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資料2005年08月29日 【会計資料】 企業会計基準適用指針公開草案第9号・貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準等の適用指針(案)(2005年8月29日号・№128)

企業会計基準適用指針公開草案第9号
貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準等の適用指針(案)


 平成17年8月10日
企業会計基準委員会


目的
1. 企業会計基準公開草案第6号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準(案)」(以下「会計基準」という。)が、平成17年8月10日に公表されている。本適用指針は、当該会計基準を適用する際の指針を定めるものである。

適用指針
範囲

2. 本適用指針を適用する範囲は、会計基準における範囲と同様とする。

純資産の部の表示
3. 純資産の部の表示は、以下の例による。


純資産の部における項目と会計処理
税効果会計の適用

4. 純資産の部に直接計上される評価・換算差額等については、税効果会計を適用し、これらに係る繰延税金資産又は繰延税金負債の額を控除して計上することとなる(会計基準第8項なお書き参照)。税効果会計の具体的な適用については次による。
(1)法人税等について税率の変更があったこと等により、評価・換算差額等に係る繰延税金資産又は繰延税金負債の金額を修正した場合には、修正差額を当該評価・換算差額等に加減して処理する(この点については、「税効果会計に係る会計基準」注解(注7)を参照のこと)。
(2)繰延税金資産の回収可能性を見直した結果、評価・換算差額等に係る繰延税金資産又は繰延税金負債の金額を修正した場合には、修正差額を当該評価・換算差額等に加減して処理する(この点については、日本公認会計士協会会計制度委員会報告第10号「個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針」(以下「税効果実務指針」という。)第23項ただし書きを参照のこと)。
(3)その他有価証券評価差額金に対する税効果会計の具体的な適用については、従来どおり、日本公認会計士協会監査委員会報告第70号「その他有価証券の評価差額及び固定資産の減損損失に係る税効果会計の適用における監査上の取扱い」による。
(4)繰延ヘッジ損益に対する税効果会計の具体的な適用については、税効果実務指針による。
  なお、繰延ヘッジ損失について、将来年度の収益力に基づく課税所得によって繰延税金資産の回収可能性を判断する場合には、日本公認会計士協会監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」における例示区分①及び②の会社に加え、例示区分③及び④のただし書きの会社についても回収可能性があると判断できるものとする。
(5)為替換算調整勘定に対する税効果会計の具体的な適用については、従来どおり、日本公認会計士協会「為替換算調整勘定の資本の部計上に伴う税効果会計適用上の留意事項」による。
(6)土地再評価差額金に対する税効果会計の具体的な適用については、従来どおり、税効果実務指針(日本公認会計士協会リサーチ・センター審理情報No.9「改正土地再評価法に関するQ&A」を含む。)による。

資本連結における子会社の資本及び被投資会社の資本
5. 連結貸借対照表の作成にあたり、資本連結において親会社の子会社に対する投資と相殺消去される子会社の資本は、次の(1)及び(2)に(3)の項目を加えたものとなる(なお、いずれも税効果会計適用後の金額とする。以下同じ。)。
(1)子会社の個別貸借対照表上の純資産の部における株主資本(親子会社間の会計処理の統一及びその他個別財務諸表の修正による損益処理後)
(2)子会社の個別貸借対照表上の純資産の部における評価・換算差額等[設例1]
(3)子会社の資産及び負債の時価と当該資産及び負債の個別貸借対照表上の金額との差額(評価差額)
6. 持分法の適用にあたり、被投資会社の資本は、第5項に準ずるものとする。このうち、被投資会社の資産及び負債を時価により評価する方法は、次による。
(1)被投資会社が非連結子会社の場合には、連結会計方針で採用している子会社の資産及び負債の評価方法(部分時価評価法又は全面時価評価法)による。
(2)被投資会社が関連会社の場合には、部分時価評価法の原則法(関連会社の資産及び負債のうち投資会社の持分に相当する部分については、株式の取得日ごとに当該日における時価により評価する方法)による。ただし、これと計算結果が著しく相違しない場合には、部分時価評価法の簡便法(関連会社の資産及び負債のうち投資会社の持分に相当する部分について、持分法適用開始日における時価により一括して評価する方法)によることができる。

