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厚生・労働2008年07月24日 労働法における法令用語の重大性 執筆者:是枝辰彦

 私は、この度発刊された「法令用語ナビ 人事・労務管理」の編集に携わりました。
 「法は、経済の侍女である」という法格言があります。労働法の分野も例外ではなく、本来、企業は、「人・物・金」という価値序列であったものが、バブル経済後の失われた10年という経済環境の中で、21世紀になり、小泉構造改革によりアメリカ型資本主義経済にシフトしたため、企業は、収益を上げるために、金・物・人の価値序列に変化し、アウトソーシングを行い、派遣労働者の問題が生じたり、ニュースや新聞紙上では、インターネットカフェ難民などワーキングプアと呼ばれる低所得労働者の増加が大きな社会問題となっています。
 新聞やニュースの報道によれば、「自殺者3万人時代」といわれ、交通事故死の3倍強が自殺で亡くなっており、労働災害においても「過労死(自殺)」が後を絶ちません。皆さんも勤めている会社のことを「うち(家)の会社」と呼び、また、会社の人事労務管理の担当者は従業員に健康診断を行い、健康診断の結果、業務に支障のある健康状態の従業員のことまで知っていますが、米国では、自分の健康はその人自身のプライバシーそのものであり、勤めている会社が従業員の健康状態を把握していることなどあり得ません。
 そもそも、「過労死」という言葉は英語にはなく、欧米人の感覚でいえば、「働きすぎて死ぬ」ということは考えられず、日本語である「過労死」という言葉がアメリカでも通じるのです。これらのことから、労働安全衛生法及び労働者災害補償保険法には、極めて日本的な問題も含まれています。
 労働契約関係における労働者保護・紛争防止を図るため、労働契約法も制定されました。私も、個別労働紛争が組織的・集団的労働の中で生じるため、この個別労働紛争の解決が、その企業の人事制度全体に常に影響を及ぼすことを、労働関係に携わる弁護士の一人として痛感しています。個別労働紛争においては、労働契約関係が継続的な関係であるため、その解決内容がその紛争の当事者である従業員のみならず、他の従業員にも将来にわたり影響を及ぼしたり、その解決が不十分であると、更なる紛争を生じさせることがあるのです。
 最近話題になっている「名ばかり管理職」についても、労働基準法第41条2号における「監督若しくは管理の地位にある者」の概念を、人事労務管理を担当される方々がきちんと把握されていれば、その企業においては紛争は生じません。
 また、人事労務管理担当の方々の労働法に対する理解が、その企業の将来を左右するといっても過言ではなく、人事労務管理に関する法令用語を正確に把握して頂く必要がありますが、今日の情報化社会においては、情報が洪水のように溢れ、人事労務管理に関する法令用語の概念を正確に把握することはかえって難しくなっているのではないでしょうか。このようなとき、本書はお役に立てると思います。

(2008年7月執筆)

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