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企業法務2008年02月20日 商行為法の改正を展望する? 典型契約の規定の存在意味を見直す 執筆者:山田尚武

 民法には、売買・賃貸借・消費貸借等の契約、また、商法にも(商事)売買、交互計算、匿名組合、仲立営業、問屋営業等の契約について定めがあります。これらは、典型契約と呼ばれます。
 この典型契約の規定は、当事者間の契約でとくに定めなかった事項について解釈する際に補充的な意味を持つとされていました。実際に、紛争が起こったときにも、当事者間の契約書の各条項は重視されるものの、当該契約が典型契約に該当するかどうか、該当するとした場合に典型契約のどの条項が適用されるのか、という議論はあまりなされてこなかったように思います。しかし、消費者契約法10条において「民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則〔信義誠実:当職注〕に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。」と規定されたことをきっかけに、学界では、典型契約の規定の存在意味を見直そうという気運が高まっているそうです。
 こうして、典型契約の規定を見ていくと、感じるのは、これらの規定が古いことです。特に、明治32年の商法典に基礎を置き、ほとんど改正を受けてこなかった商行為法は古色蒼然としています。例えば、今日の社会経済において、重要な機能を担っているリース契約、フランチャイズ契約・代理店契約等については商法には定めがなく、運送営業や寄託については商行為法の中に規定があるものの各種約款等によって補完されて成り立っている状況です。それでは契約法のすべてについて立法措置がなされていないかというと、そうではありません。事業者と消費者の売買を規律する消費者売買の分野においては、割賦販売法(昭和36年制定)、特定商取引に関する法律(昭和51年制定)、そして消費者契約法(平成12年制定)と逐次、立法措置がとられてきました。
 主として事業者と事業者との間の取引を規律する商取引に関する法は、確かに、商人間の慣習や業務の実情を十分調査する必要があり、細かなことまで法律で定めることには疑問もあります。また、事業者と消費者の間のように商品の情報等において格差があるわけではなく、経済的な合理性に従って判断するのであるから、私的自治に委ねればよいという考えもあるかもしれません。しかし、商人間の慣習等の調査も可能であり、法律で定めることが直ちに、事業者の箸の上げ下ろしに口を出すことになるわけではありません。また、事業者間にも経済力や購買力を背景とした格差が厳然と存在するわけで、事業者間の取引であれば私的自治に任せておけば十分であるとも言えません。さらに言うならば、コンプライアンスが声高に叫ばれる今日において、事業者間の取引の基本的な事項については、明確に規律することが必要なのではないでしょうか。
 今後、典型契約の規定の存在意味を見直そうという気運がさらに高まっていけば、商行為法の改正に行き着きます。もちろん、私自身、商行為法をどのように改正すべきかについて具体的なビジョンがあるわけではありません。しかし、事業者間の取引の現状を観察し、事業者間の標準約款を収集し、また、実務界で通用している契約書およびその条項を整理・分類して、それらを典型契約の規定と一つ一つ突き合わせていくことによって、あるべき商行為法の世界が見えてくるのではないでしょうか。
 平成17年の商法改正によって会社法がスピンアウトして、抜け殻のようになった商法に新しい命を吹き込むことができるかが、今後10年ほどのビジョンです。

(2008年1月執筆)

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