在外子会社等の純資産の換算
7. 連結財務諸表の作成又は持分法の適用にあたり、外国にある子会社又は関連会社の外国通貨で表示されている財務諸表項目のうち、純資産に属する項目(連結貸借対照表の作成又は持分法の適用にあたり子会社の資本及び被投資会社の資本とされた評価差額を含む。)の換算は、次の方法による。
(1)親会社による株式の取得時における株主資本及び評価・換算差額等に属する項目、並びに子会社の資産及び負債の評価差額については、株式取得時の為替相場による円換算額を付する。具体的には次による。
① 部分時価評価法を採用している場合には、株式取得日ごとの為替相場により換算する。
② 全面時価評価法を採用している場合には、支配獲得時の為替相場により換算する。
(2)親会社による株式の取得後に生じた株主資本に属する項目については、当該項目の発生時の為替相場による円換算額を付する。
  また、親会社による株式の取得後に生じた評価・換算差額等に属する項目については、決算時の為替相場による円換算額を付する。
  なお、部分時価評価法を採用している場合には、子会社の資産及び負債の評価差額について、株式取得日ごとの為替相場による円換算額を付することとなる。
(3)新株予約権については、発生時の為替相場による円換算額を付する。ただし、新株予約権に係る為替換算調整勘定は、新株予約権に含めて表示することとする。この結果、新株予約権が行使された場合には、行使時の為替相場により換算した円貨額をもって払込資本に振り替えることとなり、また、失効した場合には、失効時の為替相場により換算した円貨額をもって当期の損益に振り替えることとなる。なお、行使時又は失効時の為替相場については、期中平均相場によることを妨げない。[設例2]
(4)少数株主持分については、従来どおり、決算時の為替相場による円換算額を付する。

適用時期等
8. 本適用指針は、会計基準の実施に合わせて適用されることとなる。

結論の背景
純資産の部の表示

9. 本適用指針では、会計基準を踏まえ、貸借対照表の純資産の部の表示について、標準的な記載例を示している(第3項参照)。
10. これまで、新株式払込金又は申込期日経過後における新株式申込証拠金は、資本金の区分の次に区分を設けて表示されてきた。しかし、平成16年の改正商法及び会社法では、払込期日から株主になるため、もはや新株式払込金は生じないこととなる。また、申込期日経過後における新株式申込証拠金は、返済義務はなく通常、すぐに払込資本となることから、従来どおり、資本金の区分の次に区分を設けて表示されることとなる。
11. 従来から資本の部に計上されている土地再評価差額金は、継続的に評価替えされず、また、売却等を行った際に損益計算書を経由せず当期未処分利益に繰り入れられている。これは、その他有価証券評価差額金などの会計処理とは異なるが、時限立法である土地の再評価に関する法律に基づく臨時的かつ例外的な会計処理であり、土地再評価差額金は、土地の再評価により生じ税効果を調整した評価差額であることから、純資産の部において、評価・換算差額等に表示する。

純資産の部における項目と会計処理
12. 会計基準では、貸借対照表の表示を定めることを目的としており、表記上、これまでの資本の部を純資産の部に代え、新株予約権や少数株主持分、繰延ヘッジ損益を当該純資産の部に記載することとしたが、表示を除く会計処理については、基本的に既存の会計基準と異なる定めはしていないとしている(会計基準第1項及び第22項参照)。
  このため、新株予約権の発行者側の会計処理については、新株予約権を純資産の部に計上することとなっても、これまでと同様に、権利が行使されたときは資本金又は資本金及び資本準備金に振り替え、権利が行使されずに権利行使期限が到来したときは利益として処理することとなる。
  また、少数株主持分を純資産の部に計上することとなっても、従来どおり、連結財務諸表の作成については親会社説の考え方による。このため、これまでと同様に、少数株主損益は、連結損益計算書において当期の損益として表示し、当期純利益は親会社の株主に帰属する利益の額として計算される。また、親会社が子会社株式を追加取得した場合、追加取得により、減少した少数株主持分(増加した親会社の持分)と追加投資額との間に生じた差額は、のれんとして処理し、親会社が子会社株式を一部売却した場合(ただし、親会社と子会社の支配関係は継続しているとき)、売却した株式に対応する少数株主持分を増額するとともに、売却による親会社の持分の減少額と投資の減少額との間に生じた差額は、子会社株式の売却損益の修正として処理することとなる。
13. ただし、評価・換算差額等については、税効果会計を適用し、これらに係る繰延税金資産又は繰延税金負債を控除して計上することとなり、本適用指針では、具体的な税効果会計の適用について整理している(第4項参照)。また、新株予約権や少数株主持分、繰延ヘッジ損益を純資産の部に記載することとしたことから、「連結財務諸表原則」(以下「連結原則」という。)や「外貨建取引等会計処理基準」(以下「外貨基準」という。)の適用指針の一部として、資本連結における子会社の資本及び被投資会社の資本(第5項及び第6項参照)や在外子会社等の純資産の換算(第7項参照)についても明確にしている。

