カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

資料2003年10月15日 【税務通達等】 【平成15年度】相続税・贈与税の改正のあらまし(情報)(国税庁資産課税課情報 第20号 平成15年8月8日)

資産課税課情報 第20号 平成15年8月8日
国税庁資産課税課

【平成15年度】相続税・贈与税の改正のあらまし(情報)
 平成15年税制改正により相続時精算課税制度の創設等がなされたところであるが、相続税・贈与税関係の改正内容をまとめた「【平成15年度】相続税・贈与税の改正のあらまし」について別添のとおり送付するので、執務の参考とされたい。

 あらましの内容については、問中において別に適用時期を記載してあるものを除き、平成15年1月1日以後に相続若しくは遺贈(死因贈与を含む。)又は贈与(死因贈与を除く。)により取得した財産に係る相続税又は贈与税について適用する。

〈  凡  例  〉
 平成15年度税制改正により改正された相続税法(昭和25年3月31日法律第73号)等の略称は次のとおりとする。

相 法…改正後の相続税法
相 令…改正後の相続税法施行令
相 規…改正後の相続税法施行規則
措 法…改正後の租税特別措置法
措 令…改正後の租税特別措置法施行令
措 規…改正後の租税特別措置法施行規則
通則法…改正後の国税通則法
旧相法…改正前の相続税法
旧措法…改正前の租税特別措置法
改正法附則…所得税法等の一部を改正する法律附則
改正相令附則…相続税法施行令の一部を改正する政令附則
相基通…改正後の相続税法基本通達
措 通…改正後の租税特別措置法通達
 
目    次

1 相続時精算課税
 
 相続時精算課税
(1)  相続時精算課税
  概要
  (参考)相続時精算課税制度のフロー
  相続時精算課税の適用対象者等
  相続時精算課税の適用手続(通常の場合)
  相続時精算課税の適用手続(贈与のあった年の中途において贈与者が死亡した場合)
  年の中途において推定相続人となった場合
  特定贈与者の推定相続人でなくなった場合
  相続時精算課税の適用に当たっての提出書類
(2)  相続時精算課税における贈与税額の計算
  概要
  <計算例>
(3)  相続時精算課税における相続税額の計算
  概要
   (参考)相続税法の適用関係
  相続時精算課税における贈与税額の還付
  <計算例>
(4)  贈与者が贈与をした年の中途に死亡した場合
(5)  相続時精算課税における相続税の納付義務の承継等
 概要
 承継の割合
 承継相続人が特定贈与者より先に死亡した場合の再承継
 承継があった場合の相続税の申告
 「相続時精算課税選択届出書」の提出前に死亡した場合(相続時精算課税選択届出書の提出方法)
 「相続時精算課税選択届出書」の提出前に死亡した場合(相続時精算課税選択届出書の添付書類)
 住宅取得等資金の贈与を受けた場合の特例
(1)  特定の贈与者から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税選択の特例
 概要
   (参考)相続時精算課税選択の特例の適用を受ける住宅用家屋等の範囲
 相続税法の施行地外にある住宅取得等資金
 住宅用家屋の新築又は建築後使用されたことのない住宅用家屋の取得について
 既存住宅用家屋の取得について
 居住の用に供されている住宅用の家屋について行う増改築等について
 居住の用に供したとき
 相続時精算課税選択の特例の適用に当たっての提出書類
 相続時精算課税選択の特例の適用後に贈与を受けた場合
(2)  相続時精算課税における贈与税の住宅資金特別控除の特例
 概要
 <計算例>
(3)  住宅取得資金等の贈与を受けた場合の贈与税額の計算の特例(旧措法70の3)
 概要
 <計算例>
 特定事業用資産についての相続税の課税価格の計算の特例
(1)  制度の概要
 概要
   (参考)特定事業資産についての相続税の課税価格の計算の特例のフロー
 平成15年度税制改正で新たに追加された特定事業用資産
(2)  特定受贈同族会社株式等
 概要
 特定受贈同族会社株式等である選択特定事業用資産
   (参考)特定受贈同族会社株式等の要件の判定時期等
 特定受贈同族会社株式等に係る20億円要件
 特定受贈同族会社株式等に係る役員要件
 特定受贈同族会社株式等の保有の期間(1)
 特定受贈同族会社株式等の保有の期間(2)
 特定受贈同族会社株式等の譲渡
 特定受贈同族会社株式等に係る法人の解散
(3)  特定同族会社株式等
 概要
 被相続人の親族等の範囲及び同族株主グループの範囲
 議決権に制限のある株式又は出資の範囲
(4)  特定受贈森林施業計画対象山林
 概要
   (参考)森林法(昭和22年6月26日法律第249号)(抜粋)
 特定受贈森林施業計画対象山林である選択特定事業用資産
   (参考) 特定受贈森林施業計画対象山林である特定事業用資産について特定事業用資産の特例の適用を受けようとする場合の判定時期等
 特定受贈森林施業計画対象山林の贈与税の申告期限を経過する時の施業計画
(5)  特定森林施業計画対象山林
 概要
(6)  小規模宅地等の特例と特定事業用資産の特例の重複適用
 概要
   (参考)小規模宅地等の特例と特定事業用資産の特例を重複適用する場合の関係図
 〈計算例〉
 相続時精算課税制度の導入に伴う所要の改正
(1)  贈与税の申告内容の開示
(2)  連帯納付義務
(3)  相続税及び贈与税の申告書の公示
(4)  農地等を贈与した場合の贈与税の納税猶予
 贈与者の範囲
 採草放牧地及び準農地の面積
 特定贈与者からの贈与
(5)  相続財産に係る譲渡所得の課税の特例

2  既往制度の改正
 
 相続税・贈与税の税率
 納税義務者
 相続税の納税義務者
   (参考)相続税の納税義務者及び納税義務の範囲について
 相続税の非居住無制限納税義務者
 贈与税の納税義務者
   (参考)贈与税の納税義務者及び納税義務の範囲について
 贈与税の非居住無制限納税義務者
 財産の所在
 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例
 相続税額の2割加算
 概要
 相続時精算課税適用者の2割加算
 相次相続控除
 生命保険契約に関する権利の評価
 納税管理人の選任
 更正の請求の特則
    (参考)死後認知があった場合の更正の請求の期限
10  更正及び決定の特則
11  贈与税の期限後申告・修正申告の特則
12  贈与税の更正・決定等の期間制限の特則
13  延滞税の特則
14  同族会社の行為又は計算の否認等

第1 相続時精算課税

1 相続時精算課税
 (1) 相続時精算課税

① 概要
 平成15年度税制改正において創設された「相続時精算課税」の概要について
 (答)
 贈与により財産を取得した者は、従来の暦年単位の課税方式(「暦年課税」)に代えて、「相続時精算課税」の適用を受けることができることとされた。
相続時精算課税とは、贈与時に贈与財産に対する贈与税を納付し、相続時にその贈与財産の価額と相続財産の価額を合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納付した贈与税相当額を控除した額をもって納付すべき相続税額とするものであり、適用対象者等は次のとおりである。

 適用対象者
 相続時精算課税の適用対象となる者は次のとおり。
(1) 受贈者
贈与者の推定相続人である直系卑属でのうち、贈与を受けた年の1月1日において20歳以上である者
(2) 贈与者
贈与をした年の1月1日において65歳以上である者

 適用手続
 相続時精算課税の適用を受けようとする受贈者は、「相続時精算課税選択届出書」を贈与を受けた財産に係る贈与税の申告期間内に当該贈与税の申告書に添付して納税地の所轄税務署長に提出する。
 なお、相続時精算課税は、受贈者が各々、贈与者ごとに適用を受けることができ、一度相続時精算課税の適用を受けた場合には暦年課税への変更はできない(その贈与者からの贈与については、常に相続時精算課税が適用される。)。

 贈与税額・相続税額の計算
 相続時精算課税における贈与税額及び相続税額の計算は次のとおり。
(1) 贈与税額の計算
贈与税の額は、贈与者ごとの贈与財産の価額の合計額から、2,500万円までの特別控除額を控除した後の金額に、一律20%の税率を乗じて算出する。
(2) 相続税額の計算
相続時精算課税の適用を受けた受贈者は、相続時精算課税に係る贈与者の相続開始時に、相続時精算課税の適用を受けた財産の贈与時の価額と相続財産の価額を合計した金額を相続税の課税価格として計算した相続税額から、上記(1)により既に納付した贈与税相当額を控除する。その際、相続税額から控除しきれない贈与税相当額がある場合は、還付を受けることができる。


(参考)相続時精算課税制度のフロー(PDF 1_1)

② 相続時精算課税の適用対象者等
問 相続時精算課税の適用対象者及び適用対象となる財産等について
 (答)

 相続時精算課税の適用を受けることができる適用対象者は次のとおりである(相法21の9①)。
(1) 受贈者 
贈与者の推定相続人である直系卑属のうち、贈与を受けた年の1月1日において20歳以上である者
(注)  贈与者の推定相続人とは、贈与をした日において最先順位の相続権(代襲相続権を含む。)を有する者をいい、推定相続人であるかどうかの判定は、当該贈与の日において行う(相基通21の9-1)。
(2) 贈与者 
贈与をした年の1月1日において65歳以上である者
(注)  相続時精算課税において、「相続時精算課税選択届出書」を納税地の所轄税務署長に提出した受贈者を「相続時精算課税適用者」、その届出書に係る贈与者を「特定贈与者」という(相法21の9⑤)。
   住宅取得等資金の贈与を受けた場合には、第1,2を参照。

 相続時精算課税の適用に当たっては、贈与財産の種類(贈与によって取得したものとみなされる財産を含む。)、贈与財産の価額(金額)並びに贈与回数に関する制限はない。
  なお、相続時精算課税の対象財産は、贈与税の課税価格に算入される財産に限られる(相法21の2)。
 


③ 相続時精算課税の適用手続(通常の場合)
問 相続時精算課税の適用を受けるための手続について
 (答)

 相続時精算課税の適用を受けようとする受贈者は、贈与を受けた財産に係る贈与税の申告期間内に「相続時精算課税選択届出書」及び必要書類(下記参照)を贈与税の申告書に添付して、納税地の所轄税務署長に提出しなければならない(相法21の9②、相令5①)。
 なお、当該届出書は、贈与をした者ごとに作成しなければならない(相令5①)。
(注)  当該届出書の提出に関しては、ゆうじょ規定が設けられていないことから、その提出期限までに提出しなかった場合には、相続時精算課税の適用を受けられない(相基通21の9-3)。

 特定贈与者からの贈与により取得する財産については、当該届出書に係る年分以降、すべて相続時精算課税の適用を受けることになる(当該届出書を提出した翌年以降、特定贈与者から財産の贈与を受けた場合には、当該届出書を改めて提出する必要はない。)(相法21の9③)。
 なお、提出された当該届出書は、撤回することができない(相法21の9⑥)。

(事例1) 
 長男、二男が父から財産の贈与を受けた場合、長男、二男のそれぞれが父からの贈与により取得した財産について相続時精算課税の適用を受けるか否か選択することになる。
   

(事例2)
 子が父母から財産の贈与を受けた場合、子は父母からの贈与により取得したそれぞれの財産について相続時精算課税の適用を受けるか否か選択することになる。



④ 相続時精算課税の適用手続(贈与のあった年の中途において贈与者が死亡した場合)
 贈与者が贈与をした年の中途に死亡した場合の相続時精算課税の適用を受けるための手続について
 (答)
 贈与者が贈与をした年の中途に死亡した場合において、受贈者が相続時精算課税の適用を受けようとするときは、「相続時精算課税選択届出書」を次の(1)又は(2)のいずれか早い日までに贈与者の死亡に係る相続税の納税地の所轄税務署長に提出しなければならない(相令5③、④、相基通21の9-2)。
(1)  贈与税の申告書の提出期限(通常は、贈与を受けた年の翌年の3月15日)
(2)  贈与者の死亡に係る相続税の申告書の提出期限(通常は、贈与者について相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月を経過する日)
 なお、(2)の日が当該届出書の提出期限となる場合において、当該贈与者の死亡に係る相続税の申告書を提出するときには、当該相続税の申告書に当該届出書を添付しなければならない(相令5④)。
(注)  相続税の申告書を提出する必要がない場合であっても、相続時精算課税の適用を受けるためには、当該届出書を当該贈与者の死亡に係る相続税の納税地の所轄税務署長に提出しなければならないことに留意する。




(事例)
 子が父母から財産の贈与を受け、父母のそれぞれについて相続時精算課税の適用を受けようとする場合において、父が贈与をした年の中途に死亡したときの相続時精算課税選択届出書の提出先
  ・ 父母の住所地・・・東京都千代田区霞が関3丁目 (麹町税務署管内)
  ・ 子の住所地・・・・大阪府大阪市中央区大手前1丁目(東税務署管内)



⑤ 年の中途において推定相続人となった場合
 年の中途において推定相続人となった場合の相続時精算課税の適用について
 (答)
 その年の1月1日において20歳以上の者が、同日において65歳以上の者からの贈与により財産を取得した場合において、受贈者である20歳以上である者が、その年の中途において贈与者の養子となったことその他の事由によりその贈与者の推定相続人(その贈与者の直系卑属になる者に限る。)になったときには、推定相続人となる前にその贈与者からの贈与により取得した財産については、相続時精算課税の適用はない(相法21の9④)。
 したがって、贈与者の推定相続人となった時以後における、その贈与者からの贈与により取得した財産についてのみ、相続時精算課税の適用を受けることができる。

【孫が祖父から財産の贈与(①~③)を受けた場合】

(説明)
 養子縁組前の贈与①については、暦年課税により贈与税額を計算し、養子縁組以後の贈与②及び③は、相続時精算課税により贈与税額を計算する。
  なお、贈与①に係る贈与税額の計算に当たっては、基礎控除(110万円)の適用があることに留意する(相基通21の9-4)。


⑥ 特定贈与者の推定相続人でなくなった場合
 特定贈与者の推定相続人でなくなった場合(例えば養子縁組の解消)の相続時精算課税について
 (答)
 その特定贈与者からの贈与により取得した財産については、引き続き相続時精算課税が適用される(相法21の9⑤)。

【孫が祖父から財産の贈与(①、②)を受けた場合】

(説明)
 離縁後の贈与②についても、相続時精算課税が適用される。


⑦ 相続時精算課税の適用に当たっての提出書類
 相続時精算課税の適用に当たり贈与税の申告書に添付する書類について
 (答)
 相続時精算課税の適用を受けようとする者は、「相続時精算課税選択届出書」を贈与税の申告書に添付して提出しなければならない(相法21の9②、相令5①)。
 なお、当該届出書には、次の書類を添付することとされている(相令5②、相規11①)。
(注)  贈与者が贈与をした年の中途に死亡した場合には、当該贈与者の死亡に係る相続税の納税地の所轄税務署長に当該届出書を提出するのであるが、この場合において当該贈与者の死亡に係る相続税の申告書を提出しなければならないときには、当該届出書は当該相続税の申告書に添付して提出しなければならない(第1・1(1)参照)。

添 付 書 類
 受贈者の戸籍謄本若しくは抄本又は受贈者の戸籍の附票の写しその他の書類で次の内容を証する書類(贈与を受けた日以後に作成されたものに限る。)
① 受贈者の氏名、生年月日
② 受贈者が20歳に達した時以後の住所又は居所
③ 受贈者が贈与者の推定相続人であること
 贈与者の住民票の写しその他の書類で次の内容を証する書類(贈与を受けた日以後に作成されたものに限る。)
① 贈与者の氏名、生年月日
② 贈与者が65歳に達した時以後の住所又は居所
   (注)  ②については、住民票の写しのほか、贈与者の戸籍の附票の写しなどが該当する。
 贈与者の相続時精算課税選択届出書の提出により相続時精算課税の適用を受ける財産に係る贈与をしたことを証する書類その他の書類で贈与者が相続時精算課税選択届出書の提出により相続時精算課税の適用を受ける財産に係る贈与をしたことを明らかにする書類
(注)  上記の内容を記載した贈与契約書等がこれに該当するが、贈与者が作成した「財産を贈与した旨の確認書(仮称)」によっても差し支えない。
(注)  受贈者が相続時精算課税選択届出書を提出する前に死亡している場合の提出書類については、22ページ参照。
 (2) 相続時精算課税における贈与税額の計算


① 概要
 相続時精算課税における贈与税額の計算方法について
 (答)
 相続時精算課税における贈与税額は、贈与税の課税価格から特別控除額を控除した後の金額に、一律20%の税率を乗じて算出する。


(1) 課税価格
 相続時精算課税適用者が特定贈与者からの贈与により取得した財産については、特定贈与者ごとにその年中において贈与により取得した財産の価額を合計し、それぞれの合計額をもって、贈与税の課税価格とする(相法21の10)。
(注)  相続時精算課税適用者が特定贈与者からの贈与により取得した財産については、相続税法第21条の5(贈与税の基礎控除)から同法第21条の7(贈与税の税率)の規定の適用はないことに留意する(相法21の11)。

