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解説記事2004年07月26日 【ニュース特集】 「財務会計の概念フレームワーク」を図解する(2004年7月26日号・№076)

ニュース特集
今後の会計基準はどうなる!?
「財務会計の概念フレームワーク」を図解する


 企業会計基準委員会の基本概念ワーキング・グループは7月2日に、討議資料「財務会計の概念フレームワーク」を公表しました。これは、「財務報告の目的」、「会計情報の質的特性」、「財務諸表の構成要素」、「財務諸表における認識と測定」の4つからなる資料で、今後の会計基準の行方を占う上で重要な資料といえます。とはいっても、なかなか気軽に読める内容でもありません。そこで、今回の特集では、本資料の読みこみに資するように図解を試みてみました。各資料が有機的に関連している点(赤字)を意識することがポイントといえます。なお、「財務報告の目的」、「会計情報の質的特性」については本誌075号の25ページから33ページに、また、「財務諸表の構成要素」、「財務諸表における認識と測定」については本号の23ページから35ページに掲載しています。

討議資料「財務報告の目的」について
 本討議資料は、財務報告の目的について検討しています。これは、「一般に社会のシステムは、その目的が基本的な性格を決めている」(序文)ことから、財務報告を支える諸概念を整理するに際して、財務報告が何を目的としているかを明らかにすることが必要不可欠となるからです。
 本討議資料によれば、ディスクロージャー制度の存在意義を明らかにした上で、財務報告の目的会計基準の役割が明らかにされています。すなわち、投資家と経営者の間には情報の非対称性が生じており、それがもたらす機能障害(企業が発行する証券の円滑な発行・流通が妨げられること)を解決するために、「経営者による私的情報の開示」(1項)が必要となります。その一環として、投資家が「企業成果の予測と企業価値の評価」(序文)に基づく意思決定を行う際に、企業の将来キャッシュフローの予測に役立つ情報を提供すること、すなわち投資のポジションとその成果(利益)を測定して開示することが財務報告の目的であるとしています。もっとも、情報の開示を「当事者間の交渉(契約)に委ねていたのではコストがかかりすぎる」(4項)ため、コストを社会的に削減するべく、「標準的な契約を一般化して、会計基準が形成」(4項)されました。よって、会計基準には「ディスクロージャー制度を支える社会規範としての役割」(4項)が求められているといえます。さらに、本討議資料では、ディスクロージャー制度の主要当事者である投資家、経営者、監査人のそれぞれが、会計基準から受けている便益についても明らかにされています。
 本討議資料で特徴的なことは、ディスクロージャーに対する経営者の意識を消極的(いやいやながら開示を行う)に捉えるのではなく、積極的な面を強調していることです(4頁・19項参照)。



討議資料「会計情報の質的特性」について
 討議資料「財務報告の目的」において、「投資家による企業成果の予測や企業評価のために、将来キャッシュフローの予測に役立つ情報を提供すること」(序文)が財務報告の目的であるとされました。会計情報に求められる特性として最も重要なものは、この財務報告の目的にとっての有用性であるといえます。ここで、「投資家による企業成果の予測や企業評価」とは、投資家が自己の意思決定のために行うものです。よって、財務報告の目的にとっての有用性は意思決定有用性と言い換えることができます。そこで本討議資料では、会計情報の基本的な特性として意思決定有用性を指摘しています。
 また、意思決定有用性を支える特性として、意思決定との関連性・内的な整合性・信頼性を挙げています。各特性の関係については本誌075号の33ページを参照してください。諸外国の概念フレームワークと比べて特徴的といえる特性が「内的な整合性」です。これは他の2つの特性と異なり、会計情報そのものに内在している特性というより、会計情報を生み出す会計基準に由来する特性といえます。


