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一般2006年11月08日 機内食のコップ あっという間の進歩 日本人弁護士が見た中国 一般社団法人日中法務交流・協力日本機構からの便り 執筆者:加藤洪太郎

■ 大連←→名古屋 線
 筆者の所属する法律事務所は名古屋にある。そして中国の大連には、東京や大阪の仲間の法律事務所と共同で運営している大連法律事務所がある。大連事務所を開設して6年を経ているが、その間、たびたび中国の航空機のお世話になって往復してきた。名古屋から大連に行くには、最初の頃は、新幹線など鉄道を乗り継いで関西空港にたどりついてそこから大連便に乗るとか、名古屋発だが福岡経由だとか富山経由、はては韓国の仁川経由などで大連に入っていた。
 そのうちに、名古屋からの直行便が飛ぶようになり、それも便数が順次増えて、つい最近、週7便、つまりどの曜日でも発着便があるという体制にまで航空路が成長してきた。

■ 機内食のコップ
 その名古屋・大連直行便でお世話になるのは中国の航空会社。ここでも例に漏れず機内食が出る。そして飲み物も。
 で、飲み物が出るということは、それを注ぎ込む器も出るということ。
 着目するのはこのコップだ。
 薄手の透明プラスチック製である。射出成型器で量産するものだと思われる。縁を触ると痛い。バリがあるというか、丸みをうまく付けられないのか、どちらかだと思われるが、ともかく形だけはコップになっているがその完成度が低い。
 で、勝手に思っていた。「技術は日本だ。」「量産では中国に負けるかも知れないが、技術の高さでは日本が優れている。」「ここに日本と中国との共存そして日本の活路がある」等々。

■ ところがどうだ
 ところがどうだ。それは最初の頃のことで、数年もしない間にプラスチックコップの縁は改良された。バリ取りがキッチリ出来てるのは勿論、丸みをうまく付けられて痛くも何ともない。「進歩が早いなあー」と感心した。
 さてそのまた一年後、少し間があって名古屋発大連直行便のCZ(中国南方航空)に搭乗し、今度は仰天した。
 薄手の透明プラスチック製コップという点は変わらない。が、何と、上から少し下がった位置に幅1㎝ほどで周囲を一周する帯状のスモーク模様が入ってるのだ。透明ガラス製のグラスの周りに研磨剤を吹き付けて研磨することによって紋様を付けるサンドブラスト法による加工かと見誤るばかりの感じなのである。しかもである。その帯がただの帯ではない。不透明になった帯、その幅の中に、反対に透明のままの小さな紋様がちりばめられているのである。
 もうここまで来るとガラス工芸品そのものに近い。機内食で手にした薄手のプラスチック製のコップ一個ではあるが、そこに込められた中国の人々のもの作りへの意欲や多方面にわたる協業に思いを馳せざるを得なかった。

■ 日本は
 短期間のうちに、技術水準が日本並みになったばかりか、こうした量産品にまで芸術性を付加する水準に到達してきている。直行便ができ、遂に毎日の往復にまで成長する向上ぶりのその基礎には、こうしたもの作りの進歩の著しいことがあるのだと実感した。
 で、あらためて、日本の役割と位置は?と問わねばならない。
 もとより技術水準の高さは引き続き特徴ではある。さらには日本ならではのオリジナル性がいよいよ重要性を持つとともに、個人の尊厳を実現する人の生活そのものに焦点をあてた人間尊重経済の実現に向けての努力をいよいよ本格化する必要を痛感する。この領域では、輸出競争だとか安売り競争に晒されることが少なく、従って互いに両立できるからだ。

(2006年11月執筆)

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