(2) 特別控除額
 相続時精算課税適用者がその年中において特定贈与者からの贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、特定贈与者ごとの贈与税の課税価格からそれぞれ次に掲げる金額のうちいずれか低い金額を控除する(相法21の12①)。
 2,500万円(既にこの特別控除を適用し控除した金額がある場合には、その金額の合計額を控除した残額)
 特定贈与者ごとの贈与税の課税価格
 なお、特別控除は、期限内申告書に特別控除を受ける金額、既にこの特別控除を適用し控除した金額がある場合にはその金額その他の必要事項の記載があるときに限り適用する。(相法21の12②)。
(注)  特別控除の適用に関しては、特別控除を受ける金額、既にこの特別控除を適用し控除した金額等の必要事項の記載がない期限内申告書の提出があった場合において、税務署長がその記載がなかったことについてやむを得ない事情があると認めるときは、その記載をした書類の提出があった場合に限り、特別控除を適用することができることとされている(相法21の12③)。
 なお、期限内申告書の提出がない場合には、上記のゆうじょ規定が働かないことから、特別控除の適用はない(相基通21の12-1)。
 また、翌期以降に繰り越される特別控除額が過大又は過少である場合には、修正申告又は更正の請求をすることができる(通則法2六ハ(3)、19、23)。

(3) 税率
 相続時精算課税適用者がその年中において特定贈与者からの贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税の額は、特定贈与者ごとに計算した贈与税の課税価格(特別控除額を控除した金額)にそれぞれ20%の税率を乗じて計算した金額とする(相法21の13)。


② <計算例>
問 具体的な計算例について

(設例1)特定贈与者1人から財産の贈与を受けた場合
 子が父から3年にわたり(1年目に1,000万円、2年目に1,300万円、3年目に800万円)財産の贈与を受け、1年目から相続時精算課税の適用を受ける場合

(1 年目の計算)
課税価格  特別控除額(※)
1,000万円-1,000万円=0万円
※  特別控除額の計算
(2,500万円―0万円)>1,000万円(課税価格) ∴1,000万円

(2 年目の計算)
課税価格  特別控除額(※)
1,300万円-1,300万円=0万円
※  特別控除額の計算
(2,500万円―1,000万円(1年目の特別控除額))>1,300万円(課税価格) ∴1,300万円

(3 年目の計算)
課税価格  特別控除額(※)        税率   贈与税額
800万円 ― 200万円=600万円  600万円 ×20% =120万円
※  特別控除額の計算
(2,500万円―2,300万円(1、2年目の特別控除額の合計額))<800万円(課税価格)∴200万円



(設例2)同一年中に特定贈与者2人以上から財産の贈与を受けた場合
 子が同一年中に父から3,000万円、母から2,500万円の財産の贈与を受け、それぞれから贈与を受けた財産について相続時精算課税の適用を受ける場合

(父から贈与を受けた財産に係る贈与税額の計算)

(母から贈与を受けた財産に係る贈与税額の計算)

(納付すべき税額)
① + ② = 100万円


(設例3)同一年中に特定贈与者及び特定贈与者以外の贈与者から財産の贈与を受けた場合
 子が同一年中に父から3,000万円、母から200万円の財産の贈与を受け、父から贈与を受けた財産についてのみ相続時精算課税の適用を受ける場合

(父から贈与を受けた財産に係る贈与税額の計算)

(母から贈与を受けた財産に係る贈与税額の計算)

(納付すべき税額)
① + ② = 109万円

1 相続時精算課税
 (3) 相続時精算課税における相続税額の計算

① 概要
 相続時精算課税における相続税額の計算の概要について
 (答)
 特定贈与者の死亡に係る相続税額の計算において、相続時精算課税適用者は、当該特定贈与者から相続又は遺贈により取得した財産の価額と相続時精算課税の適用を受ける財産の価額を合計した金額を相続税の課税価格として計算した相続税額から、相続時精算課税における贈与税相当額を控除して、納付すべき相続税額を計算する。その際、相続税額から控除しきれない贈与税相当額については、還付を受けることができる。

(参考)相続税法の適用関係
  相続又は遺贈により財産を取得した相続時精算課税適用者(相法21の15) 相続又は遺贈により財産を取得しなかった相続時精算課税適用者(相法21の16)
課税価格
(相法11の2)
相続時精算課税の適用を受ける財産については相続税の課税価格に加算する(相法21の15①)。 相続時精算課税の適用を受ける財産については相続又は遺贈により取得したものとみなす(相法21の16①)。
相続税の課税価格に加算される財産の価額は、贈与の時における価額による(相法21の15①、相基通21の15-2)。 相続税の課税価格に算入される財産の価額は、贈与の時における価額による(相法21の16③)。
債務控除
(相法13)
適用あり(相法21の15②、21の16①、相令5の4①、相基通13-9)
相続開始前3年以内の贈与加算(相法19) 適用あり
 相続時精算課税の適用を受ける財産については適用なし(相法21の15②、21の16②)。
基礎控除
(相法15)
適用あり(相法21の14)
相続税額の2割加算(相法18) 適用あり(第2・5②参照)
贈与税額控除(暦年課税における贈与税額の控除)(相法19) 適用あり
 相続開始前3年以内に贈与により取得した財産の価額について相続税の課税価格に加算されるものがある場合において、当該財産の価額に対応する贈与税額については、相続税額から控除することができる(相法19①、相令4①、5の4③)。
未成年者控除
(相法19の3)
適用あり(相法21の15②、21の16②)
 相続時精算課税適用者は、特定贈与者の相続開始時には20歳以上であるから、相法第19条の3第1項の規定の適用はないが、同条第2項の規定の適用があり得る。
障害者控除
(相法19の4)
適用あり
 相続開始時において国内に住所を有しない者については適用なし(相法19の4①、③、21の16②)。
相次相続控除
(相法20)
適用あり
 控除限度額を計算する場合の「第2次相続に係る被相続人が第1次相続により取得した財産の価額」及び「第2次相続により相続人及び受遺者が取得した財産の価額」には、相続時精算課税の適用を受ける財産の価額を含む(相法20、21の15②、21の16①、相基通20-3、20-4)。
外国税額控除(相法20の2) 適用あり
 控除の限度額を計算する場合の「相続又は遺贈により取得した財産の価額」には、当該被相続人からの贈与により取得した相続時精算課税の適用を受ける財産の価額を含む(相基通20の2-3)。
相続時精算課税における贈与税額の控除
(相法21の15、21の16)
適用あり(相法21の15③、21の16④、相令5の3)
 なお、相続時精算課税の適用を受ける財産につき「課せられた贈与税」がある場合において控除する贈与税額は、外国税額控除の規定による控除前の税額とされ、延滞税、利子税、過少申告加算税、無申告加算税及び重加算税に相当する税額を除かれる。   
 また、「課せられた贈与税」には、相続時精算課税の適用を受ける贈与財産に対して課されるべき贈与税(相法第36条第1項及び第2項の規定による更正又は決定をすることができなくなった贈与税を除く。)も含まれる(相基通21の15-3、21の16-1)。
(注)  相続時精算課税適用者が特定贈与者より先に死亡した場合の「基礎控除」、「未成年者控除」、「障害者控除」及び「相続時精算課税における贈与税額の控除」については第1・1(5)④参照。
   非居住無制限納税義務者の「債務控除」、「未成年者控除」及び「障害者控除」については第2・2③参照。

② 相続時精算課税における贈与税額の還付
問 相続時精算課税における贈与税額の還付の申告書について
 (答)

(1)  相続時精算課税における贈与税額の還付
 相続時精算課税の適用を受ける財産に係る贈与税の税額(在外財産に対する贈与税額の控除(相法21の8)の規定による控除前の税額とし、延滞税、利子税、過少申告加算税、無申告加算税及び重加算税に相当する税額を除く。)に相当する金額を相続税額から控除してもなおその控除しきれない金額がある場合においては、その控除しきれなかった金額(在外財産に対する贈与税額の控除の適用を受ける財産に係る贈与税について、在外財産に対する贈与税額の控除の適用を受けた場合にあっては、当該金額から在外財産に対する贈与税額を控除した残額とする。)に相当する税額の還付を受けるため、相続税の申告書を提出することができる(相法27③、33の2①)。
(注)  相続時精算課税における贈与税額の控除は、「贈与税額控除(相続税法第19条第1項の規定により控除されるもの)」、「未成年者控除」、「障害者控除」、「相次相続控除」及び「外国税額控除」を行った後の残額(赤字となる場合には零とする。)から控除する(相基通20の2-4、21の15-4、21の16-1)。

(2)  還付を受けるための相続税の申告書の提出期限
 還付を受けるための相続税の申告書(この問において「相続税還付申告書」という。)は、特定贈与者に係る相続開始の日の翌日から起算して5年を経過する日まで提出することができる(通則法74①、相基通27-8)。

(3)  相続税還付申告書に係る更正の請求
 相続税還付申告書に記載した還付税額が過少であった場合には、国税通則法第23条(更正の請求)の規定により、相続税還付申告書を提出した日から1年以内に限り更正の請求をすることができる(相基通27-9、通則法23)。


  (事例)還付税額の計算

③ <計算例>
問 具体的な計算例について

(設例)
相続人 法定相続分 相続又は遺贈により取得した財産の価額 相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の価額 相続時精算課税における贈与税額の合計額
甲(子) 1/4 100,000千円 50,000千円 5,000千円
乙(子) 1/4 1,000千円 50,000千円 5,000千円
丙(子) 1/4 20,000千円 0千円
丁(子) 1/4 19,000千円
(注)  「相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の価額」は贈与時の価額である。
 相続税の課税される財産のうちに在外財産は含まれていないものとする。
(課税価格の合計額)


(課税遺産総額)


(各人の相続税額)


(納付すべき相続税額等)

 
 (4) 贈与者が贈与をした年の中途に死亡した場合

① 概要
 贈与者が贈与をした年において死亡した場合の贈与税及び相続税の取扱いについて
 (答)
 受贈者の態様により、贈与税及び相続税の取扱いは次の表のとおりとなる。

受贈者の態様 相続財産の取得 贈与税の取扱い 相続税の取扱い
相続時精算課税適用者
(相続時精算課税の適用を受けようとする者を含む。)
贈与税の申告不要(相法28④)
 贈与税の課税価格を構成するが、申告は不要となる(相法21の10、相基通11の2-5、21の2-3(2))。
贈与を受けた財産の価額について、相続税の課税価格に加算し相続税額を計算する(相法21の15①)。
贈与を受けた財産については、相続又は遺贈により取得したものとみなして相続税額を計算する(相法21の16①)。
上記以外の者 贈与税の申告不要(相法21の2④) 贈与を受けた財産の価額について、相続税の課税価格に加算し相続税額を計算する(相法19①)。
贈与により取得した財産の価額は、贈与税(暦年課税)の課税価格に算入される(相基通21の2-3(1))。 相続税の課税対象とならない。
(注)  相続時精算課税の適用を受けようとする者は、「相続時精算課税選択届出書」を提出しなければならない(相基通11の2-5(注)、相基通21の2-3(注))。
 
 (5) 相続時精算課税における相続税の納付義務の承継等

① 概要
 相続時精算課税適用者が特定贈与者よりも先に死亡した場合の相続時精算課税の適用に伴う納税に係る権利義務の承継について
 (答)
 特定贈与者の死亡以前にその特定贈与者に係る相続時精算課税適用者が死亡した場合には、その相続時精算課税適用者の相続人(包括受遺者を含み、その特定贈与者を除く。)は、その相続時精算課税適用者が有していた相続時精算課税の適用を受けていたことに伴う納税に係る権利又は義務(以下「相続時精算課税の適用に伴う権利義務」という。)を承継する(相法21の17①)。
 この場合、相続時精算課税適用者の相続人(包括受遺者を含み、その特定贈与者を除く。)が2人以上いる場合の各相続人が承継する相続時精算課税の適用に伴う権利義務の割合は、民法第900条から第902条まで(法定相続分・代襲相続分・指定相続分)に規定する相続分(その特定贈与者がいないものとして計算した相続分)による(相法21の17③、相令5の5)。
 なお、相続時精算課税適用者の相続人が特定贈与者のみである場合には、相続時精算課税の適用に伴う権利義務はその特定贈与者及び相続時精算課税適用者の民法第889条の規定による後順位の相続人となる者には承継されず消滅することになる(相基通21の17-3)。
(注)  相続時精算課税適用者が死亡した後にその特定贈与者が死亡した場合には、相続時精算課税適用者の相続人(包括受遺者を含み、その特定贈与者を除く。)が、その相続時精算課税適用者に代わって相続税の申告をすることとなるが、その申告をするまでは、納付すべき税額が算出されるか、あるいは還付を受けることができる税額が算出されるかが明らかでないことから、相続時精算課税適用者の死亡に係る相続税額の計算においては、この相続時精算課税の適用に伴う納税に係る義務は、当該相続時精算課税適用者の死亡に係る相続税の課税価格の計算上、債務控除の対象とはならない (相令5の4③により読み替えられる相令3二、相基通14-5)。

② 承継の割合
 相続時精算課税適用者の相続人が2人以上ある場合の承継の割合について
 (答)
 特定贈与者の死亡以前にその特定贈与者に係る相続時精算課税適用者が死亡した場合において、その相続時精算課税適用者が有していた相続時精算課税の適用に伴う権利義務を承継する相続人(包括受遺者を含み、その特定贈与者を除く。)が2人以上あるときのその相続人が承継する割合の例は次のとおり(相基通21の17-2)。

(事例1)
 左記の場合においては、配偶者及び子が相続時精算課税の適用に伴う権利義務を承継することになり、その割合は、配偶者と子がそれぞれ2分の1ずつとなる。

(事例2)
左記の場合においては、母及び配偶者が相続時精算課税の適用に伴う権利義務を承継することになり、その割合は、配偶者が3分の2、母が3分の1となる。
(注)  相続分は、配偶者が3分の2、特定贈与者(父)及び母が6分の1ずつとなる。

承継相続人が特定贈与者より先に死亡した場合の再承継
 相続時精算課税適用者の相続人が特定贈与者より先に死亡した場合の相続時精算課税の適用に伴う納税に係る権利義務の再承継について
 (答)
 特定贈与者の死亡以前にその特定贈与者に係る相続時精算課税適用者が死亡したことから、その相続時精算課税適用者の相続人(包括受遺者を含み、その特定贈与者を除く。)が相続時精算課税の適用に伴う権利義務を承継している場合において、その相続人(この問及び次問において「承継相続人」という。)が特定贈与者より先に死亡したときには、その承継相続人の相続人(包括受遺者を含み、特定贈与者を除く。この問及び次問において「再承継相続人」という。)は、その相続時精算課税適用者が有していた相続時精算課税の適用に伴う権利義務を承継する(相法21の17④)。
 なお、再承継相続人が特定贈与者より先に死亡した場合には、その相続時精算課税の適用に伴う権利義務はその再承継相続人の相続人には承継されず消滅することになる(相基通21の17-1)。

(事例)
 下図において、特定贈与者より先に相続時精算課税適用者、承継相続人である子1、再承継相続人である孫1が死亡している場合、「孫1」が有していた相続時精算課税の適用に伴う権利義務については「ひ孫」には承継されない。


 したがって、再承継相続人である孫1の死亡後に特定贈与者が死亡した場合の当該特定贈与者に係る相続税額の計算に当たっては、相続税の課税価格に加算される相続時精算課税の適用を受ける財産の価額は750万円となる。


④ 承継があった場合の相続税の申告
 相続時精算課税の適用に伴う納税に係る権利義務の承継があった場合の相続税の申告について
 (答)
 特定贈与者の死亡に係る相続税において、特定贈与者よりも先に死亡した相続時精算課税適用者(この問において「死亡相続時精算課税適用者」という。)に係る相続税の申告は、その死亡相続時精算課税適用者から相続時精算課税の適用に伴う権利義務を承継した承継相続人又は再承継相続人がその承継をした割合により行うこととなる。

(参考)承継相続人又は再承継相続人に係る相続税額の計算
 承継相続人又は再承継相続人の納付すべき相続税額は、死亡相続時精算課税適用者に係る相続税額を計算し、その相続税額に次の割合を乗じて計算した金額
 

課税価格
(相法11の2)
相続時精算課税の適用を受ける財産の価額の合計額(承継されないこととなる金額を除く。第1・1(5)③(事例)参照)。
債務控除
(相法13)
適用なし
基礎控除
(相法15)
適用あり
 ただし、死亡相続時精算課税適用者は相続人の数に含まれない(相基通15-7)。
未成年者控除
(相法19の3)
適用なし(相基通19の3-6)
障害者控除
(相法19の4)
適用なし(相基通19の4-6)
外国税額控除
(相法20の2)
適用あり
相続時精算課税における贈与税額の控除
(相法21の15④、21の16④)
適用あり
(注)  当該各承継相続人又は再承継相続人に当該特定贈与者から相続若しくは遺贈又は相続時精算課税に係る贈与により取得した財産がある場合(死亡相続時精算課税適用者の代襲相続人として当該特定贈与者から相続により財産を取得した場合など)には、当該財産に係る相続税額と上記の相続税額を合計した金額が当該各承継相続人又は再承継相続人の納付すべき相続税額となる。

「相続時精算課税選択届出書」の提出前に死亡した場合(相続時精算課税選択届出書の提出方法)
 贈与により財産を取得した者が「相続時精算課税選択届出書」の提出前に死亡した場合の相続時精算課税の選択について
 (答)
 贈与により財産を取得した者(この問及び次問において「被相続人」という。)が相続時精算課税の適用を受けることができる場合に、その被相続人が「相続時精算課税選択届出書」を提出しないで死亡したときは、その被相続人の相続人(包括受遺者を含み、その贈与者を除く。以下この問において同じ。)は、その相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内(その相続人が納税管理人の届出をしないでその期間内に国内に住所及び居所を有しないこととなるときは、その日まで)に、相続時精算課税選択届出書に一定の書類(第1・1(5)⑥参照)を添付してその被相続人の贈与税の納税地の所轄税務署長に共同して提出することができる(相法21の18①)。
(注)  贈与により財産を取得した者の相続人が贈与をした者のみである場合には、相続時精算課税選択届出書を提出することはできない(相基通21の18-1)。
 相続時精算課税選択届出書を提出した相続人は、被相続人が有することになる相続時精算課税の適用を受けることに伴う納税に係る権利又は義務を承継する(相法21の18②)。
 なお、相続人が2人以上いる場合には、相続時精算課税選択届出書の提出は、これらの者が一の相続時精算課税選択届出書に連署して行わなければならず、その相続人のうち1人でも欠けた場合には、相続時精算課税制度の適用を受けることはできない(相令5の6③、相基通21の18-2)。


