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民事2007年09月11日 「かいけつサポート」の始動と司法書士会調停センターの現状 執筆者:日笠山繁樹

 裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(ADR法)が本年4月1日施行された。そして本年7月6日には「日本スポーツ仲裁機構」が同法に基づく認証第一号を得たことが法務省「かいけつサポート」のホームページ(http://www.moj.go.jp/KANBOU/ADR/index.html)に掲載された。ちなみに「かいけつサポート」とは、日本司法支援センターの愛称「法テラス」と同様に新しい制度の認知度を高める広報の観点から付けられたADRサービスの愛称であり、ADR制度・ADRサービスが法的トラブルの「かいけつ」を「サポート」するサービスであることを分かりやすく表したものとされている。
 いよいよADR制度が本格的にスタートし、その真価が問われることとなった。

 さて、認証第一号となった「日本スポーツ仲裁機構」については、過去にオリンピック選手選考の仲裁事件など実績も豊富な団体であり、ADR法施行直前から認証申請に向けた準備が進められていることは話題となり、4月2日にADR認証の申請が出されたことも新聞で大きく取り上げられた。当時ADR担当部門の責任者であった私は、この記事を見ながら、これから次々と認証申請がされADR制度の普及に向けて大きく動き出すのであろうと大いに期待したが、その後の士業団体をはじめADR関係諸団体のADR認証に関する動きは鈍く、認証申請の件数に関して現状では決して多くないのであろうと想像する。
 かく言う司法書士会の状況についても、日本司法書士会連合会が全国50の司法書士会で認証を得て紛争解決事業に取り組むことを目指して支援活動を推進してきたが、8月末現在でADR認証申請は1件も出されていないようである。他士業団体等の認証がまだである事情に関してはその理由を知る由もないが、司法書士会については、おおよそ次のような理由が考えられる。一つには、司法書士会内の認証申請に向けた調停センター諸規程整備の遅れがあり、また、すべての司法書士会で今年度定時総会(多くの会が5月に開催する。)が役員改選期に当たったため新しい執行部の体制作りを進めているものの認証申請の準備が整わないこともあったと思われる。更には、ADR法第6条第5号の弁護士による助言措置を受けるため地元弁護士会との協力関係構築のための協議を必要とする司法書士会にあって、様々な事情により当該協議が継続中であるため調停センターの取り扱う紛争の範囲に関して確定できないなどの事情もあると思われる。ちなみに、日本司法書士会連合会では今年度中に20の司法書士会程度を目標として認証申請を行うこととしているようである。

 ところで、私が所属する鹿児島県司法書士会は、会員数290名(平成19年7月末日現在)と全国の司法書士会の中では中規模の会であるが、熊本県との県境「嗣子島(長島)」から沖縄県との県境「与論島」まで南北600キロと縦に長く、また多くの離島を抱えるため過疎化・高齢化も進み、典型的な司法過疎地域内の司法書士会である。
 しかし、このことは会の活動において決してマイナス材料だけではなく、このような環境であるからこそ司法書士会をあげて相談事業に熱心に取り組み、高校生のための法律教室の開催学校数も全国一の実績を上げている。
 ADRサービスに関しても、司法書士会調停センターの開設を平成19年度事業計画の重点事業として掲げており、活動範囲は全県下、つまり離島においても実施することを当然のこととして組織作りを進めている。
 現状、まずは簡裁訴訟代理を行える認定司法書士が手続実施者として調停を実施する組織としての認証を申請したうえで、鹿児島県弁護士会の理解と協力を得て、簡易裁判所訴訟代理権の範囲内では司法書士単独で実施し、その範囲を超える紛争については、ADR法第6条5号の弁護士による助言措置を受けつつ、登記に関係する民事紛争や司法書士の専門性の中にある相続や成年後見等の家事紛争、その他日常生活の身近に潜む様々なトラブルを解決する認証紛争解決機関とすることを目指している。

 ADRサービスに対する国民の期待や利用予測に関しては懐疑的な声も聞こえるが、司法書士としての日常業務において「裁判所以外の話し合いの場があれば…」と感じることは少なくなく、ADR制度をどの様に育てていくかはまさに担い手の心意気にかかっているのであろう。
 ADRの魅力に関心を持つ様々な人々、様々な機関と連携して、司法書士会調停センターが一定の役割を果たしうるよう力を尽くしたい。

(2007年9月執筆)

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