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人事労務2020年09月07日 ウィズコロナの時代に労務管理として行うべきこと 執筆者:大神令子

 私は大阪市に住んで事務所を開設しておりますが、その大阪がこの8月は全国でも突出して新規感染者数も重症者数・死亡者数も多いという不名誉なこととなってしまいました。とはいえ、それもどうやら9月上旬には収まりそうな気配です。
 これが第2波だとすると、第3波が来るとすれば12月か来年1月頃でしょうか。それまでの間は、一旦は落ち着いた状況が戻るのではないかと思います。私達は、今年の1月下旬から新型コロナによる問題が生じはじめ、第1波、第2波まで経験したこととなるかと思います。仮に第3波が来ないとしても、今後はウィズコロナの生活に変わっていくことは避けられない事態になるかと思います。各企業では、ここまでの経験を基に今後のウィズコロナ時代に対して労務管理としての対策を立てていく必要があると思います。
 また、今は新型コロナによる影響が大きく言われていますが、仮に新型コロナがワクチンや特効薬の開発によって恐れる必要のない程度の感染症になったとしても他に新しい感染症が生じる可能性はありますし、毎年冬にはインフルエンザの流行も生じます。あるいは、台風や地震等の天災が生じた場合にも同様の対応が必要となる可能性は高いですので、今の波が収まっても「新型コロナは終息した」と思うことなく、今後に備えることが重要ではないかと思います。

 まず根本的なお話として、万一感染者が出た場合の対応としての感染症対策本部はそのまま維持してください。といっても大袈裟なものである必要はなく、中小企業の場合は社長を中心に総務部門等で万一の場合に適切な対応が取れるようになっていれば十分だと思います。しかし、実際に生じた場合のシミュレーションも時々御検討いただき、対策本部が機能するよう状況を整えておいてください。
 ウィズコロナ時代の対応として具体的に行うべきことは大きく2つに分けられると思います。一つは会社の内での対応。もう一つは外での対応です。

社内整備としての対応について

 全ての業種、業務においてテレワークが可能かというとそうではないと思います。厚労省をはじめ政府はテレワークを推奨しますが、現場作業やバックヤード業務など、どうしてもテレワークにできない部分もあると思います。また、普段はテレワークで業務を行ったとしても、全く出勤をさせずに在宅勤務のみとすることも難しいでしょう。一定期間ごとに出勤させる必要は当然にあると思います。このように社内業務が皆無になることがない以上は、社内での対策を外すことはできません。
 少なくとも当面は、今までどおりマスク着用とソーシャルディスタンスを取ることに御注意いただきたいです。もし社内のレイアウトが従業員の配置にある程度の距離が取れる状況であれば、その状態を維持するようにしてください。もしマスク着用が難しい状況(現場作業や食事中等)があれば、必ずお互いの距離を取るよう指導してください。対面での接客や会議等がある場合は、マスク着用を義務付けてください。これからは気温も下がってきますので、マスクを着用しても熱中症の危険は減ってくるかと思います。もう少し感染が生じる状況が収まるまではマスク着用を推奨してください。
 体温測定については、感染者や濃厚接触者が生じていないのであれば行わなくても良いかもしれません。一つのオフィスビルに複数の企業が入居している場合は、同じビル内の他社の状況によっては、社内では感染者等が発生していなくても体温測定をした方が良いケースもあると思います。現実の状況によって体温測定中止するかどうかの判断が必要となります。それとは別に、体調がすぐれない従業員については新型コロナに感染したかどうかに関わらず休ませるようにした方が望ましいです。
 社内での労働時間については、可能であれば時間差勤務を取り入れるなどして通勤時間での三密を避けられるように配慮した方が望ましいです。ただ、殆ど会話のない電車の中では感染の可能性は低いと言われていますので、第1波の時ほどの厳密さは必要ないと思います。時間差勤務については、通勤時だけでなく社内の三密を避けるためにも必要な措置と言えます。もし可能であればフレックスタイム制の導入を御検討ください。なお、フレックスタイム制を導入する場合は、フレックスタイム制の利用について就業規則に記載した上で過半数労働組合の代表か従業員代表との労使協定が必要となります。取り決めなければならないことが法律で決められていますので、詳細は社会保険労務士に御相談ください。

