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税務・会計2025年05月07日 3つの銀行口座の戦略的活用法 執筆者:畑中外茂栄

【背景】

多くの中小企業の経営者を支援させていただいていますが、経営者の中には、会計や税務に対する苦手意識が強い方がいらっしゃいます。また試算表や決算書では本当に儲かっているか実感が湧きづらく、日々の資金繰りに悩む方が多く存在します。売上が順調に伸びていても、「実際に手元にどれだけの資金が残るか」という見通しが立たず、特に納税時期のまとまった支払いに対して不安を感じる経営者が少なくありません。

また、「稼いでも利益が残らない」「税金でたくさん持っていかれる」と感じている経営者もいます。こうした課題を抱える経営者に向けて、本記事では銀行口座を用途別に3つ分けて運用する戦略的な方法をお伝えします。この方法により、資金繰りの透明性が向上し、納税に伴う心理的なストレスの軽減が期待できます。

【対象者】

本記事の目的は、銀行口座を3つ利用して資金管理を行うことで、会社の資金繰りを安定させることです。特に次のような経営者を対象にしています。

・簿記や会計の専門知識が不足している中小企業経営者

・納税時期の心理的負担や資金繰りに対する不安を抱えている経営者

【資金繰りを成り行きで考える問題点】

「資金繰り」とは文字通り「資金を適切に操る」ことですが、計画性がなく場当たり的な資金管理では資金のコントロールが難しくなります。日常的な支払いばかりに注意を向け、十分な資金を確保しないまま決算期や納税時期を迎えると、法人税や消費税といった大口の支払い時に資金ショートを引き起こすリスクがあります。さらに、突然の臨時出費への対応が困難となり、経営判断にも悪影響を及ぼします。資金計画が曖昧なままだと経営者自身のストレスも増大し、長期的な経営計画に支障を来す可能性が高まります。

【銀行口座が1つだけの問題点】

多くの中小企業の場合、銀行口座を1つだけで管理していたり、銀行口座を複数持っていたとしても銀行とのお付き合いでなんとなく開設している場合が見受けられます。すべての資金の出入りを一つの口座で管理している場合、「使用してもよい資金」と「将来の支払いに備える資金」の境界が不明確になります。一時的に口座に資金が残っていても、それは実際には近い将来の税金や経費支払いに必要な資金である可能性が高いのです。そのため、誤って本来使用してはいけない納税資金を日々の運転資金に流用してしまい、重要な支払い時に資金が不足するという状況に陥ります。その結果、資金不足が経営判断を狂わせる要因となり、経営者自身にも大きなストレスをもたらします。

【資金管理のポイント】

資金繰りを安定化するためには、用途に応じて銀行口座を3つに分ける運用が効果的です。

①業務用口座:この口座は日常業務に使用します。売上金の入金、日常的な経費の支払いや融資の返済などを行い、会社の通常運営に必要な資金を管理します。

②納税用口座:年間の見込み納税額を定期的に積み立てます。この口座に資金を確保することで、決算時期や税金支払い時の資金不足を防止し、心理的負担を軽減します。

場合によっては定期預金を利用するのも良いでしょう。

③利益用口座:会社が純粋に自由に使える資金を管理する口座です。この口座にある資金は、実際に使用できる純然たる自社の資金です。従業員・役員への還元、設備投資や新規事業への再投資に活用します。明確に業務用口座と納税用口座を分離して管理することで、事業の将来的な成長に向けての戦略的投資が可能になります。

【まとめ】

銀行口座を「業務用・納税用・利益用」の3つに分けて管理することで、資金繰りの透明性と安定性が格段に向上します。

特に納税用口座を別に設けることで、納税時の資金不足による不安を解消できます。また、利益用口座を明確にすることで、事業の成長を目指した戦略的な投資や社内還元を計画的に行えます。

このように口座を戦略的に活用することで、経営者は場当たり的な資金繰りから脱却し、安定した経営環境の中で安心して本業に専念することができるでしょう。

(2025年4月執筆)

(本記事の内容に関する個別のお問い合わせにはお答えすることはできません。)

執筆者

畑中 外茂栄はたなか ともえ

税理士法人SUN/株式会社SUN Consulting/畑中公認会計士事務所 代表
公認会計士・税理士・第三者承継士。

略歴・経歴

1985年生まれ。
自身の大工だった父親の経営難から、中小企業の経営者支援を行うために公認会計士取得を目指す。同志社大学商学部卒業後、公認会計士試験に合格。
大手監査法人・義父の会計事務所・財務戦略特化型の税理士法人で経験を積み、現職。
「事業承継は、親子2代におけるダブル脚本&ダブル主演」をモットーに、
日本の後継者不在問題を解決するための親族内事業承継・第三者承継の専門家として中小企業の財務改善と発展を支援しています。

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