税効果会計の適用
14. 税効果会計の方法は、資産負債法によっており、一時差異とは、貸借対照表及び連結貸借対照表に計上されている資産及び負債の金額と課税所得計算上の資産及び負債の金額との差額をいう(「税効果会計に係る会計基準」第二 一 2)。
15. 純資産の部に直接計上される評価・換算差額等については、課税所得の計算に含まれていない場合、「税効果会計に係る会計基準」第二 二 3ただし書きに準じて、税効果会計を適用し、これらに係る繰延税金資産又は繰延税金負債の額を控除して計上することとなる(第4項参照)。
16. 繰延ヘッジ損益に対する税効果会計については、繰延ヘッジ損失と繰延ヘッジ利益とに区分し、繰延ヘッジ損失(将来減算一時差異)については、税効果実務指針等に基づき回収可能性を検討した上で繰延税金資産を認識するとともに、繰延ヘッジ利益(将来加算一時差異)については繰延税金負債を認識することとなる(第4項(4)参照)。
  なお、繰延ヘッジ損失については、ヘッジ有効性を考慮すれば、通常、ヘッジ対象に係る評価差益(将来加算一時差異)とほぼ同時期・同額にて解消されるものとみることもできることなどから、本適用指針では、将来年度の収益力に基づく課税所得によって繰延税金資産の回収可能性を判断する場合には、例示区分①及び②の会社に加え、例示区分③及び④のただし書きの会社についても回収可能性があると判断できるものとした。
17. 新株予約権は、失効時に課税所得を増額する効果をもつ課税所得計算上の負債に該当するため、税効果会計の対象になるという考え方もあるが、権利行使の有無が確定するまでの間は、その性格が確定しないことから、貸借対照表及び連結貸借対照表に計上されている負債に該当しないのみならず、税効果会計の適用において、課税所得計算上の負債にも該当しないと考えられる。このため、本適用指針では、新株予約権については、税効果会計の対象としないものとしている。
18. 少数株主持分についても、連結貸借対照表に計上されている負債でも課税所得計算上の負債でもないため、税効果会計の対象とはならないものと考えられる。

