訴訟手続2026年06月12日 証拠の全面開示遠のく 弁護士「努力続けて」 提供:共同通信社

再審制度の見直しを巡る国会議論は、修正された政府案に参政党が賛成し、冤罪被害者が求める証拠の全面開示は実現が困難になった。開示請求を繰り返し、再審無罪を勝ち取った弁護士は、特に重大事件では全面開示が欠かせないとし「一度きりの改正で終わらせず、努力を続けてほしい」と語った。
「いい証拠も悪い証拠も全部出して裁判をやっていただきたい」。9日の衆院法務委員会。静岡県一家4人殺害事件で再審無罪となった袴田巌さん(90)の姉ひで子さん(93)が捜査当局に向けてこう訴えた。袴田さんの再審開始を決めた村山浩昭元裁判官も参考人として法務委に出席し「再審で証拠開示はまさに生命線だ。最も望ましいのは全面開示だ」とした。
開示対象を「請求理由に関連する証拠」に限定する政府案を批判する野党に対し、政府・与党は「政府案でも必要かつ十分な証拠が提出される」(高市早苗首相)などと反論。そもそも検察がどんな証拠を持っているか分からず「関連する証拠」の特定は困難だとの指摘は与党議員からも上がったが、政府側は修正を否定し続けた。
茨城県利根町で1967年に起きた布川事件では、検察が「見当たらない」とした証拠が再審無罪への道を開いた。
検察は一部の毛髪鑑定書しか開示していなかったが、弁護団が「鑑定中」と書かれた書類を突き付けると、第三者の関与をうかがわせる別の鑑定書を提出。弁護団は、確定審の認定とは異なる死因が記載された死体検案書の開示にも成功した。
検察は当初、いずれも「不見当」としていた。弁護団で事務局長を務めた山本裕夫弁護士は「証拠を出さなくてはいけない局面が来たときに備え『存在しない』ではなく『見当たらない』と答えたのだろう」と皮肉る。
後に弁護団に加わった福井中3殺害事件でも、開示を渋る検察側が裁判所に強く促されて証拠を開示。提出された捜査報告書の中には、目撃証言の信用性に疑義が生じる内容が含まれていた。
山本さんは、開示の必要性の判断は裁判官によって差が生じる恐れがあると指摘。証拠は全面開示すべきで、特に請求人が死刑や無期懲役、長期の懲役の場合は「不可欠だ」と強調する。
布川事件では開示請求が20回を超えた。初めから全証拠が開示されていれば請求の必要はなくなる。山本さんは、膨大な証拠を精査する時間は「証拠を隠され、審理が延びる年月に比べれば大したことはない」と話した。
(2026/06/12)
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