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安全衛生2007年07月26日 安全と悲惨の分かれ道 執筆者:東内一明

 6月に、渋谷の温泉施設でメタンガスが爆発し3人が死亡する、という大災害がありました。
 東京都の地下には大メタンガス田があり、一寸掘るとメタンガスが出てくるというのは、トンネル掘削の専門家のみならず、地下鉄などを施工している都市土木の担当者なら常識となっています。
 このことは都民も大方が承知しておられるので、温泉を掘削して営業するためには、周辺の住民にその安全性を十分に広報し納得してもらう、というのが不可欠のようです。
 メタンは可燃性ガスの一種として、空気中で、一定の濃度に達すると爆発に至ります。この爆発に至る最低の濃度は、爆発下限界と呼ばれており、ガスの種類によって異なりますが、メタンガスの場合は、5%とされています。

 さて、6月26日の朝日新聞(朝刊)の記事によると、件の温泉業者は、「ガス濃度は可燃域の半分で、引火の可能性がないことが確認できた」と周辺住民に説明したのだそうです。
 この説明の趣旨は、現場のメタンガスの濃度は2.5%だった、メタンガスの爆発下限界は5%で、その半分の50%しかないので安全だ、ということだったのだろうと思います。
 恐らく安全の専門家はビックリされたでしょう。特にトンネルの専門家は驚愕されたのではないでしょうか。
 労働安全衛生規則では、トンネル等の内部における可燃性ガスの濃度が「爆発下限界の30%以上と認めた場合は直ちに労働者を退避させなければならない」と定めているからです。

 空気中の可燃性ガスは、常に均質に混合しているのではなく濃淡があります。労働災害史上、無数に発生した可燃性ガスの悲惨な爆発事故の経験、教訓によって、爆発下限界の30%以上のガス濃度が検知されるような場合は、最早いつ何時爆発してもおかしくない危険な状態になっている、というのが安全専門家の常識なのです。
 そこで、労働安全衛生規則では、爆発下限界の30%以上になると直ちに全労働者を退避させなければならない、としているのです。

 メタンガスの爆発下限界は5%、その30%は1.5%、温泉業者が安全だといって自慢した数値が2.5%、トンネル専門家が驚愕するのももっともです。2.5%は、労働安全衛生規則が定める1.5%を大きく上回っているからです。

 法律や安全の専門家が悲惨な事故を招くとして驚愕する濃度が、専門家でない業者や住民には、安全だと安心し、安心させる理由付けになってしまう。

 いまや、企業活動も一般社会生活も、相互に密接に関連しています。自らの領域について十分な知識があっても、安全衛生の確保は十分ではありません。専門外の分野についても十分な知識と理解が、企業も一般住民も必要になっているようです。
 労働安全衛生規則等の労働安全衛生法令は、全産業の永年にわたる悲惨な労働災害の経験と教訓を中身にしています。
 ここに記載してある知識、対策は、企業のみならず一般住民も、貴重な情報とすべきもののようです。

(2007年7月執筆)

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