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社会保険2025年06月14日 厚生年金拡大、改革法成立 「106万円の壁」撤廃 低年金対策、実現不透明 提供:共同通信社

 年金制度改革法が13日の参院本会議で自民、公明、立憲民主各党などの賛成多数で可決、成立した。パートら短時間労働者が厚生年金に入る年収要件(106万円以上)を撤廃。労働時間が週20時間以上なら、年収を問わず加入することになる。働く時間を抑えて保険料負担を避ける「106万円の壁」とされていた。将来受け取る年金額が手厚くなる半面、保険料負担で手取りが減るケースもある。基礎年金(国民年金)の将来的な底上げを付則に明記した。
 底上げは就職氷河期世代や若者が低年金に陥るのを防ぎ、老後の暮らしを支える狙いだ。しかし必要となる国費の財源確保策は示されておらず、実現するかどうかは不透明だ。
 夏の参院選での争点化を懸念した自民内で意見集約が難航し、法案提出が当初予定より2カ月遅れ、1カ月足らずの審議となった。改革の議論は拙速に終わったとして、日本維新の会や国民民主党、共産党、れいわ新選組などは反対した。
 年収要件は3年以内に撤廃。企業規模要件(従業員数51人以上)も2027年10月から段階的に引き下げ、35年10月になくす。計180万人の新規加入を見込む。「週の労働時間が20時間以上」などの要件は維持する。
 手取り減対策として、労使で折半する保険料のうち、従業員分の一部を企業が肩代わりできる仕組みを3年間の特例で導入。肩代わり分は保険財政から全額還付する。
 基礎年金は29年の「財政検証」で給付水準低下が見込まれた場合に底上げする。厚生年金の積立金を活用。基礎年金の半分を賄う国費が将来、最大年2兆円規模で必要となる。積立金活用を「流用だ」とする自民内の反発を受け政府は法案に盛り込まなかった。立民が明記するよう修正を要求し自公が受け入れた。
 働く高齢者の厚生年金を減らす「在職老齢年金制度」は、減額の基準額(賃金と年金の合計)を月50万円(24年度)から62万円に見直す。高所得の会社員の保険料を27年9月から引き上げる。
 会社員の死亡時に配偶者が受け取る遺族厚生年金の男女差を是正する。
 付則には、国民年金保険料の納付期間(40年)の延長などを検討するとの規定も盛り込んだ。

年金制度改革法のポイント

 年金制度改革法のポイントは次の通り。
 一、パートらの厚生年金加入を拡大するため、年収要件(106万円以上)などを撤廃。
 一、基礎年金の将来的な底上げを付則に明記。2029年の財政検証で給付水準低下が見込まれる場合に底上げする。
 一、働く高齢者への給付を拡充。
 一、高所得の会社員が払う保険料を引き上げ。
 一、遺族厚生年金の男女差を是正する。

「壁」撤廃は一歩前進 識者談話

 明治安田総合研究所の前田和孝(まえだ・かずたか)エコノミストの話 「106万円の壁」を撤廃することや企業規模要件をなくすことは一歩前進だ。ただ、当初案より企業規模要件の廃止時期が遅れて2035年に先延ばしになった。週の労働時間が20時間未満の人は加入対象外のままで、改革が十分とは言えない。低年金者の救済を目的とするなら、厚生年金の積立金を活用する基礎年金底上げよりも、加入拡大を優先して進めるべきだ。国会への法案提出が遅れて審議時間が短くなったこともあり、政府は制度改正について国民に丁寧に説明する必要がある。

次期改革に課題残す 識者談話

 大妻女子大短期大学部の玉木伸介(たまき・のぶすけ)教授(経済政策)の話 基礎年金の底上げに厚生年金の積立金を活用する仕組みは難解で、国民の理解が追いつくのは簡単ではない。今回の改革に対する政治の関与もめまぐるしく、年金制度自体への距離を生んでしまったのではないか。同様の効果が期待できる国民年金保険料の納付期間を5年延長する案は分かりやすかったが、早々に見送られてしまった。元気に働ける期間が延びている現状に対応しないのは不自然で、次期改革に向けて残った課題の一つだ。

年金制度改革法を巡る経過

 2024年7月 厚生労働省が年金財政の検証結果を公表
 12月 厚労省が制度改革の報告書を提示。基礎年金底上げを盛り込む
 25年2月13日 与野党が重要広範議案に決定
 3月13日 橘慶一郎官房副長官が期限の14日に法案提出が間に合わないと与野党に伝達
 4月17日 厚労省が底上げの見送りを自民党会合で説明
 5月16日 政府が法案を閣議決定。国会に提出
 20日 立憲民主党が底上げを明記する修正を要求
 21日 党首討論で石破茂首相が修正協議に応じる意向表明
 27日 自民、公明、立民3党の党首が修正で合意
 28日 修正案を提出
 30日 衆院通過
 6月13日 参院本会議で成立

年金制度改革

 社会や経済の変化に対応するため、おおむね5年に1度行っている。厚生労働省が公的年金の長期的な給付水準を試算した「財政検証」の結果を参考にする。今回の改革は2024年の検証結果に基づき政府がまとめた。

(2025/06/14)

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