⑥ 「相続時精算課税選択届出書」の提出前に死亡した場合(相続時精算課税選択届出書の添付書類)
 贈与により財産を取得した者の相続人が、その財産を取得した者について相続時精算課税を適用する場合の贈与税の申告書に添付する書類について
 (答)
 贈与により財産を取得した者が、相続時精算課税の適用を受けることができる場合において、その者が「相続時精算課税届出書」を提出しないで死亡したときは、その者の相続人(包括受遺者を含み、その贈与者を除く。)が「相続時精算課税届出書」を当該死亡した者に係る贈与税の納税地の所轄税務署長に提出することができるのであるが(第1・1(5)⑤参照)、その届出書には、次の書類を贈与税の申告書に添付し提出しなければならない(相令5の6②、相規11②)。

提 出 書 類
 相続時精算課税選択届出書付表
 被相続人(受贈者)の相続人の戸籍謄本又は抄本その他の書類で被相続人のすべての相続人を明らかにする書類(贈与を受けた日以後に作成されたものに限る。)
 被相続人(受贈者)の戸籍謄本若しくは抄本又は受贈者の戸籍の附票の写しその他の書類で次の内容を証する書類(贈与を受けた日以後に作成されたものに限る。)
 受贈者の氏名、生年月日
 受贈者が20歳に達した時以後の住所又は居所
 受贈者が贈与者の推定相続人であること
 贈与者の住民票の写しその他の書類で次の内容が分かる書類(贈与を受けた日以後に作成されたものに限る。)
 贈与者の氏名、生年月日がわかるもの
 贈与者が65歳に達した時以後の住所又は居所がわかるもの
(注)  ②については、住民票の写しのほか贈与者の戸籍の附票の写しなどが該当する。
 贈与者の相続時精算課税選択届出書の提出により相続時精算課税制度の適用を受ける財産に係る贈与をしたことを証する書類その他の書類で贈与者が相続時精算課税選択届出書の提出により相続時精算課税制度の適用を受ける財産に係る贈与をしたことを明らかにする書類
(注)  上記の内容を記載した贈与契約書等が、これに該当するが、贈与者が作成した「財産を贈与した旨の確認書(仮称)」によっても差し支えない。

 

2 住宅取得等資金の贈与を受けた場合の特例
 (1)  特定の贈与者から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税選択の特例


① 概要
 65未満の者から住宅取得等資金の贈与があった場合の「相続時精算課税選択の特例」の概要について
 (答)
 平成15年1月1日から平成17年12月31日までの間に、その年の1月1日において65歳未満の者からの贈与により住宅取得等資金の取得をした特定受贈者が、次に掲げる場合に該当するときは、当該特定受贈者については、相続時精算課税の適用を受けることができる(以下「相続時精算課税選択の特例」という。)(措法70の3①~③)。
(1)  特定受贈者が贈与により住宅取得等資金の取得をした日の属する年の翌年3月15日までにその住宅取得等資金の全額を住宅用家屋の新築若しくは建築後使用されたことのない住宅用家屋(第1・2(1)①参照)の取得又はこれらの住宅用家屋の新築若しくは取得とともにするその敷地の用に供されている土地若しくは土地の上に存する権利(以下「土地等」という。)の取得のための対価に充ててその住宅用家屋の新築(新築に準ずる状態として、屋根(その骨組みを含む。)を有し、土地に定着した建造物として認められる時以後の状態にあるもの(措規23の6①)を含む。)をした場合又は取得をした場合において、同日までに新築若しくは取得をしたこれらの住宅用家屋をその特定受贈者の居住の用に供したとき又は同日後遅滞なくその特定受贈者の居住の用に供することが確実であると見込まれるとき。
(2)  特定受贈者が贈与により住宅取得等資金の取得をした日の属する年の翌年3月15日までにその住宅取得等資金の全額を既存住宅用家屋(第1・2(1)①参照)の取得又はその既存住宅用家屋の取得とともにするその敷地の用に供されている土地等の取得のための対価に充ててその既存住宅用家屋の取得をした場合において、同日までにその既存住宅用家屋をその特定受贈者の居住の用に供したとき又は同日後遅滞なくその特定受贈者の居住の用に供することが確実であると見込まれるとき。
(3)  特定受贈者が贈与により住宅取得等資金の取得をした日の属する年の翌年3月15日までにその住宅取得等資金の全額をその特定受贈者が居住の用に供している住宅用の家屋について行う増改築等(第1・2(1)①参照)又はその家屋についてその増改築等とともにするその敷地の用に供されることとなる土地等の取得の対価に充ててその住宅用の家屋についてその増改築等(増改築等の完了に準ずる状態として、増築又は改築部分の屋根(その骨組みを含む。)を有し、既存の家屋と一体となって土地に定着した建造物として認められる時以後の状態にあるもの(措規23の6②)を含む。)をした場合において、同日までに増改築等をしたその住宅用の家屋をその特定受贈者の居住の用に供したとき又は同日後遅滞なくその特定受贈者の居住の用に供することが確実であると見込まれるとき。
(注1)  特定受贈者とは、次の要件を満たす者をいう(措法70の3③一)。
(1)  相続税法第1条の4第1号又は第2号の規定に該当する個人であること。
(2)  住宅取得等資金の贈与をした者の直系卑属である推定相続人であること。
(3)  住宅取得等資金の贈与を受けた日の属する年の1月1日において20歳以上の者であること。
(注2)  住宅取得等資金とは、次のいずれかに掲げる新築、取得又は増改築等(特定受贈者の配偶者その他特定受贈者と一定の特別の関係がある者から当該取得又は増改築等をする場合を除く。)の対価に充てるための金銭をいう(措法70の3③五、措令40の5⑤)。
(1)  特定受贈者による住宅用家屋の新築又は建築後使用されたことのない住宅用家屋の取得(これらの住宅用家屋の新築又は取得とともにするその敷地の用に供されている土地等の取得を含む。)
(2)  特定受贈者による既存住宅用家屋の取得(その既存住宅用家屋の取得とともにするその敷地の用に供されている土地等の取得を含む。)
(3)  特定受贈者が所有している住宅用の家屋につき行う増改築等(その住宅用の家屋についての当該増改築等とともにするその敷地の用に供されることとなる土地等の取得を含む。)
 相続時精算課税選択の特例の適用に当たっては、贈与税の申告書にその特例の適用をする旨を記載し、相続時精算課税選択届出書とともに計算明細書その他の書類(措規23の6⑥)を添付して、贈与税の申告期間内に贈与税の納税地の所轄税務署長に提出しなければならない(相法21の9②>、措法70の3⑦)。
(注)  相続時精算課税選択の特例は、期限後申告若しくは修正申告又は更正若しくは決定に係る贈与税については適用がない(措法70の3⑦、措通70の3-13)。
 住宅取得等資金の贈与を受けた日の属する年の翌年3月15日後遅滞なく特定受贈者の居住の用に供することが確実であると見込まれることから、相続時精算課税選択届出書を提出し、相続時精算課税選択の特例の適用を受けていた場合において、同年12月31日までにその特定受贈者の居住の用に供していなかったときは、その相続時精算課税選択届出書は提出していなかったものとみなされ、同日から2か月以内に修正申告書を提出しなければならない(措法70の3④)。
 なお、その期間内に提出のあった修正申告書は、期限内申告書とみなされる(措法70の3⑥)。
(注1)  当該修正申告書に係る贈与税は、暦年課税により計算することとなる(措通70の3-12)。
(注2)  当該贈与の属する年の翌年以降に贈与により財産を取得した場合において、当該財産について相続時精算課税の適用を受けようとするときは、相続時精算課税選択届出書の提出が再度必要となる(措通70の3-12)。
 
 (2) 相続時精算課税における贈与税の住宅資金特別控除の特例

① 概要
 住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税制度における贈与税の「住宅資金特別控除の特例」について
 (答)
 平成15年1月1日から平成17年12月31日までの間に贈与により住宅取得等資金(第1・2(1)①参照)を取得した特定受贈者(第1・2(1)①参照)が次に掲げる者のいずれかに該当する場合において、第1・2(1)①の1(1)から(3)までに該当するときは、その住宅取得等資金の贈与をした者(「住宅資金贈与者」という。)からの贈与により住宅取得等資金の取得をした年における贈与税については、その住宅取得等資金に係る贈与税の課税価格から住宅資金特別控除額を控除できることとされた(措法70の3の2①、②)。
 なお、控除しきれなかった住宅資金特別控除額については、翌年以降(平成17年12月31日まで)に繰り越される。
(1)  住宅資金贈与者に係る相続時精算課税適用者(相続時精算課税選択の特例の適用を受けた者を含む。)
(2)  住宅資金贈与者からの贈与により取得した住宅取得等資金について相続時精算課税の適用を受けようとする者(相続時精算課税選択の特例の適用を受けようとする者を含む。)

 住宅資金特別控除額とは、次に掲げる金額のうちいずれか低い金額をいう(措法70の3の2②)。
(1)  1,000万円(既に住宅資金特別控除額を控除したものがある場合には、既に控除した金額の合計額を控除した残額)
(2)  住宅資金贈与者に係る贈与税の課税価格(住宅取得等資金に係る部分に相当するものに限る。)
 

 住宅取得等資金の贈与を受けた日の属する年の翌年3月15日後遅滞なく特定受贈者の居住の用に供することが確実であると見込まれることから、住宅資金特別控除の特例の適用を受けていた場合において、同年12月31日までに当該特定受贈者の居住の用に供していなかったときは、同日から2か月以内に修正申告書を提出しなければならない(措法70の3の2③、措通70の3の2-2)。
 なお、その期間内に提出のあった修正申告書は、期限内申告書とみなされる(措法70の3の2⑤)。

② <計算例>
 住宅資金特別控除の特例を適用する場合の具体的な計算について

 住宅資金特別控除の特例を適用する場合における住宅資金特別控除と相法第21条の12に規定する特別控除の適用関係については設例1から3までのとおりとなる。
 なお、住宅資金特別控除の特例の適用を受ける場合においては、住宅取得等資金の価額から住宅資金特別控除額を控除し、その残額から特別控除額(第1・1(2)①(2)の特別控除額をいう。以下同じ。)を控除するのであるから留意する(相基通70の3の2-1)。
(注) いずれの設例においても、既に控除した住宅資金特別控除額と特別控除額はないものとする。

(設例1)
父から住宅取得等資金1,000万円、不動産1,500万円の贈与を受けた場合



(設例2)
父から住宅取得等資金2,500万円、有価証券1,000万円の贈与を受けた場合



 住宅取得等資金2,500万円のうち、住宅資金特別控除額(1,000万円)を控除してもなお控除しきれない金額1,500万円は、有価証券の1,000万円と併せて相法第21条の12に規定する特別控除の対象となる。



(設例3)
母から住宅取得等資金600万円、不動産3,500万円の贈与を受けた場合



 住宅資金特別控除額は住宅取得等資金に相当する部分のみに適用される。
 なお、住宅資金特別控除の限度額(1,000万円)のうち控除しなかった金額400万円は、翌年以降(平成17年12月31日まで)に繰り越される。

 
 (3)  住宅取得資金等の贈与を受けた場合の贈与税額の計算の特例(旧措法70の3)
① 概要
 住宅取得資金等の贈与を受けた場合の贈与税額の計算の特例(旧措法70の3)は、どうなるのか。
 (答)
 住宅取得資金等の贈与を受けた場合の贈与税額の計算の特例(旧措法70の3)
次に掲げる者以外の者が、平成15年1月1日から平成17年12月31日までの間に住宅取得資金等の贈与を受けた場合には、一定の要件を満たす限り、住宅取得資金等の贈与を受けた場合の贈与税額の計算の特例(以下この問において「旧特例」という。)を適用することができる(改正法附則123⑧)。
(1)  住宅取得資金等を贈与した者に係る相続時精算課税適用者
(2)  住宅資金贈与者からの贈与により取得した住宅取得等資金について相続時精算課税住宅取得資金等の贈与を受けた年中において、その住宅取得資金等を贈与した者から贈与を受けた財産について相続時精算課税選択届出書を提出する者
(注)  既に旧特例の適用を受けたことがある者については、再度、旧特例の適用を受けることはできない。
 旧特例と相続時精算課税の適用関係
 上記1により旧特例の適用を受けた者は、住宅取得資金等の取得をした日の属する年の翌年以後4年内に旧特例に係る住宅取得資金等の贈与者から贈与により財産を取得した場合には、その財産について、相続時精算課税の適用を受けることはできない(旧特例に係る住宅取得資金等の贈与者以外の者から平成15年1月1日以後に贈与により財産を取得した場合には、その財産について相続時精算課税を適用することができる。)(改正法附則123⑨)。(下図の「平成15年分以後に適用を受ける場合」参照)
 ただし、平成15年1月1日前において、旧特例の適用を受けた者が、同日以後、旧特例に係る住宅取得資金等の贈与者から贈与により財産を取得した場合には、その財産について相続時精算課税の適用を受けることができる。(下図の「平成14年分までに適用を受けた場合」参照)

 旧特例適用後の暦年課税における贈与税額の計算
 旧特例の適用を受けた者は、住宅取得資金等の取得をした日の属する年の翌年以後4年内に贈与により財産を取得した場合(平成15年1月1日以後に取得した場合)において、その財産について暦年課税により贈与税額を計算するときは、従前のとおり、旧措法第70条の3第8項の規定により贈与税額を計算することになる。
(注)  暦年課税の贈与税額の計算については、次の(1)から(2)を差し引いた額が贈与税額となる(旧措法70の3⑧)。
(1)  旧特例の適用を受けた住宅取得資金等の額の5分の1に相当する金額に、その年中に贈与により取得した財産の価額を加えた合計額をその年の贈与税の課税価格とみなして計算した贈与税額(平成15年改正後の贈与税の税率を適用)
(2)  旧特例の適用を受けた年分の住宅取得資金等の額の5分の1に係る贈与税額(平成15年改正後の贈与税の税率を適用)
② <計算例>
 具体的な計算について

(設例1)
父から次のとおり贈与を受けた場合
平成15年10月 住宅取得資金等の贈与   550万円(旧措法70の3を適用)
平成16年12月 現金の贈与 2,500万円
(平成15年分)
 [(550万円÷5)-110万円]×5=0万円 (旧措法70の3適用、贈与税額算出されず)

 (平成16年分)
  2,500万円+550万円×1/5-110万円=2,500万円 
  2,500万円×50%(税率)-225万円(控除額)=1,025万円・・・・・・・①
  550万円×1/5-110万円=0万円(贈与税額算出されず)・・・・・・・・・②
  納付すべき税額  ①-②=1,025万円

(注)  平成20年1月1日以後に父から贈与を受けた財産については、相続時精算課税の適用を受けることができる。
 なお、平成16年分の現金が仮に母から贈与を受けたものであるならば、相続時精算課税の適用を受けることができる。

(設例2)

父(特定贈与者(65歳未満))及び母(特定贈与者以外の者)から次のとおり贈与を受けた場合
平成14年1月 父からの住宅取得資金等の贈与   550万円(旧措法70の3を適用)
平成15年4月 父からの住宅取得等資金の贈与 1,000万円(措法70の3、70の3の2を適用 )
平成15年5月 父からの不動産の贈与 2,500万円
平成15年8月 母からの現金の贈与  110万円

(平成14年分)
〈父からの贈与〉


(平成15年分)
〈父からの贈与〉

〈母からの贈与〉

〈納付すべき税額〉
 ①+②=11万円


 特定事業用資産についての相続税の課税価格の計算の特例
 (1) 制度の概要
① 概要
 特定事業用資産についての相続税の課税価格の計算の特例の概要について
 (答)
 特定事業用資産相続人等(次の(2)に掲げる者)が、相続又は遺贈(その相続に係る被相続人からの贈与により取得した財産で相続時精算課税の適用を受けるものに係る贈与を含む。以下この項において同じ。)により取得した特定事業用資産(次の(1)に掲げる資産)でこの特例の適用を受けるものとして選択をしたもの(以下「選択特定事業用資産」という。)について、当該相続又は遺贈に係る相続税の申告期限まで引き続き当該選択特定事業用資産のすべてを有している場合には、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、次の(1)に掲げる選択特定事業用資産の区分に応じ次の(3)に定める割合を減額する。(措法69の5①)。