討議資料「財務諸表の構成要素」について
 討議資料「財務報告の目的」では、財務報告の「目的」を検討しました。では、財務報告の「対象」は何でしょうか。それを明らかにするのが本討議資料です。すなわち、「この討議資料では、財務諸表の構成要素を特定し、それらに定義を与えることを通じて、財務報告が対象とすべき事象を明確にしている」(序文)のです。
 現行のディスクロージャー制度において中核とされているのは、ご存知B/SとP/Lです。本討議資料では、討議資料「財務報告の目的」でキーワードとなっていた「投資のポジションと成果」を用いて、B/S・P/Lの役割を示しています。企業会計原則の記述と比べてみると次の通り。両者を並べてみると、本討議資料は企業会計原則よりも「投資」という観点を強調していることがよくわかります。


 
討議資料「財務諸表の構成要素」
企業会計原則
B/S 企業の所有者が提供した資金をもとに、企業が実行した投資の特定時点のポジション(1項) 貸借対照表は、企業の財政状態を明らかにするため、貸借対照表日におけるすべての資産、負債及び資本を記載し、株主、債権者その他の利害関係者にこれを正しく表示するものでなければならない。(第三・一)
P/L その投資から得られた特定期間の成果(1項) 損益計算書は、企業の経営成績を明らかにするため、一会計期間に属するすべての収益とこれに対応するすべての費用とを記載して経常利益を表示し、これに特別損益に属する項目を加減して…(以下、略)。(第二・一)


 もともと、概念フレームワークは企業会計原則にとってかわるために作られたものではないため、このような比較自体意味がないのかも知れませんが、歴史的変遷をうかがい知ることができるという点では意味があるといえます。
 企業会計原則では積極的な定義づけはされていなかった資産・負債・利益等に関しても、本討議資料では定義づけが試みられています。わが国で初めて公式に「包括利益」の定義づけがおこなわれた点が注目されています。

資産 過去の取引または事象の結果として、報告主体(entity)が支配(control)している経済的資源(economic resources)、またはその同等物
負債 過去の取引または事象の結果として、報告主体が支配している経済的資源を放棄もしくは引き渡す義務、またはその同等物
純資産 資産と負債の差額
包括利益 特定期間における純資産の変動額のうち、報告主体の所有者である株主、子会社の少数株主、および、将来それらになりうるオプションの所有者との直接的な取引によらない部分
純利益 特定期間の期末までに生じた純資産の変動額(報告主体の所有者である株主、子会社の少数株主、および前項(包括利益)にいうオプションの所有者との直接的な取引による部分を除く)のうち、その期間中にリスクから解放された投資の成果であって、報告主体の所有者に帰属する部分
収益 純利益または少数株主損益を増加させる項目
費用 純利益または少数株主損益を減少させる項目





 特徴的といえるのは、包括利益に言及しつつ、それとは別に純利益を定義し、純利益に関連させて収益・費用概念を導き出している点です。包括利益は資産負債アプローチから、純利益は収益費用アプローチから導き出すという構図が一般的ですが、本概念フレームワークは「特定のアプローチを採用するものではない」(斎藤静樹基本概念ワーキング・グループ座長)ため、包括利益と純利益が並存する形になっています。これは、「純利益の情報は長期にわたって投資家に広く利用されており、その有用性を支持する経験的な証拠も確認されている」(20項)反面、「今後の研究の進展次第では、包括利益にも純利益を超える有用性が見出される可能性もある」(21項)ことを理由とします。なお、包括利益と純利益の関係については12項に記述があります(本誌24ページ参照)。

討議資料「財務諸表における認識と測定」について 
 本討議資料は、討議資料「財務諸表の構成要素」で定義した構成要素の「認識と測定」すなわち、「財務諸表に計上するタイミングと、それらに与えられる測定値の意味」(序文)を取扱っています。中でも、測定については様々なメニューが提示されています。メニューには現在用いられているものからそうでないものまで様々なものが含まれています(右図参照)。そして、資産・負債に関する測定については、「各種の測定値が企業の投資とどのような関連をもつのか」(2項)、収益と費用に関する測定については「①企業が投資した資金は、いつ投資のリスクから解放され、投資の成果を表す収益はどのように計上されるのか、②その成果を得るための犠牲である費用は、いつ、どのように計上されるのか」(3項)、に着目した説明が行われています(「リスクからの解放」については42ページのことばのコンビニ参照)。

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