一般2025年10月01日 120法令同性対象とせず 災害弔慰金「含まれ得る」 提供:共同通信社

犯罪被害者等給付金支給法で支給対象の事実婚に同性パートナーも該当し得るとした昨年の最高裁判決を受け、政府は30日、同じか類似の文言がある153法令のうち、国民年金法や雇用保険法など120法令は対象に同性パートナーは含まれないとする取りまとめ結果を公表した。新たに災害弔慰金支給法など9法令は対象に「含まれ得る」とした。
昨年3月の最高裁判決は給付金を支給する「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」に、同性パートナーも該当し得るとの初判断を示した。これを受け、各府省庁で所管する法令での解釈を整理した結果、内閣官房は今年1月、支給法を含む24法令で同性パートナーも対象に「含まれ得る」との報告を公表。他の法令はさらに検討するとしていた。
社会保障制度に関する法令を所管する厚生労働省は、同性婚は認められておらず、同性間の事実婚の判例も少ない中、現時点では対象に含むことは困難とした。所得税法なども同性パートナーは対象に含まれないとした。
三原じゅん子共生社会担当相は記者会見で120法令について、今後の裁判や社会情勢に応じて必要な見直しをする可能性にも言及した。
「安心に暮らしたいだけ」 落胆、同性婚実現望む声も
雇用保険法など「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」といった文言がある法令のうち、大半が同性パートナーは含まれないとの政府見解が示された。当事者らは「パートナーと安心して暮らしたいだけ」と落胆し、同性婚の早期法制化を改めて願った。
「門戸が広がることを期待していた。非常に残念だ」。長崎県大村市の松浦慶太(まつうら・けいた)さん(40)は声を落とす。雇用保険法に基づく転居時の移転費についてパートナー分が不支給となり、訴訟を起こしている原告の1人。「法令の趣旨に照らしたという理由も到底納得できない」と憤った。
LGBT法連合会の神谷悠一(かみや・ゆういち)代表理事は、災害弔慰金支給法など一部が含まれ得るとされ「限られた範囲だが、勇気づけられる当事者もいる」。一方で「社会保障の法制度は困っている人を助ける趣旨で、事実婚も対象としてきた歴史的経緯がある。異性か同性かで差をつけるのは合理的ではない」と批判した。
同性婚を認めない法規定を巡る各地の訴訟では、これまであった5件の高裁判決はいずれも「違憲」とした。東京訴訟原告代理人で「マリッジ・フォー・オール・ジャパン」代表理事の寺原真希子(てらはら・まきこ)弁護士は「同性婚を認めないことを前提に個別の法令を検討している段階なのか。国は同性婚の早期実現に向け議論を進めるべきだ」と話した。
同性パートナー訴訟の経過
2018年7月 同性パートナーを殺害された男性が、犯罪被害者等給付金支給法に基づく給付金不支給の取り消しを求め名古屋地裁に提訴
20年6月 地裁が請求棄却
22年8月 名古屋高裁が控訴棄却
24年3月 最高裁が支給対象の「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」に同性パートナーも該当し得ると初判断
25年1月 三原じゅん子共生社会担当相は同法を含む24法令について、対象に同性パートナーも「含まれ得る」と公表。他の法令も検討するよう各府省庁に指示
9月30日 政府が120法令について、対象に同性パートナーは含まれないとする取りまとめ結果を公表
(2025/10/01)
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