社外で業務を行わせるテレワークへの対応について

 当然のことながら社内で業務をさせる状況に比べ労働時間の把握が難しくなりますので、どのように働かせるかが大きな問題となります。そういう意味では完全に家庭内で業務を行わせるより自宅近くのコワーキングスペースを利用できれば、その方が対応しやすいかもしれません。しかし、その分経費も掛かりますし、都合よく場所が見つかるかどうかもわからないというのが実情ではないかと思います。
 家庭内で業務をさせる場合は、業務の開始時間と終了時間を記録し報告をさせるのが一般的かと思います。労働者本人が記録した時間を元に労働時間を定めるのであれば、サービス残業としてトラブルが生じる可能性は低くなります。しかし、その労働時間としている時間に労働ではないことを行っている可能性を疑ってしまうのもままある状況かと思います。
 その対策としては、まずその業務が大体どれぐらいの時間が必要なものであるかを設定するのが良いと思います。その業務が大体8時間程度の業務であるのなら、それを1日分の労働としてカウントすることも可能かと思います。簡単に時間数を測ることができるものでもないとは思いますが、一応の目安は付けていただいた方が良いでしょう。根本的に従業員を疑うばかりではなく信頼することも必要ではないかと思います。特に日本人は任されたら頑張る人が多いですから、仕事を与える側がするべきこととして、任せる業務量で労働時間を制御することを考えてみていただきたいと思います。
 在宅で仕事をさせる場合の大きな注意点にもう一つ、メンタル面のフォローという問題があります。在宅勤務は人と会って会話をすることができなくなるケースが多いですので、強いストレスを感じる方も少なからずいらっしゃいます。企業規模などによりコロナ禍以前からメンタルヘルス対策を取っていた場合は、その強化をお考えいただきたいですし、その必要がなかった場合でも、この際に従業員のメンタルヘルスへの対応が取れるよう整備していただいた方が良いと思います。
 出勤させることによって同じ空間の中で仕事を行っている場合なら気付ける異変も、在宅で仕事を行わせていれば日常的に様子を見ることが難しく気付きにくくなっていますので、積極的にメンタル不全が生じていないかどうかの確認をしていただいた方が望ましいです。具体的には、メールやLINE等の文字情報でのみのやり取りではなく、オンライン会議システムを使ったり電話で直接話するなどをして様子を見るようにしてください。もし異変が生じているようでしたら、できるだけ早く面談や医師と相談する等の対応を取ってください。
 在宅であったとしても業務を行っていますので、労務管理としての状況把握はしなければならないとお考えください。

休業させた場合の対応について

 最後に、休業させた場合の対応について述べておきます。
 まだこれからも感染に関連して従業員を休業させなければならない事態が生じると思います。今回の新型コロナウイルスだけではなく、感染症によって従業員を休ませる場合の基本として以下の対応を行うことを御認識ください。
 実際に従業員に感染者が出た場合、その感染がどこで生じたかによって会社としての対応が変わります。勤務先が医療機関等で感染者に対応したために感染した場合はもちろん労災となりますが、それ以外のケースでも職場内で感染した場合には労災となる可能性があります。個別の案件について労災の対象となるかどうかは、社会保険労務士や労働基準監督署に御相談ください。業務ではなく私的な状況で感染した場合は健康保険での対応となります。いずれのケースでも休業中の給与支給については保険から休業補償が支給されますので、その部分については給与の支払いをしなくても問題ないことになります。
 家族等に感染者が発生したために感染拡大を防ぐ目的で休業を命じる場合は、会社都合の休業となります。この場合は、給与額の6割以上の休業手当の支給が必要となります。従業員本人が感染者で休業する場合とでは扱いが変わりますので御注意ください。
 従業員本人が感染者であるために休業させる場合と家族が感染したために予防的に休業させる場合とで扱いが変わるのは、新型コロナウイルスだけではなく、どのような感染症であっても同じ対応となります。その違いを従業員に知らせる必要もあるかもしれません。トラブルが生じないよう、御注意ください。

 まだ新型コロナウイルスによる影響は続くものと思われます。しっかり対策を取っていただき、万一のために備えておいてください。

(2020年8月執筆)

執筆者

大神 令子おおがみ れいこ

社会保険労務士

略歴・経歴

大神令子社会保険労務士事務所代表

2000年(平成12年)12月 社会保険労務士試験 合格
2001年(平成13年) 2月 大阪府社会保険労務士会 登録
2002年(平成14年) 4月 大阪府内社会保険事務所にて 社会保険相談指導員
2006年(平成18年)12月 大神令子社会保険労務士事務所設立

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