解説記事2003年11月24日 【編集部レポート】 税制改正決定の仕組みを読み解く~自民党税制調査会はどうなる?~(2003年11月24日号・№044)
レポート
税制改正決定の仕組みを読み解く
自民党税制調査会はどうなる?
編集部
衆議院選挙も終わり、いよいよ年末に向けて平成16年度税制改正の議論がスタートするが、今年については、混迷を呈する模様だ。従来であれば、事実上の最終決定権限を持つ自民党税制調査会の通称“インナー”と呼ばれる幹部が落選や引退しているからだ。相沢英之会長は落選、奥野誠亮顧問、林義郎顧問、宮下創平小委員長は引退し、残りは山中貞則最高顧問、武藤嘉文顧問、陣内孝雄顧問の3人となっている。自民党税制調査会では、例年どおり12月中旬にも税制改正大綱をまとめる予定だが、今後、今までのような税制改正を決定する仕組みが機能するかどうか注目される点である。
税制改正の決定権限は自民党税調幹部
税制改正については、二つの税制調査会がある。政府税制調査会と自民党税制調査会である。政府税制調査会は首相の諮問機関であり、学者や経営者、地方自治体の首長やマスコミ関係者などの委員20名と16名の特別委員で構成される。任期は3年で現在の会長は、石弘光一橋大学学長である。年度の税制改正答申をまとめるほか、税制の中長期的なあり方を示す中期答申を3年に1回の割合で出す。
一方、自民党税制調査会は、自民党の政務調査会に置かれている機関で、自民党議員で構成される。例年、11月頃から審議を開始し、12月中旬までに翌年の税制改正大綱をまとめることになる。政府税制調査会が税制のあり方や仕組みなどを提示するのに対し、自民党税制調査会では、税率や課税方法などを決めることに特徴がある。実質、これを基に財務省が税制改正法案を作成することになる。税制改正については、政府税制調査会ではなく、自民党税制調査会が決定権限を持っているのである。ここで注目したいのは、自民党税制調査会における税制改正の決定は、多数決ではないという点。中でも通称インナーと呼ばれる幹部が利害関係を超越した上で最終的な決定を下しているのである。
12月15日を目処に税制改正大綱まとめる
しかし、今年については、従来のようなやり方が通るのか不透明な状況だ。衆議院選挙前の自民党税制調査会のメンバーは右表の通りだが、今回の選挙により、幹部議員が落選や引退により、3人になってしまったからだ。
自民党税制調査会では、相沢英之会長の落選により、今後、11月20日以降に会長選びを行う予定。今のところ、幹部議員以外からの登用を模索している状況。伊吹文明議員、津島雄二議員、野田毅議員、町村信孝議員、与謝野馨議員などが会長候補として挙がっている模様だ。
会長選びが終了すれば、11月24日の週に自民党税調の総会を開催する意向。その後、自民党の経済産業部会や国土交通部会などからの要望を受け、実質的な審議に入る。予定としては、12月15日(又は16日)に自民党税制改正大綱、12月16日(又は17日)に与党税制改正大綱をまとめるスケジュールになっている。

定率減税廃止などの政治的項目が浮上する可能性も
このような状況にあって、財務省は、平成16年度税制改正では大幅な増減税は実施したくない意向。自民党税制調査会の運営が不透明な他、12月中旬に税制改正大綱をまとめる予定でいけば、実質2週間と検討時間が短いためである。
主に俎上に上がるのは、先日署名が行われた日米租税条約に伴う国内法制の整備のほか、住宅ローン減税などの期限切れ項目。政府税制調査会が11月28日にまとめる予定の答申でも、6月に公表した「少子・高齢社会における税制のあり方」(中期答申)とほぼ変わらない内容となる模様だ。定率減税廃止についても、いずれは廃止したい意向だが、基礎年金の財源目的になるのを嫌い、慎重な姿勢を見せている。
しかし、自民党税制調査会では、今後、定率減税の廃止など、政治的決着となる項目が浮上してくる可能性も高い。大綱作成まで、実質約2週間程度しか検討時間がない。果たして自民党税制調査会が従来のような利害調整機能を発揮させることができるか、または税制改正のあり方が変わってくるのか、今後の自民党税制調査会の動向が注目される。
税制改正決定の仕組みを読み解く
自民党税制調査会はどうなる?