資本連結における子会社の資本及び被投資会社の資本
19. 連結原則第四 一において、連結貸借対照表は、親会社及び子会社の個別貸借対照表における資産、負債及び資本の金額を基礎とし、子会社の資産及び負債の評価、親会社及び連結される子会社相互間の投資と資本及び債権と債務の相殺消去等の処理を行って作成するとされている。会計基準では、貸借対照表の表記上、これまでの資本の部を純資産の部に代え、新株予約権や少数株主持分、繰延ヘッジ損益を当該純資産の部に記載することとしたが、表示を除く会計処理については、基本的に従来とは異なる定めはしていない。このため、本適用指針でも、資本連結において相殺消去の対象となる子会社の資本は、従来どおり、子会社の貸借対照表上の純資産の部における株主資本及び評価・換算差額等を基礎とし、子会社の資産及び負債の評価差額を加減した額となるものとしている(第5項参照)。
20. したがって、子会社の貸借対照表において、純資産の部に記載することとされた子会社の新株予約権や少数株主持分は、次の理由により、これまでと同様に、子会社の資本には含まれないものと考えられる。
(1)子会社の新株予約権は、子会社において払込資本となるか利益となるか未確定であるが、いずれの場合でも株主に帰属する部分となるため、子会社の資本にあたるという考え方がある。しかしながら、子会社の新株予約権は、これまでも資本連結において子会社の資本には含まれていない。これは、新株予約権者が、株主とは異なり報告主体の所有者ではないことや、子会社の新株予約権は、行使されれば少数株主持分を増加させるが、行使されなければ持分比率に応じて親会社及び少数株主に帰属するため、未行使の段階においては帰属が未確定であることなどによるものと考えられる。このため、本適用指針でも、従来どおり、子会社の株主資本や子会社の資産及び負債の評価差額とは区別し、子会社の資本にはあたらないものとしている。
 なお、親会社が子会社の新株予約権を保有している場合には、連結会社相互間の債権と債務の相殺消去(連結原則 第四 六)に準じる。また、子会社の新株予約権は、子会社の資本には含まれないものと考えられるため、これを持分比率に基づき、親会社持分割合と少数株主持分割合とに按分しない。
(2)子会社で計上されている少数株主持分は、孫会社の少数株主の持分であるため、親会社の子会社への投資に対応する子会社の資本には含まれない。
21. 子会社の貸借対照表上、純資産の部に直接計上されている評価・換算差額等は、従来どおり、資本連結において子会社の資本に含まれ(第5項(2)参照)、親会社の投資との相殺消去及び少数株主持分への振り替えによって消去されることとなる。したがって、連結子会社における評価・換算差額等は、従来どおり、原則として、持分比率により親会社持分額と少数株主持分額とに按分される。
22. なお、子会社における当該評価・換算差額等は、会計基準において、報告主体の所有者に帰属するものではなく株主資本には含めないこととしていることから、子会社の所有者である親会社及び少数株主による投資に対応しないのではないかという見方がある。しかし、会計基準では、表示を除く会計処理については、基本的に従来とは異なる定めはせず、連結貸借対照表上、連結子会社における評価・換算差額等の少数株主持分割合は少数株主持分に含めるものとしている(会計基準第7項なお書き参照)ため、本適用指針では、これまでと同様に、資本連結における子会社の資本に該当するものとしている。すなわち、これまで子会社が繰延ヘッジ損益を資産及び負債に計上していた場合でも、当該繰延ヘッジ損益は評価差額に該当するため、親会社の子会社への投資に対応する子会社の資本に含まれている。このため、子会社の資産及び負債の時価評価方法の相違により、少数株主持分に相当する部分の取扱いは、次のように異なっていたものと考えられる。
(1)全面時価評価法においては、子会社の資産及び負債のすべてを支配獲得日の時価により評価し、評価差額は子会社の資本として相殺消去の対象となる。このため、少数株主持分に相当する部分は少数株主持分に含められる。
(2)部分時価評価法においては、子会社の資産及び負債のうち、親会社の持分に相当する部分について株式の取得日ごとに当該日における時価により評価し、当該評価差額だけが子会社の資本として相殺消去の対象となる。このため、少数株主持分に相当する部分は資産及び負債に計上されたままとなる。
  これまで部分時価評価法により処理している場合でも、会計基準では、繰延ヘッジ損益を純資産の部に記載することとしたため、子会社の純資産の部に記載されることとなる繰延ヘッジ損益は、少数株主持分に相当する部分も含めて資本連結の対象となる。したがって、本適用指針の適用により、これまで資産及び負債に計上されていた少数株主持分に相当する部分の繰延ヘッジ損益は、少数株主持分に含められることとなる。
23. 持分法の適用に際しては、被投資会社の財務諸表について、原則として、連結子会社の場合と同様の処理を行うものとする(連結原則注解(注解17))とされている。このため、被投資会社の資本は、第5項に準じ、被投資会社の貸借対照表上の純資産の部における株主資本及び評価・換算差額等を基礎とし、被投資会社の資産及び負債の評価差額を加減した額(ただし、それぞれ税効果会計適用後)となる(第6項参照)。
24. 持分法の適用にあたり、被投資会社が非連結子会社の場合には、従来どおり、連結会計方針で採用している子会社の資産及び負債を評価する方法による。また、被投資会社が関連会社の場合には、従来どおり、原則として、部分時価評価法の原則法によって処理するため、連結会計方針で全面時価評価法を採用している場合でも、株式の取得日ごとに当該日における評価差額は被投資会社の資本に含まれることとなる(第6項参照)。

