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民事2026年02月19日 成年後見欠格規定は違憲 最高裁「排除看過できず」 旧警備業法、14例目 提供:共同通信社

 成年後見制度利用者の就業を制限した旧警備業法の欠格規定は憲法に反するとして、元警備員の30代男性が国に損害賠償を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・今崎幸彦(いまさき・ゆきひこ)長官)は18日、「制度利用者を一律で排除する不利益は看過できない」として、規定を違憲とする初判断を示した。国の賠償責任は認めなかった。最高裁の法令違憲判断は14例目。
 大法廷は、規定ができた1982年当時は「相応の合理性があった」とし、個別に能力を審査する規定が加わった2002年の法改正時点でも違憲ではなかったと指摘した。
 だがその後、成年後見制度の利用促進の動きや、障害者権利条約の批准に向けた法整備が進み、遅くとも原告の男性が警備会社を退職した17年3月時点では、職業選択の自由を定めた憲法22条と法の下の平等を定めた同14条に違反するとした。
 一方で「国会が長期にわたり立法措置を怠ったとはいえない」として賠償責任は否定した。裁判官15人のうち検察官出身の三浦守(みうら・まもる)裁判官ら5人は「国会の立法不作為は違法で、国家賠償も認めるべきだ」との反対意見を付けた。一、二審判決はいずれも違憲とした上で賠償も命じていた。
 判決によると、軽度の知的障害がある男性は警備会社で交通整理などの仕事に従事。17年3月に家裁の審判で障害のある人を支援する「保佐人」を付けることが確定した後、会社から契約終了を通知され、退職した。
 旧警備業法は、1982年に禁治産者や準禁治産者は警備員になれないとする規定が追加され、その後、成年被後見人と被保佐人に改められた。障害者への差別や偏見につながると批判され、2019年に同様の規定を設ける他の法律と合わせて削除された。
 同法を所管する警察庁は「厳粛に受け止めたい」とコメントした。
 過去に法令違憲が出されたのは、障害のある人に不妊手術を強制した旧優生保護法などがある。

判決要旨

 旧警備業法の欠格規定を憲法違反とした最高裁判決の要旨は次の通り。
 旧警備業法のうち、成年後見制度の被保佐人であることを警備員の欠格事由とした本件規定は、精神上の障害を理由として職業選択の自由そのものを制約するものだ。職業選択の自由(22条1項)や、法の下の平等(14条1項)を定めた憲法との関係で合憲性を肯定するには、規定による規制が重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要する。
 警備員には、業務に伴う事象に適法、妥当に対応することが求められ、必要な認知、判断、意思疎通をする能力が要求される。本件規定の前身規定ができた1982年当時は、相応の合理性があった。2002年の警備業法改正で、精神の障害がある人について個別に判断能力を審査する別の規定が設けられたが、警備業者の自発的判断に委ねられたもので、十分かどうか直ちに見極めるのは困難だった。したがって、別の規定が設けられた当時も、本件規定が違憲だったとはいえない。
 しかしその後、本件規定を取り巻く諸事情は変化した。成年後見制度が主に財産の処分に関する判断能力に着目したものと理解され、その他の能力が直ちに欠如しているとはいえないと評価されるようになった。
 11年以降、障害者権利条約の批准に向けた国内法の整備が進められ、14年に批准され、16年には障害者差別解消法が施行された。徐々に障害者を取り巻く社会や国民の意識の変化が進み、権利保障の在り方が大きく変容し、労働者について障害を理由とする差別が禁止されるべきだとの考え方が確立した。
 遅くとも、原告の男性が警備会社を退職した17年3月までには、被保佐人のうち警備業務を実施するのに必要な能力を備えた人が、本件規定によって一律に排除されることによる不利益はもはや看過しがたいものになっており、規定は憲法に違反するに至っていたというべきだ。
 違憲なことが明白なのに、国会が正当な理由なく長期にわたって改廃などの立法措置を怠る場合には、その立法不作為は国家賠償法上、違法の評価を受けることがある。
 本件規定が違憲になるに至ったのは、条約の批准や法整備などのさまざまな事象が積み重なり、徐々に社会や国民の意識の変化が進み、差別が禁止されるべきだとする考え方が確立したことによる。この変化は、外形的事実として観察できず、容易に看取し得るものではない。こうした考え方が確立したのは、男性が退職した17年3月と近接した時期だったことがうかがわれる。
 同月の時点までに、成年被後見人らに関する欠格条項の見直しの必要性自体は指摘されていたが、憲法上の問題を理由としておらず、本件規定の憲法適合性について論じた学説の発表はうかがわれず、裁判所の判断もなかった。
 また欠格条項のある法律が多数ある中で、本件規定のみ先行して見直す事情が存在したことはうかがわれない。
 以上によれば、17年3月の時点で、規定が憲法違反であることが明白なのに、国会が正当な理由なく長期にわたって立法措置を怠ったとはいえず、違法の評価を受けるものではない。

長年放置の責任重い 旧警備業法に違憲判断

 【解説】最高裁大法廷判決は、旧警備業法の欠格規定で成年後見制度利用者を一律に排除したことの不利益は「看過できない」と指摘しており、違憲は当然の結論だ。個々人の事情を検討せず、制度利用者は適切な警備業務ができないという「観念上の想定」(一審判決)だけで人権を制約し続けた国の責任は重い。
 規定が加えられた1982年当時、障害者に対する社会の理解は今ほど進んでおらず、制約への批判の声も大きくなかったかもしれない。だが、同法の改正や障害者権利条約の批准など、その後規定を見直す機会は幾度もあったのに、昭和の「遺物」が令和になるまで長年放置されてきた。
 同様の規定は約180の法律にも置かれ、仕事を諦めざるを得なかった人は今回の原告以外にもいる可能性がある。また、この規定があったことで、本来は成年後見制度が必要な人が利用を控えたケースもあったかもしれない。今回の判決は、障害者や制度利用者をひとくくりにするのではなく、能力や適性を具体的に検討することが個人の尊重につながることを示したといえる。

