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2025年03月27日 パワハラという企業不祥事問題をリスクマネジメントする(前編) 執筆者:佐久間大輔

 パワーハラスメントについて、労働施策総合推進法は、事業主に対し、相談の受付・対応等の雇用管理措置や不利益取扱いの禁止を義務づけています。この義務について厚生労働大臣より求められた報告をせず、又は虚偽の報告をしたときは、20万円以下の過料に処せられるので、公益通報者保護法上の通報対象事実になります。企業としては、外部公益通報によりコンプライアンス違反を問われないようにするため、パワハラの事後対応と予防管理を適切に実行することが求められます。

目 次
1 パワーハラスメント発生後の対応


2 パワーハラスメントの再発防止(後編)

1 パワーハラスメント発生後の対応
 いざパワハラが発生したときにどのように対処するのかが重要となります。
 ハラスメント相談窓口に申告があったら、早期に事実調査を開始することは必須です。公益通報者保護法は、外部公益通報を理由とした解雇を無効とする要件として、使用者に対して書面(電磁的記録を含む)により内部公益通報をした日から20日を経過しても使用者から調査を行う旨の通知がない場合を定めています。使用者の義務ではありませんが、電子メール等で通報がなされた日から20日以内に少なくとも調査開始の通知をすることが目安となります。
 まず、被害者の心身の状況やパワハラ言動が行われた際の受け止めも踏まえつつ、被害者からヒアリングをします。被害者に対しては、丁寧に、粘り強く話を聴くようにし、話の腰を折らない、私見を述べない、断定しない、反論や否定をしないことが定石となります。被害者側に問題行動があったとしても、自らを省みるよう指導することは必要ですが、それに終始すると継続的に相談する意欲を失ってしまいます。まずは話を聴くことを優先し、被害者に対する指導はタイミングを見極めて行うべきでしょう。
 被害者からの話をもとに、パワハラが行われた現場を検証したり、パワハラを裏付ける証拠(被害者の手帳、録音、電子メール、写真等)を保全したりするなど物証を確保します。
 被害者からの聴取だけで、パワハラの有無を即断するのではなく、パワハラをしたと訴えられた加害者や同僚など関係者のヒアリングをします。
 加害者については、加害の事実がある場合であってもこれを否定する態度に出ることを想定します。このような態度を取ったら、パワハラ防止の趣旨を説明するほか、調査に協力するよう説諭します。説諭しても加害者が応じない場合はヒアリングを延期し、「冷却期間」を設けた上で再度聴取を行った方がよいでしょう。
 そして、被害者の主張する事実が同僚など第三者の証言を含む証拠に裏付けられるかを評価します。しかし、必ずしも客観的な証拠が十分に揃うわけではなく、事実認定は難しいので、弁護士に助言を受けるか、又は依頼をすることが考えられます。
 調査終了後に、被害者に対し、事実調査の結果や懲戒処分などの対応を説明します。ただし、加害者に懲戒処分を科す場合、被害者に対して具体的な懲戒内容を説明することは、加害者の個人情報保護の観点から慎重に検討した方が望ましいです。
 また、被害の拡大回避、回復対策を講じることも必要です。その上で、パワハラ防止には配置転換しかないのであれば、被害者を配置転換することも考えられます。ただし、就業規則上、配置転換の個別的同意が不要であり、被害者の不利益が大きくないとしても、被害者が希望しない場合は、「自分が被害者なのに、会社には理解してもらえなかった」という思いを強めるかもしれず、トラブル発生の火種になる可能性があります。被害者に対しては十分な説明をし、理解を得ることが肝要です。

(後編へ続く)

<プロフィール>
佐久間 大輔
榎本・藤本・安藤総合法律事務所 弁護士・中小企業診断士

1993年中央大学法学部卒業。1997年東京弁護士会登録。2022年中小企業診断士登録。2024年榎本・藤本・安藤総合法律事務所参画。近年はメンタルヘルス対策やハラスメント対策など予防法務に注力している。日本産業保健法学会所属。
著書は『管理監督者・人事労務担当者・産業医のための労働災害リスクマネジメントの実務』(日本法令)、『過労死時代に求められる信頼構築型の企業経営と健康な働き方』(労働開発研究会)など多数。
DVD「カスタマー・ハラスメントから企業と従業員を守る!~顧客からクレームを受けたときの適切な対応とは~」、「パワハラ発生!そのとき人事担当者はどう対処する?-パワーハラスメントにおけるリスクマネジメント」も好評発売中。
公式ウェブサイト「企業のためのメンタルヘルス対策室/事業承継支援相談室」
https://sakuma-legal.com/

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