在外子会社等の純資産の換算
25. 在外子会社等の財務諸表の換算について、外貨基準では、資産及び負債は決算時の為替相場により円換算し、親会社による株式の取得時における資本に属する項目は株式取得時の為替相場により円換算するものとしている。ここでいう資本に属する項目とは、連結財務諸表の作成又は持分法の適用にあたり資本連結等の対象となる項目と考えられる。このため、親会社による株式の取得時における資本に属する項目は、これまでと実質的に同じ範囲となるように、在外子会社等の貸借対照表上の純資産の部における株主資本、及び評価・換算差額等に属する項目、並びに在外子会社等の資産及び負債の評価差額とすることが適当と考えられる(第7項(1)参照)。
26. また、外貨基準では、親会社による株式の取得後に生じた資本に属する項目は発生時の為替相場により円換算するものとしている。ここでいう親会社による株式の取得後に生じた資本に属する項目は、これまでと実質的に同じ範囲となるように、在外子会社等の貸借対照表上の純資産の部における株主資本及び評価・換算差額等に属する項目とすることが適当と考えられる(第7項(2)参照)。
  この際、例えば、その他有価証券評価差額金のような評価・換算差額等に属する項目については、基本的に決算時において洗い替えられるため、本適用指針では、外貨基準にいう当該項目の発生時の為替相場は、決算時の為替相場が該当するものと考え、その旨を示すこととした(第7項(2)また書き参照)。
27. この結果、資本連結において在外子会社の資本は、従来どおり、次のように換算される。
(1)部分時価評価法を採用している場合には、株式取得日ごとの為替相場により換算する(第7項(1)①及び(2)なお書き参照)。このため、親会社持分に係る子会社の資産及び負債の評価差額は、株式の取得日ごとの為替相場で円換算され累積されることになり、株式の追加取得又は一部売却に応じて当該評価差額の残高も増減するが、毎期決算時の為替相場による換算替えは行わない。
(2)全面時価評価法を採用している場合には、支配獲得時の為替相場により換算する(第7項(1)②参照)。このため、親会社持分と少数株主持分を合計した全体に係る評価差額が支配獲得時の為替相場により円換算されることになり、株式の追加取得又は一部売却があっても、当該会社が連結子会社である限り、外貨額及び円換算額とも固定され、資本連結において、親会社持分と少数株主持分に配分されることになる。
28. 在外子会社で計上されている新株予約権については、発生時の為替相場による円換算額を付するという考え方と、決算時の為替相場による円換算額を付するという考え方がある。従来の取扱いは必ずしも明確ではないが、新株予約権は仮勘定として負債の部に計上し、外貨基準において、資産及び負債は決算時の為替相場により円換算するものとしていることから、これまでは決算時の為替相場により円換算していたものと考えられる。
  しかしながら、本適用指針では、在外子会社で計上されている新株予約権の換算については、親会社が新株予約権を保有している場合との整合性や国際的な調和に配慮して、発生時の為替相場による円換算額を付するものとした(第7項(3)参照)。ただし、新株予約権に係る為替換算調整勘定は、新株予約権に含めて表示することとしたため、当該為替換算調整勘定を新株予約権に振り替えた後の円貨表示の新株予約権は、新株予約権の外貨額を決算時の為替相場により換算した額と同じになる。
29. 新株予約権に係る為替換算調整勘定を新株予約権に含めて表示することから、新株予約権が行使された場合には、行使時の為替相場により換算した円貨額をもって払込資本に振り替えることとなり、また、失効した場合には、失効時の為替相場により換算した円貨額をもって当期の損益に振り替えることとなる。
30. 在外子会社で計上されている少数株主持分についても、これまでの取扱いは必ずしも明確ではないが、少数株主持分が負債から中間区分に変更となった連結原則の後に改訂された外貨基準では特に明示されていないため、従来の負債の換算と同様に、これまで決算時の為替相場により円換算していたものと考えられる。
  また、在外子会社の財務諸表の換算については、(1)子会社の個別財務諸表と孫会社の個別財務諸表を各々換算する方法であっても、(2)子会社が作成した孫会社を含む連結財務諸表を親会社で換算する方法であっても、連結した結果が同一となるという理由から、(1)及び(2)の方法がいずれも認められている(日本公認会計士協会会計制度委員会報告第4号「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」(以下「外貨実務指針」という)第38項)。(1)の方法については、為替換算調整勘定は持分比率に基づき、親会社持分割合と少数株主持分割合とに区分され、少数株主持分割合は少数株主持分に振り替えられ、連結貸借対照表上の少数株主持分に含めて表示される(外貨実務指針第41項)。この結果、為替換算調整勘定を振り替えた後の円貨表示の少数株主持分は、外貨表示の少数株主持分額を決算時の為替相場により換算した額と同じになるため、(2)の方法においても、(1)の方法と同一の結果となる決算時の為替相場による円換算が適当と考えられる。
  このような理由により、在外子会社で計上されている少数株主持分については、従来どおり、決算時の為替相場による円換算額が付されることとなる(第7項(4)参照)。
  なお、この方法には、連結修正手続上、在外子会社で計上されている少数株主持分を発生時の為替相場により換算し、当該少数株主持分に係る為替換算調整勘定を、少数株主持分に含めて表示することも含まれる。

