人事労務2024年07月25日 部下から評価に不満の声が出ても反射的に評価制度を作ってはいけない理由 執筆者:岩田健一
「部下から評価の不満の声を聞く」という話をよく聞きます。しかし、高い報酬を支払って、評価制度を作っても不満が解消されず、結局無駄な投資になったということが発生します。今日は、「評価への不満」の本質についてお伝えしたいと思います。
1.評価制度を作っても、従業員の不満は解消されない
企業が従業員の不満を解消するために評価制度を導入しようとすることがよくあります。しかし、評価制度を導入しても、従業員の不満が解消されるとは限りません。評価制度が存在しても、日々の業務に追われる中で、上司が部下のことをしっかり見て評価するのは難しいからです。評価制度や評価表を導入するだけでは、評価に関する不満は解消されません。評価制度の運用には時間と労力が必要です。運用が不十分であれば、不満が残るどころか増大することもあります。
2.従業員の不満の本質は、上司が部下をよく見ていないこと
従業員の不満の本質は、上司が部下をしっかり見ていないと感じることにあります。評価制度の有無や評価項目の明確さよりも、上司が日常的に部下の業務や努力を見守り、認識しているかどうかが重要です。部下は上司からのフィードバックや承認を求めています。日頃の承認が欠如していると評価に対する不満が生じます。
3.評価制度の導入よりも、上司と部下の信頼関係を構築することが重要
評価制度の導入よりも、まず上司と部下の信頼関係を構築することが重要です。評価制度がどれほど優れていても、上司と部下の関係が信頼に基づいていなければ、効果は期待できません。信頼関係がない状態での評価は、部下にとって不公平に感じられることが多いです。
4.信頼関係構築には、1on1面談や日々の承認が効果的
上司と部下の信頼関係を構築するためには、1on1面談や日々の承認が効果的です。1on1面談は上司と部下が定期的に対話する機会を提供し、業務の進捗や課題について話し合う場となります。また、日々の業務での小さな成果や努力を承認することで、部下は自分の働きが認識されていると感じ、モチベーションが向上します。承認とは、相手の変化に気づき、その変化を相手に伝える行為です。承認されると人は目標を達成しようとする意欲が高まります。
5.適切な部下の人数は、上司が週に1回面談できる範囲で決まる
適切な部下の人数は、上司が週に1回面談できる範囲で決まります。上司がプレイングマネジャーとして業務を兼務している場合、面談の頻度を維持するためには、部下の人数を適正に制限する必要があります。週に1回の面談は、エンゲージメントを維持するために重要です。
6.評価制度が運営されなければ不満は解消されないため、コミュニケーションが重要
評価制度が運営されなければ、いくら優れた制度を導入しても意味がありません。評価制度の運用には上司と部下の定期的なコミュニケーションが欠かせません。具体的には、評価期間の開始時に上司と部下が目標を合意し、毎週のミーティングで進捗を確認し、評価期間終了時にはフィードバックを行うことが求められます。このような運用があって初めて評価制度は機能し、従業員の不満を解消することができます。
また、人が人を評価する際には必ず主観が入るため、客観的な評価は困難です。そのため、評価制度の設計においては、この点を踏まえた評価項目の設計が必要です。評価制度は社員の不満を解消するためではなく、ビジョンや戦略の達成、人材育成のために設けるべきです。信頼関係の構築やコミュニケーションの増加が評価への不満を減らす鍵となります。
総じて、評価制度の導入は目的ではなく手段であり、その前提として上司と部下の信頼関係を築き、効果的なコミュニケーションを取ることが最も重要です。評価制度が機能するためには、運用に時間と労力をかけ、部下との信頼関係を基盤とする必要があります。
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(2024年7月執筆)
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執筆者
岩田 健一
組織開発コンサルタント・キャッシュフローコーチ・社会保険労務士(お金と人事のコンサルティング岩田事務所 代表)
略歴・経歴
心理学科卒・信用金庫職員・調剤薬局経理職を経て2014年8月開業。
答えを教えず答えを引き出すコーチングをベースとした社長相談で、納得の経営判断をサポートする。
クライアントの悩みに合わせて相談に応じるため、相談で取り扱うテーマは、経営理念の見直し、目的目標の明確化、事業戦略の整理、責任分担(組織図)の明確化、従業員のキャリアパスの明確化、理想人材像の明確化、サクセッションプラン、人事制度の明確化、部下との関わり方など、多岐にわたる。
必要に応じて組織診断、人材診断、社員研修、ミーティングの進行役なども行う。
「面倒見の良さ」「相手の話を心から聴く力」「難しいことを分かりやすく説明する力」「あれもこれも相談できる知識の広さ」に定評がある。
人生理念
「誠実・他社貢献・自然体」
ミッション
「会社の成長と社員の幸せの両立を実現し、笑顔あふれるつながり作りに貢献する。」
バリュー
「真の悩みに寄り添い、安心を与えるコンサルティング」
保有資格は特定社会保険労務士・CFP・1級FP技能士など多数。
経営に役立つ365日毎日ブログを3000日(8年3か月)以上継続している。
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