【 特例の適用を受ける事業用資産 】
(1)特定事業用資産 (2)特定事業用資産相続人等 (3)減額割合
非上場会社の株式若しくは出資
(特定事業用資産となるのは、①及び②の価額の合計額のうち3億円以下の部分である。)
①相続や遺贈によって取得した「特定同族会社株式等」  被相続人から相続又は遺贈により左の資産を取得した個人で次に掲げる要件を満たすものをいう。
 被相続人の親族であること。
 申告期限を経過する時において特定同族会社株式等に係る法人の役員であること。
10%
②相続時精算課税適用財産である「特定受贈同族会社株式等」  被相続人から相続時精算課税に係る贈与により左の資産を取得した個人で次に掲げる要件を満たすものをいう。
 左の資産に係る相続時精算課税適用者であること。
 左の資産の贈与の時から相続税の申告期限を経過する時までの間のうち一定の期間、特定受贈同族会社株式等に係る法人の役員であること。
10%
森林施業計画に定められた区域内に存する森林
(立木又は土地等をいう。以下同じ。)
相続や遺贈によって取得した「特定森林施業計画対象山林」  相続又は遺贈により左の資産を取得した個人で次に掲げる要件を満たすものをいう。
 被相続人の親族であること。
 相続開始の時から申告期限まで引き続き特定森林施業計画対象山林について市町村長等の認定を受けた森林施業計画に基づき施業を行っていること。
5%
相続時精算課税適用財産である「特定受贈森林施業計画対象山林」  被相続人から相続時精算課税に係る贈与により左の資産を取得した個人で次に掲げる要件を満たすものをいう。
 左の資産に係る相続時精算課税適用者であること。
 贈与の時から相続税の申告期限まで引き続き特定受贈森林施業計画対象山林について市町村長等の認定を受けた森林施業計画に基づき施業を行っていること。
5%

(参考)特定事業資産についての相続税の課税価格の計算の特例のフロー(PDF 9_1)

② 平成15年度税制改正で新たに追加された特定事業用資産
 相続時精算課税制度の創設に伴う特定事業用資産についての相続税の課税価格の計算の特例(措法69の5)の改正について
 (答)
 特定事業用資産についての相続税の課税価格の計算の特例(以下「特定事業用資産の特例」といいう。)の適用対象となる財産として相続時精算課税の適用を受ける次の財産が追加された(措法69の5①)。
(1)  特定受贈同族会社株式等である選択特定事業用資産 (当該財産の価額の10%を減額)
(2)  特定受贈森林施業計画対象山林である選択特定事業用資産(当該財産の価額の5%を減額)
 この特例の適用を受けようとする者は、
 上記1(1)又は(2)の財産に係る贈与税の申告期間内に「特定事業用資産の特例の適用届出書(仮称)」と一定の書類を贈与税の申告書に添付して贈与税の納税地の所轄税務署長に提出しなければならないこととされている(措法69の5⑩、措令40の2の2(30)、(31)、措規23の2の2⑪、⑫、措通69の5-1(注)1)。
(注)  本特例は特定贈与者に係る相続税の課税価格の計算に加算される上記の財産の価額について減額するものであり、その財産に係る贈与税の課税価格を減額するものではないことに留意する。



 特定事業用資産についての相続税の課税価格の計算の特例
 (2) 特定受贈同族会社株式等
概要
 特定受贈同族会社株式等の概要について
 (答)
 贈与の直前に特定贈与者であった被相続人が有していた次の(1)から(3)までに掲げる要件をすべて満たす特定受贈株式又は特定受贈出資をいう。
 (注)
特定受贈株式  贈与の日の属する年において、国内外の証券取引所又は店頭売買有価証券登録原簿に上場又は登録(申請中のものも含む。)をしていない法人の株式をいう。
特定受贈出資  有限会社の出資、合名会社の出資、合資会社の出資又は医療法人の出資をいう。

(1)  次のからまでの要件を満たす特定受贈株式又は特定受贈出資であること。
 贈与の直前において、特定贈与者及び特定贈与者の親族等がその法人の発行済株式の総数又は出資金額(以下「発行済株式総数等」という。)の2分の1超を有している場合の特定受贈株式又は特定受贈出資であること。
 贈与の時おいて、株主関係者グループがその法人の発行済株式総数等の50%超を有している場合の特定受贈株式又は特定受贈出資であること。
 ②の株主関係者グループのうちいずれかの人で、次のA又はBに掲げるいずれかの人が特定贈与者より贈与により取得した特定受贈株式又は特定受贈出資であること。

 贈与の時において、その法人の発行済株式総数等の100分の5以上を有している場合におけるいずれかの者

 贈与の時において、株主関係者グループのうちのいずれかの人並びに当該いずれかの人の配偶者、直系血族、兄弟姉妹及び1親等の姻族が、この発行済株式総数等の100分の25以上を有している場合におけるいずれかの者

(注)
 特定贈与者及び特定贈与者の親族等とは、第1・3(3)②の1の者をいう(この場合「被相続人」を「特定贈与者」と読み替える。)。
 株主関係者グループとは、第1・3(3)②の2の者をいう。
 ①から③までの発行済株式総数等及び特定株式又は特定出資には、第1・3(3)③の議決権に制限のある株式又は出資は含まない((2)において同じ。)。

(2)  各特定受贈株式又は特定受贈出資につき次に掲げる区分に応じ次に定める金額を計算(各法人ごとに算出)し、その合計額が20億円未満であること。
 
贈与の直前に、特定贈与者が有していた(1)の②及び③の要件を満たす特定受贈株式又は特定受贈出資のうち贈与するもの  贈与の直前における法人の発行済株式総数等に、贈与の時におけるその特定受贈株式又は特定受贈出資の1株又は1口当たりの時価を乗じて計算した金額
特定贈与者が過去に贈与した時において(1)の②及び③の要件を満たす特定受贈株式又は特定受贈出資で本特例の適用を受けるものとして届出したもの(以下「贈与済みの特定受贈株式又は特定受贈出資」という。)(①に該当する場合を除く。)  ①の贈与の直前における法人の発行済株式総数等に、①の贈与の時におけるその特定受贈株式又は特定受贈出資の1株又は1口当たりの時価を乗じて計算した金額

(3)  (1)及び(2)の要件を満たす特定受贈株式又は特定受贈出資に係る各法人の発行済株式総数等の3分の2に達するまでの部分であること。
(注)  上記各法人に係る特定受贈株式又は特定受贈出資で本特例の適用を受けるものとして届出したものがある場合には、上記3分の2に達するまでの部分は次の算式により計算された割合に達するまでの部分となる。(措通69の5-2)

(算式)

 なお、特定贈与者が過去に贈与(本特例の適用を受けるものとして届出したものに限る。)を複数回行っているときには、上記に定める割合は、当該贈与ごとにAの割合を算出し、当該算出したAの割合を合計した割合を から控除して求める。

② 特定受贈同族会社株式等である選択特定事業用資産
 特定事業用資産の特例の適用対象となる特定受贈同族会社株式等である「選択特定事業用資産」について
 (答)

【贈与税の申告に際して判定する事項】

 特定受贈同族会社株式等の判定
 特定贈与者であった被相続人が贈与の直前に有していた(1)に掲げる特定受贈株式又は特定受贈出資で、(2)及び(3)に掲げるすべての要件を満たす特定受贈株式又は特定受贈出資のうち、当該特定受贈株式又は特定受贈出資に係る各法人の発行済株式総数等の3分の2に達するまでの部分(注)をいう。(措法69の5②六)。
(注)  上記の各法人について、特定受贈株式又は特定受贈出資で本特例の適用を受けるものとして届出したものがある場合には、上記3分の2に達するまでの部分は、次の算式により計算された割合に達するまでの部分となる(措通69の5-2)。
(算式)
 なお、特定贈与者が過去に贈与(本特例の適用を受けるものとして届出したものに限る。)を複数回行っているときには、上記に定める割合は、当該贈与ごとにAの割合を算出し、当該算出したAの割合を合計した割合を から控除して求める。

(1)  非上場要件(特定受贈株式又は特定受贈出資であること。)
 特定受贈株式
 特定贈与者であった被相続人が贈与の直前に有していた株式に係る法人の株式で次に掲げるすべての要件を満たすものであること(措法69の5②三、措規23の2の2)。
(イ)  当該贈与の日の属する年において、当該株式が証券取引法第2条第14項に規定する証券取引所に上場(上場に係る申請を含む。)、証券取引所に類するものであって外国に所在するものに上場(上場に係る申請を含む。)がなされていないこと。
(ロ)  当該贈与の日の属する年において、当該株式が証券取引法第75条第1項に規定する店頭売買有価証券登録原簿に登録(登録に係る申請を含む。)、店頭売買有価証券登録簿に類するものであって外国に備え付けられるものに登録(登録に係る申請を含む。)がなされていないこと。
 特定受贈出資
 特定贈与者であった被相続人が贈与の直前に有していた有限会社の出資、合名会社の出資、合資会社の出資又は医療法人の出資であること(措法69の5②四、措令40の2の2④)。

(2)  贈与の直前の2分の1超保有要件
 贈与の直前に、特定贈与者であった被相続人及び当該特定贈与者の親族その他当該特定贈与者と60ページの1の特別の関係のある者が有していた特定受贈株式の総数又は特定受贈出資の金額の合計額が当該特定受贈株式又は特定受贈出資の発行済株式総数等の2分の1を超えること (措法69の5②六イ、措令40の2の2⑫)。

(3)  20億円要件
 各特定受贈株式又は特定受贈出資につき次に掲げる区分に応じ次に定める金額を計算し、その合計額が20億円未満であること(措法69の5②六ロ、措令40の2の2⑭、措通69の5-6)。
贈与の直前に、特定贈与者が有していた1の(2)及び(4)の要件を満たす特定受贈株式又は特定受贈出資のうち贈与するもの  贈与の直前における法人の発行済株式総数等に、贈与の時におけるその特定受贈株式又は特定受贈出資の1株又は1口当たりの時価を乗じて計算した金額
贈与済みの特定受贈株式又は特定受贈出資(①に該当する場合を除く。)  ①の贈与の直前における法人の発行済株式総数等に、①の贈与の時におけるその特定受贈株式又は特定受贈出資の1株又は1口当たりの時価を乗じて計算した金額
(4)  贈与の時の2分の1超保有要件
 特定受贈株式(第1・3(3)③の議決権に制限のある株式を除く。以下(4)において同じ。)又は特定受贈出資(第1・3(3)③の議決権に制限のある出資を除く。以下(4)において同じ。)に係る法人の株主関係者グループが特定贈与者であった被相続人からの贈与の時において当該発行済株式総数等の2分の1を超えて有している場合において、次に掲げる者のいずれかが、当該特定贈与者から贈与により取得した当該特定受贈株式又は特定受贈出資であること(措令40の2の2⑩、措規23の2の2⑤、措通69の5-11)。
 当該株主関係者グループのうちいずれかの者が当該贈与の時において当該発行済株式総数等の100分の5以上を有している場合における当該いずれかの者
 当該株主関係者グループのうちいずれかの者並びにいずれかの者の配偶者、直系血族、兄弟姉妹及び一親等の姻族が当該贈与の時において当該法人の発行済発行済株式総数等の100分の25以上を有している場合における当該いずれかの者(上記イの者を除く)
(注)  株主関係者グループ
 特定受贈株式又は特定受贈出資にかかる法人の株主又は出資者及び当該株主又は出資者の親族その他これらの者と特別の関係がある者(第1・3(3)②の2に該当する者)をいう(措令40の2の2⑤)。
(5)  申請要件
 特定受贈株式又は特定受贈出資に係る贈与税の申告期間内に「特定事業用資産の特例の適用届出書(仮称)」及び一定の書類を贈与税の申告書に添付して贈与税の納税地の所轄税務署長に提出していること(措法69の5⑩)。

【相続税の申告に際して判定する事項】

 特定事業用資産相続人等の判定
 相続時精算課税制度の適用を受ける上記1の特定受贈同族会社株式等を贈与により取得した個人で次の要件を満たす者であること。
(1)  人的要件
 当該特定受贈同族会社株式等について相続時精算課税を適用した相続時精算課税適用者であること(措法69の5②九ロ(1))
(2)  役員要件
 当該特定受贈同族会社株式等に係る贈与の時から特定贈与者であった被相続人の死亡により開始した相続に係る相続税の申告期限を経過する時までの間のうち次の期間において当該特定受贈同族会社株式等に係る法人の役員(法人税法第2条第15号に規定する役員をいう。)であること(措法69の5②九ロ(2)、措令40の2の2⑮、措規23の2の2⑦)
 相続時精算課税適用者である受贈者が当該贈与の日において65歳未満の者である場合
 原則として、当該受贈者が65歳までに達する間の100分の80に相当する期間(当該期間が2年より短い場合は2年間)
 相続時精算課税適用者である受贈者が当該贈与の日において65歳以上の者である場合
 原則として、2年間

 特定事業用資産の判定
(1)  価額要件
 特定同族会社株式等及び特定受贈同族会社株式等の価額の合計額のうち3億円に達するまでの部分であること(措法69の5②十イ、措令40の2の2⑱)。
(2)  保有要件(1)
 特定受贈同族会社株式等については、原則として、当該特定受贈同族会社株式等に係る贈与の時から当該相続開始の時まで引き続き特定事業用資産相続人等が有しているものであること(措法69の5②十イ)。
(注)  したがって、当該期間内に当該特定受贈同族会社株式等の譲渡等があった場合には、当該譲渡等があった特定受贈同族会社株式等については、特定事業用資産に該当しない。

 選択特定事業用資産の判定
(1)  選択要件
 上記2の特定事業用資産相続人等が相続又は遺贈(当該相続に係る被相続人からの贈与により取得した財産で相続時精算課税制度の適用を受けるものに係る贈与を含む。)により取得した上記3の特定事業用資産で特定事業用資産の特例の適用を受けるものとして選択したものであること(措法69の5①)。
(2)  保有要件(2)
 選択特定事業用資産については、原則として、相続開始の時から、相続税の申告書の提出期限まで引き続き当該選択特定事業用資産のすべてを有していること(措法69の5①)。

(注)  特定贈与者であった被相続人の相続開始の直前において、例えば、特定受贈同族会社株式等に係る法人の株式が証券取引所に上場されている場合(1の(1)の要件関係)又は特定受贈同族会社株式等に係る法人の発行済株式総数等の時価総額が20億円以上であった場合(1の(3)の要件関係)であっても、当該特定受贈同族会社株式等については他の要件を満たす限り、本特例の適用があることに留意する。

(参考)特定受贈同族会社株式等の要件の判定時期等

③ 特定受贈同族会社株式等に係る20億円要件
 特定受贈同族会社株式等に係る20億円要件について
 (答)
 特定受贈同族会社株式等に係る20億円要件は、各特定受贈株式又は特定受贈出資につき次に掲げる区分に応じ次に定める金額を計算し、その合計額が20億円未満であるか否かにより判定する(措法69の5②六ロ、措令40の2の2⑭、措通69の5-6)。
贈与の直前に、特定贈与者が有していた44ページの(1)の②及び③の要件を満たす特定受贈株式又は特定受贈出資のうち贈与するもの  贈与の直前における法人の発行済株式総数等に、贈与の時におけるその特定受贈株式又は特定受贈出資の1株又は1口当たりの時価を乗じて計算した金額
贈与済の特定受贈株式又は特定受贈出資(①に該当する場合を除く。)  ①の贈与の直前における法人の発行済株式総数等に、①の贈与の時におけるその特定受贈株式又は特定受贈出資の1株又は1口当たりの時価を乗じて計算した金額

(注)
 上記①の特定受贈株式又は特定受贈出資を取得した者が、当該特定受贈株式又は特定受贈出資が特定受贈同族会社株式等に該当するかを判定するために、上記②の特定受贈株式の1株当たりの時価又は特定受贈出資の1口当たりの時価を算定する場合において、当該特定受贈株式又は特定受贈出資が財産評価基本通達188に規定する(財産評価基本通達194の規定により準用される場合を含む。)「同族株主以外の株主等が取得した株式等」に該当するか否かの判定は、上記①の贈与の時において、当該特定受贈株式又は特定受贈出資を当該特定贈与者から過去に贈与により取得した者が、当該同族株主以外の株主等に該当するか否かにより行う(措通69の5-6)。
 同一法人の②の特定受贈株式又は特定受贈出資を当該特定贈与者から過去に贈与により取得した者が2人以上いる場合において、当該特定受贈株式の1株当たりの価額又は特定受贈出資の1口当たりの価額が2以上算定されたときは、当該算定された価額のうち最も低い価額を当該特定受贈株式の1株当たりの時価又は特定受贈出資の1口当たりの時価として取り扱って差し支えないこととされている(措通69の5-6)。
 当該特定受贈株式又は特定受贈出資を特定贈与者から過去に贈与により取得した者が、上記①の贈与の時において、当該法人の株式又は出資を有していない場合における当該特定受贈株式の1株当たりの時価又は特定受贈出資の1口当たりの時価は、原則的評価方式又は特例的評価方式により算定した価額のうちいずれか低い価額による(措通69の5-6)。

④ 特定受贈同族会社株式等に係る役員要件
 特定事業用資産相続人等の要件である役員要件を判定する場合の役員である期間について
(答)
 期間の計算は次により行う。
 なお、役員であった期間の判定に当たっては、贈与の時以後の役員であった期間の合計期間により行う。したがって、当該役員である期間は継続している必要はなく、また、例えば監査役から取締役に代わった場合にもその期間を通算することになる(措通69の5-12)。

 65歳未満の個人が特定受贈同族会社株式等の贈与を受けた場合(措令40の2の2⑮一、措規23の2の2⑤)
(1)  当該個人65歳までに達する間の100分の80に相当する期間
(2)  当該個人が65歳に達する日前に次に掲げる場合に該当することとなったときには、それぞれ次に掲げる日までの間の100分の8
 当該個人が死亡した場合
 当該死亡した日
 特定受贈同族会社株式等の贈与をした者(特定贈与者)が死亡した場合
 当該死亡により開始した相続に係る相続税の申告期限
 特定受贈同族会社株式等に係る法人が解散(合併による解散を除く。)をした場合で当該法人の純資産がないとき
 当該解散の日
 特定受贈同族会社株式等に係る法人について会社更生法の規定による更生手続開始の決定があった場合
 当該決定があった日
 特定受贈同族会社株式等に係る法人について合併、分割、資本の増加その他の事由により当該個人、特定贈与者その他これらの者と特別の関係のある者(以下このホにおいて「特別関係者」という。第1・3(3)②参照)の有する当該法人の株式の数又は出資の金額が当該法人の発行済株式総数等の2分の1未満となった場合で当該個人、特定贈与者その他当該特別関係者以外の者及びその者と特別の関係がある者(第1・3(3)②参照)の有する当該法人の株式又は出資の金額が当該個人、特定贈与者その他特別関係者の有する当該法人の株式又は出資の金額を超えるとき
 当該合併、分割、資本の増加その他の事由が生じた日
(3)  上記(1)により計算した期間が2年より短い場合は2年間
 ただし、当該個人が65歳に達する日前に上記(2)のイからホに該当することとなった場合には、当該贈与の日から当該イからホに応じそれぞれ定める日までの間の100分の80に相当とする期間

