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民事2025年08月11日 広陵が夏の甲子園辞退 部内暴力などSNS拡散 不祥事で開幕後は初 提供:共同通信社

 第107回全国高校野球選手権大会に参加している広陵高(広島)は10日、大会2回戦からの出場を辞退した。日本高野連が3月に厳重注意としていた部内暴力の情報が交流サイト(SNS)で拡散して生徒らへの中傷が激しくなったため。不祥事による開幕後の辞退は大会史上初。堀正和(ほり・まさかず)校長は兵庫県西宮市で取材に応じ「大会運営に大きな支障を来している。生徒、教職員、地域の方の人命を守ることが最優先と考えて判断した」と説明した。
 9日に辞退を決め、選手は10日午前に宿舎から広島に向かった。広陵は7日に1回戦を突破しており、2回戦は対戦予定だった津田学園(三重)の不戦勝となる。取材に応じた日本高野連の宝馨(たから・かおる)会長は「真相究明を続け、誰もが納得する形で解決することを願っている」と述べた。
 1月に上級生が寮で頬をたたくなどの暴力事案があり、高野連が3月に厳重注意。これが大会直前にSNSなどで拡散した。監督らから暴力などを受けたとするものなど、他の情報も取り上げられ始め、広陵関係者への中傷や寮の爆破予告などがあったという。
 同校によると1月の件は被害者が警察に被害届を出して捜査が行われている。また、元部員から新たに被害の訴えがあった別の事案については第三者委員会で調査中。その他に新たな事実は確認されていないという。堀校長は「いかなる暴力も認めないことを掲げてきた。今回の事態を招いたことは誠に遺憾」と頭を下げた。野球部の体制を抜本的に見直す意向で、中井哲之(なかい・てつゆき)監督は調査が終わるまで指導から外れる。
 広陵は春の甲子園大会で3度の優勝を誇り、今回が春夏通算53度目出場の強豪。多くのプロ野球選手が巣立っている。この大会では2005年に明徳義塾(高知)が喫煙や部内暴力の不祥事を県高野連へ報告せず、開幕直前に辞退した例がある。

後手に回った高野連 広陵の甲子園出場辞退

【解説】広陵の辞退は処分済みの事案が大会中に再燃した点で前代未聞だった。交流サイト(SNS)で被害生徒の保護者とされるアカウントの告発が広がったのは大会直前。高野連は声明を出して出場に変更はないと強調した。結果として1勝したチームが、状況は大きく変わらないまま大会を去る。日本高野連の宝馨(たから・かおる)会長は「試合する前に辞退となればよかったが、対処しようがなかった」と後手に回ったことを陳謝した。
 告発は暴行が「厳重注意」にとどまった処分への不満がにじみ、同情を集めた。日本高野連は加害人数や程度、上級生か同級生かなど、過去の事案を参照して処分を決める。都道府県高野連を経た学校の報告に基づくため、含まれていない事柄への対応は難しい。
 報告内容の真偽も疑われた。広陵の堀正和(ほり・まさかず)校長は「事象(問題)を両者が納得して終える。そのような形を取ることが最優先だ」と、保護者との間に残った溝を悔いた。宝会長は「審議のやり方は、改善の余地があるかも」と認めた。
 広陵側はSNSの内容が事実と異なると主張し、無関係な生徒らへの攻撃を辞退理由に挙げた。誰もが匿名で告発者となれる状況。宝会長は「被害者の泣き寝入り」が減る利点も指摘する。かつてない環境に、対応できていないのが現状だ。

広陵、部員と保護者に説明 校長「理解してもらえた」 

 全国高校野球選手権大会の出場を辞退した広陵高は10日、広島市内の同高へ戻って部員と保護者に説明会を開いた。堀正和(ほり・まさかず)校長は判断に至る経緯を説明したとし「理解していただいた」と強調した。
 全部員への説明会、保護者ら約250人への説明会をそれぞれ開き、混乱などはなかったという。保護者からは「SNS上の誹謗(ひぼう)中傷にどう対処するか」との意見があり「個人情報の拡散は問題だ。どこまでできるか早急に検討する」と答えたと明かした。
 終了後、取材に応じた堀氏は地域住民や野球ファンに謝罪。「学校が事態の隠蔽(いんぺい)や矮小(わいしょう)化をしているということは一切ない」と強調した。

