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経営・総務2025年12月10日 不満をなくそうとしない―健全な組織づくりのための「考え方の転換」 執筆者:岩田健一

「うちの社員、仕事が遅い」「不満ばかり言ってくる」
どの会社でも、一度はこんな声を耳にしたことがあるのではないでしょうか。
経営者としては、誰もが気持ちよく働ける職場をつくりたいと思っていても、実際の現場ではどうしても不満やギクシャクが出てしまうものです。
「どう対応すればいいのか」と悩む経営者は少なくありません。
でも実は、健全な組織をつくるには、「不満をなくそう」とするよりも「理想に近づけよう」とするほうが、はるかに効果的なのです。

■目の前の問題にとらわれすぎない

多くの組織では、問題が起きると「原因を突き止めて解決する」ことに集中します。
もちろん大切なことですが、これだけでは根本的な改善にはつながりません。
たとえば、「仕事が遅い人がいる」という問題に対して、その人だけを注意しても、また別の誰かが“次の遅い人”になります。
つまり、問題の形は変わっても、本質は変わらないのです。
このように“目の前の問題を解こうとする”やり方は「ギャップアプローチ」と呼ばれています。
それよりも大切なのは、「理想の姿を描き、その姿に近づけていく」というポジティブアプローチです。
「どんな組織にしたいのか」「理想の状態はどんな状態なのか」
まずはそこを明確にすることが、健全な組織づくりのスタートです。

■“氷山モデル”で見えない部分を見抜く

目に見える問題(行動・発言など)は、氷山のほんの一部です。
その下には「価値観」から生まれる「ルール」「仕組」など、見えない構造があります。
たとえば「仕事が遅い」という表面の問題も、
 • 役割分担が不明確(=組織の仕組の問題)
 • 情報共有がうまくいっていない(=情報共有の仕組の問題)
 • 助け合う風土が育っていない(=関係性の問題)
といった構造的な要因が潜んでいるケースが多いのです。
個人の問題に見えて、実は“組織の構造”の問題。
ここに気づけるかどうかが、リーダーの腕の見せどころです。

■SSR理論で組織の状態を整理する

私や私のコンサルタント仲間は、組織を3つの視点から見ています。
それが「SSR理論」です。
 • 人材力(Strength) … 個々の強み弱み、能力、意欲、価値観など
 • 組織力(structure) … 目的目標、仕組、ルール、役割分担など
 • 関係力(Relation) … 目的目標を達成するためのコミュニケーション
たとえば、「あの社員のやる気が低い」と感じたとき、
多くの経営者はその社員個人の“人材力”だけに注目しがちです。
しかし、実際には「組織力(仕組)」や「関係力(関わり)」が原因であることもあるのです。
着眼点を変えるだけで、見える世界が変わります。
人にアプローチするのか、仕組に手を入れるのか、関係性を整えるのか。
原因を正しく見立てることで、無駄なストレスも減り、打ち手がクリアになります。

■モチベーションのばらつきは「自然なこと」

どの組織にも「よく動く人」「普通の人」「少しマイペースな人」がいます。
いわゆる「2:6:2の法則(働きアリの法則)」です。
このばらつきは、人材力のばらつきであり、自然なことです。
すべての人を一度に変えようとするよりも、まずは全体の26%(=どちらにも傾く層)を巻き込むことを意識しましょう。
この26%が前向きに動き出すと、組織全体にポジティブな連鎖が起こります。
変化は、いつも“変われる人”から始まります。

■不満は「理想を語るチャンス」

社員から不満や愚痴を聞くと、つい「なだめる」「説得する」方向に行きがちです。
しかし、そこで大事なのは「話を受け止めて、理想を描かせる」ことです。
「あなたはそう感じるのですね。では、どうなったら理想ですか?」
この一言で、愚痴が前向きな対話に変わります。
不満を“対立”ではなく、“対話”のきっかけにする。
これが、健全な組織づくりの鍵です。

■まとめ ― 問題はなくすものではなく、活かすもの

不満やトラブルは、組織が悪い証拠ではありません。
それは、組織が成長するためのサインです。
問題をなくそうとするより、理想に近づこうとする方が、結果として問題は消えていく。
健全な組織づくりとは、「問題をなくすこと」ではなく、「問題を通して組織が成長すること」。
経営者がその視点を持つだけで、社員の表情も、職場の空気も、驚くほど変わっていきます。

執筆者の毎日ブログはこちら
https://iwata-office.jp/blog/

(2025年11月執筆)

(本記事の内容に関する個別のお問い合わせにはお答えすることはできません。)

執筆者

岩田 健一

組織開発コンサルタント・キャッシュフローコーチ・社会保険労務士(お金と人事のコンサルティング岩田事務所 代表)

略歴・経歴

心理学科卒・信用金庫職員・調剤薬局経理職を経て2014年8月開業。
答えを教えず答えを引き出すコーチングをベースとした社長相談で、納得の経営判断をサポートする。
クライアントの悩みに合わせて相談に応じるため、相談で取り扱うテーマは、経営理念の見直し、目的目標の明確化、事業戦略の整理、責任分担(組織図)の明確化、従業員のキャリアパスの明確化、理想人材像の明確化、サクセッションプラン、人事制度の明確化、部下との関わり方など、多岐にわたる。
必要に応じて組織診断、人材診断、社員研修、ミーティングの進行役なども行う。

「面倒見の良さ」「相手の話を心から聴く力」「難しいことを分かりやすく説明する力」「あれもこれも相談できる知識の広さ」に定評がある。

人生理念
「誠実・他社貢献・自然体」
ミッション
「会社の成長と社員の幸せの両立を実現し、笑顔あふれるつながり作りに貢献する。」
バリュー
「真の悩みに寄り添い、安心を与えるコンサルティング」

保有資格は特定社会保険労務士・CFP・1級FP技能士など多数。

経営に役立つ365日毎日ブログを3500日(9年7か月)以上継続している。
「岩田事務所 毎日ブログ」
https://iwata-office.jp/blog/

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