 65歳以上の個人が特定受贈同族会社株式等の贈与を受けた場合(措令40の2の2二)

(1)  2年間
(2)  当該贈与の日から上記(2)のイからホまでに掲げる場合の区分に応じ当該イからホまでに定める日までの間の100分の80に相当する期間が2年間より短い場合には、当該贈与の日から当該イからホまでに定める間の100分の80に相当する期間

⑤ 特定受贈同族会社株式等の保有の期間 (1)
 贈与を受けた特定受贈同族会社株式等に係る法人について株式の分割、合併等があった場合の特定事業用資産の特例は適用について
(答)
 次の場合は、他の一定の要件を満たす限り特定事業用資産の特例を適用することができる。

 贈与の時から当該相続の開始の時までの間に株式の分割があった場合
 特定受贈同族会社株式等である「特定事業用資産」は、原則として、当該特定受贈同族会社株式等に係る贈与の時から当該相続開始の時まで引き続き特定事業用資産相続人等が有しているものに限られている(措法69の5②十イ)が、当該贈与の時から当該相続開始の時までの間に次に掲げる事由が生じた場合には、当該事由により取得した当該特定受贈同族会社株式等の対応する株式又は出資は、特定事業用資産相続人等が当該特定受贈同族会社株式等に係る贈与の時から引き続き有する当該特定受贈同族会社株式等とみなされる(措令40の2の2⑯)。
 株式又は出資の分割又は併合
 特定受贈同族会社株式等に係る法人の合併
(注)  当該合併に際し、当該法人の株主又は出資者に対して当該合併により資産及び負債を承継した法人の株式又は出資及び利益の配当又は出資に係る剰余金の分配として交付される金銭その他の資産以外の資産が交付される場合を除く。
 特定受贈同族会社株式等に係る法人の分割
(注)  当該分割に際し、当該法人の株主又は出資者に対して当該合併により資産及び負債を承継した法人の株式又は出資及び利益の配当又は出資に係る剰余金の分配として交付される金銭その他の資産以外の資産が交付される場合を除く。
 租税特別措法第37条の14第1項(株式交換又は株式移転に係る課税の特例)に規定する株式交換等
(注)  同項の規定により当該株式交換等により移転した同項に規定する特定子会社株式の譲渡がなかったものとされる場合に限るものとし、同項に規定する交付金銭等を受ける場合を除く。

 相続の開始の時から相続税の申告書の提出期限までの間に株式の分割があった場合
 特定受贈同族会社株式等である「選択特定事業用資産」については、原則として、相続開始の時から、相続税の申告書の提出期限まで引き続き当該選択した財産のすべてを有している場合に限り本特例の適用がある(措法69の5①)が、当該相続開始の時から、相続税の申告書の提出期限までの間に上記1に掲げる事由が生じた場合には、特定事業用資産相続人等が、当該事由により取得した株式又は出資で選択特定事業用資産に対応するもの及び当該選択特定事業用資産(当該事由によって失われたものを除く。)のすべてを相続税の申告期限まで有しているときは、当該選択特定資産のすべてを有しているとみなされる(措令40の2の2③一)。

(事例1)贈与の時から当該相続開始の時までの間に株式の分割があった場合


(事例2)相続開始の時から相続税の申告書の提出期限までの間に株式の分割があった場合

⑥ 特定受贈同族会社株式等の保有の期間 (2)
 特定受贈同族会社株式等の贈与を受けた特定事業用資産相続人等が死亡した場合の特定事業用資産相続人等について
(答)
 次の場合においては、他の一定の要件を満たす限り特定事業用資産の特例を適用することができる。

 贈与の時から相続の開始の時までの間に受贈者が死亡した場合
 特定受贈同族会社株式等を贈与により取得した特定事業用資産相続人等(受贈者)が当該贈与をした特定贈与者の死亡以前に死亡したことにより納税義務等承継人(当該特定事業用資産相続人等の納税に係る権利又は義務を承継した当該特定事業用資産相続人等の相続人(包括受遺者を含む。)をいう。以下同じ。)が、当該特定受贈同族会社株式等を選択特定事業用資産として選択した場合(納税義務等承継人が2人以上いる場合には、その全員が共同して選択した場合に限る。)において、当該納税義務等承継人(納税義務等承継人が2人以上いる場合には、そのうちのいずれかの者)が、当該死亡の時から当該特定贈与者の相続開始の時まで引き続き有していた特定受贈同族会社株式等で当該相続開始の時において有していたもののすべてを相続税の申告期限まで有していたとき(措通69の5-13)
(注)  当該特定受贈同族会社株式等につき相続税の申告期限までの間に第1・3(2)⑤の1のイからニまでに掲げる事由が生じた場合には、当該事由により取得した株式又は出資を含み、失われたものを除く(措令40の2の2③三)。

 相続開始の時から相続税の申告書の提出期限までの間に受贈者が死亡した場合
 特定贈与者であった被相続人の相続開始の時から当該相続に係る相続税の申告書の提出期限の前に特定事業用資産相続人等(受贈者)が死亡した場合には、当該特定事業用資産相続人等(受贈者)が当該死亡の日まで引き続き選択特定受贈同族会社株式等のすべてを有していたとき(措法69の5①)

(事例) 1のケース
贈与の時から当該相続の開始の時までの間に受贈者が死亡した場合(措通69の5-13)

⑦ 特定受贈同族会社株式等の譲渡
 特定受贈同族会社株式等である特定事業用資産について
(答)
 特定受贈同族会社株式等に係る贈与の時から当該相続の開始の時まで引き続き特定事業用資産相続人等が有しているものについてのみ、特定事業用資産に該当する(措法69の5②十イ)。
 したがって、当該期間内に当該特定受贈同族会社株式等の譲渡等があった場合には、当該譲渡等があった特定受贈同族会社株式等については、特定事業用資産に該当しない。
 なお、特定事業用資産相続人等が当該特定事業用資産相続人等の有する特定受贈同族会社株式等に係る法人の株式を譲渡した場合には、当該法人の株式のうち先に取得をしたものから順次譲渡をしたものとみなされる(措令40の2の2⑰)。

⑧ 特定受贈同族会社株式等に係る法人の解散
 特定贈与者の死亡の前に当該特定受贈同族会社株式等に係る法人が解散した場合の特定事業用資産の特例の適用について
(答)
 特定贈与者から贈与により取得した特定受贈同族会社株式等に係る法人が解散(合併による解散を除く。)をし、かつ、当該法人の純資産がないときには、当該贈与により特定受贈同族会社株式等を取得した個人が当該特定受贈同族会社株式等(当該解散により当該個人が有しなくなったものに限る。)を特定贈与者の死亡により開始した相続に係る相続税の申告期限まで有していたものとみなして、特定事業用資産の特例の規定を適用することができる(措令40の2の2(37))
 特定事業用資産についての相続税の課税価格の計算の特例
 (3) 特定同族会社株式等
① 概要
 特定同族会社株式等の概要について
 (答)
 相続開始の直前に被相続人が有していた次の(1)から(3)までに掲げる要件のすべてを満たす特定株式又は特定出資をいう。
 (注)
特定株式 相続開始の時において国内外の証券取引所又は店頭売買有価証券登録原簿に上場又は登録(申請中のものも含む。)していない法人の株式をいう。
特定出資 有限会社の出資、合名会社の出資、合資会社の出資又は医療法人の出資をいう。

(1)  次のからまでの要件を満たす特定株式又は特定出資であること。
相続開始の直前に、被相続人及び被相続人の親族等がその法人の発行済株式総数等の2分の1超を有している場合の特定株式又は特定出資であること。
相続開始の時に、株主関係者グループがその法人の発行済株式総数等の2分の1超を有していること
②の株主関係者グループのうちいずれかの者で、相続開始の時に、その法人の発行済株式総数等の100分の5以上を有している者が、相続や遺贈によって取得した特定株式又は特定出資であること
(注)
 被相続人及び被相続人の親族等とは、第1・3(3)②の1の者をいう。
 株主関係者グループとは、第1・3(3)②の2の者をいう。
 ①から③までの発行済株式総数等及び特定株式又は特定出資には、第1・3(3)③の議決権に制限のある株式又は出資は含まない((2)において同じ。)。
 ①又は②の2分の1超の判定に当たっては、平成15年1月1日から同年3月31日までの間に相続が開始している場合には「2分の1以上」と読み替えて判定する。

(2)  各特定株式若しくは特定出資又は特定受贈株式若しくは特定受贈出資につき次に掲げる区分に応じ次に定める金額を計算(各法人ごとに算出)し、その合計額が20億円未満であること。
被相続人が有していた(1)の②及び③の要件を満たす特定株式又は特定出資  相続開始の直前における法人の発行済株式総数等に相続開始の時におけるその特定株式又は特定出資の口数の1株又は1口の当たりの時価を乗じて計算した金額
贈与済の特定受贈株式又は特定受贈出資(①に該当する場合を除く。)  相続開始の直前における法人の発行済株式総数等に相続開始の時におけるその特定受贈株式又は特定受贈出資の口数の1株又は1口当たりの時価を乗じて計算した金額
(注)  上記により算出した①及び②の合計額が20億円以上であっても、その被相続人が過去に贈与したその特定受贈株式又は特定受贈出資については、他の要件を満たす限り本特例の適用がある。

(3)  (1)及び(2)の要件を満たす特定株式又は特定出資に係る各法人の発行済株式総数等の3分の2に達するまでの部分(注)である特定株式又は特定出資であること。
(注)  上記各法人に係る特定受贈株式又は特定受贈出資で本特例の適用を受けるものとして届出したものがある場合には、上記3分の2に達するまでの部分は次の算式により計算された割合に達するまでの部分となる(措通69の5-1)

(算式)

 なお、特定贈与者が過去にAの贈与(本特例の適用を受けるものとして届出したものに限る。)を複数回行っているときには、上記の割合は、当該贈与ごとにAの割合を算出し、当該算出したAの割合を合計した割合を から控除して求める。
② 被相続人の親族等の範囲及び同族株主グループの範囲
 特定同族会社株式等の判定に当たっての「被相続人の親族等」及び「株主関係者グループ」の範囲について
(答)
 被相続人の親族等の範囲
 被相続人の親族その他その親族と特別の関係がある次の者をいう(措令40の2の2⑫、40の2⑧)。

(1)  被相続人と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
(2)  被相続人の使用人
(3)  被相続人の親族及び(1)、(2)に掲げる者以外の者で被相続人から受けた金銭その他の資産によって生計を維持しているもの
(4)  (1)から(3)までに掲げる者と生計を一にするこれらの者の親族
(5)  被相続人(その被相続人の親族及びその被相続人に係る(1)から(4)までに掲げる者を含む。以下、(6)及び(7)において同じ。)が有する法人の株式の総数又は出資の金額の合計額がその法人の発行済株式の総数又は出資の金額(その法人が有する自己の株式又は出資を除く。)の10分の5を超える場合における当該法人
(6)  被相続人及びこれと(5)に規定する特別の関係がある法人が有する他の法人の株式の総数又は出資の金額の合計額が他の法人の発行済株式の総数又は出資の金額(当該法人が有する自己の株式又は出資を除く。)の10分の5を超える場合における当該他の法人
(7)  被相続人及びこれと(5)又は(6)に規定する特別の関係がある法人が有する他の法人の株式の総数又は出資の金額の合計額が他の法人の発行済株式の総数又は出資の金額(その法人が有する自己の株式又は出資を除く。)の10分の5を超える場合における他の法人

 株主関係者グループの範囲
 法人の株主(出資者を含む。以下2において同じ。)及びその親族その他これらの者と特別の関係がある次の者をいう(措令40の2の2⑤、40の2⑧)。
(1)  これらの者と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
(2)  これらの者の使用人
(3)  これらの者の親族及び(1)、(2)に掲げる以外の者で株主から受けた金銭その他の資産によって生計を維持しているもの
(4)  (1)から(3)に掲げる者と生計を一にするこれらの者の親族
(5)  これらの者(これらの者の親族及びこれらの者に係る(1)から(4)までに掲げる者を含む。以下、(6)及び(7)において同じ。)が有する法人の株式の総数又は出資の金額の合計額が当該法人の発行済株式総数等(当該法人が有する自己の株式又は出資を除く。)の10分の5を超える株式又は出資の金額に相当する場合における当該法人
(6)  これらの者及びこれらの者と(5)に規定する特別の関係がある法人が有する他の法人の株式の総数又は出資の金額の合計額が当該他の法人の発行済株式総数等(当該法人が有する自己の株式又は出資を除く。)の10分の5を超える株式又は出資の金額に相当する場合における当該他の法人
(7)  これらの者及びこれらの者と(5)又は(6)に規定する特別の関係がある法人が有する他の法人の株式の総数又は出資の金額の合計額が当該他の法人の発行済株式の総数又は出資の金額(当該法人が有する自己の株式又は出資を除く。)の10分の5を超える株式又は出資の金額に相当する場合における当該他の法人

③ 議決権に制限のある株式又は出資の範囲
 議決権に制限の株式又は出資範囲について
(答)
 特定株式又は特定出資である場合
(1)  議決権に制限のある株式
 相続開始の時において、商法第222条第4項に規定する議決権制限株式で議決権を行使すべき事項の全部について議決権を有しない(完全無議決)もの、同法241条第2項又は第3項の規定により議決権を有しないものとされる株式その他の議決権のない株式(措規23の2の2③)。
(2)  議決権に制限のある出資
 相続開始の時において、有限会社法第39条第1項ただし書きの規定に基づき定款に当該出資に係る議決権を行使すべき事項の全部について議決権を有しないと定められたもの、同法第41条において準用する商法241条第2項又は第3項の規定により議決権を有しないものとされる株式その他の議決権のない株式(措規23の2の2④)。

 特定受贈株式又は特定受贈出資である場合
(1)  議決権に制限のある株式
 贈与の時において、商法第222条第4項に規定する議決権制限株式で議決権を行使すべき事項の全部について議決権を有しない(完全無議決)もの、同法241条第2項又は第3項の規定により議決権を有しないものとされる株式その他の議決権のない株式(措規23の2の2⑤)。
(2)  議決権に制限のある出資
 贈与の時において、有限会社法第39条第1項ただし書の規定に基づき定款に当該出資に係る議決権を行使すべき事項の全部について議決権を有しないと定められたもの、同法第41条において準用する商法241条第2項又は第3項の規定により議決権を有しないものとされる株式その他の議決権のない株式(措規23の2の2⑤)。

(参考)  商 法(抜粋)
222条 4 会社ハ定款ヲ以テ議決権ヲ行使スルコトヲ得ベキ事項ニ付制限アル種類ノ株式(以下議決権制限株式ト称ス)ニ関シ之ヲ有スル株主ガ左ノ規定ノ全部又ハ一部ノ適用ニ付議決権ヲ有セザルモノトスル旨ヲ定メルコトヲ得
 総株主ノ議決権ノ百分ノ一、百分ノ三又ハ十分ノ一以上ヲ有スル株主ノ権利行使ニツイテノの規定
 第二百四十五条ノ五第六項、第三百五十八条第八項、第三百七十四条ノ二十三第八項又ハ第四百十三条ノ三第八項ノ規定
241条 2 会社ハ其ノ有スル自己ノ株式ニ付テハ議決権ヲ有セズ
 会社、親会社及子会社、又ハ子会社ガ他ノ総株主ノ議決権ノ四分ノ一ヲ超ユル議決権ヲ有スル場合ニ於テハ、其ノ株式会社又ハ有限会社ハ其ノ有スル会社又ハ親会社ノ株式ニ付テハ議決権ヲ有セズ

 議決権に制限のある株式及び出資の特定事業用資産の特例の適用について
 上記1及び2の議決権に制限のある株式及び出資については本特例の適用はない(措通69の5-3)。

 特定事業用資産についての相続税の課税価格の計算の特例
 (4) 特定受贈森林施業計画対象山林
① 概要
 特定受贈森林施業計画対象山林の概要について
 (答)
 特定受贈森林施業計画対象山林とは、贈与の直前特定贈与者である被相続人が有していた立木若しくは土地又は土地の上に存する権利のうち、贈与の森林法第11条第4項(森林法第12条第3項において準用する場合及び木材の安定供給の確保に関する特別措置法第10条第2項の規定により読み替えて適用される森林法第12条第3項において準用する場合を含む。)の規定による市町村長等の認定を受けた同条第1項に規定する森林施業計画(注)が定められていた区域内に存するもの(森林の保健機能の増進に関する特別措置法第2条第2項第2号に規定する森林保健施設の整備に係る地区内に存するものを除く。)をいう(措法69の5②八)。
(注)  森林施業計画には、森林法第11条第4項第2号ロに規定する公益的機能別森林施業を実施するための同条第1項に規定する森林施業計画のうち森林法施行規則第13条第2項第3号ハに規定する特定広葉樹育成施業森林(その特定広葉樹育成施業森林を対象とする部分に限る。)及び森林法第16条又は木材の安定供給の確保に関する特別措置法第10条第3項の規定によって認定の取消があったものは除かれる(措規23の2の2⑥)。