「生徒らの人命が最優先」 広陵高校長の一問一答

 広陵高の堀正和(ほり・まさかず)校長の一問一答は次の通り。
 ―新たな事実が発覚していない中で出場辞退。
 「SNS(交流サイト)での反響、調査結果の出ていない件についての誹謗(ひぼう)中傷が大会運営に支障を来している。(出場を続ければ)高校野球の名誉、信頼を大きくなくすことになる」
 ―SNSは事実と異なる内容が多いとしたが。
 「生徒が登下校で誹謗中傷を受けたり、追いかけられたり、寮で爆破予告があったり。そうしたこともSNS上で騒がれている。生徒、教職員、地域の方々の人命を守ることが最優先だと考えた」
 ―中井哲之(なかい・てつゆき)監督らの暴力もうわさされている。
 「確認したが、そうしたことは一切ない。野球部の運営体制や環境は、きちんと調査していく。その間は指導から外れてもらうことを伝え、監督本人も承諾している」
 ―部員の反応は。
 「失意のどん底だったと思う。心を立て直すにはまだ厳しい状況だが、落ち着いて朝を迎え、午前9時半ごろに宿舎を出てバスで広島に向かった。子どもたちのケアも真摯(しんし)に考えていきたい」
 ―一連の問題で感じる反省点は。
 「一つ一つの事象を最後まで円満に、納得して終えることが何より最優先。それを職員に指導できなかったのは校長としての私の責任だ」

広陵辞退に驚きなし、憤り 地元広島で反応さまざま

 全国高校野球選手権大会出場中だった広陵高が部員の暴力事案を発端に10日に出場辞退を表明したことを受け、地元広島や高校野球ファンからさまざまな声が上がった。
 広島市内の50代会社員は「広陵の野球部に入れるのはいわばエリート」とした上で「昔から上下関係に厳しいチーム」で、辞退の報道にも驚かなかったという。ただ、暴力などの情報が交流サイト(SNS)で拡散したことについては「言いたい放題」と残念がった。
 50代のタクシー運転手は「なんでもっと早く辞退しなかったのか。広陵に負けたチームが出場できたのに。対応が後手後手だと思う」と憤り「広陵出身のプロ選手も多い。OBもショックを受けているのではないか」とおもんぱかった。
 プロ野球ファンが集い、高校野球関係者も訪れる繁華街の飲食店では、報道があってから広陵野球部のことをあまり話題にしていないという。40代の店長は「不祥事はいいことではない。難しい」と言葉を濁した。
 兵庫県西宮市の甲子園球場周辺では、甲子園大会の観戦を予定していた20代女性が「(辞退の)判断が少し遅かったと思う。地方大会含めて負けた学校がかわいそう」と話した。60代会社員は「過ちを犯していない選手の努力を思うと残念。日本高野連の対応が不透明だった」と不満を示した。

SNSの影響力、甘く見た 黒田勇関西大名誉教授 識者談話

 黒田勇(くろだ・いさむ)関西大名誉教授(スポーツ社会学)の話 甲子園の神聖化が一番の問題。神話を増幅、過激化させる装置としての交流サイト(SNS)が今回強烈に働いた。日本高野連も広陵高校もSNSの影響力を最初に甘く見てしまったと思う。数年の傾向を見ると、早急に対処して判断すべきだった。
 情報の真偽を判断する時間も必要だが、最悪の場合を考えて判断すれば1回戦の試合前までに辞退を決断できたのではないか。
 スポーツの場における体罰は戦前はあまりなかった。非行対策などのためにスポーツをさせるようになり、体罰や暴力的なことが盛んになった。スポーツは体を動かす楽しみで、その文化を育てるというところに立ち返れば暴力はありえない。

広陵の出場辞退を巡る経過

 広陵の全国高校野球選手権大会出場辞退を巡る経過は次の通り。
 8月5日 日本高野連が、広陵の野球部について3月に厳重注意措置とした事案があったと発表
 6日 広陵は1月に寮内で暴力行為があったことを認めて被害生徒に謝罪する文書を発表。聴取で新たな事実は確認できず、日本高野連は大会出場の判断に変更なし、とした
 7日 1回戦で旭川志峯(北北海道)に3―1で勝利。試合後、日本高野連は1月とは別の事案を訴える元部員から情報提供があったことを公表
 10日 堀校長が出場辞退を表明

(2025/08/11)

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