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民事2025年06月15日 死刑再審1カ月で抗告棄却 静岡干物店強殺、東京高裁 協議なし、弁護側「拙速」 提供:共同通信社

 2012年に静岡県伊東市の干物店で起きた強盗殺人事件で死刑判決が確定した元従業員肥田公明(ひだ・きみあき)死刑囚(72)の再審請求が、今年2月に静岡地裁沼津支部で棄却され、約1カ月後には、東京高裁が協議を1回も開くことなく即時抗告を棄却する決定をしていたことが14日、関係者への取材で分かった。弁護側は拙速な審理だとし、最高裁に特別抗告した。
 再審審理の長期化が問題となっているものの、死刑事件で約1カ月での結論は異例の早さだ。弁護側は、地裁沼津支部が証拠開示を認めなかったことは適正な手続きを保障した憲法に反すると主張したが、高裁は判断しなかった。弁護側は特別抗告に当たり「判断を示すことなく短期間で棄却することは、冤罪(えんざい)を防ぐための慎重な判断とは到底考えられない」と批判した。
 確定審の一審は地裁沼津支部の裁判員裁判で審理。肥田死刑囚は無罪を主張したが、16年11月に死刑判決が言い渡された。最高裁が21年1月に支持し、確定。弁護側は21年8月に再審請求し、事件が複数犯でなければ不可能だったことを示す実験の報告書などを、新たな証拠として提出した。
 関係者によると、地裁沼津支部の再審請求審では裁判官・検察側・弁護側による3者協議が複数回開かれた。弁護側は証拠開示を命じるよう求めたが支部は認めず、今年2月19日に請求を棄却した。同25日に即時抗告。ただ高裁では1度も協議が開かれず、3月28日に退けられた。
 再審を巡っては、審理長期化や、証拠開示のルールがないこと、裁判官によって審理の進め方に差があるといった問題点が指摘される。法制審議会(法相の諮問機関)が制度見直しを議論しているほか、国会議員連盟が法改正に向け活動を活発化させている。

ルール乏しい「再審格差」 問題意識、裁判官も議論

 再審事件はルールが乏しく、審理の進め方や証拠開示の可否が裁判官の裁量で決まる現状は「再審格差」とも指摘される。国会などで制度見直しの動きが進む一方で、司法も問題意識を共有。司法研修所では2月、再審に関する研究会が初めて開かれ、実務を担う裁判官が工夫や課題を議論した。
 「法律の規定が少なく、どこから手を付けていいのか見込みをつけにくい」。研究会の参加者からは現状をこう指摘する声が上がった。科学的証拠に関し争いがある場合、検討に時間がかかることが多いという実情も紹介された。
 三審制を前提に、再審が「非常救済手段であり第四審ではない」とした上で、証拠開示について「法的根拠をどこに求め、どこまで認めるのか」などの問題提起があった。開示の必要性を判断するため、裁判官が非公開の場で証拠を見て検討することも提案された。
 ある刑事裁判官は「明確なルールがある方が判断しやすいのは明らかだ。法改正の議論に注目している」と語る。
 最高裁によると、再審請求の平均審理期間は短縮傾向で、地裁係属事件では2019年の平均10・8カ月が、23年は同8・8カ月になった。

証拠開示課題、改めて示す 識者談話

 元裁判官の森炎(もり・ほのお)弁護士の話 再審請求に対する判断は弁護側が新たに提出した証拠の内容によるため、1カ月という期間が直ちに短すぎるとは言えない。ただ死刑事件の場合、いつ執行されてもおかしくないため、請求段階では証拠が不十分なことも考えられる。証拠開示で弁護側の立証の幅が広まる可能性があるのにそれを認めなかったのなら問題だ。裁判所の中で審理の進め方や証拠開示のノウハウが確立されておらず、改めて課題が示されたと言える。

干物店強盗殺人事件の経過

 2012年12月19日 静岡県伊東市の干物店で、社長と従業員が刃物で刺され死亡しているのが見つかる
 13年6月4日 県警が強盗殺人容疑で元従業員肥田公明死刑囚を逮捕。その後、静岡地検沼津支部が起訴
 16年11月24日 静岡地裁沼津支部の裁判員裁判で死刑判決
 18年7月30日 東京高裁が死刑判決支持
 21年1月28日 最高裁が肥田死刑囚の上告棄却
 8月12日 再審請求
 25年2月19日 地裁沼津支部が再審請求を棄却
 25日 弁護側が即時抗告
 3月28日 高裁が即時抗告を棄却
 4月1日 弁護側が特別抗告

(2025/06/15)

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