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解説記事2004年12月06日 【編集部レポート】 航空機リース事業に係る損失の損金算入は法規制される?(2004年12月6日号・№093)

航空機リース事業に係る損失の損金算入は法規制される?

レポート
text 編集部


 11月25日に公表された政府税調の「平成17年度の税制改正に関する答申」(8.その他(2))に、「組合事業に関する租税回避の防止」が盛り込まれました。ここには、「組合事業から生じる損失を利用して節税を図る租税回避行為を防止するため、適切な対応措置を講じる」と明記されています。
 一方、名古屋地裁では、10月28日、航空機リースを行う組合の構成員に対して行った当局の課税処分を「法律的根拠のない法律行為の否認」などと判示し、当局の追徴課税などの処分を取り消す判決が下されています。財務省は、本誌の取材に対し、レバレッジドリースなどによる租税回避行為への対策について、国税庁の執行(税務調査等による認定)だけに任せず、平成17年度改正によって、損金算入は出資額にとどめるなど、法規制する方向であることを明らかにしました。

1. 国税庁の課税処分に名古屋地裁が「待った」
 
 国税庁は、政府税調の基礎小委で、航空機リースを行う組合の構成員に対し課税処分を行った事例を紹介し(下図参照)、次のように当局の課税処分の考え方を示しています。
・本件組合契約は、共同事業性、共同所有性という民法上の組合の成立要件を欠くことから、利益配当契約である。
・本件組合契約は民法上の組合契約ではないことから、リース事業は各組合員に帰属するものではなく、損失の計上は認められない。


 しかし、名古屋地裁は、野村バブコックアンドブラウンの勧誘を受け、会社社長らが参加した航空機リース事業における減価償却費の損益通算の可否(具体的には、各組合契約が民法上の組合契約か利益配当契約か)を主な争点とする事件に対し、各組合契約は民法上の組合に当たると判断、原告の主張を全面的に認め、被告である当局の課税処分(過少申告加算税を含む約3億3千万円の追徴課税)を取り消す判決を下したのです(次頁参照)。

2. 損金算入は、出資額の範囲内で

 財務省は、民法上の任意組合は、その規定の大部分が任意のため、民法上に共同事業要件などを規定するのは難しいとの見解を示しています。具体的な法規制のあり方については、次の①②のような方法を想定しているようです。
① 業務執行を実際に行わない(投資するだけで意思決定権などのない)組合員については、リース事業に係る損失の損金算入を出資額を限度とする(個人の場合は不動産所得とせず、雑所得とすることで損益通算できなくする)
② リース期間を通じた損益が、最終的には黒字になることが明確な場合(ノンリコースローンなどにより、リスクが少なく、みかけだけの損失だということが明らかな場合)は、当初から、各年度のリース事業に係る損失の損金算入を認めない


3. 「税逃れ」への規制の強化は確実

 平成17年度改正で対策を講じられることが予想されている上記のような「税逃れ商品」への規制は、出資者と出資者を勧誘するアレンジャーのみならず、こうしたスキームに多額のお金を貸し出している金融機関からの反発も予想されます。また、税逃れ商品が誕生した米国では、税制改正を繰り返したり、課徴金の引き上げを検討するなどして、開発側とのいたちごっこが現在も続いています。さらに、立法当局には、前記②のように、損金算入を認めない場合、結果として、リース期間を通じた損益が赤字となった場合には、その分だけ損金算入を認めるなどのしくみづくりなども求められ、今後、難しい立法作業を強いられることは必至です。
 しかし、立法当局が強い危機感を抱いていることは事実であり、課税当局の執行だけに任せず、税逃れ商品に対する規制を強化することは確実視されています。
 
 
リース会計改正への影響はどうなる?
 航空機等のレバレッジドリースのスキームにおいて、出資者側に税務上のメリットがなくなることは、リース会計の改正動向にも影響するのではないか、との見方が強まっています。 
 ASB(企業会計基準委員会)では、「リース取引に係る会計基準」の所有権移転外ファイナンス・リースの例外処理(注記処理)の廃止を巡り、学者・実務家・リース業界等経済団体・アナリスト等による議論が平行線をたどったことから、改正の検討自体が「税の問題で小休止」(本誌043号10頁)しています。「税の問題」にけりがつけば、例外処理の廃止に向けての議論が活発化することが予想されます。
 

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