設例
[設例1]子会社で計上されている繰延ヘッジ損益と資本連結
1 前提条件
 Xl年3月31日
① P社は、X1年3月31日に、S社株式10%を150で取得した。
② S社のX1年3月期の抜粋貸借対照表は次のとおりである(借入金の金利固定化スワップについて時価評価を行い、評価差額200から税効果額80を控除した残額120を純資産の部に繰延ヘッジ利益として計上した。なお、S社の金利スワップ以外の資産及び負債には、重要な時価評価による簿価修正額はないものとする。)。

 X2年3月31日
③ P社は、X2年3月31日に、S社株式50%を750で追加取得し、S社を60%子会社とした。
④ S社のX2年3月期の抜粋貸借対照表は次のとおりである(借入金の金利固定化スワップの時価評価差額400から税効果額160を控除した残額240を純資産の部に繰延ヘッジ利益として計上している。)。

2 会計処理
 (1)全面時価評価法を採用している場合

 (2)部分時価評価法を採用している場合

(参考)会計基準及び本適用指針の適用前における会計処理


1 前提条件
  S社のX1年3月期及びX2年3月期の抜粋貸借対照表は次のとおりであり、それ以外は、会計基準及び本適用指針の適用後の上記前提条件と同じであるものとする。

 S社のX1年3月期の抜粋借対照表
  借入金の金利固定化スワップについて時価評価を行い、評価差額200を負債の部に繰延ヘッジ利益として計上している。

S社のX2年3月期の抜粋貸借対照表
 借入金の金利固定化スワップの時価評価差額400を負債の部に繰延ヘッジ利益として計上している。

2 会計処理
 (1)全面時価評価法を採用している場合
① 資本連結上、繰延ヘッジ利益400から税効果額160を控除した残額240を評価差額として計上する。

② 投資と資本の相殺消去をする。

 (2)部分時価評価法を採用している場合
① 資本連結上、株式取得日ごとの繰延ヘッジ利益220(*1)から税効果額88を控除した残額を評価差額として計上する。

② 投資と資本の相殺消去をする。

(注)税効果考慮後の繰延ヘッジ利益240のうち、これまでの部分時価評価法では132しか資本連結の対象としていないため、今後は、差額108も資本連結の対象とし、親会社の持分12と少数株主持分96に按分する必要がある。

[設例2]在外子会社で計上されている新株予約権の換算
1 前提条件
① 親会社P社は、在外子会社S社株式の100%(発行済株式数540株)を保有している。S社はXl年3月31日に、現金を対価とする新株予約権を発行した。両社の決算日は3月31日である。
② 新株予約権の数:100個
③ 新株予約権の発行時の時価:$200/個
④ 行使価額:$1,000(新株予約権1個の行使により発行する株式1株の発行価額)
⑤ 行使期限:X4年3月31日
⑥ X2年3月31日に、新株予約権の60%が行使された。
⑦ X3年3月31日に、新株予約権の30%が行使された。
⑧ X4年3月31日に、残る新株予約権(10%)のすべてが失効した。
⑨ 決算日の為替相場
  Xl年3月31日:  $1=¥100
  X2年3月31日: $1=¥101
  X3年3月31日: $1=¥102
  X4年3月31日: $1=¥103
⑩ 在外子会社の収益及び費用については、決算時の為替相場による円換算額を付している

2 在外子会社における会計処理
 X1年3月31日

 X2年3月31日

 X3年3月31日

 X4年3月31日



3 親会社における円換算


4 親会社における連結財務諸表上の会計処理
  S社がX1年3月31日に現金を対価として発行した新株予約権を、親会社が全額引き受け、その他有価証券としているものとする。

  新株予約権は、発生時の為替相場による円換算額を付し、新株予約権に係る為替換算調整勘定は新株予約権に含めて表示するが、親会社の保有するその他有価証券(新株予約権)との相殺消去にあたっては、当該為替換算調整勘定も考慮する。

  新株予約権が行使された場合、子会社では行使時の為替相場により換算した円貨額をもって払込資本に振り替えることとなるが、行使された新株予約権に係る為替換算調整勘定についても、資本連結において親会社の子会社に対する投資と相殺消去する。この結果、為替相場による消去差額は生じないこととなる。


上記資料は、(財)財務会計基準機構のホームページより同財団の許可を得て転載しています。なお、同財団の公表物は、著作権等により保護されており、同財団の許可なく複写・転載等は禁じられています。利用等に当たっては、同財団事務局(tel:03-5561-9618)へご連絡下さい。



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