「できること認められた」 原告男性、職失い悔しさも

 「障害があろうとなかろうと、できることはできる。(違憲が)認められたのはちょっとうれしい」。東京都内で記者会見した原告の30代男性は、旧警備業法の欠格規定を違憲とした18日の最高裁判決を評価した。一方、職を失った過去を振り返り「一から仕事を見つけるのは大変。もっと早く規定が変わっていれば」と悔しさも吐露した。
 軽度の知的障害がある男性は2014年に岐阜県の警備会社に採用され、交通整理などに従事した。急に休む人がいれば代わりを買って出て、周囲が心配するほど働きづめになることも。職場環境は良く「世の中のために役立っている」とやりがいも感じていた。
 暗転したのは、家族から勝手にローンを組まれるなど経済的な被害に遭ったのが契機だった。17年3月に成年後見制度を利用し始めると、間もなく退職を余儀なくされた。「まさか辞めなければいけないなんて思ってもみなかった」。自分が一歩前に出ることで「変えたかった」と18年1月に提訴し、翌年に欠格規定は削除された。
 一、二審は国の賠償責任を認めたが、最高裁は否定。会見に同席した内河恵一(うちかわ・よしかず)弁護団長は「1人の青年が生きる道を絶たれた。その視点を失わないようにしてほしい」と注文を付けた。熊田均(くまだ・ひとし)弁護士は「違憲と認められ、第一の目的は達成した。国は今後障害者施策で二度と過ちを犯さないような制度を、責任を持ってつくっていただきたい」と求めた。

5裁判官「国家賠償を」 早期に違憲と反対意見

 成年後見制度利用者の就業を制限した旧警備業法の欠格規定を違憲とした最高裁大法廷判決で、15人の裁判官のうち5人が一、二審と同様に国に賠償を命じるべきだとの反対意見を付けた。違憲となった時期を多数意見よりも早く捉え、長年にわたり問題を放置した国会の責任を指摘した。
 検察官出身の三浦守(みうら・まもる)裁判官は、精神障害がある人の判断能力を個別に審査する規定が設けられた2002年の法改正に着目。被保佐人の警備業務からの一律排除は「過剰な規制であり、必要かつ合理的な措置とは言えないのは明らか」だとして、この法改正までに、職業選択の自由を定めた憲法22条などに違反していたと指摘した。裁判官出身の尾島明(おじま・あきら)裁判官も改正法施行により違憲が明らかになったと判断した。
 弁護士出身の宮川美津子(みやがわ・みつこ)裁判官と学者出身の沖野真已(おきの・まさみ)裁判官もこの改正や施行で違憲となったが、明白となった時期はそれより後だとした。
 一方、弁護士出身の高須順一(たかす・じゅんいち)裁判官は、社会状況などから02年当時に違憲と判断するのは困難だったと指摘。最高裁などでつくる研究会が「制度利用は能力の欠如と関係ない」と指摘した10年には遅くとも違憲となったと述べた上で、11年7月の障害者基本法改正を挙げ、この時期に「違憲が明白となった」とした。

制度転用すべきでなかった 識者談話

 成年後見制度に詳しい日本大の清水恵介(しみず・けいすけ)教授の話 そもそも、成年後見制度を警備員の欠格事由に用いるなど他の法律の領域に転用することは、在るべき姿でなかった。旧警備業法の欠格規定を違憲とした最高裁判決は、いつの時点で違憲と明白になったのか、裁判官によってその判断が分かれていることに特徴がある。国の賠償責任は認められず、既に規定は削除されているため、多数意見に基づけば、今後同種訴訟が続出するといった影響は少ないだろう。

旧警備業法と訴訟の経過

 1982年 旧警備業法に、禁治産者らに関する欠格規定を加える改正
 99年 禁治産者を成年被後見人、準禁治産者を被保佐人とする民法改正
 2002年 「心身の障害により警備業務を適正に行うことができない者」について個別に審査する規定が追加
 10年7月 最高裁や厚生労働省でつくる研究会が「成年後見制度の利用は能力の欠如とは関係ない」と指摘
 14年4月 男性が警備会社で勤務開始
 17年3月 家裁の審判で男性に「保佐人」を付けることが確定。男性は退職
 18年1月 男性提訴
 19年6月 他の約180の法律と合わせて欠格規定を削除
 21~22年 岐阜地裁と名古屋高裁が規定を違憲とし国に賠償を命じる
 26年2月18日 最高裁大法廷が規定を違憲と判断。国の賠償責任は否定

成年後見制度

 認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が十分ではない人を保護するため、財産管理や身上監護をする援助者を家裁の審判で選ぶ制度。判断能力に応じて「後見」「保佐」「補助」の3類型に分かれ、2024年12月末時点の利用者は約25万人。警備業法や国家公務員法には、成年被後見人や被保佐人は就業できないとする規定があったが、19年に一括して削除された。政府は3類型を再編して「補助」に一元化するなどの制度改正を検討している。

(2026/02/19)

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