(参考)森林法(昭和22年6月26日法律第249号)(抜粋)

  (この法律の目的)
第一  この法律は、森林計画、保安林その他の森林に関する基本的事項を定めて、森林の保続培養と森林生産力の増進とを図り、もつて国土の保全と国民経済の発展とに資することを目的とする。
  (全国森林計画等)
第四  農林水産大臣は、政令で定めるところにより、森林・林業基本法(昭和三十九年法律第百六十一号)第十一条第一項の基本計画に即し、かつ、保安施設の整備の状況等を勘案して、全国の森林につき、五年ごとに、十五年を一期とする全国森林計画をたてなければならない。 ※以下省略
  (地域森林計画)
第五  都道府県知事は、全国森林計画に即して、森林計画区別に、その森林計画区に係る民有林(その自然的経済的社会的諸条件及びその周辺の地域における土地の利用の動向からみて、森林として利用することが相当でないと認められる民有林を除く。)につき、五年ごとに、その計画をたてる年の翌年四月一日以降十年を一期とする地域森林計画をたてなければならない。※以下省略
  (市町村森林整備計画)
第十 条の五 市町村は、その区域内にある地域森林計画の対象となつている民有林につき、五年ごとに、当該民有林の属する森林計画区に係る地域森林計画の計画期間の始期をその計画期間の始期とし、十年を一期とする市町村森林整備計画をたてなければならない。ただし、地域森林計画の変更により新たにその区域内にある民有林が当該地域森林計画の対象となつた市町村にあつては、その最初にたてる市町村森林整備計画については当該地域森林計画の計画期間の終期をその計画期間の終期とし、当該市町村森林整備計画に引き続く次の市町村森林整備計画については当該地域森林計画に引き続きたてられる次の地域森林計画の計画期間の始期をその計画期間の始期として、たてなければならない。※以下省略
  (森林施業計画)
第十 一条 森林所有者等は、単独で又は共同して、これを一体として整備することを相当とするものとして政令で定める基準に適合する森林につき、農林水産省令で定めるところにより、五年を一期とする森林施業計画を作成し、これを当該森林施業計画の対象とする森林の所在地の属する市町村の長に提出して、当該森林施業計画が適当であるかどうかにつき認定を求めることができる。
  (   中   略   )
 市町村の長は、第一項の規定による認定の請求があつた場合において、当該森林施業計画の内容が次に掲げる要件のすべてを満たすときは、当該森林施業計画が適当である旨の認定をするものとする。
 第二項第一号に掲げる長期の方針が、森林施業計画の対象とする森林の整備を図るために有効かつ適切なものであること。
 第二項第三号から第六号までに掲げる事項が、次に掲げる区分に応じ、それぞれ次に定める基準に適合していること。
 公益的機能別施業森林区域以外の区域内に存する森林 森林生産の保続及び森林生産力の増進を図るために必要なものとして、農林水産省令で定める植栽、間伐その他の森林施業の合理化に関する基準
 公益的機能別施業森林区域内に存する森林 森林の有する公益的機能の維持増進を特に図るために必要なものとして、農林水産省令で定める公益的機能別森林施業の実施に関する基準
 市町村森林整備計画の内容に照らして適当であると認められること。
  (森林施業計画の変更)
第十 二条 前条第四項の認定を受けた森林所有者等(以下「認定森林所有者等」という。)は、次に掲げる場合には、当該森林施業計画を変更しなければならない。この場合には、当該認定森林所有者等は、農林水産省令で定めるところにより、あらかじめ、市町村の長にその変更が適当であるかどうかにつき認定を求めなければならない。
 当該認定森林所有者等が当該森林施業計画の対象とする森林の一部につき森林所有者等でなくなつた場合 ※以下省略
  (認定の取消し)
第十 六条 市町村の長は、次の各号のいずれかに該当する場合には、当該森林施業計画に係る第十一条第四項の認定を取り消すことができる。
 認定森林所有者等が、第十二条第一項各号に掲げる場合において、同項の規定による認定の請求をせず、又は請求をしたが当該認定を受けられなかつたとき。
 認定森林所有者等が、第十四条の規定に違反していると認められるとき。
 認定森林所有者等が、前条の規定による届出書の提出をせず、又は虚偽の届出書の提出をしたとき。
  (死亡、解散又は分割の場合の包括継承人に対する効力等)
第十 七条 第十一条から第十三条まで、第十五条若しくは前条の規定又はこれらの規定に基づく農林水産省令の規定によつてした処分、手続その他の行為は、第十一条第一項の規定による認定の請求をした者又は認定森林所有者等が死亡し、合併により解散し、又は分割をした場合には、その包括承継人に対しても、その効力を有する。※以下省略
  (数市町村にわたる事項の処理等)
第十 九条 森林施業計画の対象とする森林の所在地が二以上の市町村にわたる場合には、第十一条から第十三条まで及び第十五条から第十七条までの規定において市町村の長の権限に属させた事項は、次の各号に掲げる場合の区分に応じて、当該各号に定める者が処理する。
 当該森林施業計画の対象とする森林の全部が一の都道府県の区域内にある場合 当該都道府県知事
 前号に掲げる場合以外の場合 農林水産大臣
② 特定受贈森林施業計画対象山林である選択特定事業用資産
 特定事業用資産の特例の適用を受ける特定受贈森林施業計画対象山林である「選択特定事業用資産」について
(答)

【贈与税の申告に際して判定する事項】

 特定受贈森林施業計画対象山林の判定
(1)  特定受贈森林施業計画対象山林の要件
 贈与の直前特定贈与者である被相続人が有していた立木又は土地等のうち、贈与の森林法第11条第4項(森林法第12条第3項において準用する場合及び木材の安定供給の確保に関する特別措置法第10条第2項の規定により読み替えて適用される森林法第12条第3項において準用する場合を含む。)の規定による市町村長等の認定を受けた同条第1項に規定する森林施業計画(注)が定められていた区域内に存するもの(森林の保健機能の増進に関する特別措置法第2条第2項第2号に規定する森林保健施設の整備に係る地区内に存するものを除く。)であること(措法69の5②八)。
(注)  森林施業計画には、森林法第11条第4項第2号ロに規定する公益的機能別森林施業を実施するための同条第1項に規定する森林施業計画のうち森林法施行規則第13条第2項第3号ハに規定する特定広葉樹育成施業森林(その特定広葉樹育成施業森林を対象とする部分に限る。)及び森林法第16条又は木材の安定供給の確保に関する特別措置法第10条第3項の規定によって認定の取消があったものは除かれる(措規23の2の2⑥)。
(2)  申請要件
 特定受贈森林施業計画対象山林に係る贈与税の申告期間内に「特定事業用資産の特例の適用届出書(仮称)」を贈与税の申告書に添付して贈与税の納税地の所轄税務署長に提出していること(措法69の5⑩)

【相続税の申告に際して判定する事項】

 特定事業用資産相続人等の判定
 相続時精算課税の適用を受ける上記1の特定受贈森林施業計画対象山林を贈与により取得した個人で次の要件を満たす者であること。
(1)  人的要件
 当該特定受贈森林施業計画対象山林について相続時精算課税を適用した相続時精算課税適用者であること(措法69の5②九ロ(3))。
(2)  施業要件
 当該特定受贈森林施業計画対象山林に係る贈与の時から特定贈与者であった被相続人の死亡により開始した相続に係る相続税の申告期限まで引き続き特定受贈森林施業計画対象山林について市町村長等の認定を受けた森林施業計画に基づき施業を行っていること(措法69の5②九ロ(4))。

 特定事業用資産の判定
(1)  贈与税等の申告期限時の施業計画要件
 特定贈与者又は当該特定贈与者からの贈与により特定受贈森林施業計画対象山林を取得した当該特定贈与者の推定相続人が贈与の前に市町村長等の認定を受けていた森林施業計画(贈与税等の申告期限(注)を経過する時において現に効力を有するものに限る。贈与の時から贈与税等の申告期限までの間に当該森林施業計画に変更等があった場合については、67ページ参照)に定められた区域内に存する特定受贈森林施業計画対象山林(森林の保健機能の増進に関する特別措置法第2条第2項第2号に規定する森林保健施設の整備に係る地区内に存するものを除く。)であること(措法69の5<②十ロ(2)、措令40の2の2(21)一~四)。
(注)  贈与税等の申告期限とは、贈与税の申告期限及び特定贈与者が特定受贈森林施業計画対象山林を贈与をした年の中途において死亡した場合で、当該贈与に係る贈与税の申告期限までに当該特定贈与者に係る相続税の申告期限が到来する場合には、当該相続税の申告期限をいう(措令40の2の2(21))。
(2)  相続税の申告期限時の施業計画要件
 特定贈与者からの贈与により取得した特定受贈森林施業計画対象山林のうち当該特定贈与者又は当該贈与により取得した当該特定贈与者の推定相続人が当該贈与の前に受けていた市町村等のの認定に係る森林施業計画が定められていた区域(注)で当該相続税の申告期限を経過する時に現に効力を有する森林施業計画において特定事業用資産の特例の適用を受けようとする者が施業を行うこととされている区域内に存していること(措令40の2の2(22))。
(注)  当該贈与の時から当該特定贈与者の死亡により開始した相続に係る相続税の申告期限までの間に当該特定受贈森林施業計画対象山林について効力を有する森林施業計画において当該特定贈与者の推定相続人が施業を行わないとされた区域は除かれる。

 特定受贈森林施業計画対象山林の判定
(1)  選択要件
 上記2の特定事業用資産相続人等が相続又は遺贈(当該相続に係る被相続人からの贈与により取得した財産で相続時精算課税の適用を受けるものに係る贈与を含む。)により取得した上記3の特定事業用資産で特定事業用資産の特例の適用を受けるものとして選択したものであること(措法69の5①)。
(2)  保有要件
 原則として、相続開始の時から相続税の申告書の提出期限まで引き続き選択特定事業用財産のすべてを有していること(措法69の5①)。

 2か月以内の証明書提出要件
 特定事業用資産の特例は、相続税の申告期限から2か月以内に第1・3(4)②の2の(2)の森林施業計画に基づき施業が行われていた旨その他の一定の事項を証する市町村の長の証明書及び森林施業計画書の写しその他一定の書類を提出しなければ、適用できない(措法69の5⑪、措規23の2の2⑰三、四)。

(参考)  特定受贈森林施業計画対象山林である特定事業用資産について特定事業用資産の特例の適用を受けようとする場合の判定時期等

③ 特定受贈森林施業計画対象山林の贈与税の申告期限を経過する時の施業計画
 贈与の時から贈与税等の申告期限までに森林施業計画の変更等があった場合の特定受贈森林施業計画対象山林の贈与税の申告期限を経過する時の森林施業計画について
(答)
 次に掲げる場合の区分に応じ次に定める森林施業計画が、贈与税等の申告期限を経過する時において現に効力を有する森林施業計画となる(措法69の5②十ロ(2)、措令40の2の2(21))。

 特定贈与者が当該特定贈与者に係る贈与の前に市町村長等の認定を受けていた特定受贈森林施業計画対象山林に係る森林施業計画について、当該贈与により当該特定受贈森林施業計画対象山林を取得した当該特定贈与者の推定相続人が当該贈与の時から贈与税の申告期限までの間に市町村長等の新認定を受けた場合(措令40の2の2(21)一、措令40の2の2(39))
 当該市町村長等の新認定を受けた森林施業計画

 特定贈与者から贈与により特定受贈森林施業計画対象山林を取得した当該特定贈与者の推定相続人が当該贈与の前に当該特定受贈森林施業計画対象山林に係る森林施業計画(当該特定贈与者と共同で市町村長等の認定を受けていたものを除く。)について市町村長等の認定を受けていた場合(措令40の2の2(21)二)
 当該市町村長等の認定を受けていた森林施業計画

 特定贈与者からの贈与により特定受贈森林施業計画対象山林を取得した当該特定贈与者の推定相続人が当該贈与の前に市町村長等の認定を受けていた当該特定受贈森林施業計画対象山林に係る森林施業計画(当該特定贈与者と共同で市町村長等の認定を受けていたものを除く。)について、当該特定贈与者の推定相続人が当該贈与の時から贈与税の申告期限までの間に森林法第12条(森林施業計画の変更)の規定による市町村長等の変更の認定を受けた場合(措令40の2の2(21)三)
 当該変更の認定を受けた森林施業計画

 特定贈与者からの贈与により特定受贈森林施業計画対象山林を取得した当該特定贈与者の推定相続人が当該贈与の前に市町村長等の認定を受けていた当該特定受贈森林施業計画対象山林に係る森林施業計画について、当該特定贈与者の推定相続人が当該贈与の時から贈与税の申告期限までの間に市町村長等の新認定を受けた場合(措令40の2の2(21)四)
 当該市町村長等の新認定を受けた森林施業計画
(注)  特定贈与者が特定受贈森林施業計画対象山林の贈与をした年の中途において死亡した場合において、当該贈与に係る贈与税の申告期限までに特定贈与者の相続に係る相続税の申告期限が到来するときは当該相続税の申告期限を経過する時において上記(1)から(4)までを判定することになる。

 特定事業用資産についての相続税の課税価格の計算の特例
 (5) 特定森林施業計画対象山林
① 概要
 特定森林施業計画対象山林の概要について
(答)
 特定森林施業計画対象山林とは、相続開始の直前 被相続人が有していた立木又は土地等のうち、相続開始の前に 森林法第11条第4項(森林法第12条第3項において準用する場合及び木材の安定供給の確保に関する特別措置法第10条第2項の規定により読み替えて適用される森林法第12条第3項において準用する場合を含む。)の規定による市町村長等の認定を受けた同条第1項に規定する森林施業計画(注)が定められていた区域内に存するもの(森林の保健機能の増進に関する特別措置法第2条第2項第2号に規定する森林保健施設の整備に係る地区内に存するものを除く。)をいう(措法69の5②七)。
(注)  森林施業計画には、森林法第11条第4項第2号ロに規定する公益的機能別森林施業を実施するための同条第1項に規定する森林施業計画のうち森林法施行規則第13条第2項第3号ハに規定する特定広葉樹育成施業森林(その特定広葉樹育成施業森林を対象とする部分に限る。)及び森林法第16条又は木材の安定供給の確保に関する特別措置法第10条第3項の規定によって認定の取消があったものは除かれる(措規23の2の2⑥)。
 (6) 小規模宅地等の特例と特定事業用資産の特例の重複適用
① 概要
 特定事業用資産の特例と小規模宅地等の特例の重複適用について
 (答)
 「特定事業用資産の特例」と「小規模宅地等の特例(小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例)」の特例(以下「両特例」という。)について、一定の要件を満たすものは重複適用が可能となった(措法69の5⑤、⑦、措令40の2の2 (24)~ (26)、措通69の5-25)。

 選択した小規模宅地等の面積(C)が400m2に満たない場合
(1)  小規模宅地等と特定同族会社株式等又は特定受贈同族会社株式等である選択特定事業用資産(以下「選択株式等」という。)について、両特例の適用を受けるとき
 次の算式により計算した価額に達する部分までを選択株式等の価額とみなして、特定事業用資産の特例の適用をする(措法69の5⑦、措令40の2の2 (25))。
       
   
 次のいずれか低い金額(以下「いずれか低い金額」という。)
 特定同族会社株式等又は特定受贈同族会社株式等に係る法人の発行済株式の総数又は出資金額の3分の2に達するまでの部分に相当する金額
 3億円
 選択した小規模宅地等の面積
C=特定事業用等宅地等の面積(a)+特定居住用宅地等の面積(b)×5/3+特例対象宅地等の面積(c)×2

(2)  小規模宅地等と特定森林施業計画対象山林又は特定受贈森林施業計画対象山林である選択特定事業用資産(以下「選択山林」という。)について、両特例の適用を受けるとき
 次の算式により計算した価額に達する部分までを選択山林の価額とみなして、特定事業用資産の特例の適用をする(措法69の5⑦、措令40の2の2 (24)、 (25))。
       
 選択山林の価額
 選択した小規模宅地等の面積
 C=特定事業用等宅地等の面積(a)+特定居住用宅地等の面積(b)×5/3+特例対象宅地等の面積(c)×2
 選択株式等の価額(D)が限度額(B)に満たない場合で、選択株式等と選択山林について特定事業用資産の特例の適用を受けるとき
 次の算式により計算した価額に達する部分までを選択山林の価額とみなして、特定事業用資産の特例の適用をする(措法69の5⑤、措令40の2の2 (24))。
 選択山林の価額
 いずれか低い金額
 選択株式等の価額
 選択した小規模宅地等の面積(C)が400m2に満たなく、かつ、選択株式等(D)が1の(1)に定める金額に満たない場合で、その小規模宅地等並びにその選択株式等及び選択山林について両特例の適用を受けるとき
 次の算式により計算した価額に達する部分までを選択山林の価額とみなして、特定事業用資産の特例の適用をする(措法69の5⑤、⑦、措令40の2の2 (24)かっこ書)。
    
 選択山林の価額
 いずれか低い金額
 選択した小規模宅地等の面積
 C=特定事業用等宅地等の面積(a)+特定居住用宅地等の面積(b)×5/3+特例対象宅地等の面積(c)
 選択株式等の価額
    
