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民事2007年04月20日 強化されている「ごみを出す事業者の責任」 執筆者:樋渡俊一

1 排出事業者の責任は重い?軽い?
 これまで、ともすれば、廃棄物を排出する事業者の責任は軽く見られがちでした。
 もともと、廃棄物処理法の3条には、「事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない」との規定があります。 また、同法11条には、「事業者は、その産業廃棄物を自ら処理しなければならない。」との定めがあります。
 しかし、他方で、排出事業者は、発生させた廃棄物を、必ずしも自ら処理しなければならないわけではなく、適正な処理能力を持つ第三者に委託できるとされているため、排出事業者は、産業廃棄物の処理を処理業者に委託してしまえば、その後の責任を軽減されるという考え方もありました。これは、注文者の不法行為責任を、「注文又は指図についてその注文者に過失があったとき」に限って認める民法716条の規定を、民法709条の過失責任の一般原則を注意的に定めた規定に過ぎないとする通説的解釈に通じる考え方です。

2 強化されている排出事業者の責任
 しかし、排出事業者の責任は次第に強化されてきています。ここでは、産業廃棄物の処理を第三者に委託する場合について、その動きを見ていくことにします。
 産業廃棄物の運搬、処分を第三者に委託する場合には、排出事業者は、次の定めを守ることが廃棄物処理法等で定められています。
 ① 収集運搬業、処分業の許可を受けた者等に委託すること(法12条3項)
 契約自由の原則があるからといって、排出事業者は、誰に対して廃棄物の処理を委 託してもよいわけではありません。
 ② 委託基準を遵守すること(法12条4項、政令6条の2)
 排出事業者は、処理を委託する相手方が、処理の権限をもっていることを確認してから委託しなければならず、また、書面によって委託契約を結び(政令6条の2第3項、省令8条の4の2。記載必要な事項が定められています)、処理業者の許可証の写しをその契約書に添付しなければなりません(省令8条の4)。契約方式の自由は、ここでは制限されているのです。
 ③ 排出事業者は、第三者に運搬、処分を委託する場合には、最終処分に至るまでの一連の処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるように努めること(法12条5項)
 これは、排出事業者の処理責任を強化、確認したもので、後に紹介する措置命令(法19条の6)の根拠ともなる重要な規定です。
 ④ マニフェスト(産業廃棄物管理票)の規定を守ること(法12条の3)
 マニフェスト制度は、排出事業者が、処理を委託した産業廃棄物の移動や、処理の状況を自ら確認するためにあります。産業廃棄物の処理を委託するには、マニフェスト(複写式)を用意して、必要事項を記入し、廃棄物とともに収集運搬業者へ渡し、事業者名、処理場所、期限内に自らへ返送されているか等を確認し、保管します。排出事業者は、一定期間内にマニフェストの票が自らに返送されて来ない場合等には、自らが排出した廃棄物の処理状況を確認するとともに、適切な措置を取らなければなりません。
 ⑤ 多量の産業廃棄物を生ずる事業場を設置している事業者は、減量等、処理に関する計画を作成、知事に提出し、その計画実施状況について知事に報告し、知事はこれを公表すること(法12条7~10項)
 ⑥ 政令で定められた排出事業者は帳簿を備え付け、これを保存すること(法12条11項)

3 措置命令
 以上は、排出事業者が事前に守らなければならない事項です。それでは、産業廃棄物の不法、不適正な処分が行われてしまった場合には、排出事業者等はどのような責任を負うのでしょうか。
 まず、不法、不適正な処分が行われ、生活環境の保全上支障が生じたり、そのおそれが認められたりする場合には、その処分を行った者や、それを依頼、教唆、幇助等した者は、生活環境の支障を除去等するよう知事から命じられます(措置命令)。
 しかし、措置命令は、処分を行った者等だけではなく、委託基準に違反して委託した排出事業者や、マニフェスト(産業廃棄物管理票)の規定に違反した者なども命じられます(法19条の5)。
 さらに排出事業者は、委託基準や、マニフェスト(産業廃棄物管理票)の規定に何ら違反していなくとも、① 処分者等の資力等の事情からみて、処分者等のみによっては、支障の除去等の措置を講ずることが困難か、十分でなく、② 排出事業者等が産業廃棄物の処理に関し適正な対価を負担していないとき、その処分が行われることを知り、または知ることができたときなどにも、措置命令を課せられる場合があります(法19条の6)。
 近年、不法投棄が悪質、広範化し、その環境への影響が深刻化するなかで、資力の乏しい処理業者等にだけ原状回復等の責任を負わせても実効性が乏しいことを背景に、排出事業者が、委託基準や、マニフェストの規定に何ら違反していない場合であっても、最終処分に至るまでの一連の処理が適正に行われるための必要な措置を講じていないときには、措置命令を課せられるところまで、排出事業者の適正処理責任は徹底されて来ているのです。
 青森・岩手県境の産業廃棄物不法投棄事件では、上の法19条の5「無許可業者への委託」が適用され、首都圏の排出事業者に対して、青森・岩手両県知事名で措置命令が出されています(津軽石昭彦 千葉実「自治体法務サポート 政策法務ナレッジ 青森・岩手県境産業廃棄物不法投棄事件」 第一法規2003年12月)。

4 このように、環境の保全、汚染の防止が重視される今日、排出事業者の責任は強化され、契約の自由は変容し、排出事業者は自らの排出した廃棄物がどのように処理されるか、最後まで責任をもって見届け、必要な処置をとらなければ、後で重い責任が自らに降りかかって来ることになるのです。

(2007年4月執筆)

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