編集部
衆議院選挙も終わり、いよいよ年末に向けて平成16年度税制改正の議論がスタートするが、今年については、混迷を呈する模様だ。従来であれば、事実上の最終決定権限を持つ自民党税制調査会の通称“インナー”と呼ばれる幹部が落選や引退しているからだ。相沢英之会長は落選、奥野誠亮顧問、林義郎顧問、宮下創平小委員長は引退し、残りは山中貞則最高顧問、武藤嘉文顧問、陣内孝雄顧問の3人となっている。自民党税制調査会では、例年どおり12月中旬にも税制改正大綱をまとめる予定だが、今後、今までのような税制改正を決定する仕組みが機能するかどうか注目される点である。
税制改正の決定権限は自民党税調幹部
税制改正については、二つの税制調査会がある。政府税制調査会と自民党税制調査会である。政府税制調査会は首相の諮問機関であり、学者や経営者、地方自治体の首長やマスコミ関係者などの委員20名と16名の特別委員で構成される。任期は3年で現在の会長は、石弘光一橋大学学長である。年度の税制改正答申をまとめるほか、税制の中長期的なあり方を示す中期答申を3年に1回の割合で出す。
一方、自民党税制調査会は、自民党の政務調査会に置かれている機関で、自民党議員で構成される。例年、11月頃から審議を開始し、12月中旬までに翌年の税制改正大綱をまとめることになる。政府税制調査会が税制のあり方や仕組みなどを提示するのに対し、自民党税制調査会では、税率や課税方法などを決めることに特徴がある。実質、これを基に財務省が税制改正法案を作成することになる。税制改正については、政府税制調査会ではなく、自民党税制調査会が決定権限を持っているのである。ここで注目したいのは、自民党税制調査会における税制改正の決定は、多数決ではないという点。中でも通称インナーと呼ばれる幹部が利害関係を超越した上で最終的な決定を下しているのである。
12月15日を目処に税制改正大綱まとめる
しかし、今年については、従来のようなやり方が通るのか不透明な状況だ。衆議院選挙前の自民党税制調査会のメンバーは右表の通りだが、今回の選挙により、幹部議員が落選や引退により、3人になってしまったからだ。
自民党税制調査会では、相沢英之会長の落選により、今後、11月20日以降に会長選びを行う予定。今のところ、幹部議員以外からの登用を模索している状況。伊吹文明議員、津島雄二議員、野田毅議員、町村信孝議員、与謝野馨議員などが会長候補として挙がっている模様だ。
会長選びが終了すれば、11月24日の週に自民党税調の総会を開催する意向。その後、自民党の経済産業部会や国土交通部会などからの要望を受け、実質的な審議に入る。予定としては、12月15日(又は16日)に自民党税制改正大綱、12月16日(又は17日)に与党税制改正大綱をまとめるスケジュールになっている。

定率減税廃止などの政治的項目が浮上する可能性も
このような状況にあって、財務省は、平成16年度税制改正では大幅な増減税は実施したくない意向。自民党税制調査会の運営が不透明な他、12月中旬に税制改正大綱をまとめる予定でいけば、実質2週間と検討時間が短いためである。
主に俎上に上がるのは、先日署名が行われた日米租税条約に伴う国内法制の整備のほか、住宅ローン減税などの期限切れ項目。政府税制調査会が11月28日にまとめる予定の答申でも、6月に公表した「少子・高齢社会における税制のあり方」(中期答申)とほぼ変わらない内容となる模様だ。定率減税廃止についても、いずれは廃止したい意向だが、基礎年金の財源目的になるのを嫌い、慎重な姿勢を見せている。
しかし、自民党税制調査会では、今後、定率減税の廃止など、政治的決着となる項目が浮上してくる可能性も高い。大綱作成まで、実質約2週間程度しか検討時間がない。果たして自民党税制調査会が従来のような利害調整機能を発揮させることができるか、または税制改正のあり方が変わってくるのか、今後の自民党税制調査会の動向が注目される。
【選挙前の自民党税制調査会】 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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