(参考) 両特例を重複適用する場合には、次の図の順序で特例の対象となる限度額の計算行うことになる。
(注)  相続時精算課税の適用を受けようとする者は、「相続時精算課税選択届出書」を提出しなければならない(相基通11の2-5(注)、相基通21の2-3(注))。


                                    
(注)1  両特例を重複適用する場合の法令の規定上の順序は上記のとおりであるが、実質的には、選択したいものから選択することとしても同様の結果となることに留意する。したがって、両特例のいずれを先に適用しても、結果として選択した小規模宅地等、選択株式等及び選択山林が限度面積及び上記により算出した限度額を満たしていれば両特例の適用があることとなる(第1・3(6)②設例参照)。
 小規模宅地等の特例を受ける宅地等の面積について限度面積要件(措法69の4②)を満たしていても、特定事業用資産の特例の適用を受ける財産の価額が適用の対象となる価額を超えている場合には、小規模宅地等の特例の適用はないので留意する(措通69の4-13、69の5-27)。


(参考) 小規模宅地等の特例と特定事業用資産の特例を重複適用する場合の関係図




〈計算例〉

 具体的な計算について

(設例) 小規模宅地等と選択株式等について両特例を適用する場合の限度額及び限度面積の計算
 特定事業用宅地等の面積・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・300m2
 特定同族会社株式等に係る法人の発行済株式の総額(時価)・・・・・・・・・・・12億円
 ②のうち被相続人が所有していた特定同族会社株式等の価額(時価)・・・・・・・ 2億円
(1)  ①の特定事業用宅地等(300m2)について、先に小規模宅地等の特例を適用(小規模宅地等として選択)する場合
 選択した小規模宅地等の面積が限度面積に満たないかどうかの判定
 300m2<400m2
 いずれか低い金額の計算
    ∴ 3億円
 (2億円)のうち特定事業用資産の特例が適用可能(選択可能)な価額の計算
 ∴ 7,500万円


  
(2)  ②の特定同族会社株式等(2億円)について、先に特定事業用資産の特例を適用(選択株式等として選択)する場合
 選択株式等の価額がいずれか低い金額に満たないかどうかの判定
 2億円<3億円((1)の②参照)
 ①のうち小規模宅地の特例が適用可能(選択可能)な面積の計算

    


4 相続時精算課税制度の導入に伴う所要の改正
 (1) 贈与税の申告内容の開示

 贈与税の申告内容の開示について
 (答)
 相続又は遺贈(相続時精算課税の適用を受ける財産に係る贈与を含む。以下同じ。)により財産を取得した者は、他の共同相続人等(その相続又は遺贈により財産を取得した他の者をいう。以下同じ。)がある場合には、被相続人に係る相続税の期限内申告書、期限後申告書若しくは修正申告書の提出又は更正の請求に必要となるときに限り、他の共同相続人等がその被相続人から相続開始前3年以内に取得した財産又は他の共同相続人等がその被相続人から取得した相続時精算課税の適用を受けた財産に係る贈与税の申告書に記載された贈与税の課税価格(贈与税について修正申告書の提出又は更正若しくは決定があった場合には、当該修正申告書に記載された課税価格又は更正若しくは決定後の贈与税の課税価格)の合計額について、開示の請求をすることができる(相法49の2①)。
 なお、①相続税の申告書を提出すべき者がその申告書の提出前に死亡した場合において、通則法第5条(相続による国税の納付義務の承継)の規定により相続税の納付義務を承継した者、②相法第21条の17第1項及び第21の18第1項(相続時精算課税に係る相続税の納付義務の承継等)の規定により相続時精算課税の適用に伴う権利義務を承継した者についても、開示の請求ができる(相基通49-2)。
 贈与税の申告内容の開示の請求があった場合には、税務署長は請求後2月以内に開示をしなければならない(相法49の2②)。
 贈与税の課税価格の合計額は、次に掲げる金額ごとに開示する(相令27⑤)。
(1) 被相続人に係る相続の開始前3年以内に当該相続人から贈与により取得した財産の価額(相法第19条第2項に規定する特定贈与財産の価額及び相続時精算課税の適用を受ける財産の価額を除く。)の合計額(各年分毎の合計額ではない。)
(2) 被相続人から贈与により取得した財産で、相続時精算課税の適用を受けたものの合計額(各年分毎の合計額ではない。)

【適用関係】

 上記の内容は、平成15年1月1日以後に贈与により取得した財産に係る贈与税の申告書に記載された贈与税の課税価格について適用する(改正法附則21)。
 (2) 連帯納付義務

 相続時精算課税の導入後の相続税及び贈与税の連帯納付義務について
 (答)

 相続税の連帯納付義務
 同一の被相続人から相続又は遺贈(相続時精算課税の適用を受ける財産に係る贈与を含む。以下同じ。)により財産を取得したすべての者は、その相続又は遺贈により取得した財産に係る相続税について、その相続又は遺贈より受けた利益の価額に相当する金額を限度として、互いに連帯納付義務がある(相法34①)。

 連帯納付義務
 財産を贈与した者は、その贈与により財産を取得した者の当該財産を取得した年分の贈与税額にその財産の価額がその贈与税の課税価格に算入された財産の価額のうちに占める割合を乗じて算出した金額として次の(1)及び(2)の金額の合計額に相当する贈与税について、その財産の価額に相当する金額を限度として連帯納付義務がある(相法34④、相令11)。
(1) 相続時精算課税の適用を受ける財産
 その財産に係る贈与税額
(2) 相続時精算課税の適用を受けない財産
 贈与により財産を取得した者の年分の贈与税額(相続時精算課税の適用を受ける財産に係る贈与税額を除く。)にその財産の価額がその贈与税の課税価格(相続時精算課税の適用を受ける財産に係る課税価格を除く。)に算入された財産の価額のうちに占める割合を乗じて算出した金額

 被相続人に係る相続税及び贈与税の連帯納付義務
 同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得したすべての者は、その被相続人に係る相続税又は贈与税について、その相続又は遺贈により受けた利益の価額に相当する金額を限度として、互いに連帯納付義務がある(相法34②)。
 (3) 相続税及び贈与税の申告書の公示

 相続税及び贈与税の申告書の公示について
 (答)

 公示が必要な申告書は、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次に掲げる申告書となる(法49、相基通49-1)。

 相続税の申告書の場合
(1)  課税価格が2億円を超える期限内申告書及び期限後申告書並びに修正後の課税価格が2億円を超える場合におけるその修正申告書
(2)  期限内申告書及び期限後申告書並びに修正申告書に添付された相法第27条第4項に規定する明細書に記載された被相続人の死亡の時における財産(当該被相続人が贈与をした財産で相続時精算課税の適用を受けるものを含む。)の価額(債務控除後の金額)が5億円を超える場合のこれらの申告書
 贈与税の申告書の場合
 課税価格が4,000万円を超える期限内申告書及び期限後申告書並びに修正後の課税価格が4,000万円を超える場合におけるその修正申告書
(注)  贈与税の課税価格が4,000万円を超えるかどうかの判定は、暦年課税における課税価格と相続時精算課税における課税価格(特別控除額及び住宅資金特別控除額控除前の金額)の合計額により行う。
 (4) 農地等を贈与した場合の贈与税の納税猶予
① 贈与者の範囲
 相続時精算課税の導入に伴う農地等を贈与した場合の贈与税の納税猶予(措置法70の4)に係る贈与者の範囲の改正について
 (答)
 農地等を贈与した場合の贈与税の納税猶予(以下「贈与税の納税猶予」という。)の適用を受ける場合の贈与者の範囲が、農地等を贈与をした日まで引き続き3年以上農業を営んでいた個人で次に掲げる場合に該当する者以外の者とされた(措置令40の6①)。
(1)  当該贈与をした日の属する年(以下「対象年」という。)の前年以前において、その農業の用に供していた農地をその者の推定相続人に対し贈与をしている場合であって当該農地が相続時精算課税の適用を受けるものであるとき(措置令40の6①一)
(事例1)
 過去に父が農地の一部を二男に贈与し、今回、父が所有するすべての農地を長男に贈与する場合において、二男が贈与を受けた農地について相続時精算課税の適用を受けているときは、長男が贈与を受けた農地について贈与税の納税猶予の適用はない。


(2)  対象年において、当該贈与以外の贈与により農地及び採草放牧地並びに準農地の贈与をしている場合(措置令40の6①二)
(事例2)
 同一年中に父が農地の一部を二男に、残りのすべてを長男に順に贈与をした場合、長男が贈与を受けた農地について贈与税の納税猶予の適用はない。


(注) 二男についても、父が農業の用に供している農地の全部の贈与を受けていないため、贈与税の納税猶予の適用はない。

② 採草放牧地及び準農地の面積
 贈与税の納税猶予の適用を受けるために贈与しなければならない採草放牧地等の準農地の面積について
 (答)
 贈与税の納税猶予(措法70の4①)の適用を受けるためには、農業を営む贈与者から、その農業の用に供している農地の全部及び当該用に供している採草放牧地のうち一定の部分並びに準農地のうち一定の部分を贈与により一括して取得しなければならない。
 この場合、贈与者がその農業の用に供している採草放牧地のうち一定の部分の贈与とは、贈与者が贈与の日までその農業の用に供していた措法第70条の4第1項に規定する採草放牧地のうち、その面積及び従前採草放牧地の面積の合計の3分の2以上の面積の贈与(対象贈与)をいう(措置令40の6②)。
(注) 従前採草放牧地とは、次に掲げる採草放牧地をいう(措通70の4-6の2)。 
 対象年の前年以前において、贈与者が贈与した採草放牧地のうち相続時精算課税の適用を受けるもの
 対象年において、贈与者が対象贈与以外の贈与により採草放牧地の贈与をしている場合におけるその採草放牧地
 ただし、上記(注)②の対象贈与以外の採草放牧地の贈与がある場合には、対象贈与に係る採草放牧地の面積が当該対象贈与をした者が当該対象贈与の日までその農業の用に供していた採草放牧地及び従前採草放牧地の合計面積の3分の2以上の面積であっても、措置法令第40条の6第1項第2号の規定により、当該対象贈与により採草放牧地を取得した者の贈与税について、措置法第70の4第1項の規定の適用はないこととなる(措令40の6①二、措通70の4-6の2)。
 なお、贈与税の納税猶予の適用を受けるために贈与をしなければならない準農地についても上記と同様となる(措置令40の6④、措通70の4-6の3)。

(事例)
平成14年  父が所有する採草放牧地の面積 10,000m2
平成15年  父から子2及び子3に採草放牧地をそれぞれ1,000m2ずつ贈与を行う。なお、父がこの贈与の直前において農業の用に供していた採草放牧地の面積は10,000m2である。また、子2及び子3のいずれも相続時精算課税の適用を受けない。
平成16年  父から子2に1,000m2、子3に2,000m2 の採草放牧地の贈与を行う(子3のみ相続時精算課税の適用を受ける。)。
平成17年  父は採草放牧地を2,000m2購入
平成18年  父から子1に採草放牧地(5,000m2)の贈与を行う。子1は贈与税の納税猶予の適用はあるのか?




(面積の判定)
採草放牧地の面積  7,000m2(贈与の日までその農業の用に供していた採草放牧地)
従前採草放牧地の面積  2,000m2(平成17年以前において贈与があった採草放牧地で相続時精算課税の適用を受けるもの)
子1が贈与を受けた面積  5,000m2



 
(注) 対象年において当該贈与以外の贈与により農地及び採草放牧地並びに準農地の贈与がある場合には、贈与税の納税猶予の適用はないことに留意する(措置令40の6①二)。
③ 特定贈与者からの贈与
 特定贈与者から贈与を受けた農地等について
 (答)
 次に掲げる者がその者に係る特定贈与者(相法21の9⑤)からの贈与により取得した農地等について、贈与税の納税猶予の適用を受ける場合には、その農地等については相続時精算課税は適用しない(措置法70の4③)。
(1)  相続時精算課税適用者
(2)  贈与税の納税猶予の適用を受ける農地等を贈与により取得した日の属する年中において、その農地等の贈与をした者から贈与を受けた当該農地等以外の財産について「相続時精算課税選択届出書」を提出する者
 (5) 相続財産に係る譲渡所得の課税の特例

 相続時精算課税の適用を受けた財産を譲渡した場合の相続財産に係る譲渡所得の課税の特例の適用について
 (答)
 相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間に、その相続税の申告に係る相続時精算課税の適用を受けた財産を譲渡した場合、相続財産に係る譲渡所得の課税の特例(措法39条)の適用を受けることができる。
 なお、相続又は遺贈による財産の取得の有無にかかわらず、相続財産に係る譲渡所得の課税の特例の適用を受けることができることとされた。
第2 既往制度の改正

1 相続税・贈与税の税率

 相続税及び贈与税(暦年課税)の税率の改正について
 (答)
 相続税及び贈与税の税率が次のとおり改正された。




2 納税義務者
① 相続税の納税義務者

 相続税の納税義務者の範囲等について
 (答)
 無制限納税義務者
(1)  居住無制限納税義務者
 相続又は遺贈により財産を取得した個人でその財産を取得した時において日本国内に住所を有するもの(相法1の3一)。
(2)  非居住無制限納税義務者
 相続又は遺贈により財産を取得した日本国籍を有する個人でその財産を取得した時において日本国内に住所を有していないもの(その個人又はその相続若しくは遺贈に係る被相続人(遺贈をした者を含む。)がその相続又は遺贈に係る相続の開始前5年以内のいずれかの時において日本国内に住所を有していたことがある場合に限る。)(相法1の3二)。

 制限納税義務者
 相続又は遺贈により日本国内にある財産を取得した個人でその財産を取得した時において日本国内に住所を有していないもの(非居住無制限納税義務者に該当する者を除く。)(相法1の3三)。

 特定納税義務者
 贈与により相続時精算課税の適用を受ける財産を取得した個人(上記無制限納税義務者及び制限納税義務者に該当する者を除く。)(相法1の3四)。

(参考)相続税の納税義務者及び納税義務の範囲について

納税義務者 納税義務の範囲
国内財産 国外財産 相続時精算課税適用財産(注)
無制限納税義務者 居住無制限納税義務者
非居住無制限納税義務者
制限納税義務者 ×
特定納税義務者
(注)  上記の相続時精算課税適用財産とは、被相続人から贈与により取得した財産で相法第21条の9第3項の規定の適用を受けるものをいう。
② 相続税の非居住無制限納税義務者

 国内財産を取得しなかった相続税の非居住無制限納税義務者と旧特例納税義務者との相違点について
 (答)

 国内財産を取得しなかった非居住無制限納税義務者と国内財産を取得しなかった旧特例納税義務者(旧措法第69条第1項に定める者をいう。)との課税上の違いは次表のとおりである。

  国内財産を取得しなかった場合
非居住無制限納税義務者 特例納税義務者
債務控除(相法13) 相法第13条第1項に規定する債務及び葬式費用を控除することができる。 相法第13条第2項に規定する債務を控除することができる。
未成年者控除(相法19の3) 適用あり 適用なし
障害者控除(相法19の4) 適用なし 適用なし
(注)  「特例納税義務者」について定めた旧措法第69条第1項の規定は、平成15年度改正において廃止された。
③ 贈与税の納税義務者

 贈与税の納税義務者の範囲等について
 (答)
 無制限納税義務者
(1)  居住無制限納税義務者
 贈与により財産を取得した個人で当該財産を取得した時において日本国内に住所を有するもの(相法1の4一)。
(2)  非居住無制限納税義務者
 贈与により財産を取得した日本国籍を有する個人で当該財産を取得した時において日本国内に住所を有していないもの(その個人又はその贈与をした者がその贈与前5年以内のいずれかの時において日本国内に住所を有していたことがある場合に限る。)(相法1の4二)。

 制限納税義務者
 贈与により日本国内にある財産を取得した個人でその財産を取得した時において日本国内に住所を有しないもの(非居住無制限納税義務者に該当する者を除く。)(相法1の4三)。


(参考)贈与税の納税義務者及び納税義務の範囲について

納税義務者 納税義務の範囲
国内財産 国外財産
無制限納税義務者 居住無制限納税義務者
非居住無制限納税義務者
制限納税義務者 ×
④ 贈与税の非居住無制限納税義務者

 国内財産を取得しなかった贈与税の非居住無制限納税義務者と旧特例納税義務者との相違点について
 (答)
 国内財産を取得しなかった非居住無制限納税義務者と国内財産を取得しなかった旧特例納税義務者(旧措法第69条第2項に定める者をいう。)との違いは次表のとおりである。

  国内財産を取得しなかった場合
非居住無制限納税義務者 特例納税義務者
特別障害者に対する贈与税の非課税(相法21の4) 適用なし 適用なし
住宅取得資金等の贈与を受けた場合の贈与税額の計算の特例(旧措法70の3) 適用あり(改正法附則123⑧)※(注)1参照 適用なし
(注)1  当該住宅取得資金又は住宅増改築資金の受贈者がその年中の贈与により日本国内の住宅用家屋を取得し、かつ、特例の適用要件(旧措法70の3①、③、⑤)を満たしている場合に限られることに留意する。
 「特例納税義務者」については定めた旧措法第69条第2項の規定は、平成15年度改正において廃止された。
3 財産の所在

 保険金、退職手当金等の所在について
 (答)
 保険金
 生命保険契約及び損害保険契約の保険金については、その契約に係る保険会社の本店又は主たる事務所の所在とする(相法10①五)。
 退職手当金等
 退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与については、当該給与を支払った者の住所又は本店若しくは主たる事務所の所在とする(相法10①六)。
 相法第7条の規定により贈与又は遺贈により取得したものとみなされる金銭
 相法第7条の規定により贈与又は遺贈により取得したものとみなされる金銭については、そのみなされる基因となった財産の種類に応じ、所在を判定する(相法10①十二)。

