張は権利の濫用にあたると説明することになろう。事案の解決としてはこれで足りるともいえる。しかし、問題は、人間の生活と動物の飼育との関係をどのように考えるかという本質に関わるものであり、そのことを平穏な共同生活の維持、家主の建物維持という利害とのバランスをどう考えるかにかかっているように思われる。動物飼育禁止の特約条項1条の検討にあたっても、このようなことが走馬燈のように頭の中を駆け巡り、今日も、契約書の作成を楽しむことができるのは弁護士冥利に尽きるというべきか。

(2008年7月執筆)

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