一般2026年08月06日 築50年超、煙突真っ二つ 点検20年前、待たれる検証 提供:共同通信社

築50年超えの煙突が、すさまじい揺れで真っ二つに折れた。9人が死亡した日本製紙八代工場。書籍や新聞向けに紙を生産する人々が働く現場の象徴が、一瞬にして姿を変えた。倒壊した煙突を最後に点検したのは約20年前で、その後に補強していたと説明する会社側。高さ80メートルの構造物の安全対策が適正だったのか、検証が待たれる。
▽手作業の現場
「ご遺族の皆さまには心よりお悔やみ申し上げる。誠に申し訳ありません」。5日午後3時から八代市役所で始まった記者会見で、瀬辺明社長は眉間にしわを寄せながら頭を下げた。
同社の説明によると、倒壊した煙突は先月28日午後4時27分ごろ、震度6強の地震発生とほぼ同時に中央部分が折れ、敷地内の事務所を直撃。「2階から1階に突き抜けたような形」(同社幹部)になったという。犠牲者9人は逃げる間もなかったとみられる。激しい揺れで、電源は失われ、工場内の震度計は欠測した。
119番や110番はつながらず、社員の親族の消防職員を通じて救助要請できたのは午後5時10分過ぎだった。駆け付けた地元消防の隊員らは、重機を入れられない状況の中、手作業でがれきを取り除き、懸命の救助作業に当たった。
日本製紙の会見は地震発生から1週間以上たった8月5日にずれ込んだ。この間、犠牲になった社員の家族への対応に当たっていたという。
▽3本が損傷
「煙突が倒壊したメカニズムは、専門家が入った調査委員会を立ち上げて検証していく」。杉野光広副社長は会見で、老朽化していたかどうかなど、原因究明を慎重に進める考えを示した。
工場にある煙突5本のうち3本が損傷した。倒壊した80メートルの煙突は鉄筋コンクリート製で1970年に建てられた。点検を行ったのは97年と2006年。16年の熊本地震後には補強工事を施したという。
杉野氏は「大きな地震が来たら、煙突に何らかの被害があるというのは一般的な常識として持ち合わせていた」と明かした。
▽報告義務なし
建築基準法では、崩落や倒壊を防止するため、地面から高さ60メートルを超える煙突は、建築時に国の定める構造計算に沿って、地震時などの安全性の確認を義務付け、国土交通相の認定が必要だ。
ただ、その後の定期報告の義務はなく「事業者の責任で維持、管理するのが原則だ」(国交省担当者)という。金子恭之国交相は4日、国土技術政策総合研究所の研究者を現地に派遣し、実態把握を支援する方針を示した。
工学院大の久田嘉章教授(地震工学)は、今回の地震では活断層近くで非常に強い地震動が計測されていると指摘。「古い煙突の耐震性が十分ではなかった可能性もある。工場は活断層から近く、強烈な地震動に耐えられなかったのではないか」との見方を示す。同様の事故を防ぐためには外部の専門家らと連携した詳細な検証が欠かせないとの立場だ。
日本製紙は会見で、八代工場の閉鎖は「考えていない」と強調したものの、再建のめどは立たずにいる。今年5月には米国子会社の工場で11人が亡くなるタンク破裂事故を起こしており、賠償も含む莫大な損失負担が見込まれる。
(2026/08/06)
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