【適用関係】
 上記の内容は、平成15年4月1日以後に相続若しくは遺贈又は贈与により取得した財産に係る相続税又は贈与税について適用する(改正法附則16)。

4 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例

 特定同族会社事業用宅地等の要件について
 (答)
 特定同族会社事業用宅地等とは、相続開始直前に、被相続人及び当該被相続人の親族その他当該被相続人と特別の関係がある者(改正前:被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族)が有する株式の総数又は出資の金額の合計額が当該株式又は出資に係る法人の発行済株式の総数又は出資金額の10分の5を超える(改正前:10分の5以上である)法人の事業の用に供されている宅地等で、一定の要件を満たすものとされた(措置法69の4③四)。
(注)  被相続人の親族その他当該被相続人と特別の関係がある者とは、第1・3(3)②の1の者をいう(措置令40の2⑨)。
 特定同族会社事業用宅地等の判定に当たって、株式若しくは出資又は発行済株式の総数若しくは出資金額には、議決権に制限のある株式又は出資として定められた次のものは含まれない(措令40の2⑩、措規23の2⑪)。
(1) 相続開始の時において、商法第222条第4項に規定する議決権制限株式で議決権を行使すべき事項の全部について議決権を有しない(完全無議決)もの、同法241条第2項又は第3項の規定により議決権を有しないものとされる株式その他の議決権のない株式
(2) 相続開始の時において、有限会社法第39条第1項ただし書きの規定に基づき定款に当該出資に係る議決権を行使すべき事項の全部について議決権を有しないと定められたもの、同法第41条において準用する商法241条第2項又は第3項の規定により議決権を有しないものとされる株式その他の議決権のない株式

【適用関係】
 上記の株式総数又は出資金額の合計額が当該株式又は出資に係る発行済株式の総数又は出資金額の10分の5を超えるかどうかの判定については平成15年4月1日以後に相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税について適用する(改正法附則123②)。
5 相続税額の2割加算
① 概要
 相続税額の2割加算の対象となる者の範囲等について
 (答)
 相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続又は遺贈に係る被相続人の一親等の血族(当該被相続人の直系卑属が相続開始以前に死亡し、又は相続権を失ったため、代襲して相続人となった当該被相続人の直系卑属を含む。)及び配偶者以外の者である場合には、その者の相続税額は、相続税法第17条により算出した金額にその100分の20に相当する金額を加算した金額となる(相法18①)。
 なお、一親等の血族には、被相続人の直系卑属が当該被相続人の養子(いわゆる「孫養子」)となっている場合は含まれない。ただし、当該被相続人の直系卑属が相続開始以前に死亡し又は相続権を失ったため、当該養子が代襲して相続人となっている場合は除かれる(相法18②)。
(注) 養子(孫養子を除く。)又は養親が相続又は遺贈により財産を取得した場合においては、これらの者は被相続人の一親等の法定血族であるので、これらの者については、加算の対象とならない(相基通18-3)。


 加算後の金額が、その者に係る相続税の課税価格に相当する金額に100分の70の割合を乗じて算出した金額を超える場合には、当該割合を乗じて算出した金額を上限とする規定は、相続税の税率の引下げに伴い廃止された。

【適用時期】
 上記の内容は、平成15年4月1日以後に相続又は遺贈により取得した財産に係る相続税について適用する(改正法附則17)。 
② 相続時精算課税適用者の2割加算

 相続開始の時において被相続人の一親等の血族に該当していない相続時精算課税適用者の2割加算について
 (答)
 相続開始の時において被相続人の一親等の血族(相法第18条第1項に規定する被相続人の一親等の血族をいう。以下同じ。)に該当しない相続時精算課税適用者の相続税額のうち、被相続人の一親等の血族であった期間内に被相続人からの贈与により取得した相続時精算課税の適用を受ける財産の価額に対応する相続税額は2割加算の対象とならない(相法21の15②、21の16②、相令5の2、相基通18-5)。この2割加算の対象とならない相続税額は次の算式により算出する。
 相続税法第17条の規定により算出した相続時精算課税適用者に係る相続税額
 次の①と②の合計
 相続時精算課税適用者が相続又は遺贈により取得した財産の価額の合計額
 相続時精算課税適用者が被相続人からの贈与により取得した相続時精算課税制度の適用を受ける財産の価額の合計額
 Bのうち、被相続人と一親等の血族であった期間内に当該被相続人から贈与により取得した財産の価額の合計額
(注)  特定贈与者よりも先に死亡した相続時精算課税適用者が一親等の血族であるかどうかの判定時期について
 特定贈与者よりも先に死亡している相続時精算課税適用者に係る一親等の血族であるかどうかの判定は、当該相続時精算課税適用者が死亡した時の状況により判定する(相基通18-2)。

6 相次相続控除

 第1次相続に係る課税価格又は税額に異動が生じた場合の取扱いについて
 (答)
 旧相法第20条第2項において、相次相続控除額の計算の基礎となる第1次相続に係る相続税については、第2次相続に係る相続税の申告期限までに第1次相続に係る相続税として納付した又は納付すべきことが確定した税額によることとされていたが、同項は削除された。
 したがって、第2次相続に係る相続税の申告期限後に、第1次相続に係る相続税額に異動が生じた場合には、原則としてその異動後の相続税額により第2次相続に係る相次相続控除額を計算することになる。

【適用関係】
 上記の内容は、平成15年4月1日以後に相続又は遺贈により取得した財産に係る相続税について適用する(改正法附則17)。
第2 既往制度の改正

7 生命保険契約に関する権利の評価

 生命保険契約に関する権利の評価について
 (答)
 生命保険契約に関する権利の評価方法について定めた旧相法第26条の規定が廃止されたことから、生命保険契約に関する権利の評価は、相法第22条の規定に基づき時価により行うこととされた。

【適用関係】
(1)  平成15年4月1日前に相続又は遺贈により取得した生命保険契約に関する権利については旧相法第26条の規定により評価する(改正法附則18①)。

(2)  平成15年4月1日から平成18年3月31日までの間に相続又は遺贈により取得した生命保険契約に関する権利については旧相法第26条の規定により評価を行うことができる(改正法附則18②)。
8 納税管理人の選任

 納税管理人の選任について
 (答)
 相続税及び贈与税の申告書等を提出すべき者が当該申告書等の提出期限前に日本国内に住所及び居所を有しないこととなる場合において、その日までに納税管理人を選任したときには、本来の提出期限までに当該申告書等を提出すればよいこととされた。

(参考)国税通則法
117条 個人である納税者がこの法律の施行地に住所及び居所(事務所及び事業所を除く。)を有せず、若しくは有しないこととなる場合又はこの法律の施行地に本店若しくは主たる事務所を有しない法人である納税者がこの法律の施行地にその事務所及び事業所を有せず、若しくは有しないこととなる場合において、納税申告書の提出その他国税に関する事項を処理する必要があるときは、その者は、当該事項を処理させるため、この法律の施行地に住所又は居所を有する者で当該事項の処理につき便宜を有するもののうちから納税管理人を定めなければならない。
 納税者は、前項の規定により納税管理人を定めたときは、当該納税管理人に係る国税の納税地を所轄する税務署長にその旨を届けなければならない。その納税管理人を解任したときも、また同様とする。

 なお、納税管理人の届出をしないで申告期限内に日本国内に住所及び居所を有しないこととなるときは、従来どおり住所及び居所を有しないこととなる日までに当該申告書等を提出しなければならない。

【適用関係】
 上記の内容は、平成15年4月1日以後に当該申告書等を提出する者が日本国内に住所及び居所を有しないこととなる場合について適用する(改正法附則19)。
9 更正の請求の特則

 更正の請求の特則に係る事由の範囲について
 (答)
 次のいずれかに該当する事由により申告又は決定に係る課税価格及び相続税額又は贈与税額が過大となったときは、該当する事由が生じたことを知った日の翌日から4か月以内に限り、国税通則法第23条第1項(更正の請求)の規定による更正の請求をすることができる(相法32一~八)。
 なお、(5)から(7)までについては、平成15年度税制改正により追加された事由である(相法32五、相令8)。 

(1) 未分割遺産について分割が行われたこと。
(2) 民法第787条(認知の訴え)又は同法第892条から第894条まで(推定相続人の廃除等)の規定による認知、相続人の廃除又はその取消しに関する裁判の確定、同法第884条(相続回復請求権)に規定する相続の回復、同法第919条第2項(承認又は放棄の取消し)の規定による相続の放棄の取消しその他の事由により相続人に異動を生じたこと。
(3) 遺留分による減殺の請求に基づき返還すべき又は弁償すべき額が確定したこと。
(4) 遺贈に係る遺言書が発見され又は遺贈の放棄があったこと。
(5) 相続若しくは遺贈又は贈与により取得した財産についての権利の帰属に関する訴えについての判決があったこと(相令8一)。
(6) 民法第910条(分割後の被認知者の請求)の規定による請求があったことにより弁済すべき額が確定したこと(相令8二)。
(7) 条件付の遺贈(停止条件付遺贈、解除条件付遺贈)又は期限付の遺贈(始期付遺贈、終期付遺贈)について、条件が成就し、又は期限が到来したこと(相令8三)。
(8) 民法第958条の3第1項(特別縁故者への相続財産の分与)の規定により相続財産の全部又は一部が特別縁故者に分与されたこと。
(9) 相続税法第19条の2第2項ただし書(配偶者に対する相続税額の軽減)の規定に該当したことにより、同条第1項の規定を適用して計算した相続税額がそれ以前において計算した相続税額と異なることとなったこと((1)に該当する場合を除く。)。
(10) 贈与税の課税価格計算の基礎に算入した財産のうちに相続税法21条の2第4項(贈与税の課税価格)の規定に該当するものがあったこと。

(参考)死後認知があった場合の更正の請求の期限
 被相続人の死亡後に認知に関する裁判が確定し、その後に被認知者の請求に基づき弁済すべき額が確定した場合の更正の請求は、当該認知に関する裁判が確定したことを知った日の翌日から4か月以内に上記(2)の事由に基づく更正の請求を行い、その後当該弁済すべき額が確定したことを知った日の翌日から4か月以内に上記(6)の事由に基づく更正の請求を行うことになる。
 なお、認知に関する裁判が確定したことを知った日の翌日から4か月以内に更正の請求が行われず、弁済すべき額が確定したことを知った日の翌日から4か月以内に上記(2)及び(6)の事由に基づく更正の請求があった場合には、いずれの事由についても更正の請求の期限内に請求があったものとして取り扱う(相基通32-3)。
10 更正及び決定の特則

 国税通則法第23条第2項(更正の請求)との関係について
 (答)
 相法第32条第1号から第5号までに掲げる後発的事由による更正の請求と通則法第23条第2項の規定に基づく更正の請求のいずれの請求も可能となる事由が発生する場合がある。
 この場合については、一般法と特別法の関係と同様に、通則法第23条の規定による更正の請求に対し、相法第32条の規定による更正の請求が優先することとなるため、通則法第23条に該当するとしてなされた更正の請求であっても相法第32条の規定に該当することとなれば、それは同条の規定による更正の請求と位置付けられこととなる。
 したがって、同条第1号から第5号まで(前問(1)から(7)まで参照。)に掲げる事由による更正の請求に基づき更正をした場合には当該請求をした者の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した他の者(当該被相続人から相続時精算課税の適用を受ける財産を贈与により取得した者を含む。)については、相法第35条第3項の規定に基づき、更正又は決定を行うこととなる(相基通35-1)。

(参考) 国税通則法
第23条 (省略)
 納税申告書を提出した者又は第25条(決定)の規定による決定(以下この項において「決定」という。)を受けた者は、次の各号の一に該当する場合(納税申告書を提出したものについては、当該各号に掲げる期間の満了する日が前項に規定する日以後に到来する場合に限る。)には、同項の規定にかかわらず、当該各号に掲げる期間において、その該当することを理由として同項の規定による更正の請求(以下「更正の請求」という。)をすることができる。
 その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決(判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含む。)により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとき。 その確定した日の翌日から起算して2月以内
・三 (省略)
11 贈与税の期限後申告・修正申告の特則

 贈与税の期限後申告・修正申告の特則について
 (答)
 期限後申告の特則
 贈与税の申告期限後において、相法第32条第1号から第5号(更正の請求の特則)までに規定する事由が生じたことにより相続又は遺贈による財産の取得をしないこととなったため、贈与税の申告書を提出すべき要件に該当することとなった者は、贈与税の期限後申告書を提出することができる(相法30②)。
 修正申告の特則
 贈与税の申告書を提出した者(贈与税について決定を受けた者を含む。)は、相法第32条第1号から第5号(更正の請求の特則)までに規定する事由が生じたことにより相続又は遺贈による財産の取得をしないこととなったため、既に確定した贈与税額に不足を生じた場合には、修正申告書を提出することができる(相法31④)。
 更正及び決定の特則
 税務署長は、相法第21条の2第4項(贈与税の課税価格)の規定の適用を受けていた者が、相法第32条第1号から第5号(更正の請求の特則)までに規定する事由が生じたことにより相続又は遺贈による財産の取得をしないこととなったため、新たに贈与税の申告書を提出すべき要件に該当することとなった場合又は既に確定した贈与税額に不足を生じた場合には、その者に係る贈与税の課税価格又は贈与税額の更正又は決定をする。
 ただし、これらの事由が生じた日から1年を経過した日と相法第36条(贈与税についての更正、決定等の期間制限の特則)(次問参照)の規定により更正又は決定することができないこととなる日のいずれか遅い日以後においては、この限りでない(相法35④)。
(事例)
成15年2月28日 甲(子)は乙(親)より財産の贈与を受けた。
成15年3月20日 乙死亡
成16年1月20日 相続税の申告期限
 遺産が未分割であったため、甲は相法第55条(未分割遺産に対する課税)により相続税の申告書を提出するとともに、乙からの財産の贈与については、相法第19条(相続開始前3年以内に贈与があった場合の相続税額)の規定により相続税額の計算を行った。
成21年4月14日 遺産分割協議成立
 遺産分割協議の結果、甲は相続財産を取得しないこととなったため、相続税の申告は不要となった。この場合、甲は乙に係る相続税の更正の請求を行うことができ(相法32一)、平成15年中に乙から贈与を受けた財産に係る贈与税の期限後申告書の提出ができることとなる(相法30②)。
12 贈与税の更正・決定等の期間制限の特則

 贈与税の更正、決定等の期間制限の延長について
 (答)
 税務署長は、通則法第70条(国税の更正、決定等の期間制限)の規定にかかわらず、次に掲げる期限又は日から6年を経過する日まで、贈与税の更正若しくは決定又は賦課決定をすることができることとされた(相法36①一~三)。

(1)  贈与税についての更正又は決定については、更正又は決定に係る贈与税の申告書の提出期限
(2)  (1)の更正又は決定に伴い通則法第19条第1項(修正申告)に規定する課税標準等又は税額等に異動を生ずべき贈与税に係る更正又は決定については、更正又は決定に係る贈与税の申告書の提出期限
(3)  過少申告加算税、無申告加算税又は重加算税の賦課決定については、その納税義務の成立の日


【適用関係】
 上記の内容は、平成16年1月1日以後に贈与により取得した財産に係る贈与税に適用する(改正法附則20)。
13 延滞税の特則

 延滞税の特則について
 (答)
 延滞税の特則の対象となる相続税額に次の相続税額が追加された。

(1)  相続税の期限内申告書の提出期限後に支給が確定した相法第3条第1項2号(相続又は遺贈により取得したものとみなす場合)に掲げる給与の支給を受けたことにより、期限後申告書又は修正申告書を提出したことによる納付すべき相続税額(相法51②一ロ)
(2)  相続税の期限内申告書の提出期限後に支給が確定した相法第3条第1項2号(相続又は遺贈により取得したものとみなす場合)に掲げる給与の支給を受けたことによる更正又は決定により納付すべき相続税額(相法51②二ロ)

【適用関係】
 上記の内容は、平成15年4月1日以後に相続又は遺贈により取得した財産(当該相続に係る被相続人からの贈与により取得した財産で相続時精算課税の適用を受けるものを含む。)に係る相続税について適用する(改正法附則22)。
14 同族会社の行為又は計算の否認等

 同族関係者の範囲等の改正について
 (答)
 相法第64条第3項(同族会社の行為又は計算の否認等)に規定する移転法人又は取得法人の株主又は社員と特別の関係がある者について次に掲げる者とされた。
(1)  株主又は社員が法人である場合の当該法人(以下「株主法人」という。)の発行済株式の総数又は出資金額(当該法人が有する自己の株式又は出資を除く。以下「発行済株式等」という。)の100分の50を超える(改正前 100分の50以上)株式等を個人等が直接又は間接に保有する場合における当該個人(相令31②一)
(2)  株主法人と個人等又は特定法人(当該個人等が発行済株式等の100分の50を超える(改正前 100分の50以上)株式等を直接又は間接的に保有する法人をいう。)との間に一定の事実が存在することにより、当該個人等又は特定法人が当該株主法人の事業方針の全部又は一部につき実質的に決定できる関係にある場合における当該個人(相令31②二)
 上記1の(1)及び(2)において間接保有の株式等の保有割合を判定する場合についても、株主法人の株主又は社員である法人の発行済株式等の100分の50を超える(改正前 100分の50以上)株式等が個人等又はその個人等と他の出資関連法人によって所有されているかどうかによるものとされた(相令31④二)。

【適用関係】
 上記の内容は、平成15年4月1日以後に法人が行う行為又は計算について適用する(改正相令附則4)。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

人気記事

人気商品

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索