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企業法務2008年07月25日 パートタイマーの職務調査 執筆者:佐藤純

 先日、顧問先の名古屋工場の職務調査に出かけた。その目的はパートタイマーの職務内容の実態把握と、社員への登用条件の検討である。パートタイム労働法が改正されて、パートタイマーの社員への転換措置導入が義務化されたので、それに対応するためである。二日間の短い時間であったが、パートタイマーが勤務する約10部門の職務調査を集中的に行った。
 職務調査には様々な手法がある。本来の職務調査は、課業を洗い出して職務記述書を作成し、職務を遂行するにあたってどのような能力が要求されるのか、どのようなレベルが要求されるのかを分析する。そして賃金制度や人事評価制度のデータベースを作成するわけである。今回は課業の洗い出しは綿密に行ったが、レベル判定は簡易的な内容にとどめた。つまり、高度な能力が要求される業務をAレベル、専門的能力が要求される業務をBレベル、繰り返される定型業務をCレベル、単純な作業をDレベルとし、全体で四ランクを設定した。この基準をもとに個々の課業の内容を検討してレベルを判定し、社員やパートタイマーが日常業務においてどのレベルの課業を中心に行っているかをまとめたわけである。
 その結果、様々な現実が浮かび上がってきた。まず現業部門においては、パートタイマーがCとDレベルの職務を行っている部署が多かったが、一部の部署ではAランクの職務を社員ではなく、パートタイマーが行っていた。このAランクの職務には、機械にもできないことを人間が行うというレベルが含まれていた。機械は必ず誤差を持っているのでそれが製品に反映されてしまうが、その誤差を人間が見分けるのである。このレベルに到達するには、単に能力が高いだけでは不充分であり、それに加えて熟練という長い期間を要する。少なくても10年はかかるという。このような高度な職務はパートタイマーではなく、社員が行うべきではないかという意見があるかもしれない。しかし、現実は難しい。というのは、社員はローテーションにしたがって配置転換があるために、長期間が必要な特殊能力を習得できないのだという。また、この職務の他に単純な定型業務が関連してあり、同時にこなさなくてはいけない。パートタイマーだからこそ、このような特殊技能を身につけられるそうだ。
 また調査の結果、社員への転換を希望しているパートタイマーは、以外と少ないことが判明した。この工場では約8割の人が社員への転換を希望していない。その理由として、仕事の責任を負わされたくない、税法の配偶者控除の条件を満たすために一定以下の所得にとどまりたい、社員のように残業はしたくないというものがあった。中には優秀であるために社員へ転換したことがあったが、本人からの強い希望でパートに戻ったという人もいた。同期のパートタイマーの中で自分だけが社員になり、他のパートタイマーとの人間関係が悪くなったことが原因のようである。
 パートタイマー労働法の改正内容には、社員と同様の仕事をしているパートタイマーは社員へ切り替えること、そして社員への登用の機会を与える仕組みを導入すること等が盛り込まれている。その背景には、「非正規雇用社員」は労働条件が劣悪であるという認識があり、その存在はワーキングプアの原因ととらえられている。つまり、「非正規雇用社員」の存在を問題視しているように感じる。しかし、社員への転換を望まない者が多いこと、パートタイマーだからこそ習得できる高度な技能の存在を忘れてはならない。単純に、社員にすれば良いという一律的な考えはけして成り立たないということが、今回の職務調査で確認できた。
 これから、パートタイマーの社員への転換が進んで行くと思われるが、それによって労働条件が改善される人もいると予想される。しかし、それによって犠牲になるものもあることを忘れてはならない。

(2008年7月執筆)

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